胃カメラ検査の費用はいくら?保険適用と自費の違いを専門医が解説
- 2 日前
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胃の調子が悪くて内視鏡検査を勧められた、あるいは健診で「要精密検査」の判定を受け取った。そんなとき、検査そのものへの不安と同じくらい気になるのが費用ではないでしょうか。「保険が使えるのか、それとも全額自己負担になるのか」「結局いくらかかるのか」がわからないまま、受診を先延ばしにしてしまう方を外来でよく見かけます。今回は消化器内視鏡専門医の立場から、胃カメラ検査の費用について、保険診療と自費診療(人間ドック)の違いを軸に、具体的な金額を挙げながら解説します。
胃カメラの費用は「保険が使えるかどうか」で大きく変わる
日本の健康保険制度では、症状がある、あるいは病気が疑われる状態への検査は保険診療として扱われます。一方、症状のない方が将来の病気を予防する目的で任意に受ける検査は、自費診療(自由診療)に分類されます。胃カメラも例外ではなく、同じ検査でも「なぜ受けるのか」によって費用の枠組みがまったく変わってきます。ここを理解しないまま「胃カメラは高い」「保険が効かない」と思い込んでいる方も少なくありません。
保険適用で胃カメラを受けられるケース
以下のような状態であれば、胃カメラ検査は保険診療の対象になります。
胃痛、胸やけ、胃もたれ、吐き気、食欲低下などの症状が続いている
黒い便(タール便)や吐血がある
ピロリ菌感染が疑われる、あるいは除菌治療後の判定が必要
健診や人間ドックのバリウム検査(胃透視)で「要精密検査」の指摘を受けた
胃潰瘍や十二指腸潰瘍を繰り返している
特に、健診のバリウム検査で異常を指摘されたケースについては、放置してしまう方が意外に多いのが実情です。バリウム検査はあくまで胃の形や輪郭を映すスクリーニング検査であり、病変の深さを評価したり、組織を採取して確定診断を下したりすることはできません。「要精密検査」の指摘があった場合の考え方については、当院の過去記事でも詳しく取り上げていますので参考にしてください。
食後の痛みが続く、夜だけ胃が痛む、といった症状のパターンも、保険診療での胃カメラを検討する目安になります。胃潰瘍では食後に、十二指腸潰瘍では空腹時や夜間に痛みが出やすいという特徴があり、痛みが出るタイミングそのものが診断の手がかりになります。このあたりの症状別の見分け方は、以下の過去記事で具体的に解説しています。
保険診療の場合、実際の費用はいくらか
保険診療で胃カメラを受ける場合、負担割合によって金額が変わります。当院での目安は、観察のみ(生検なし)であれば3割負担で約4,000円、1割負担の方で約1,300円程度です。鎮静剤を使用した場合の追加費用はごくわずかで、3割負担で約130円、1割負担で約45円程度にとどまります。つまり「鎮静剤を使うと高くなるのでは」と心配する必要はほとんどありません。
これに、状況に応じて次のような費用が加算されます。
生検(組織検査)を行った場合:3割負担で数千円程度の追加
ピロリ菌感染の検査を行った場合:検査方法に応じて追加費用が発生
初診料・再診料:初めて受診する医療機関では別途初診料がかかる
生検の要否は検査中に病変が見つかったかどうかで決まるため、事前に正確な総額を提示することは難しい面があります。ただ、多くの場合は数千円〜1万円程度の範囲に収まることがほとんどです。高齢の方で1割・2割負担になる場合は、この金額は小さくなります。
「生検」という言葉に馴染みのない方も多いかもしれません。これは、内視鏡の先端から鉗子と呼ばれる器具を出し、胃の粘膜の一部をごく少量つまみ取って調べる検査です。痛みはほとんど感じません。採取した組織は病理医のもとに送られ、炎症の程度や、ピロリ菌感染の有無、がん細胞が含まれていないかなどを顕微鏡で確認します。結果が出るまでには1〜2週間ほどかかるため、その場ではっきりとした診断がつかないことも珍しくありません。この待機期間は不安に感じられるかもしれませんが、正確な診断のために必要なプロセスです。
なお、初めて受診する医療機関では、検査費用とは別に初診料が数百円〜1,000円程度加わるのが一般的です。日本国内の健康保険証をお持ちでない方については、保険適用外の自由診療扱いとなり、初診料や検査費用の設定が保険診療とは異なる場合があります。事前にお持ちの保険証の種類を確認しておくと、当日慌てずに済みます。
負担割合そのものも年齢によって変わります。現役世代は原則3割負担ですが、70歳から74歳までは原則2割負担、75歳以上の後期高齢者は原則1割負担となり、現役並みの所得がある方はそれぞれ引き上げられる仕組みです。同じ内容の胃カメラでも、年齢や所得区分によって窓口で支払う額が変わってくる、という点は意外と見落とされがちです。ご自身の負担割合がわからない場合は、保険証に記載された割合を確認するか、受付で確認してもらうと安心です。
