食後の胃痛は、体からの大切なサインです。見過ごしていませんか?
- くりた内科・内視鏡クリニック

- 9月16日
- 読了時間: 11分
更新日:11月4日

食後にみぞおちや胃のあたりがシクシク、あるいはキリキリと痛む経験は、多くの人が一度は感じたことがあるかもしれません。しかし、その痛みを単なる「食べすぎ」や「消化不良」と安易に片付けてしまうことは、時に体からの大切なメッセージを見逃すことにつながります。
食後の胃痛は、一過性の不調であることもあれば、胃炎、胃潰瘍、さらには見過ごしてはならない胃がんなどの、より深刻な病気が隠れている可能性もあります。これらの病気は初期段階では症状が軽微であったり、他の胃の不調と区別がつかなかったりすることが少なくありません。
多くの方が「少し休めば治るだろう」「いつものことだから大丈夫」と自己判断しがちですが、症状の裏に潜む真の原因を特定することは、表面的な痛みだけでは不可能です。食後の胃痛という一つの症状であっても、その背景には多種多様な病態が考えられます。このため、安易な自己判断は危険であり、正確な診断と適切な治療のためには、専門医による精密な検査が不可欠となります。
食後の胃痛を引き起こす主な原因と症状の紐解き
食後の胃痛の原因は、日々の生活習慣に起因するものから、専門的な治療を要する病気に至るまで多岐にわたります。ご自身の症状がどのような背景から生じているのか、一つずつ紐解いていきましょう。
日常生活に潜む胃痛の引き金
食生活の乱れ: 暴飲暴食、不規則な食事時間、深夜の食事は胃に大きな負担をかけます。特に、揚げ物やステーキ、ピザといった高脂肪食は消化に時間がかかり、胃の滞留時間を延ばします。また、辛いものやアルコール、カフェインなどの刺激物の過剰摂取は、胃酸の分泌を促進し、胃粘膜を傷つける原因となります。
ストレスと自律神経の乱れ: 過度なストレスは、胃や腸の働きをコントロールする自律神経のバランスを乱します。その結果、胃酸が過剰に分泌されたり、消化機能が低下したりして、胃痛を引き起こすことがあります。
その他の生活習慣: 食後すぐに横になる習慣は、胃酸が食道へ逆流しやすくなり、胃食道逆流症(GERD)の原因となることがあります。また、悪い姿勢や肥満、喫煙なども腹圧を上昇させ、同様のリスクを高めることが知られています。
食後の胃痛の背景にある病気
食後の胃痛は、特定の病気のサインである可能性も十分に考えられます。
急性胃炎・慢性胃炎: 食べすぎやストレス、ウイルス・細菌感染などが原因で、胃粘膜に急性の炎症が起こるのが急性胃炎です。突然、キリキリとした鋭い痛みが特徴とされます。一方、慢性胃炎は、炎症が繰り返し起こることで胃粘膜が萎縮し、持続的または繰り返す鈍い痛みを引き起こします。最も多い原因は、後述するピロリ菌の感染です。
胃潰瘍・十二指腸潰瘍: 胃潰瘍と十二指腸潰瘍は、胃酸によって胃や十二指腸の粘膜が深く傷つけられ、欠損した状態です。どちらも腹部の張りや吐き気、胃の不快感を伴いますが、痛みが生じるタイミングに明確な違いがあります。
胃潰瘍は食後30分から1時間後に痛む傾向があるのに対し、十二指腸潰瘍は空腹時に痛むことが特徴です。これらの病気の主な原因はピロリ菌感染や、痛み止めとして使われるNSAIDs(非ステロイド性消炎鎮痛剤)の長期服用です。
機能性ディスペプシア(FD): 胃痛や胃もたれなどの不調が慢性的に続いているにもかかわらず、内視鏡検査などで胃や食道に潰瘍やがんなどの異常が見つからない病気です。かつては「気のせい」と片付けられることもありましたが、れっきとした病気であり、健康保険による治療が可能です。FDの主な原因は、胃の動きが低下する「胃運動機能障害」や、胃がわずかな刺激にも過敏に反応する「胃の知覚過敏」にあると考えられています。上腹部の不調で医療機関を受診する患者様の約半数がこのFDであるという報告もあり、非常に一般的な疾患です。
胃食道逆流症(GERD): 胃の中の胃酸や食べ物が食道に逆流することで、胸やけや胸の痛み、胃痛を引き起こす病気です。胸やけだけでなく、のどの違和感や咳、口の中の苦味などを伴うこともあり、症状は多岐にわたります。
その他、見過ごせない疾患: 食後の胃痛は、生魚介類を食べた後のアニサキス症、胆石症、急性膵炎など、他の臓器の病気が原因である可能性も示唆します。また、胃がんが進行すると胃の痛みや胃もたれ、吐き気といった症状が現れることがあり、胃炎や胃潰瘍の症状と区別がつきにくい場合があるため注意が必要です。
