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「歳のせい」は危険なサイン。休んでも治らない【慢性的なだるさ】に潜む、がん・心不全の真実

  • 執筆者の写真: くりた内科・内視鏡クリニック
    くりた内科・内視鏡クリニック
  • 11月13日
  • 読了時間: 18分
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プロローグ あなたの「だるさ」は、ただの疲れですか?—


30 代から 60 代にかけての働き盛りの世代は、仕事、家庭、育児、介護といった多様な責任を負い、慢性的なストレスと疲労が日常の一部となりがちです。20 代から 60代の男女の約 8 割が「なんとなく不調」を感じているという調査結果もあります。こうした多忙な生活の中で、「体がだるい」「やる気が出ない」といった全身倦怠感を、単なる「歳のせい」や「ストレスのせい」として片付けてしまう方は少なくありません。


しかし、全身倦怠感(General Malaise)は、内科医がプライマリ・ケアの現場で遭遇する主訴として非常に頻度が高く、報告によっては受診者の 20〜30%にのぼるとされます。この症状は非特異的であるがゆえに、その裏に治療すれば改善するものから、命に関わる重篤な疾患まで、幅広い原因が潜んでいる可能性があります。


医学的に倦怠感を捉える際、「疲労 (Fatigue)」と「倦怠感 (Malaise)」は区別されます。疲労は「日常生活の遂行に十分なエネルギーが明らかに不足し、全身的に弱くなった状態」を指し、倦怠感はより漠然とした「全身的な不快感、だるさ、元気がない」という訴えを意味します。特に休息をとっても回復しない、あるいは日常生活の質(QOL)を著しく低下させている倦怠感は、医師による精密な診断が必要です。


本レポートでは、多忙な 30 代から 60 代の患者様を対象に、そのだるさが「単なる生理的疲労」なのか、それとも「隠れた病気のサイン」なのかを見極めるための、内科専門医による診断の羅針盤を提供します。当クリニックでは、総合内科としての幅広い鑑別能力と、消化器内視鏡専門医としての精密な診断技術を融合させ、患者様の倦怠感の根本原因を追求し、適切な治療へと導きます。




その「だるい」はなぜ続く?〜診断プロセスと器質的疾患・心因性疾患の分水嶺


全身倦怠感の診断プロセスにおいて、患者様の背景情報、病歴、身体所見、および適切な検査計画を組み立てることが基盤となります。診断の鍵は、患者様の訴えの「質」と「経過」を正確に評価することです。



医師が問う三つの重要な質問


内科医は全身倦怠感を訴える患者様に対し、以下の 3 点について深く掘り下げた問診を行います。


質問 1:いつから、どのように始まりましたか?(経過と罹病期間)

倦怠感の罹病期間は、鑑別疾患の優先順位を決定する上で極めて重要です。


  • 急性発症(1 ヶ月以内)

    症状が急激に発現した場合、まず感染症をはじめとした、緊急性の高い器質的疾患(身体疾患)を最優先で考慮し、早期の除外診断を目指します。


  •  亜急性〜慢性経過(1 ヶ月以上)

    多くの慢性疾患(心疾患、内分泌疾患、膠原病、血液腫瘍など)や、精神疾患、薬剤使用、中毒などが鑑別にあがります。罹病期間が長くなればなるほど、器質的疾患の可能性は相対的に下がるとする報告もあります。


  • 慢性から急性への変化

    最も注意が必要なのは、長期間倦怠感を抱えていた患者様が、普段とは異なる急性の症状(例:強い嘔吐、急激な脱力、顔色の悪さなど)を訴え始めた場合です。これは、単なる慢性疲労ではなく、基礎疾患の急性増悪や、新たな器質的疾患(例:感染症を契機とした副腎不全など)が発症したサインである可能性が高く、直ちに精査が必要です。この「いつもと違う」という症状の質の変化や、家族からの訴えは、診断を左右する決定的な情報となることがあります。


質問 2:だるさの性質を明確に表現できますか?