自費診療(人間ドック)で受ける胃カメラの費用
症状がなく、健診の一環として胃カメラを受けたい場合は、自費診療となる人間ドックの枠組みで検査を受けることになります。当院の場合、胃カメラ検診のみのコースが17,600円(税込)、血液検査や腹部エコー、心電図などを組み合わせた胃カメラ人間ドックが33,000円(税込)です。胃と大腸の内視鏡をまとめて受ける胃大腸カメラ人間ドックは49,500円(税込)、腫瘍マーカーや動脈硬化検査まで含めたプレミアムコースは60,500円(税込)からとなっています。
いずれのコースも鎮静剤の使用が可能で、眠っている間に検査を終えることができます。ご自身がどこまでの項目を希望するかによって金額が変わるため、症状の有無だけでなく、どのくらい詳しく調べたいかという点でもコース選びを検討していただけます。
人間ドックを予約する際に気をつけたい点もあります。多くの医療機関では、人間ドックは全額自費でお支払いいただける方が対象で、健康保険の補助は利用できません。また、当日キャンセルについては検査の準備やスタッフの手配がすでに済んでいるため、キャンセル料が発生する医療機関がほとんどです。
大腸カメラを含むコースでは、検査の数日前までに検査食や下剤といった前処置薬を受け取っておく必要があり、この前処置にかかる実費が数千円程度別途必要になることもあります。金額の大小だけでなく、こうした事前準備の流れも踏まえてコースを選んでいただくと、当日になって慌てずに済みます。
保険診療に比べると金額の差は大きく見えますが、これは検査の精度が違うからではなく、あくまで「保険制度上、症状のない人への検査には保険が使えない」というルールによるものです。日本や東アジア地域では、胃がんの罹患率の高さを背景に内視鏡による胃がん検診が行われており、症状のない段階での内視鏡検査が胃がんによる死亡率の減少に寄与することを示す研究が複数報告されています[1,2,3]。症状がないからといって検査の意味がないわけではなく、むしろ自覚症状が出る前の早期胃がんを見つけるためには、症状を待たずに検査を受けること自体に価値があります。
ピロリ菌感染がある方や、胃がんの血縁者がいる方など、リスクが相対的に高いと考えられる方については、自費であっても定期的な内視鏡検査を検討する意義があるという指摘もあります[4]。逆に、ピロリ菌を除菌した後も胃がんのリスクがゼロになるわけではないため、除菌後も定期的なフォローアップとして内視鏡検査を続けておく必要があります[5]。
保険診療と自費診療、結局どちらを選ぶべきか
判断に迷う場合は、次のように考えるとわかりやすくなります。
胃痛や胸やけなどの症状がある、健診で異常を指摘された、というのであれば、まず医療機関を受診してください。その時点で保険診療として胃カメラを検討することになります。自己判断で「たいしたことはないだろう」と様子を見てしまうと、早期発見の機会を逃すことにつながりかねません。
一方、これといった症状はないものの、40歳を過ぎて一度も胃カメラを受けたことがない、ピロリ菌陽性を指摘されたことがある、あるいは近親者に胃がんの方がいる、といった場合は、人間ドックとしての胃カメラを検討する価値があります。早期の胃がんはほとんど自覚症状を伴わないことが多く、症状が出てからでは進行している場合もあるためです。
費用を抑えるために知っておきたい制度
保険診療で検査を受け、その結果治療が必要になった場合は、高額療養費制度の対象になることがあります。ひと月の医療費が自己負担限度額を超えた分は、後から払い戻しを受けられる制度です。詳しい限度額は年齢や所得によって異なるため、加入している健康保険組合や市区町村の窓口に確認するとよいでしょう。
人間ドックなど自費診療の費用は、原則として医療費控除の対象外ですが、その結果「治療を要する」と判断されて実際に治療を受けた場合には、人間ドックの費用も含めて医療費控除の対象になり得ます。また、自治体や勤務先の健康保険組合が、胃がん検診や人間ドックの費用の一部を助成している場合もあります。お住まいの自治体や加入している保険者の制度を確認しておくと、自己負担を抑えられることがあります。
鎮静剤を使うかどうかも検討のポイント
胃カメラに苦手意識がある方にとって、鎮静剤の有無は費用以上に気になる点かもしれません。鎮静剤を使用すると、ウトウトと眠ったような状態で検査を終えることができ、嘔吐反射などの苦痛を大きく減らせます。大規模な臨床データでも、専門のスタッフが管理した鎮静下の内視鏡は比較的安全に行われていることが示されています[6]。
