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足のむくみについて:ただの疲れ?それとも病気のサイン?足のむくみを徹底解説

  • 執筆者の写真: くりた内科・内視鏡クリニック
    くりた内科・内視鏡クリニック
  • 6 日前
  • 読了時間: 14分
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なぜ足はむくむのか?(水分のバランスと「第二の心臓」)

足のむくみ、医学的には「浮腫(ふしゅ)」と呼ばれるこの症状は、多くの方にとって日常的な悩みです。特に立ち仕事やデスクワークの後に、夕方になると足首やふくらはぎがパンパンに腫れるという経験は珍しくありません。しかし、むくみは単なる疲労や体調不良のサインにとどまらず、ときには全身の健康状態、さらには命に関わる重篤な病気が隠されている可能性を示す「体からのSOS」であることもあります。



むくみ(浮腫)の基本的な定義と発生メカニズム

むくみとは、血管内の液体成分(血液の水分)が血管外の間質(細胞と細胞の間)に過剰に漏れ出し、貯留した状態を指します。この現象の背景には、体液を血管内に留めたり、血管外へ押し出したりする力のバランスの崩れがあります。


体液の移動は、主に血管内の水分を押し出す力(毛細血管静水圧)と、血管内のタンパク質(アルブミンなど)が水分を引きつける力(血漿膠質浸透圧)によって制御されています。浮腫は、このバランスが崩れ、主に「毛細血管静水圧の上昇」または「血漿膠質浸透圧の低下」によって、血管から間質への体液移動が増加することで発生します。足のむくみが特に目立つのは、一日を通して重力の影響を受けやすく、体液が下肢に溜まりやすいという物理的な要因があるためです。



ふくらはぎの役割:「第二の心臓」の重要性

重力に逆らって足に溜まった血液や体液を心臓へ送り返すために、重要な役割を担っているのが、ふくらはぎの筋肉です。この筋肉群は、収縮と弛緩を繰り返すことで静脈内の血液を押し上げるポンプとして機能し、「第二の心臓」とも呼ばれます。


運動不足や長時間の立ち仕事、座りっぱなしの姿勢は、このふくらはぎのポンプ機能の活動を低下させます。その結果、血液やリンパの循環が悪化し、静脈還流が滞ります。これにより、足の毛細血管静水圧が持続的に高まり、水分が間質へ漏れ出すことで、むくみが引き起こされるというメカミズムです。一般的に女性は男性と比べて筋力が弱い傾向があるため、特にむくみやすい傾向にあるとされています。



【重要】むくみを見分けるチェックリスト

むくみの原因は、セルフケアで対応可能な「生理的なもの」と、内科的な治療を要する「病的なもの」に大別されます。特に以下のような症状がある場合は、重篤な疾患が隠れている可能性があるため、速やかに専門医の診察を受ける必要があります。

項目

緊急性が高い(危険なむくみ)

日常的・生理的なむくみ

浮腫の左右差

片足のみが急激に腫れることが多い(DVTの可能性)

両足に対称的に発生することが多い

発生タイミング

突然発症、または長時間同じ姿勢の後に急激に悪化

夕方や一日の終わりに悪化し、朝には改善傾向

随伴症状

強い痛み、発熱、皮膚の色や温度の変化、呼吸困難、胸痛

重だるさ、張り感、靴がきつく感じる程度

主な原因

深部静脈血栓症(DVT)、心不全、腎疾患、肝疾患

運動不足、塩分過多、長時間の立位/座位、ホルモンバランス




命に関わる「危険なむくみ」を見逃さないために

むくみの症状の中でも、内科専門医が最も注意を払うのは、その背景に急性期のリスクが潜んでいるケースです。特に「片足だけのむくみ」は、迅速な対応を要する病態を強く示唆しています。



緊急性の高い危険なむくみのサイン

片足、または左右で明らかに大きさが異なるむくみが急激に発生し、腫れや痛みを伴う場合は、緊急性の高い血管の病態を強く疑う必要があります。これは血流が滞ることで起こる症状であり、足全体がパンパンに腫れることが特徴です。


さらに危険なのは、足のむくみに加えて、呼吸器系の全身症状を伴う場合です。具体的には、急な呼吸困難や胸の痛み、意識の遠のき(失神)などが挙げられ、これらの症状は、むくみの原因が単なる局所的な血流不良ではなく、全身に影響を及ぼす重篤な状態にあることを示しています。