患者様の訴えの具体的な性質は、心因性と器質的疾患を見極める重要な情報です。 


  • 心因性を疑う訴え

    「なんとなくだるい」「気力が出ない」「朝方が特にひどい」といった漠然とした訴えは、心因性疾患(うつ病、不安神経症、適応障害など)の可能性が高くなります。


  •  器質的疾患を疑う訴え

    「労作時の息切れを伴う」「休息で一時的に改善するが、動くと再度ひどくなる」といった明確なエピソードや身体症状を伴う場合、貧血、心不全、呼吸器疾患など、身体的な問題が根底にある可能性が高まります。


質問 3:生活リズムや服薬状況はどうですか?

患者様の日常生活と服薬歴は、疾患の検査前確率を変える重要な情報です。


  • 生活歴と環境

    不眠症や睡眠時無呼吸症候群といった睡眠障害の有無、過量飲酒、過労やストレスの存在を丁寧に聴取します。特に過労やストレスは、患者様自身が自覚していない場合があるため、日常生活リズムや職場の様子を尋ねる方が有用な情報が得られます。


  • 薬剤性倦怠感のトラップ

    常用薬が倦怠感の原因となっているケースは少なくありません。代表的な薬剤として、ベンゾジアゼピン系や非ベンゾジアゼピン系薬剤、抗うつ薬、筋弛緩薬、オピオイド、降圧薬、抗ヒスタミン薬が知られています。特に**降圧薬(サイアザイド系利尿薬など)**は、電解質異常(低ナトリウム血症)を引き起こし、倦怠感や意識障害の原因となりうるため、服薬歴の詳細な確認は必須です。



レッドフラグ:命に関わる「危険なだるさ」を見逃さない


全身倦怠感は単なる疲労のサインであることも多いですが、特定の随伴症状や背景情報がある場合、致死的な疾患の可能性を示す**レッドフラグ(危険なサイン)**として、直ちに医療機関を受診する必要があります。特に多忙な 30 代から 60 代の患者様こそ、このサインを見逃さず、迅速な行動をとることが重要です。


Table 1: 特に注意が必要な「だるさ」に潜む危険なサイン(レッドフラグ)

サイン

具体的な症状や所見

疑われる重篤な疾患例

受診の緊急度

急性変化/経過

症状が急激に悪化、または「いつもと違う」と家族に指摘されるほどの変化

感染性心内膜炎、急性心不全増悪、副腎不全

高(即日・救急受診推奨)

呼吸・循環器症状

労作時の息切れ/呼吸困難、安静時の動悸、下腿浮腫、低酸素血症

慢性心不全、COPD 急性増悪、重度貧血

消耗・炎症症状

2 週間以上続く原因不明の発熱、夜間の寝汗、意図しない急速な体重減少

結核、悪性腫瘍、全身性炎症性疾患

中〜高

神経・内分泌症状

意識レベルの低下(傾眠傾向)、強い嘔気・嘔吐、多飲多尿、強い筋力低下

糖尿病性ケトアシドーシス、重度電解質異常(低Na, 高 Ca)、副腎不全

特殊な既往歴/薬剤歴

出産時の大量出血歴、長期のステロイド使用歴、免疫チェックポイント阻害薬使用歴

Sheehan 症候群、副腎不全

中〜高

これらのサインのうち、バイタルサインの異常(頻脈、低血圧、低酸素血症)や意識障害を伴う場合は、生命維持に関わる問題(呼吸不全、重度電解質異常、重症感染症など)が進行している可能性が高く、速やかな受診が求められます。




深掘り:だるさの裏に潜む三大疾患カテゴリー(内科専門医の視点)


全身倦怠感の原因を特定するため、内科専門医は疾患を以下のカテゴリーに分類し、検査を進めます。


Table 2: 全身倦怠感の主な原因疾患カテゴリーと初期症状

疾患カテゴリー

具体的な疾患例

倦怠感以外の重要な随伴症状

消耗性・悪性腫瘍

悪性腫瘍、血液疾患(貧血)

体重減少、食欲不振、リンパ節腫脹、発熱

感染症・炎症性

結核、感染性心内膜炎、膠原病

発熱、関節痛、皮疹、長期にわたる咽頭痛

代謝・内分泌

甲状腺機能異常、副腎不全、糖尿病

動悸/発汗(亢進)、皮膚乾燥/浮腫(低下)、多飲多尿、低ナトリウム血症

心肺・循環器

慢性心不全、COPD、冠動脈疾患

労作時息切れ、浮腫、心雑音、咳

精神・神経・生活

うつ病、不安障害、睡眠障害、LOH 症候群

意欲低下/希死念慮、不眠/過眠、いらいら、眠気(日中)