このように、食後の胃痛という一つの症状の背後には、様々な病気が考えられます。痛みの性質やタイミング、随伴症状だけでは、ご自身の胃痛がどの病気によるものかを正確に特定することは非常に困難であり、これが精密検査の必要性を高める重要な理由となります。
表:食後の胃痛を引き起こす主な病気とその特徴
疾患名 | 痛みの特徴 | その他の症状 | 主な原因 |
急性胃炎 | 突然の、キリキリとした鋭い痛み | 胃の膨満感、吐き気、胸やけ | 暴飲暴食、ストレス、ウイルス・細菌感染 |
慢性胃炎 | 繰り返し、または持続的な鈍い痛み | 胃の不快感、吐き気、胃もたれ | ピロリ菌感染、ストレス、食生活の乱れ |
胃潰瘍 | 食後すぐ〜1時間後に痛むことが多い | 腹部の張り、吐き気、吐血、黒い便 | ピロリ菌感染、NSAIDs(痛み止め) |
十二指腸潰瘍 | 空腹時に痛むことが多い | 腹部の張り、吐き気、吐血、黒い便 | ピロリ菌感染、NSAIDs(痛み止め) |
機能性 ディスペプシア | 胃痛、食後すぐに満腹感、胃もたれ | 吐き気、胸やけ | 胃の運動機能障害、知覚過敏、ストレス、ピロリ菌 |
胃食道逆流症 | 胸やけ、胸やみぞおちの痛み | のどの違和感、咳、げっぷ、口の苦味 | 食生活の欧米化、肥満、不良姿勢 |
なぜ精密検査(胃カメラ)が必要なのか? — 確定診断と病気の早期発見
食後の胃痛の原因を正確に特定するためには、胃カメラ(上部消化管内視鏡検査)が最も有力な手段です。胃カメラ検査の優位性は、単に症状の原因を突き止めるだけでなく、将来の深刻な病気を予防する役割も果たします。
症状だけでは見えない、病気の本当の姿
前述したように、多くの病気の症状は重複しており、外から見ただけでは区別がつきません。痛みや違和感という主観的な症状だけでは、胃の粘膜がどの程度荒れているのか、潰瘍の深さや出血の有無、そして何よりがんのような微細な病変が存在するかどうかは判断できません。
胃カメラ検査が診断にもたらす優位性
胃カメラ検査は、先端についた小型カメラで食道、胃、十二指腸の粘膜を直接観察します。これにより、医師は粘膜の色調、凹凸、ただれといった病変の様子を詳細に確認できます。
また、疑わしい部分があれば、その場でごく少量の組織を採取(生検)し、病理検査を行うことで、がんなどの確定診断を下すことが可能です。これは、X線検査(バリウム検査)が「白黒の影絵」でしか病変を捉えられないのに対し、内視鏡は微細な粘膜の変化や平坦な病変をも鮮明に捉えられる点で、圧倒的に優れています。
「診断」から「予防」へ — 胃カメラの価値
多くの人が胃カメラを「痛みの原因を見つけるための検査」と認識していますが、その本質的な価値は、むしろ「予防」にあります。初期の胃がんはほとんど自覚症状がなく、見過ごされがちです。しかし、胃カメラ検査であれば、自覚症状が現れる前の段階でごく小さな胃がんや、将来がんになる可能性のある「前がん病変」を発見し、早期治療につなげることが可能です。
また、胃炎や胃がんの主要な原因であるピロリ菌の感染有無も、胃カメラ検査と同時に診断できます。ピロリ菌の検査や除菌治療を健康保険で行うためには、内視鏡検査が必須となりますので、費用面でも大きなメリットがあります。
このように、胃カメラは単なる「不調の原因を突き止めるための検査」ではなく、ご自身の健康を長期的に守るための最も強力なツールと言えるでしょう。
くりた内科・内視鏡クリニックの胃カメラ検査 — 苦痛を最小限に抑える4つのこだわり
胃カメラ検査の重要性をご理解いただいたとしても、「苦しそう」「痛そう」といった不安から一歩踏み出せない方も少なくありません。当院では、患者様が安心して検査を受けていただけるよう、様々な配慮をしています。
1. 経験豊富な「内視鏡専門医」が担当します
内視鏡検査は、医師の技術や熟練度によって患者様の感じる苦痛が大きく変わる検査です。当院の院長は、大学病院や都市部の大病院で長年の臨床経験を積み、消化器内視鏡学会の「内視鏡専門医」の資格を有しています。さらに、消化器病学の分野で権威ある国際的な学術誌に責任著者として論文が掲載されるなど、その技術と知見は高く評価されています。経験豊富な専門医が、患者様の苦痛を最小限に抑えた検査を行いますので、どうぞご安心ください。