深部静脈血栓症(DVT)と肺塞栓症(PE)のリスク

足の奥深くにある静脈に血の塊(血栓)ができる病気が、深部静脈血栓症(DVT)です。この血栓が静脈を塞ぐと血流が滞り、その結果、むくみや痛みが生じます。長時間動かずに座り続けた後(飛行機、デスクワークなど)に急に足が張って痛くなった場合、DVTの可能性を疑う必要があります。


DVTが最も恐れられる理由は、その急性期合併症である肺塞栓症(PE)にあります。DVTで形成された血栓の一部が剥がれ、血流に乗って肺動脈に飛んで詰まってしまうと、PEとなります。PEは呼吸困難、胸痛、失神を引き起こし、迅速な治療を行わなければ命にかかわる状態です。


DVTの治療が遅れたり、血栓が残存したりした場合、静脈弁が破壊され、慢性期には血栓後症候群(PTS)に進行します。PTSでは血液の逆流が生じることで、慢性的なむくみ、足首やふくらはぎへの茶色い色素沈着、そして治りにくい難治性の皮膚潰瘍へと症状が悪化する可能性があります。早期に適切な治療を受けることで、DVTは重症化を防ぎ、これらの致死的・慢性的なリスクを回避できます。



【最重要指導】すぐに救急車を呼ぶべきケース

足のむくみがDVTに関連している可能性がある場合、特に**「呼吸が苦しい、または急に胸が痛くなった」**といった肺塞栓症の症状を伴うときは、一刻を争う事態です。これらの症状を感じたら、自己判断せずに直ちに救急車を要請してください。




むくみの裏に潜む全身性の病気(内科的診断の重要性)

むくみが両足に見られる場合や、朝起きた時に顔面(特にまぶた)にも生じる場合は、体全体の水分や循環、タンパク質バランスを制御する主要臓器に異常が生じている可能性があります。このような全身性の浮腫は、単なる生活習慣の改善だけでは治らず、内科的な精密検査が必要となります。



むくみと全身性疾患の関連

全身性浮腫の背景には、心臓、腎臓、肝臓といった生命維持に欠かせない臓器の機能低下が隠れていることが最も頻繁に見られます。


心不全(ポンプ機能の低下)

心臓のポンプ機能が低下すると、全身の血液、特に重力の影響を受ける下肢からの静脈還流が滞ってしまいます。これにより血管内の静水圧が上昇し、水分が血管外へ漏れ出すことで両足のむくみとして現れます。心不全によるむくみは、しばしば労作時の息切れや、夜間に横になった時の呼吸困難を伴うことがあります。


腎疾患(水分・塩分排泄機能の障害)

腎臓は体内の水分量や塩分(ナトリウム)の排出を厳密にコントロールしていますが、腎機能が低下すると、これらの排泄が不十分となり、体液が過剰に貯留し、むくみを引き起こします。


また、ネフローゼ症候群などの特定の腎疾患では、尿中にタンパク質(アルブミン)が大量に漏れ出します。アルブミンは血管内の水分を保持する役割(膠質浸透圧)を担っているため、アルブミンが減少するとその保持力が弱まり、水分が間質へ移動しやすくなります。腎疾患によるむくみは、体内の水分の変化により、朝に顔面や眼瞼の腫れぼったさが目立つことがあります。


肝疾患(タンパク質合成の障害)

肝臓は血液中の重要なタンパク質であるアルブミンを合成する臓器です。肝硬変などで肝機能が低下すると、アルブミンの合成能力が低下し、血管内の膠質浸透圧が低下します。これにより、血液中の水分を血管内に引き留めておく力が弱まり、全身性のむくみが発生します。



薬剤性浮腫とその鑑別

むくみは病気だけでなく、服用しているお薬の副作用として現れることもあります。特に、カルシウム拮抗薬などの一部の高血圧治療薬、血管拡張薬、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、さらには甘草を含む漢方薬(小柴胡湯、強力ミノファーゲンCなど)は、体内のナトリウム貯留を促進したり、血管透過性を高めたりすることで浮腫を誘発する可能性があります。


薬剤性のむくみが疑われる場合は、安易に自己判断で薬を中止せず、必ず専門医に相談し、原因薬剤の中止または変更によって浮腫が消退するかどうかを慎重に確認する必要があります。内科医の診断では、医療面接によって服用薬の履歴を確認することが、むくみの原因を特定するための重要なステップとなります。




日常生活で起こる一般的なむくみの原因とメカニズム

病気が原因ではない、多くの人が経験するむくみは、日々の生活習慣や体の構造的な特徴に深く根ざしています。これらは生理的な現象ではありますが、放置すると慢性的な不快感や重だるさにつながります。


