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放置していませんか?睡眠時無呼吸症候群の最新情報と、命を守るための治療法

  • 執筆者の写真: くりた内科・内視鏡クリニック
    くりた内科・内視鏡クリニック
  • 9月12日
  • 読了時間: 11分
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いびきは、多くの人にとって「うるさい」「迷惑だ」といった単なる寝室の問題と捉えられがちです。しかし、そのいびきが時折止まり、そして再び激しく始まるような場合、それは単なる音の問題ではなく、命に関わる可能性のある深刻な病気、「睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome; SAS)」のサインかもしれません。

この病気は、睡眠中に何度も呼吸が停止したり、浅くなったりする状態を指します。多くの方が疑問に思うのは、「寝ている間の無呼吸は放置しても大丈夫なのか?」という点です。結論から言えば、この病気を放置することは非常に危険です。睡眠時無呼吸症候群は、単なる睡眠の質の低下にとどまらず、心臓、血管、代謝、さらには消化器系など全身に悪影響を及ぼす「全身病」と捉えるべき疾患です。この記事では、その具体的な症状から、見過ごされがちなリスク、そして最新のエビデンスに基づいた効果的な治療法までを詳しく解説し、皆様の健康と命を守るための一歩を踏み出すきっかけを提供します。



もしや私かも?見逃してはいけない睡眠時無呼吸症候群のサイン

睡眠時無呼吸症候群の典型的な症状は、寝ている間と日中、両方に現れます。自覚がない場合でも、家族からの指摘や、日常の些細な不調が重要な手がかりとなることがあります。


夜間の症状

  • いびきと無呼吸の指摘:最も特徴的なのは、大きなイビキです。そして、そのイビキが突然止まり、しばらくの沈黙の後に、まるで窒息しかけたかのように大きな呼吸音やあえぐような呼吸とともに再び始まる、というパターンがよく見られます。家族やパートナーから「息が止まっている」と指摘されたことがある方は、特に注意が必要です。

  • 夜間の頻繁な覚醒:呼吸が止まるたびに脳が酸素不足を感知し、無意識に体を覚醒させて呼吸を再開させます。これにより、熟眠感が得られず、夜中に息苦しさで目が覚めたり、頻繁に目が覚めたりします。

  • 夜間頻尿:睡眠の分断は、夜間のトイレ回数を増やすことにもつながります。熟睡できていないために体が休まらず、膀胱の働きにも影響が出ることがあります。


日中の症状

  • 起床時の不調:質の良い睡眠が取れていないため、朝起きたときに頭痛や頭の重さを感じたり、口が渇いているという症状がよく現れます。

  • 日中の強い眠気と疲労感:睡眠時間は十分に取っているはずなのに、日中に耐えられないほどの眠気に襲われたり、常に疲労感が抜けなかったりします。集中力が低下し、仕事や学業に支障をきたすだけでなく、居眠り運転など重大な事故の原因になる危険性もあります。

  • QOL(生活の質)の低下:これら一連の症状は、気分障害や日常生活の質の低下にもつながります。

これらの症状は、一つひとつは「よくあること」と見過ごされがちです。しかし、複数が当てはまる場合、深刻な疾患が隠れている可能性を疑う必要があります。以下のセルフチェックリストで、ご自身の状態を再確認してみてください。


睡眠時無呼吸症候群 セルフチェックリスト

チェック項目


毎晩、大きないびきをかく 

はい/いいえ

家族に「睡眠中に呼吸が止まっている」と指摘されたことがある 

はい/いいえ

寝ている間に何度も目が覚める、息苦しくて目が覚めることがある 

はい/いいえ

夜間に何度もトイレに起きる 

はい/いいえ

朝起きたときに頭痛や頭の重さを感じることがある 

はい/いいえ

しっかり寝たはずなのに、日中の強い眠気や疲労感が抜けない 

はい/いいえ

会議中や読書中など、静かにしている時にうとうとすることがある

はい/いいえ

運転中に強い眠気を感じることがある 

はい/いいえ

このチェックリストは、読者が自身の症状を客観的に認識し、医療機関への相談を促すための第一歩となります。単なる症状の羅列ではなく、それぞれが個人の生活にどう影響しているかを具体的に感じてもらうことで、行動への動機付けにつながります。



放置すると「全身病」に?睡眠時無呼吸症候群が引き起こす隠れたリスク

「たかがいびき」と軽視されがちな睡眠時無呼吸症候群ですが、その影響は睡眠の質だけにとどまりません。無治療で放置すると、様々な合併症を引き起こし、最終的には生命の危険を高めることが科学的に証明されています。


