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アニサキスの症状とは

 

1. はじめに:アニサキス症とは

アニサキスとは?

アニサキスは、イルカやクジラなど海獣を終宿主とする線虫という2-3cm程度の長さで白色の糸状の寄生虫です。その幼虫はイワシ、アジ、スルメイカ、サンマなど多くの回遊魚に寄生し、さらにこれらを餌とするサバやタラなどにも高頻度で認めます。アニサキス幼虫の寄生した魚介類を生食しますとその幼虫がヒトの胃や腸の粘膜に穿入し、アニサキス症を引き起こします。アニサキス症は、食道から大腸までのどの部位にでも起こり得ます。

 

アニサキス症の概要と感染経路

アニサキス症には胃アニサキス症と腸アニサキス症に分けられ、感作の有無で緩和型と劇症型に分けられます。初めて寄生した場合は緩和型で、異物反応のみで症状はごく軽微なものです。一方劇症型は、以前にアニサキスが寄生した過去があり、既に感作されていますので1型アレルギーに起因する激しい腹痛が生じます。

感染経路は経口感染となり、前述のアニサキス幼虫の寄生した魚介類を生食しますとその幼虫が胃や腸の粘膜に穿入し、アニサキス症を引き起こします。

魚介類を生食する日本では、その発症数は年間数千人から1万人ともいわれています。


 

 

2. アニサキス症の症状

胃アニサキス症の症状

胃アニサキス症は摂食後約2~8時間以内に発症し、周期性の激しい心窩部痛をきたし、悪心・嘔吐を約半数に認めます。アニサキス症が原因でアナフィラキシーや蕁麻疹をきたす場合もあり、注意が必要です。

 

腸アニサキス症の症状

腸アニサキス症は小腸アニサキス症と大腸アニサキス症に分類されます。小腸アニサキス症は、摂取数時間~数日後に腹痛および悪心・嘔吐や腹部膨満感などの腸閉塞症状を示すことが多いです。虫体が刺入した部位で粘膜下層を中心に好酸球の浸潤を伴う著明な浮腫が起こり、腸管壁が正常の3~5倍に肥厚して管腔が狭窄するため症状が出るとされています。

大腸アニサキス症は、摂取1~7日後に腹痛を起こすことが多く、下痢はみられますが、悪心・嘔吐は少ないです。

 

下腹部の激しい痛み

アニサキス症は、下腹部に激しい痛みを引き起こすことがあります。特に腸アニサキス症では、アニサキスが腸に食いつくことで経口感染後、十数時間から数日後に強い下腹部痛が現れることがあります。この痛みは、他の消化器症状とともに非常に苦しいものになることが多く、場合によっては入院や手術が必要になることがあります。


腹膜炎の症状

腹膜炎は、アニサキスが消化管を突き破り腹腔へと進入した場合に発生する可能性のある合併症です。このような状態においては、腹部の激痛、発熱、嘔吐などの症状が現れることがあります。腹膜炎は非常に危険な状態であり、早期の医療介入が必要です。


急性症状の進行と注意点

アニサキス症による急性症状は、感染後数時間から数日以内に現れることが一般的です。このような急激な症状の進行は、原因がアニサキスであると特定されなくても注意を要します。特に、過去に魚介類を摂取した経験がある患者が突然の腹部痛や消化器症状を訴えた場合、アニサキス感染の可能性を考慮に入れ、迅速に医療機関を受診することが推奨されます。アニサキスの症状は自然に軽減することもありますが、重篤な場合は医療による対応が必要です。


 

3. アニサキス症の診断

本症の診断には、魚やイカなどの生食の有無に関する詳しい問診が最も大切となります。大部分を占める病歴と症状で胃アニサキス症を疑えば、上部内視鏡検査を施行し、胃壁に刺入するアニサキスを発見することで診断できます。小腸アニサキス症は、腹部超音波検査やCT検査で、①限局性全周性の小腸壁肥厚と内腔の狭小化、②口側の小腸の拡張と鏡面形成を伴う液体貯留、③腹水、などがあれば疑うことが可能ですが、その確定診断は難しいことが多いです。大腸アニサキス症は、腹部超音波検査やCT検査で限局性大腸壁肥厚や大腸重積がみられることが多く、時に腫瘤像がみられます。大腸カメラで刺入した虫体や粘膜下腫瘍がみられて診断がつくことが多いです。