姿勢と筋力低下による血行不良

長時間の同じ姿勢による循環の滞り

長時間の立ち仕事や座り仕事は、血液やリンパ液の流れを停滞させます。デスクワークなどで膝や股関節を直角に保ち、足裏を床につけている正しい姿勢を意識せずに座り続けていると、下肢の血流が妨げられ、重力の影響も相まって、むくみが起こりやすくなります。この状態を避けるには、1時間ごとに軽い体操やウォーキングを取り入れ、姿勢の固定を避けることが重要です。


筋力低下とポンプ機能の不全

ふくらはぎの筋肉は「第二の心臓」として機能しますが、運動不足が続くとこの筋肉の収縮力が低下します。筋肉のポンプ機能が弱くなると、足からの血液を心臓へ効率よく送り返すことができなくなり、血液が下肢に滞留し、むくみが発生します。特に女性は男性に比べて筋力が弱いため、この筋力ポンプの機能不全によるむくみを経験しやすいとされています。



食生活とホルモンバランスの影響

塩分・糖分の過剰摂取

むくみの最も一般的な生活習慣上の原因は、食生活の偏りです。塩分(ナトリウム)を過剰に摂取する

と、体は水分を保持しようとするため、体液の量が増加し、むくみの原因となります。また、高糖質な食品を摂取することで血糖値が急上昇すると、体が水分をため込みやすくなる作用も知られています。

さらに、冷たい食べ物や飲み物を過剰に摂取すると体が冷え、血行不良を招き、むくみを悪化させる可能性があります。


女性ホルモンの変動

女性の場合、ホルモンバランスの変動がむくみの直接的な原因となることがあります。生理前に分泌が増加する黄体ホルモン(プロゲステロン)には、体内に水分を溜め込みやすくする作用があるため、足のむくみを引き起こすことがあります。また、卵胞ホルモン(エストロゲン)のバランスの乱れが自律神経に影響を与え、全身の血液循環を悪化させることで、むくみを誘発することもあります。このようなホルモン由来のむくみは一時的であることが多いものの、慢性化したり、セルフケアで改善しない場合は、内科的な評価が必要です。




エビデンスに基づくむくみ解消と予防のためのセルフケア

病気が原因ではない一般的なむくみに対しては、生活習慣の改善、特に食事、水分摂取、運動によるセルフケアが非常に効果的です。これらの対策は、むくみの根本的な原因である血液循環の改善と水分バランスの調整に焦点を当てています。


カリウムと水分バランスの戦略

むくみ解消の食事療法の核は、「塩分(ナトリウム)の排出」と「血管内の水分保持」にあります。


減塩とカリウムの積極的摂取

塩分摂取を控える工夫として、減塩調味料の使用や、ハーブ・スパイスを使った風味付けを心がけ、外食時のスープやタレは控えめにすることが推奨されます。


そして、体内の余分な塩分排出を助けるのがカリウムです。カリウムは、ナトリウムとバランスを取りながら水分の排出を促進し、むくみの軽減に役立ちます。

栄養素/成分

期待される効果

代表的な食材・飲み物の例

摂取のポイント

カリウム

体内の過剰な塩分(ナトリウム)の排出を促進し、水分バランスを調整

ほうれん草、ブロッコリー、アボカド、黒豆茶、とうもろこしのひげ茶

加熱しすぎず、塩分を控えめに調理する

カフェイン

軽度の利尿作用を持ち、水分の排出を助ける

緑茶

適量を守り、体を冷やさないよう温かいものを摂取する

たんぱく質

血管内の水分を保持する力(膠質浸透圧)を維持する

鶏むね肉、魚、豆腐、卵

極端な食事制限を避け、バランスよく摂取する



バランスの取れた栄養摂取

極端な食事制限は栄養不足を招き、特にタンパク質の不足は、血液中のアルブミン濃度の低下(低蛋白血症)を招き、血管内の水分保持力が低下して、かえってむくみを悪化させる原因となります。むくみ解消のためには、バランスのよい食事を心がけ、必要な栄養素を適切に摂取することが不可欠です。



適切な水分補給と利尿作用のある飲み物

むくみがあるからといって水分を控えると、体が防御的に水分をさらにため込もうとし、かえってむくみが悪化する場合があります。体内の水分バランスを整えるためには、こまめな水分補給が重要です。


水分補給には、利尿作用のある飲み物を意識的に取り入れることで、余分な水分や塩分の排出を促進しやすくなります。例えば、緑茶はカフェインとカリウムを含み、利尿作用によって塩分や水分の排出を助けます。また、カリウムが豊富な黒豆茶やとうもろこしのひげ茶も利尿作用が期待できます。ノンカフェインでミネラルが豊富なルイボスティーは、血流を促進する効果も期待でき、冷え性の改善にも役立ちます。



