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お腹がギュルギュル鳴って下痢が続く…考えられる原因と正しい対処法を医師が解説

  • 高田 平和医療
  • 4月9日
  • 読了時間: 6分

はじめに:お腹の音と下痢、関係あるの?

お腹がギュルギュルと鳴っているとき、私たちは「お腹がすいているのかな?」と軽く考えてしまうことがあります。しかし、空腹以外にも、お腹の音にはさまざまな意味が隠されており、時には体からの重要なサインである場合もあるのです。

とくに「ギュルギュルと音がして、そのあと下痢になる」「毎日のように腸が鳴る」といった場合には、腸内環境の乱れや、消化機能に異常が生じている可能性も否定できません。本記事では、お腹の音と下痢の関連性を医学的にひも解きながら、考えられる疾患や対処法、予防策まで丁寧に解説していきます。



なぜお腹が鳴るのか?腸の仕組みを理解しよう

私たちのお腹の中では、食後や空腹時を問わず、常に腸の動き(ぜん動運動)が働いています。この動きによって、食べ物が胃から小腸、大腸へと運ばれていきますが、その際に空気や液体が一緒に流れていくことによって、音が生じるのです。

ギュルギュルという音は、腸内でガスや液体が移動している際の音であり、医学的には「腸雑音」とも呼ばれます。空腹時に胃腸の活動が活発になると、この音が強く聞こえることがありますが、消化不良や腸内の異常がある場合も、音が大きくなったり、頻度が増えたりする傾向があります。



お腹が鳴って、そのあと下痢になるときに疑うべきこと

急性の胃腸炎(ウイルス・細菌)

突然の下痢とともに、お腹が盛んに鳴るようになった場合には、ウイルス性や細菌性の急性胃腸炎が疑われます。ノロウイルスやロタウイルス、サルモネラ菌などが原因となることが多く、体が病原体を排出しようとして腸の動きが過剰になっている状態です。

このとき、ギュルギュルという音は腸が必死に排出作業をしている証拠でもあり、下痢はその結果として起こります。腹痛や吐き気、発熱を伴うこともあるため、症状が強い場合はすぐに受診が必要です。


過敏性腸症候群(IBS)

長期間にわたって、ストレスや緊張の場面で「お腹が鳴る」「下痢になる」といった症状が繰り返される場合、過敏性腸症候群(IBS)の可能性があります。これは腸の機能に異常があるにもかかわらず、内視鏡などの検査では異常が見られない機能性疾患の一つです。

特にIBSの「下痢型」では、緊張やプレッシャーを感じると腸が過剰に動いてしまい、その結果として音が鳴り、下痢が起こるという特徴があります。20代〜40代の働き盛りの世代に多く、女性よりも男性に多く見られる傾向です。



食事と腸内環境の関係|食べ物が影響することも

腸の動きは、食べ物の内容によって大きく左右されます。たとえば、脂っこいものや刺激の強い香辛料、冷たい飲み物などは腸の活動を活発にさせ、腸内にガスがたまりやすくなることで音や下痢の原因になります。

また、**乳製品に含まれる乳糖がうまく分解できない「乳糖不耐症」**の方は、牛乳やヨーグルトなどを摂取したあとに腹部膨満感や下痢が起こりやすくなります。体質に合わない食品を継続的に摂っていると、腸内環境が悪化しやすくなり、「ギュルギュル+下痢」が日常化する原因となってしまいます。



ストレスが腸に及ぼす影響とは?

腸は「第二の脳」と呼ばれるほど、自律神経との関係が深い臓器です。強いストレスを受けたとき、脳と腸は神経ネットワークを通じて反応し合い、腸の動きを過剰にしてしまうことがあります。

このとき、交感神経と副交感神経のバランスが乱れ、胃腸の働きが不安定になり、お腹の音が大きくなると同時に、便が緩くなるといった症状が現れます。プレッシャーのかかる場面や緊張する前に下痢になる方は、こうしたストレスによる腸の過敏反応が関係している可能性が高いです。



水分不足と冷えによる腸のトラブル

意外と見落とされがちなのが、水分不足と体の冷えです。水分が足りないと腸内の便が硬くなる一方で、腸の動きは不安定になりやすく、腸内ガスの発生が増えることがあります。また、冷えによって腸の血流が悪化すると、けいれん的に動くことでギュルギュルという音が鳴りやすくなることがあります。

冷たい飲み物や冷房の効いた室内での長時間滞在なども、腸の調子を乱す原因になりやすいため、季節を問わず体を冷やさない工夫が必要です。



いつ受診すべき?症状が続くときの見極め

「お腹の音が気になるだけ」「少し下痢っぽいかな」と感じる程度であれば、数日間の様子見でも問題ないことが多いですが、以下のような場合には早めに医療機関の受診を検討しましょう。

  • 下痢が1週間以上続いている

  • 音が毎日激しく、日常生活に支障をきたしている

  • 便に血が混じっている

  • 体重が急激に減少している

  • 発熱や嘔吐を伴う

これらの症状がある場合は、感染症や炎症性腸疾患、内視鏡検査が必要な腸の疾患が隠れている可能性もあります。



日常でできる対策:整腸とストレスケア

まずは腸を休ませることが第一です。脂っこい食事や乳製品、アルコール、カフェインなどは一時的に控え、白粥やうどん、野菜スープなど消化にやさしい食事を心がけましょう。

また、整腸剤や乳酸菌サプリメントを取り入れて腸内フローラのバランスを整えるのも効果的です。さらに、適度な運動、睡眠の質を高めること、趣味の時間を取ることなども、ストレスを軽減し腸の安定につながる要素です。



繰り返す下痢に潜む慢性疾患とは?

繰り返す下痢の背景には、以下のような疾患が潜んでいることもあります。

  • 潰瘍性大腸炎やクローン病などの炎症性腸疾患

  • 大腸がんやポリープなどの器質的疾患

  • バセドウ病などの内分泌異常

  • セリアック病などの食物アレルギー

こうした病気は、早期の段階では「下痢が多い」「お腹が鳴る」といった軽い症状だけで始まることもあります。症状が長引く、または悪化する傾向があるときは、専門医による検査を受けることで安心と確かな診断を得ることができます。



まとめ:お腹の音は“腸からのメッセージ”

お腹がギュルギュル鳴って、下痢が続く──。このような状態は、単なる消化不良や食べ過ぎではなく、腸が何らかの異常を訴えているサインかもしれません。

食生活の見直し、ストレスのコントロール、適度な運動と水分補給という基本的なセルフケアを徹底することが、腸の健康を守る第一歩になります。そして、症状が改善しない、あるいは生活に支障をきたす場合には、ためらわず医師の診察を受けましょう。

音に耳を澄ますことで、体の声が聞こえてくる──それが、健康への近道となるのです。


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