薬剤・中毒

降圧薬、抗うつ薬、過量飲酒

症状と服薬開始時期の関連性、電解質異常


命に関わる消耗性・炎症性疾患


悪性腫瘍(がん)と慢性感染症

悪性腫瘍は、全身の消耗症状として倦怠感を引き起こす重要な原因の一つです。特に高齢者の場合、倦怠感と発熱、意図しない急速な体重減少を伴う場合、まず悪性疾患を念頭に置く必要があります。

また、感染症の中でも、結核や感染性心内膜炎といった慢性的な疾患は、致死的なリスクを伴いながらも、倦怠感と微熱といった非特異的な症状で経過することがあります。


  • 結核の見逃し回避

    日本は結核の中蔓延国であり、特に高齢者や免疫力が低下した患者様において、2 週間以上続く倦怠感、発熱、寝汗、咳嗽を伴う場合は、一般的な風邪や肺炎だけでなく、肺結核の可能性を常に考慮しなければなりません。ここで注意すべきは、安易な抗菌薬の投与です。ニューキノロン系などの抗菌薬は結核菌に感受性があるため、初期に投与されると症状を一時的に「マスク」し、診断の遅れ(耐性菌発生のリスクも含む)につながる危険性があります。当院では、問診と画像検査、そして必要に応じた喀痰検査を通じて、結核を含めた慢性感染症の早期診断に努めます。


  • 感染性心内膜炎

    高熱と解熱を繰り返し、抗菌薬投与で一時的に軽快しても再燃する場合、心臓弁に細菌の塊(疣贅)が付着する感染性心内膜炎の可能性があります。心雑音の聴取や、過去の歯科治療歴の確認など、身体診察と病歴聴取が診断の鍵となります。


貧血と消化器疾患の関連性(内視鏡クリニックの強み)

貧血は、倦怠感や労作時の息切れの最も一般的な器質的原因の一つです。血液検査で貧血(特に鉄欠乏性貧血)が判明した場合、内科医が次に追求すべきは、**「なぜ貧血が起きたのか」**という根本原因です。


貧血の多くは、胃や大腸からの慢性的な微量出血、すなわち潜在的な消化管出血が原因です。この出血の原因が、胃潰瘍、大腸ポリープ、あるいは早期の消化器がんである可能性を見逃すことは許されません。


くりた内科・内視鏡クリニックでは、倦怠感で受診し貧血が判明した患者様に対し、単に鉄剤を処方するだけでなく、消化器専門医として上下部内視鏡検査を推奨します。内視鏡検査は、倦怠感という症状の奥に隠された、出血源となるポリープやがんを特定し、早期治療に繋げるための最も確実な手段であり、当院が提供できる最大の専門性の一つです。


心不全と腎不全

  • 慢性心不全

    心臓のポンプ機能が低下し、全身の臓器への血液供給(灌流)が不足することで、全身倦怠感が生じます(低心拍出症候群)。倦怠感の程度は心不全の重症度と比例して上昇し、その存在は QOL の低下、再入院、死亡率の増加と関連することが示されています。50 代以降で高血圧や糖尿病の既往がある場合、労作時の息切れや下肢の浮腫を伴う倦怠感は、心不全の急性増悪のサインとして厳重な管理が必要です。


  • 腎不全

    腎機能の低下(尿毒症)も倦怠感を引き起こします。糖尿病や高血圧を基礎疾患に持つ患者様において、倦怠感に加え、口渇や両下肢の浮腫が見られる場合は、糖尿病性腎症などによる腎不全の可能性を考慮します。



見逃しやすい代謝・内分泌疾患(スクリーニングの重要性)


代謝・内分泌系の疾患は、症状が緩徐に進行することが多く、患者様自身が「体質」や「年のせい」と思い込みがちです。また、抑うつ症状や無気力を伴うため、心因性疾患と誤診されやすい点に注意が必要です。


甲状腺機能異常

甲状腺ホルモンは全身の代謝を調節しています。その機能の異常は、倦怠感の主要な原因となります。


  • 甲状腺機能低下症(橋本病など)