高血圧・糖尿病との密接な関連性

睡眠時無呼吸症候群の患者様が、高血圧や糖尿病を合併していることは非常に多いです。この関係には、明確な生理学的メカニズムが存在します。睡眠中に呼吸が止まると、体は酸素不足を補うために、交感神経を活性化させます。交感神経は心拍数を上げ、血管を収縮させることで血圧を上昇させます。この無呼吸と覚醒のサイクルが一晩に何百回も繰り返されることで、慢性的な高血圧へと進行していくのです。

特に注目すべきは、降圧薬を服用してもなかなか血圧が下がらない「治療抵抗性高血圧」の患者様の約83%に、睡眠時無呼吸症候群が合併しているという報告です。この事実は、高血圧が改善しない原因が、実は睡眠中の無呼吸にある可能性を示唆しています。表面的な症状(高血圧)を治療するだけでなく、その根本原因(SAS)を特定して治療することが、効果的な血圧管理につながるのです。同様に、交感神経の活性化は血糖値も上昇させるため、糖尿病の発症リスクを高めたり、既存の糖尿病を悪化させたりすることも分かっています。


心筋梗塞や脳卒中のリスク増大

睡眠時無呼吸症候群は、心筋梗塞や脳梗塞といった、生命を脅かす心血管イベントの独立したリスク因子です。睡眠中の断続的な酸素不足と血圧上昇は、血管に恒常的な負担をかけ、動脈硬化を加速させます。

最新の研究では、驚くべき知見が明らかになっています。これまで「経過観察」とされてきた軽症の睡眠時無呼吸症候群であっても、脳梗塞(特にラクナ梗塞)や虚血性心疾患の発症リスクが有意に増加することが示されました。これは、症状が軽くても決して見過ごしてはならないという強力な根拠となります。さらに、この研究では、軽症の段階で適切な治療を開始すれば、心血管イベントの発生を予防できる可能性が、高血圧治療や禁煙に匹敵するほど高いことも示唆されています。この知見は、早期発見・早期治療の重要性を強く裏付けるものです。


見過ごされがちな消化器・その他疾患との関連

睡眠時無呼吸症候群は、内科全体に影響を及ぼす疾患です。

  • GERD(胃食道逆流症)

    無呼吸により胸腔内の圧力が低下すると、胃の内容物が食道に逆流しやすくなり、胸やけや喉の違和感、咳などの症状を引き起こします。夜間に逆流症状が悪化する場合、睡眠時無呼吸症候群が原因である可能性を考慮する必要があります。

  • NAFLD(非アルコール性脂肪肝)

    肥満と睡眠時無呼吸症候群は密接に関連しており、それが非アルコール性脂肪肝の悪化要因にもなります。慢性的な低酸素状態は、肝臓の代謝機能にも悪影響を及ぼすことが知られています。


睡眠時無呼吸症候群と合併症の関連性

合併症

関連性

高血圧

睡眠中の酸素不足と交感神経の活性化により血圧が上昇。特に治療抵抗性高血圧に高率に合併する 

心筋梗塞・脳梗塞

断続的な低酸素と血圧変動が動脈硬化を促進。軽症でも発症リスクが増加する 

糖尿病

交感神経の刺激が血糖値を上昇させ、発症や悪化につながる

不整脈・心不全

心臓への負担が増加し、心房細動などの不整脈や心不全を合併・悪化させる 

胃食道逆流症(GERD)

無呼吸時の胸腔内圧低下により、胃内容物が食道に逆流しやすくなる 

非アルコール性脂肪肝(NAFLD)

肥満との関連が強く、慢性的な低酸素が肝臓の代謝に悪影響を及ぼす 

この表が示すように、睡眠時無呼吸症候群は単一の病気ではなく、他の多くの疾患と深く関わり、それらを悪化させる要因となり得る「全身病」です。



睡眠時無呼吸症候群の診断と治療:最新のエビデンスに基づいたアプローチ

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睡眠時無呼吸症候群の診断と治療は、もはや特別なものではありません。最新の技術と医療体制により、患者様の負担を最小限に抑えながら、効果的なアプローチが可能です。


ステップ1:まずはご自宅でできる「簡易検査」から

当院では、まずご自宅で簡単に行える「簡易検査(アプノモニター)」から診断を進めます。これは、睡眠中の呼吸状態や血液中の酸素濃度などを測定する小さな機器をご自宅に持ち帰り、就寝時に指や鼻の下にセンサーをつけて寝るだけの非侵襲的な検査です。

この検査では、1時間あたりの無呼吸や低呼吸の回数を示す「無呼吸低呼吸指数(Apnea-Hypopnea Index: AHI)」が算出されます。このAHIの数値が診断の第一歩となり、その後の治療方針を決定する上で重要な指標となります。