ただし、鎮静剤には呼吸抑制や血圧低下といった副作用のリスクもあるため、当日の車の運転ができないことや、持病によっては使用を控えるべき場合があることも知っておく必要があります。鎮静剤の詳しい仕組みや注意点は、以下の過去記事でも解説しています。
先ほど触れたとおり、鎮静剤の追加費用自体はごくわずかです。費用を理由に鎮静剤の使用をためらう必要はなく、むしろ「苦痛が少ないなら毎年でも検査を受けやすくなる」という点で、長期的には受診の継続につながりやすくなります。
外来でよくある費用の疑問
実際の診療でも、費用に関する質問は症状の相談と同じくらい多く寄せられます。ここでは代表的なものを挙げておきます。
Q.「夜だけ胃が痛む」場合、保険で検査できますか。
できます。夜間や空腹時に痛みが出るパターンは十二指腸潰瘍を疑う手がかりの一つで、症状として保険診療の対象になります。市販の胃薬で一時的に痛みが治まっても、原因がわからないまま繰り返す場合は、我慢せずに受診されることをお勧めします。
Q.「下痢に血が混じる」ときも同じ考え方ですか。
血便を伴う症状は、胃カメラではなく大腸カメラの適応になることが多いですが、考え方は同じです。症状がある以上は保険診療の対象であり、様子を見ている間に進行してしまう病気もあるため、早めの受診が望ましいタイミングです。
Q.健診で「経過観察」と「要精密検査」、どちらも同じくらい急ぎますか。
異なります。「要精密検査」は、その場での判定だけでは診断が確定できないという意味であり、先延ばしにするほど早期発見の機会を失うリスクが高まります。「経過観察」は一定期間後の再検査で足りる場合が多く、緊急性は比較的低いとされています。判定の意味を正しく理解したうえで、必要な行動を先送りにしないようにしてください。
Q.費用が心配で健診の指摘を放置してしまいました。今からでも遅くないですか。
遅すぎるということはありません。放置期間が長いほど気になるとは思いますが、まずは現状を確認することが最初の一歩になります。保険診療の範囲であれば、検査自体の費用は数千円程度で収まることがほとんどです。
外来でよく見られる受診パターン
個々の患者様の情報には触れられませんが、外来には共通したパターンがいくつか存在します。ここでは、費用の考え方を実感していただくために、よく見られる典型的な状況を一般化して紹介します。
一つ目は、健診でピロリ菌陽性を指摘されながら、これといった症状がないために数年放置してしまうパターンです。この場合、除菌治療そのものは保険診療で受けられますが、除菌前の感染確認と除菌後の判定には胃カメラによる検査が必要になります。症状がなくても、ピロリ菌の存在自体が保険適用の根拠になるため、費用面で身構える必要は基本的にありません。
二つ目は、健診のバリウム検査で「要精密検査」と判定されたものの、費用や検査への抵抗感から数か月先延ばしにしてしまうパターンです。バリウム検査はあくまで大まかな異常を拾い上げるスクリーニングであり、確定診断のためには胃カメラが不可欠です。この段階まで来ていれば症状の有無にかかわらず保険診療の対象になるため、自費診療(人間ドック)よりもむしろ費用負担は軽くなることがほとんどです。
三つ目は、症状は特にないものの、家族に胃がんの既往がある、あるいは40歳を過ぎて一度も内視鏡検査を受けたことがないという理由で、人間ドックとしての胃カメラを希望されるパターンです。この場合は自費診療となるため、保険診療に比べて費用は高くなりますが、症状が出る前の段階で早期胃がんや胃の前がん病変を見つけられる可能性があるという点で、検査そのものの価値は決して小さくありません。
くりた内科・内視鏡クリニックの胃カメラ検査について
当院では、消化器内視鏡専門医・指導医である院長がすべての内視鏡検査を担当しています。経口・経鼻いずれの内視鏡にも対応しており、患者様のご希望や過去の検査経験に応じて選んでいただけます。大学病院でも導入されているオリンパス社製の最新内視鏡システム「EVIS X1」を使用し、微細な病変も見逃さない精度の高い観察を行っています。
女性の患者様には、女性スタッフによる検査対応や、プライバシーに配慮した前処置室・回復スペースをご用意しています。お仕事の都合がつきにくい方のために土曜日の検査枠も設けており、胃と大腸の内視鏡検査を同日にまとめて受けていただくことも可能です。検査前日22時以降の絶食があれば、当日受診でその日のうちに胃カメラを受けていただける体制も整えています。
費用について不明な点がある場合は、保険診療・人間ドックいずれについても、事前にお電話やWeb予約の際にご相談いただけます。ご自身の症状や健診結果を踏まえて、保険診療で受けるべきか、人間ドックで受けるべきかを一緒に整理いたします。
まとめ