    ホルモン不足により代謝が低下し、疲労感、倦怠感に加え、抑うつ症状、記憶力低下、皮膚の乾燥、嗄声(声枯れ)、浮腫などが現れます。特にうつ病の併発頻度は 56%と非常に高く、精神症状と密接に関連しています。


  • 甲状腺機能亢進症(バセドウ病など)

    代謝が亢進し、動悸、発汗、いらいら感、多飲多尿に加え、全身倦怠感を伴います。


甲状腺疾患は、血液検査(TSH と Free T4)で比較的容易に診断が確定できるため、倦怠感を訴える患者様には積極的にスクリーニングを行います。中枢性のめまいや非典型的な神経症状を呈する場合でも、内分泌疾患が鑑別にあがるべきです。


Table 3: 倦怠感を伴う身体疾患におけるうつ病の頻度(内分泌系に焦点)

疾患

うつ病の頻度(%)

倦怠感との関連(内科的見解)

甲状腺機能低下症

56%

代謝低下、疲労感、抑うつ症状が強く現れるため、精神疾患と誤診されやすい

甲状腺機能亢進症

31%

 動悸や不安が強く、神経症状として捉えられがちだが、倦怠感を伴う

Cushing 症候群

54%~66.6%

ステロイド過剰による身体的・精神的症状が複合し、診断が複雑化する

糖尿病

8.5%~27.3%

慢性的な倦怠感に加え、血糖コントロールの悪化や合併症による QOL 低下が精神状態に影響


副腎機能低下症

副腎不全(コルチゾールの不足)は、倦怠感、食欲不振、体重減少、そして低ナトリウム血症を伴う、見逃すと生命の危機に瀕する疾患です。


診断の遅れを防ぐために、以下の特殊な病歴がないかを確認します。


  • 分娩時の大量出血歴: Sheehan 症候群(下垂体機能低下症)を疑うきっかけとなります。


  • ステロイド長期使用歴: 慢性的な外因性ステロイドの使用が急に中断された場合、続発性副腎機能低下症のリスクがあります。


  • 悪性腫瘍や免疫チェックポイント阻害薬の使用歴: これらの背景情報も副腎不全のリスクを高めます。


糖尿病

糖尿病は、倦怠感に加え、口渇、多飲、多尿といった症状を伴います。特に血糖コントロールが極度に悪化し、糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)に陥ると、強い全身倦怠感、嘔吐、脱水症状をきたし、速やかな入院・治療が必要となります。自己流の極端な食事制限やインスリン治療の中止などが契機となることがあり、注意が必要です。



働き盛りの世代特有の疾患と慢性的なだるさ


LOH 症候群(男性更年期障害)

30 代から 60 代の男性に特有の疾患で、加齢や慢性ストレスに伴う男性ホルモン(遊離テストステロン)の低下が原因です。全身倦怠感や疲労感は、LOH 症候群の主たる身体的要素に含まれます。


倦怠感に加え、いらいらや不安感(心理的要素)、性欲低下や勃起不全(性的要素)を伴うのが特徴です。特筆すべきは、LOH 症候群の患者様の 20〜30%が、既に精神科や心療内科の受診歴を持つという事実です。これは、倦怠感や気分の落ち込みが精神疾患として捉えられがちですが、その根底にホルモンバランスや間脳下垂体系の機能低下といった内科的な問題が隠れていることを示唆しています。


睡眠障害(最も多い見逃し原因の一つ)

身体所見や一般的な検査で異常が見つからない場合、次に鑑別を進めるべきは精神疾患、そして睡眠障害です。実際、睡眠の質の低下は全身倦怠感の原因として最も頻度が高いものの一つであり、休息によって回復しない疲労感の原因となります。

患者様は睡眠時の症状と日中の倦怠感を関連づけていないことが多いため、医師による詳細な問診が不可欠です。「夜中に何回起きるか」「寝つくまでに要する時間」「昼寝の有無」「夜間の脚の不快感(むずむず脚症候群)」など、詳細な睡眠習慣の聴取が診断の手がかりとなります。


慢性疲労症候群 (CFS)