ステップ2:あなたの状態に合わせた治療法

診断の結果に基づき、患者様の病態や重症度(AHIの数値)に合わせた最適な治療法をご提案します。

  • 生活習慣の改善

    軽症の患者様には、まず生活習慣の改善が推奨されます。特に、肥満は気道を狭くする最大の要因の一つであり、体重の10%の減量でAHIが26%減少したという報告もあります。就寝前の飲酒や睡眠薬の服用は、気道周囲の筋肉を緩め、無呼吸を悪化させるため控えることが重要です。また、仰向けよりも横向きで寝ることで症状が軽減する場合もあります。

  • 口腔内装置(マウスピース)

    主に軽症から中等症の患者様が対象となります。専用のマウスピースを就寝時に装着することで、下顎を前方に固定し、舌が喉の奥に沈み込むのを防ぎ、気道を広げます。

  • CPAP療法(持続陽圧呼吸療法)

    中等症から重症の睡眠時無呼吸症候群に対する「ゴールドスタンダード」とされる治療法です。就寝時に鼻に装着したマスクから、圧力をかけた空気を気道に送り込み、常に気道が開いた状態を保つことで無呼吸を防ぎます。この治療法は、日中の眠気や夜間頻尿といった自覚症状を劇的に改善させるだけでなく、高血圧や心筋梗塞、脳卒中などの合併症リスクを低減する効果も報告されています。


治療法は、患者様のAHIスコアや体格、症状に応じて選択されます。例えば、肥満が主な原因の場合は減量が中心となり、顎の形状が関連する場合はマウスピースが有効です。CPAPはほとんどの重症例に有効ですが、鼻閉などの問題がある場合は手術も検討されることがあります。このように、患者様一人ひとりの状態を正確に把握し、個別に最適な治療プランを提案することが、治療成功の鍵となります。



信頼のかかりつけ医として、当院が選ばれる理由

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睡眠時無呼吸症候群は、全身の健康に影響を及ぼすため、その診断と治療には、単なる睡眠専門家ではない、幅広い専門知識を持つ医師が求められます。

当院は、内科医・消化器専門医としての知見を活かし、睡眠時無呼吸症候群の患者様をトータルでサポートできることが大きな強みです。先述の通り、この病気は高血圧、糖尿病、心不全といった循環器疾患や、胃食道逆流症、肝機能障害などの消化器疾患とも深く関連しています。当院では、これら合併症のリスクも同時に評価・管理できるため、患者様は複数の専門医を巡る手間を省き、一貫した質の高い医療を受けることができます。

当院は、簡易検査からCPAP治療の導入、そして長期的なフォローアップまで、ワンストップで対応可能です。特に、CPAP治療は長期的な継続が重要となるため、通い慣れた「かかりつけ医」として信頼関係を築きながら治療を進められることは、患者様にとって大きな安心につながります。


ご相談から治療までの流れ

当院での診療は、患者様の不安を和らげ、スムーズな治療開始を促すよう配慮して行われます。

  1. 診察・問診:まずは、いびきや日中の眠気など、気になる症状について詳しくお話を伺います。

  2. 自宅での簡易検査:検査機器をお渡しし、ご自宅で一晩装着していただきます。

  3. 結果のご説明と治療方針のご提案:約2週間後に結果をご説明し、AHIの数値に基づき、CPAP療法、マウスピース、生活習慣改善など最適な治療法を一緒に検討します。

  4. 治療開始と定期的なサポート:治療を開始された後も、定期的な診察を通じて、治療の効果や合併症の状態を継続的にサポートさせていただきます。

この明確なプロセスは、患者様が「次に何をすべきか」を具体的にイメージし、受診への心理的なハードルを下げることを目的としています。



深刻なリスクは「早期発見・早期治療」で防げます

いびきや日中の眠気は、単なる疲れや体質の問題ではありません。それは、睡眠時無呼吸症候群という全身に影響を及ぼす病気のサインである可能性が高く、放置すれば、命に関わる深刻な合併症を引き起こすことが最新のエビデンスで明らかになっています。

しかし、この病気は決して不治の病ではありません。早期に発見し、適切な治療を開始すれば、症状は劇的に改善し、心血管疾患などのリスクを大幅に低減できます。

「もしかして自分も?」と感じた方は、決して一人で悩まず、お気軽にご相談ください。私たち、くりた内科・内視鏡クリニックは、皆様の健康を全身から守るため、睡眠時無呼吸症候群の診断から治療までを専門的な知見と温かいサポートで提供いたします。


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