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食道静脈瘤
食道静脈瘤とは
食道静脈瘤は、食道の粘膜下に静脈が瘤状に拡張した状態で、その原因の90%が肝硬変症とされています。肝硬変は肝臓が硬くなる病気で、硬くなった肝臓により一部の血液の流れが妨げられ、その結果、食道静脈瘤が発生する一因となります。他にも特発性門脈圧亢進症、肝外門脈閉塞症、Budd-Chiari症候群、日本住血吸虫、心不全によるうっ血肝なども原因となり得ます。
食道静脈瘤はその瘤状の部分が破裂すると吐血を引き起こし、時には致命的な状態となります。破裂のリスクが高い場合、内視鏡での観察が行われ、予防的治療が検討されます。自然経過での破裂率が15-40%と高いため、治療が必要です。
食道静脈瘤は肝硬変患者の約70%に合併し、近年の医療の進歩にもかかわらず、破裂した場合の死亡リスクは約20%と高いため、破裂の危険性がある場合には予防的な治療が必要です。
食道静脈瘤の症状
食道静脈瘤の症状は、静脈瘤自体が無症状ながら、これに関連する肝硬変の症状が現れることがあります。具体的には、手のひらの赤み、胸の血管の浮き出し、疲労感、倦怠感、黄疸が肝硬変による症状として挙げられます。
また、食道静脈瘤が破裂した場合の症状として、吐血や黒い便が挙げられます。これは、食道静脈瘤による消化管出血の結果であり、胸やけ、嚥下障害、腹痛なども発生することがあります。食道静脈瘤はその症状からもわかるように、早期に治療が必要な重篤な病態となります。従って、これらの症状が現れた場合は迅速な医療介入が重要です。
食道静脈瘤の原因
食道静脈瘤および食道胃静脈瘤の原因は、共に「門脈圧亢進症」に起因しています。
食道静脈瘤は、主にB型肝炎やC型肝炎、アルコール、脂肪性肝炎(NASH)などが引き起こす慢性肝炎が進行したことにより、肝臓が肝硬変症と呼ばれる線維化した状態になることが主原因です。この肝硬変によって肝臓が硬くなり、門脈の血液の流れが滞り、門脈の血圧が上昇します。門脈圧亢進症の結果、食道に位置する血管に異常な血流が生じ、血管が腫れ上がり食道静脈瘤が発生します。
一方、食道胃静脈瘤の原因も門脈圧亢進症により引き起こされます。肝硬変によって肝臓の近くの門脈の内圧が高まり、血液が通常の経路を避けて食道や胃の静脈に流れ込むことが主な要因です。この血液の異常な流れにより、本来細かかった血管が太くなりこぶのような組織が形成され、食道胃静脈瘤が形成されます。これらの病態はともに重篤であり、早期の治療が不可欠です。
食道静脈瘤の治療法
食道静脈瘤の治療にはいくつかのアプローチがあります。まず、定期的な胃カメラ検査を行い、食道静脈瘤の状態を確認し、破裂のリスクや太さの増加などをフォローすることが重要です。破裂のリスクが高まった場合は、予防的な治療が必要です。
内視鏡を用いた治療方法には以下のものがあります。
内視鏡的静脈瘤結紮術(Endoscopic variceal ligation:EVL)
胃カメラを使用して、小さな輪ゴムで食道静脈瘤を結紮し、血流を遮断する治療方法です。
内視鏡的静脈瘤硬化療法(Endoscopic injection sclerotherapy:EIS)
胃カメラを使用して、硬化剤と呼ばれる血管を固める薬を注射し、血流を遮断する治療方法です。
緊急の場合、特に出血が起きた場合には緊急内視鏡を行い、出血点を確認した上でピンポイントにEVLによって出血を止めます。その後、全身状態が安定した状態で、待機的にEISLによって静脈瘤を消失させることを目指します。このような治療戦略は、食道静脈瘤の管理と破裂のリスクを最小限に抑えるために重要です。