器質的疾患、精神疾患、睡眠障害、薬剤性などがすべて除外された上で、6 ヶ月以上持続する強い疲労感が認められる場合、**慢性疲労症候群(CFS)**を考慮します。CFS の疲労感は突然発症し、休息によっても回復せず、発症前の活動度が 50%以下に低下するという特徴があります。CFS の原因は不明な部分が多いものの、感染症や免疫機能の異常などが関与している可能性が指摘されており、確定診断には専門的で慎重な経過観察が必要です。




内科・内視鏡クリニックだからできる精密診断と安心の治療戦略


くりた内科・内視鏡クリニックでは、「体がだるい」という非特異的な主訴に対し、総合内科医としての幅広い鑑別診断能力と、消化器専門医としての精密検査技術を組み合わせて、効率的かつ正確に原因を追究します。



器質的疾患を除外するための初期検査(総合内科の基盤)


倦怠感の診療では、闇雲に特殊な検査を行うのではなく、問診と身体診察に基づき、見逃してはいけない重篤な疾患を確実に除外することが、最も効率的で重要なステップです。

当院では、以下の基本的な検査を組み合わせて、迅速に器質的疾患のスクリーニングを行います。


  • 血液検査: 貧血(血算)、腎機能・電解質異常(低 Na、高 Ca)、血糖値(糖尿病)、肝機能障害、炎症反応(CRP、赤沈)、甲状腺ホルモン(TSH)を網羅的にチェックします。


  • 尿検査: 尿糖や尿ケトン体の有無を確認し、糖尿病性ケトアシドーシスなどの緊急性の高い疾患の可能性を判断します。


  • 妊娠反応: 妊娠可能な年齢の女性の場合、妊娠自体が倦怠感の一般的な原因となりうるため、必ず確認します。


これらの一般的な検査で異常が見つかるのは約 5%にすぎませんが、この 5%にはがんや急性感染症、重度の内分泌疾患といった生命予後に関わる疾患が含まれています。

この初期検査の最大の価値は、異常がないことを確認し、安心して次のステップ(心因性疾患や慢性疲労へのアプローチ)に進むための明確な根拠を提供することにあります。



消化器専門医による「だるさ」の深掘り診断(内視鏡の役割)


血液検査で器質的異常が認められた場合、当院の消化器専門医としての強みが発揮されます。


  • 貧血の原因検索と内視鏡検査

    血液検査で貧血が判明した場合、全身倦怠感の根本原因が消化管からの潜在的な出血にある可能性を深く追求します。胃や大腸からの微細な出血は、自覚症状がないまま貧血を進行させます。当院では、経験豊富な医師による苦痛の少ない上下部内視鏡検査を通じて、食道、胃、大腸における出血源(がん、ポリープ、潰瘍)を特定し、早期に適切な治療を開始することで、倦怠感の根本的な解消を目指します。


  • 肝機能障害の評価

    倦怠感の随伴症状として黄疸や食欲不振が見られる場合、肝炎や肝硬変といった肝疾患が疑われます。腹部超音波検査や詳細なウイルスチェック(B 型・C 型肝炎)を通じて、肝臓の状態を精査し、消化器専門医として継続的な管理を提供します。



漢方薬を活用した多角的な治療戦略


器質的疾患が除外された後、あるいは西洋医学的な治療の支持療法として、漢方薬は倦怠感の改善に有効な選択肢となります。特に、体力や抵抗力が低下した、いわゆる東洋医学でいう「虚証」の患者様に対して、漢方薬は個々の状態に応じた多角的なアプローチを可能にします。


  • 補中益気湯(ほちゅうえっきとう)

    補剤の代表的な方剤であり、「消化管を補い、生命エネルギーを増す」という意味を持ちます。全身倦怠感、気力低下が強く、消化吸収機能の改善が必要な場合に用いられます。がん薬物療法の副作用である倦怠感(CRF)の支持療法としても有効性が報告されています。


  • 十全大補湯(じゅうぜんたいほとう)

    気虚(エネルギー不足)に加えて、血虚(貧血傾向、皮膚乾燥)が著しい場合に用いられます。疲労倦怠感が著しく、顔色不良、皮膚乾燥などを訴える症例に適応されます。


  • 人参養栄湯(にんじんようえいとう)