2. 最新鋭の「高画質システム」で微細な病変も見逃しません
当院では、大学病院でも採用されているオリンパス製の最新内視鏡システムを導入しています。このシステムは、通常光では見つけにくい早期がんや微細な病変を鮮明に映し出すNBI(狭帯域光観察)機能や、最大125倍の光学ズームを搭載しています。これにより、微小な粘膜の変化も高精細に観察することが可能となり、より質の高い診断を実現しています。
3. 「眠っている間」に終わる、患者様に寄り添う無痛検査
「オエッ」となる嘔吐反射や、検査への恐怖心が強い方のために、当院では鎮静剤を用いた無痛検査を推奨しています。鎮静剤を静脈から投与することで、患者様はウトウトと眠ったような状態で検査を受けることができ、検査中の苦痛や不安を大幅に軽減できます。
メリット | デメリット | |
鎮静剤を 使用した検査 | ・検査中の苦痛(嘔吐反射、圧迫感など)を大幅に軽減 ・リラックスした状態で、医師がより詳細な観察が可能に ・検査への恐怖心が和らぎ、次回の検査への抵抗感が軽減 | ・検査後、約1時間の休息が必要 ・検査当日は自動車やバイク、自転車の運転が不可 ・まれに血圧低下や呼吸抑制といった副作用のリスクがある |
鎮静剤を使用することで、患者様がリラックスした状態になるため、胃や大腸のひだをしっかりと伸ばして観察でき、より精度の高い検査を短時間で行うことが可能になります。また、鎮静剤をご希望されない方には、鼻から挿入する細径の「経鼻内視鏡」もご選択いただけます。経鼻内視鏡は、嘔吐反射がほとんど起こらず、検査中に医師と会話しながら検査を受けられるメリットがあります。
4. 同日検査・予約の利便性など、患者様目線の配慮
当院では、お忙しい方のために胃と大腸の内視鏡検査を同日に行うことが可能です。これにより、事前の準備や通院の負担を一度に済ませることができます。また、女性の患者様にも安心してご来院いただけるよう、女性医師による検査日や、プライバシーに配慮した個室の前処置室・休憩スペースを完備しています。阪急大宮駅から徒歩2分という好立地と、24時間対応のWeb予約システムも、通院の利便性を高めるための工夫です。
胃痛の根本治療と予防 — ピロリ菌除菌と生活習慣の改善
胃カメラ検査で原因が特定された後も、当院では患者様の長期的な健康を守るためのサポートを継続します。
胃痛を根本から解決するピロリ菌除菌療法
胃炎や胃潰瘍、胃がんの主な原因であるピロリ菌が発見された場合は、除菌治療を強く推奨しています。除菌療法は、1種類の胃酸を抑える薬と2種類の抗菌薬を7日間服用するだけの簡単な治療です。一次除菌で除菌が成功する確率は70〜90%と報告されており、もし不成功でも、薬を変えて行う二次除菌まで合わせると90%以上の高い成功率が期待できます。なお、健康保険を適用してピロリ菌の検査や除菌治療を受けるためには、内視鏡検査による確定診断が必須となります。
重要な注意点:除菌後の胃がんリスクと定期的なフォローアップ
ピロリ菌を除菌すれば、胃がんのリスクは1/2〜1/3程度に減少するとされています。しかし、
リスクがゼロになるわけではありません。除菌前に蓄積された胃粘膜へのダメージが残るためです。
また、除菌後に発見される「除菌後胃がん」は、炎症が治まったきれいな粘膜の中に隠れて見つけにくいという特徴があります。このため、たとえ除菌が成功した場合でも、定期的な内視鏡検査によるフォローアップは生涯にわたって不可欠です。当院では、除菌後も患者様の胃の健康を継続的に見守り、万が一の場合でも早期発見・早期治療につなげられるよう、きめ細やかなサポートを提供しています。
まとめ — 食後の胃痛にお悩みの方は、ぜひ当院にご相談ください
「食後の胃痛」は、単なる体のサインではなく、放置することで慢性化したり、より深刻な病気の兆候を見逃すリスクをはらんでいます。
ご自身の胃痛の本当の原因を突き止め、将来の胃がんリスクを予防するためには、胃カメラ検査が最も有効な手段です。
当院では、経験豊富な内視鏡専門医が、最新鋭のシステムと患者様に寄り添った無痛検査(鎮静剤や経鼻内視鏡の選択)を提供することで、苦痛を最小限に抑え、精度の高い検査を実現しています。
胃の不調は、誰にでも起こりうるものです。一人で悩まず、どうぞお気軽にご相談ください。



