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「胃が重い」―それは単なる食べ過ぎ?見過ごされがちな身体のサイン

  • 執筆者の写真: くりた内科・内視鏡クリニック
    くりた内科・内視鏡クリニック
  • 9月10日
  • 読了時間: 10分
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「なんだか胃が重い」「食後にもたれる感じが続く」――そのような不快感を覚えたとき、多くの人が「食べ過ぎたかな」「疲れているせいだろう」と軽く考えてしまいがちです。たしかに、暴飲暴食やストレスが原因で一時的に胃の調子が悪くなることは、誰しもが経験するごく一般的なことです。しかし、その「胃が重い」という感覚は、単なる不快感ではなく、身体が発している重要なメッセージである可能性も秘めています。

この記事では、「胃が重い」と感じる原因を、日常的なものから、その裏に潜むかもしれない病気まで、エビデンスに基づいて詳しく解説します。そして、ご自身の身体からのサインを正しく読み解き、必要に応じて専門家へ相談する道筋を明らかにします。


胃が重いと感じる、そのメカニズムと身近な原因

胃もたれの正体と生理学的メカニズム

「胃が重い」「もたれる」という感覚は、医学的には「消化不良」の一種であり、食物が胃に停滞しているために生じます。胃は、食べたものを胃酸と消化酵素で分解し、蠕動運動と呼ばれる収縮運動によって少しずつ十二指腸へ送り出す働きを担っています。この蠕動運動が何らかの原因で低下したり、食物の分解に時間がかかったりすると、胃の内容物が長時間とどまり、その物理的な重さや不快感が「もたれ感」として自覚されるのです。

この生理学的なメカニズムを理解すると、日常生活に潜むさまざまな原因が、なぜ胃もたれを引き起こすのかが明らかになります。


日常生活に潜む一般的な原因

胃もたれの原因は、必ずしも病気に限りません。多くの場合、以下のような身近な要因が関わっています。

  • 暴飲暴食・高脂肪食: 脂肪分やタンパク質を多く含む食事は、消化に非常に時間がかかります。胃に大きな負担がかかり、消化が追いつかなくなることで、胃もたれの症状が現れます。

  • 加齢による胃機能の低下: 年齢を重ねると、消化に必要な蠕動運動を行う筋力が低下します。その結果、これまでと同じ量の食事でも、消化に時間がかかりやすくなり、胃もたれを感じることがあります。

  • ストレスと自律神経の乱れ: 胃の働きは、自律神経によってコントロールされています。過度なストレスは自律神経のバランスを崩し、胃の蠕動運動や消化液の分泌を妨げます。これが、食欲不振や胃もたれといった症状につながる「ストレス性胃腸炎」の背景にあると考えられています。

  • 不規則な食生活・睡眠不足: 食事のリズムが乱れると、胃は適切なタイミングで働くことができません。特に、就寝直前の食事は、睡眠中に消化機能が低下するため、胃に長時間内容物が残り、翌朝の胃もたれを引き起こす原因となります。


「単なる不調」では片付けられない、胃もたれの裏に潜む病気

軽度の胃もたれであれば、食生活や生活習慣の改善で症状が和らぐことが多いです。しかし、一時的ではない、慢性的な胃もたれは、その裏に何らかの病気が隠れているサインかもしれません。特に注意が必要な、以下のような消化器疾患について解説します。


胃もたれの裏に潜む消化器疾患

機能性ディスペプシア(FD)

「胃の不調で胃カメラ検査をしても、特に異常が見つからなかった」と言われたことはありませんか?その場合、最も考えられるのが「機能性ディスペプシア(FD)」です。FDは、胃もたれや早期満腹感、みぞおちの痛みや灼熱感といった症状が続いているにもかかわらず、内視鏡検査やその他の精密検査で症状の原因となる潰瘍やがんなどの「器質的疾患」が認められない場合に診断されます。

FDの診断は、症状の存在と、他の病気の除外によってなされる点が非常に重要です。つまり、症状だけで自己判断することはできません。胃もたれの原因がFDであると結論づけるためには、胃カメラ検査で胃の中を詳細に観察し、潰瘍やがんなどの病変が本当に存在しないことを専門医が確認する必要があるのです。これにより、見過ごされがちな病気を確実に見つけ出すことができます。