    十全大補湯に、咳嗽や不安、不眠などの呼吸器・精神症状が加わった場合に適応されます。強い疲労感、食欲不振に加え、不安や不眠を伴う場合に用いられます。


LOH 症候群のように身体的・心理的要素が複合している場合も、身体的症状が中心の患者には補中益気湯、睡眠障害には酸棗仁湯など、症状に応じて漢方を使い分けることで、包括的な改善を目指します。



精神的・心理的要因への配慮と連携


全身倦怠感を訴える患者様の約 75%で、抑うつ症状や不安などの精神症状が認められるとされています。器質的疾患の除外診断が完了した後は、心因性疾患を積極的に鑑別することが重要です。


当院では、うつ病の簡易スクリーニング(例:PHQ-2 など)を行い、気分の落ち込みや趣味・楽しみの欠如がないかを確認します。また、心因性疾患を疑う場合でも、患者様が「気のせい」とされたと感じないよう、丁寧に問診と検査結果を説明し、信頼関係を十分に構築した上で、生活指導や漢方治療を行い、経過をフォローします。自殺企図などの緊急性が高い場合を除き、内科外来で症状をフォローしながら、患者様の自覚に合わせて心療内科や精神科の専門診療科への連携を提案します。




あなたの不安に寄り添う:くりた内科・内視鏡クリニックのコミットメント


倦怠感を抱えるあなたへ、院長からのメッセージ(感情的な訴求)


30 代から 60 代という最も多忙な時期に、ご自身の倦怠感を「忙しさの代償」「休めば治る」と我慢し続けている患者様が多くいらっしゃいます。しかし、その我慢の裏には、早期に発見すれば完全に治療できる疾患や、放置すれば生命に関わる病気が潜んでいる可能性があります。


「忙しいから、病院に行く時間がない」「どうせ異常なしと言われて終わるのではないか」という不安から受診をためらう方もいるでしょう。だからこそ、当院では総合診療的な視点に基づき、問診と身体所見を徹底することで、闇雲に検査を増やさず、最も頻度が高く、かつ見逃してはいけない重篤な疾患に絞り込み、効率的かつ精密に診断を進めます。多忙なあなたの時間は貴重です。当クリニックは、貴重な時間を使って受診していただいた患者様に対し、安心と確実な診断を提供することをお約束します。



当院が提供する「だるさ解消」のための継続的フォローアップ


診断が確定した後も、当院は患者様の健康維持に貢献します。


  • フレイル予防の視点

    倦怠感を抱える特に 50 代、60 代の患者様に対し、この状態が将来的なフレイル(虚弱)や転倒リスクの増大、さらには心血管疾患の予後悪化につながるリスクがあることを説明します。診断確定後も、倦怠感を解消するための運動療法や栄養指導を含めた生活習慣の改善を継続的にサポートします。


  • 慢性疾患の継続管理

    甲状腺機能異常や糖尿病といった慢性疾患が原因である場合、内科専門医として継続的なホルモン補充療法や代謝管理を行い、QOLの維持に努めます。


  • 原因不明の場合の伴走

    器質的疾患が見つからなかった場合でも、「気のせい」で片付けません。心因性あるいは慢性疲労の可能性を考慮し、症状の日内変動やストレス因子の有無を確認しながら、漢方薬や認知行動療法の導入支援など、多方面からのアプローチで症状の改善と付き合い方の調整を支援します。



受診のタイミングと予約のご案内


体がだるいと感じた時、以下のいずれかに該当する場合は、迷わず当院にご相談ください。


  • レッドフラグ(Table 1)に該当する症状(特に急性増悪、息切れ、強い嘔気、原因不明の発熱・体重減少)がある場合。


  • 十分な休息をとっても倦怠感が半年以上継続しており、日常生活(仕事、趣味、家事)に支障が出ている場合。


  • 市販薬や栄養ドリンクで一時的に凌いでいるが、根本的な解決に至っていない場合。


  • 自身の倦怠感の裏に、消化器系(がん、潰瘍)や内分泌系(甲状腺、副腎)の病気が隠れていないか、専門的な検査で確実に確かめたい場合。


あなたの「だるさ」には必ず原因があります。くりた内科・内視鏡クリニックは、その原因を特定し、患者様が充実した毎日を取り戻せるよう全力でサポートいたします。


まずは一度、ご相談ください。


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