効果的な運動とマッサージ

むくみの予防や改善には、ふくらはぎのポンプ機能を意識的に活性化させることが最も効果的です。


ふくらはぎポンプの活性化運動

長時間の座り仕事や立ち仕事の合間には、ふくらはぎの筋肉を動かす運動を取り入れましょう。


  • かかと上げ運動(ヒラメ筋刺激)

    椅子に座った状態や、立った状態で、かかとをゆっくり上げ下げする運動は、ヒラメ筋を刺激し、血液を心臓へ送り返す循環を助けます。


  • ウォーキング

    1日30分程度の無理のないペースでのウォーキングは、ふくらはぎの筋肉を自然に使い、血流を促進するのに最適です。


マッサージと姿勢の工夫

足のむくみ解消には、マッサージや姿勢の工夫も有効です。


  • マッサージ

    足首から膝に向かって、手のひらを使ってやさしくさすり上げることで、血行と老廃物の排出を促進します。


  • 足の挙上

    睡眠時や休憩時に、足を心臓より少し高い位置に挙げて寝ることで、重力の影響を軽減し、下肢に滞留した血液の還流を促します。


  • 正しい姿勢

    長時間同じ姿勢を避け、血流を妨げないように、背骨を立て、足裏を床につける正しい姿勢を意識して座ることも重要です。




くりた内科・内視鏡クリニックの診断フローと安心の提供

セルフケアを徹底しても慢性的なむくみが続く場合、あるいは急激にむくみが悪化した場合は、「単なる疲れ」で片付けずに、必ず内科専門医にご相談ください。自己判断で放置すると、前述したDVTや、心臓・腎臓の重篤な疾患を見逃すリスクがあります。


自己判断の限界と専門医の役割

くりた内科・内視鏡クリニックでは、むくみを「全身の健康状態を映す鏡」として捉え、問診や身体所見だけでは判別できない根本原因を特定するため、内科的なアプローチで包括的に診断を進めます。特に全身性浮腫(両足や顔のむくみ)が疑われる場合、その背景には入院を要するような重症疾患が潜んでいる可能性もあるため、専門的な鑑別診断が不可欠です。



当院における診断フロー:全身性疾患の鑑別

当院では、むくみの原因が生活習慣によるものか、心臓・腎臓・肝臓などによる病的なものかを鑑別するため、標準的な診断フローに基づき検査を行います。


  1. 詳細な医療面接と身体所見の確認

    むくみの局在(局所性か全身性か)、時間帯、既往歴(腎疾患、肝疾患、心疾患の有無、輸血歴)や薬剤服用歴を詳細に確認します。


  2. 基本的検査(スクリーニング)

    まず、腎疾患を鑑別するための尿検査(蛋白、潜血、沈渣など)を行います。同時に、血液検査により、腎機能(クレアチニン)、肝機能、電解質、そして血管内の水分保持に重要な役割を果たす血漿アルブミンレベルなどを評価し、主要臓器の異常を洗い出します。


  3. 心臓評価(必要に応じて)

    心不全が疑われる場合、心電図や胸部X線検査で心臓の負担や機能低下のサインを評価します。さらに、心エコー図検査を行うことで、心臓のポンプ機能、弁の状態、および心不全の確定診断や重症度を非侵襲的に正確に確認することが可能です。



結論:むくみは早期相談が全てを解決する鍵

むくみは多くの原因によって引き起こされますが、特に危険なのは、深部静脈血栓症のように命に関わるリスク(PE)を持つ病態です。DVTは早期に適切な治療を開始することで、PEへの進行や、慢性的な血栓後症候群(PTS)への移行を防ぐことができます。また、心不全や腎疾患といった全身性の病気も、むくみをサインとして早期に発見し、治療介入を行うことが、重症化を防ぎ、長期的なQOL(生活の質)を維持する鍵となります。


くりた内科・内視鏡クリニックは、内視鏡検査だけでなく、内科専門医として全身を多角的にチェックし、むくみの根本原因を突き止める体制を整えています。


「足が重だるいだけ」「年のせい」と軽視せず、特に慢性的に続くむくみ、左右差のあるむくみ、またはセルフケアで改善しないむくみでお悩みの方は、ぜひ一度、当院の内科専門医にご相談ください。患者様一人ひとりに合わせた安心できる診断と治療計画をご提案いたします。


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