慢性胃炎・胃潰瘍

  • 慢性胃炎: 胃の粘膜が炎症を起こしている状態です。症状がない場合もありますが、食後の胃の膨満感、吐き気、みぞおちの痛みなどを引き起こすことがあります。慢性胃炎の多くは、後述するピロリ菌感染が原因で引き起こされます。

  • 胃潰瘍: 胃の粘膜が胃酸によって深く傷つき、くぼみ状の病変(潰瘍)が生じた状態です。胃は通常、胃粘液で自らを守っていますが、この防御機能と攻撃機能である胃酸のバランスが崩れることで発生します。重症化すると、潰瘍から出血したり、胃壁に穴が開く「穿孔(せんこう)」を起こし、緊急手術が必要になることもあります。

慢性胃炎が進行し、放置されると胃潰瘍へ移行するケースも少なくありません。一見軽症に見える症状であっても、その背景には進行性の病態が潜んでいる可能性があるため、継続的な胃の不調は放置すべきではないのです。


胃がん

胃がんの最も恐ろしい点は、初期段階ではほとんど自覚症状がないか、胃もたれ、胸やけ、みぞおちの痛みなど、他の良性の胃の病気と見分けがつかない症状しか現れないことです。自覚症状に頼って医療機関を受診したときには、すでにがんが進行している可能性があるのです。

この「沈黙の脅威」を早期に発見するためには、症状の有無にかかわらず、定期的に胃の内部を直接観察する内視鏡検査が不可欠です。バリウム検査のような間接的な検査では見落とされやすい微細な病変も、内視鏡であれば高精度に捉えることが可能です。

以下に、症状の重複と鑑別の難しさを示す表をまとめます。

症状

機能性ディスペプシア(FD)

慢性胃炎

胃潰瘍

胃がん

胃もたれ感

みぞおちの痛み

吐き気・食欲不振

早期満腹感

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-

黒色便・吐血

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※あくまで一般的な症状であり、全てのケースに当てはまるものではありません。


隠れた真犯人「ピロリ菌」とは?

「胃が重い」症状の背景に潜む、もう一つの重要な要因が「ヘリコバクター・ピロリ菌」です。この細菌は、幼少期に感染し、胃の粘膜に長期間にわたって生息します。


胃もたれとピロリ菌の深い関係

ピロリ菌は、胃の防御機能と攻撃機能のバランスを崩し、慢性胃炎や胃・十二指腸潰瘍の主要な原因となります 4。これらの病気の症状として、胃もたれが現れることがあります。さらに重要なのは、ピロリ菌が胃がんの最大の原因であることが明らかになっている点です 。

しかし、ピロリ菌感染は「予防可能なリスク因子」です。検査によって感染の有無を調べ、もし陽性であれば除菌治療を行うことで、将来の胃がんリスクを大幅に下げることが期待できます 。


検査と治療の重要性

ピロリ菌の検査には、呼気(吐く息)を調べる方法、血液や便を調べる方法などがあります。しかし、最も確実なのは、胃カメラ検査で胃の粘膜を直接採取し、ピロリ菌の有無を調べる方法です。これであれば、胃の状態を観察しながら、同時にピロリ菌検査も行うことができます。

除菌治療は、通常、「胃酸の分泌を抑える薬」1種類と「抗菌薬」2種類の合計3種類の薬を7日間服用する治療法です 。正しい服用方法を守れば、高い成功率が期待できます。ピロリ菌を除菌することで、胃もたれの症状が改善するだけでなく、慢性胃炎や胃潰瘍、そして最も懸念される胃がんのリスクを低減することができます。


症状が続くなら、専門家への相談を―「胃カメラ検査」の重要性

受診のタイミング

以下のような症状が続く場合は、単なる不調と軽視せず、速やかに消化器専門医を受診することをお勧めします。

  • 胃もたれが数週間以上続く場合

  • 市販薬を服用しても症状が改善しない場合

  • 強い腹痛や吐き気、嘔吐を伴う場合

  • 便が黒い、または吐血を伴う場合


なぜ「胃カメラ検査」が最適な選択肢なのか

「胃カメラは辛い」「できれば避けたい」と考える方も多いかもしれません。しかし、胃カメラ検査は胃の不調を正確に診断し、適切な治療へとつなげるための最も確実な方法です。

  • 直接観察による正確な診断: 胃カメラ検査は、食道、胃、十二指腸の粘膜を医師が直接、鮮明な映像で観察できます。これにより、わずかな炎症や初期のがんなど、肉眼でしか判別できない微細な病変も見つけることが可能です。