胃カメラの費用は、症状の有無によって保険診療か自費診療かに分かれ、金額も大きく変わります。症状がある場合はまず受診し、保険診療での検査を検討してください。健診で「要精密検査」の指摘を受けた場合も同様に、保険診療の対象になります。症状がなくても、年齢やピロリ菌感染歴、家族歴などのリスク要因がある方は、人間ドックとしての胃カメラも選択肢になります。
費用の不安から検査を先延ばしにするのではなく、まずは自分がどちらに当てはまるのかを整理することが、結果的に体への負担も費用の負担も抑えることにつながります。胃カメラは「痛そう」「高そう」というイメージだけで避けてしまうにはもったいない検査です。胃の不調が気になる方、健診結果が気になる方は、どうぞお気軽に当院にご相談ください。
引用文献
1. Yashima K, Shabana M, Kurumi H, Kawaguchi K, Isomoto H. Gastric Cancer Screening in Japan: A Narrative Review. J Clin Med. 2022;11(15):4337.
2. Hamashima C, Ogoshi K, Narisawa R, Kishi T, Kato T, Fujita K, Sano M, Tsukioka S. Impact of endoscopic screening on mortality reduction from gastric cancer. World J Gastroenterol. 2015;21(8):2460-2466.
3. Hamashima C, Shabana M, Okada K, Okamoto M, Osaki Y. Mortality reduction from gastric cancer by endoscopic and radiographic screening. Cancer Sci. 2015;106(12):1744-1749.
4. Shah SC, Canakis A, Peek RM Jr, Saumoy M. Endoscopy for gastric cancer screening is cost effective for Asian Americans in the United States. Clin Gastroenterol Hepatol. 2020;18(13):3026-3039.
5. Ford AC, Yuan Y, Moayyedi P. Helicobacter pylori eradication therapy to prevent gastric cancer: systematic review and meta-analysis. Gut. 2020;69(12):2113-2121.
6. Vargo JJ, Niklewski PJ, Williams JL, Martin JF, Faigel DO. Patient safety during sedation by anesthesia professionals during routine upper endoscopy and colonoscopy: an analysis of 1.38 million procedures. Gastrointest Endosc. 2017;85(1):101-108.
7. くりた内科・内視鏡クリニック.その胃痛、もしかして胃カメラのサイン?~くりた内科・内視鏡クリニックが解説する胃痛と胃カメラの重要性~.2025.https://www.kurita-naika.jp/information/20250703
8. くりた内科・内視鏡クリニック.胃カメラはいつ受けるべき?― 年齢・症状・健診結果から考える、後悔しない「受診」タイミング ―.2025.https://www.kurita-naika.jp/information/20250902-1
9. くりた内科・内視鏡クリニック.胃カメラ検査の麻酔とは?眠ったまま受ける方法と注意点.2025.https://www.kurita-naika.jp/information/20250204
10. くりた内科・内視鏡クリニック.健診の「要精密検査」を放置していませんか?:胃透視検査で異常を指摘された方へ、胃カメラ検査を専門医が強く推奨する理由.2025.https://www.kurita-naika.jp/information/20251103
11. くりた内科・内視鏡クリニック.食後の胃痛は、体からの大切なサインです。見過ごしていませんか?.2025.https://www.kurita-naika.jp/information/20250916