内視鏡診断困難例では、補助診断として抗アニサキス抗体のペア血清の測定を行いますが、発症直後は陰性のことも多いです。

 

診断のための検査方法

アニサキス症の診断のためには、まずは胃アニサキス症を疑いますので胃カメラ検査は必須となります。これでアニサキス虫体を認めればその場で摘出できますし、虫体を認めなければ腸アニサキス症を疑うことに繋がります。

 

 

4. アニサキス症の治療法

胃アニサキス症の治療法 

治療は内視鏡を使った処置となり、胃カメラによる鉗子で虫体を摘出することで終了しますが、胃炎が強い場合は合わせて胃薬を数日間投与します。

 

腸アニサキス症の治療

小腸に寄生した場合はイレウス症状を呈しますので、開腹手術を受けることになってしまう場合もあります。病歴をよく聞いて診断することが肝要で、腸アニサキスの特徴として1)海産魚の生食後短時間に発症、2)急激な腹痛とBlumberg徴候陽性および炎症反応陽性と、これらの所見の短時間の正常化、3)腹部超音波やCT検査で腸管の浮腫性病変を一過性に認める、などがありますので、これらを知っておくと通常は保存的治療により1週間以内に軽快しますので手術の必要はありません。

最近の新しいアニサキス症の治療法として、抗アレルギー剤とステロイド剤の併用で症状が速やかに改善することも多いです。

 

自宅でできる対策

過去においては,魚介類の刺身等と一緒に摂取する可能性のある調味料等を中心に,アニサキス幼虫の人体内における感染能力の減弱あるいは致死的効果について検討されています。特にシソやショウガについてはその抽出成分にアニサキス幼虫に対する致死効果が期待できるとの報告があります。また、アニサキス幼虫に対するアルコール類の致死的効果についても検討されており、アルコール濃度の高い日本酒が有用という報告があります。

 

 

5. アニサキス症の予防

アニサキス症を防ぐための食事管理

本症の発生予防には海産魚介類の生食を避けることが最も有効ですが、我々日本人は昔から動物性蛋白源を海産魚介類に依存しており、特に魚介類の刺身などを好む習慣がありますので生食習慣の改善は困難です。

 

魚介類の生食に関する注意点

冷凍や加熱による予防法

魚介類を-20℃で24時間以上冷凍する、あるいは60℃以上で1分以上加熱することでアニサキス幼虫は感染性を失うとされます。生食の際にはきちんと冷凍処理をしたものを解凍してお召し上がりください。家庭用冷凍庫では-20℃にはなりませんので、冷凍保存のみではアニサキスの感染力は残っていますのでご注意ください。

 

 

6. よくある質問(FAQ)

Q.アニサキス症の予防策は?

→魚介類の生食を避けることが一番の予防方法です。

 

Q.もしアニサキスに感染した場合、どれくらいで回復するか?

劇症型の場合は激しい腹痛を伴います。内視鏡で虫体を摘出しないと治まらないことも多く、絶食の状態で早めに当クリニックを受診し、胃カメラ検査を受けてください。虫体を摘出すると速やかに症状は改善します。

緩和型の場合は症状に乏しく、たまたま健診の胃カメラで胃内にアニサキス虫体が見つかることもあります。

 

Q.魚の生食を安全に楽しむためには?

新鮮な魚を選びましょう。丸ごと1匹で購入した際は速やかに内臓を取り除いてください。家庭用の冷凍庫では-20℃にはなりません。不十分な温度で冷凍した魚介類を生食しないようにご注意ください。また、アニサキスは魚介類の内臓に寄生していますので内臓を生で食べないようにしてください。

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