  • 精密検査と治療の同時実施: 検査中に疑わしい組織が見つかれば、その場で組織を採取し(生検)、病理検査を行うことができます。また、出血している場所が見つかった場合には、その場で止血処置を行うことも可能です。


くりた内科・内視鏡クリニックが選ばれる理由―安心・苦痛の少ない内視鏡検査|院長・栗田 亮の紹介―豊富な経験と確かな技術


当院院長の栗田 亮は、京都大学で医学博士号を取得し、その後、京都大学医学部附属病院、田附興風会医学研究所北野病院、洛和会音羽病院など、数々の基幹病院で消化器内科医として研鑽を積んでまいりました。

日本内科学会 認定内科医、日本消化器病学会 専門医・指導医、そして日本消化器内視鏡学会 専門医・指導医といった、最高レベルの専門資格を保有しており、消化器医療の専門家として質の高い診療を提供しています。


患者様の不安に寄り添う、当院の「無痛内視鏡検査」

当院では、「内視鏡検査は苦しい」というイメージを払拭するため、患者様の負担を最小限に抑えることを最も重視しています。

  • 鎮静剤の使用: 多くの患者様が不安を感じる「オエッ」となる吐き気や、検査中の不快感を軽減するため、ご希望に応じて鎮静剤を使用し、ほとんど眠っているのと同じ状態で検査を受けていただくことが可能です。

  • 最新の内視鏡システム: 最新鋭の内視鏡システムを導入しており、高精度な画像で食道や胃の粘膜をくまなく観察し、わずかな病変も見逃さないよう努めています。

  • ポリープのその場での切除: 大腸内視鏡検査でポリープが発見された場合、その場で切除することが可能です。これにより、後日改めて手術を受ける必要がなくなり、患者様の負担を大幅に軽減できます。

当院の「苦痛の少ない内視鏡検査」は、多くの患者様に「こんなに楽だとは思わなかった」とのお言葉をいただいております。


くりた内科・内視鏡クリニックの内視鏡検査の特長

  • 経験豊富な内視鏡専門医による、質の高い検査

  • 鎮静剤の使用による、ほとんど苦痛のない検査

  • 最新鋭の内視鏡システムを用いた、高精度な診断

  • 患者様の希望に応じた、経鼻・経口内視鏡の選択

  • 大腸ポリープのその場での切除


今日から始める胃のケア―胃に優しい生活習慣と食事のヒント

最後に、胃の不調を予防し、健康な状態を保つための具体的なヒントをご紹介します。


胃に優しい食事のとり方

  • 腹八分目を心がける: 食べ過ぎは胃に最も大きな負担をかけます。常に「腹八分目」を意識し、よく噛んでゆっくり食べることで、少量でも満腹感を得られます。

  • 食事の時間を守る: 毎日決まった時間に食事をとることで、胃腸の働きが安定します。就寝の3時間前までに夕食を済ませるのが理想的です。

  • 消化の良い食材を選ぶ: 油っこいものや香辛料の多い刺激物は避け、おかゆ、うどん、白身魚、豆腐、キャベツ、大根、生姜、ヨーグルトなど、消化の良い食品を積極的に取り入れましょう。


胃の健康を守る生活習慣

  • ストレスをためない: ストレスは胃の機能に直接影響を与えます。適度な運動や十分な睡眠時間を確保し、ストレスを上手に解消することが重要です。

  • 食後の「食休み」: 食後すぐに激しい運動や作業をすると、消化のための血流が妨げられます。食後に15〜30分ほどゆったりと座って過ごすことで、胃の消化を助けることができます。


胃の不調は、身体からの大切なメッセージ

「胃が重い」という症状は、日常生活の乱れからくる一時的なサインであることもあれば、胃がんや胃潰瘍といった、決して見過ごしてはいけない病気のサインであることもあります。症状だけでその原因を特定することは非常に困難です。

「たかが胃もたれ」と自己判断して放置せず、その症状が長期間続く場合は、身体からの「しっかり見てほしい」というメッセージだと捉え、専門家へご相談ください。

くりた内科・内視鏡クリニックは、消化器内視鏡の専門家として、皆様の胃の悩みに真摯に向き合い、安心と納得の医療を提供いたします。

胃の不調でお悩みの方は、いつでもお気軽にご相談ください。

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