鼻から打つ新しいインフルエンザワクチン「フルミスト」を導入しました!
- くりた内科・内視鏡クリニック

- 2 日前
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くりた内科・内視鏡クリニック院長が解説
10代の未来を守る「フルミスト®︎」(経鼻インフルエンザワクチン)の科学と利点
10代のライフスタイルに合わせたインフルエンザ予防の新常識
インフルエンザは、単なる季節性の風邪とは異なり、高い感染力と重症化リスクを持つ疾患です。特に、学業や部活動、そして受験といった重要なライフイベントを迎える12歳から19歳の青少年期におけるインフルエンザ対策は、単に個人の健康を守るだけでなく、社会的な活動を維持するために極めて重要な意味を持ちます。
この世代のインフルエンザ対策において、従来型の注射による不活化ワクチンに加え、近年注目を集めているのが「フルミスト®︎」という新しい選択肢、すなわち経鼻生ワクチンです。くりた内科・内視鏡クリニックでは、最新の医学的エビデンスに基づき、患者様一人ひとりのライフスタイルと心理的特性に合わせた予防策を提供するため、この革新的な経鼻ワクチンの導入を進めています。
なぜ12歳から19歳のインフルエンザ対策は「特別」に重要か?
10代の生活環境は、他の年齢層と比較して感染リスクが格段に高い密度で構築されています。学校の教室、受験のための自習室、そして何よりも集団での活動が主体となる部活動がその主な舞台となります。文部科学省のガイドラインが示すように、部活動には「組み合うことが主体となる活動」「身体接触を伴う活動」「大きな発声や激しい呼気を伴う活動」といった、感染リスクが高まる要素が多く含まれています。
インフルエンザの流行期、特に例年1月~2月のピークは、学年末試験や受験のクライマックスと重なることが多く、数日間の体調不良や活動停止は、若者たちにとって計り知れない影響をもたらします。部活動においては、一人の感染者が発生することで、チーム全体の活動が停止に追い込まれる「公衆衛生的なリスク」を内包しています。したがって、この世代のワクチン接種は、個人の防御に留まらず、集団生活における「公衆衛生的な責務」としての側面も持ちます。予防接種を通じて、自らの受験や大切な試合の機会を守るだけでなく、友人やチームメイト、そして家族への感染拡大を防ぐ重要な役割を担うことになります。
注射への不安を解消する「フルミスト®︎」という革新的な選択肢
予防接種の重要性を理解していても、接種をためらう最大の理由の一つが「注射の痛み」です。特に青少年期には、注射恐怖症(先端恐怖症)や接種後の局所の腫れを嫌がる方が少なくありません。この心理的な障壁は、予防医療への積極的な参加を妨げる大きな要因となってきました。
フルミスト®︎の最大の利点は、まさにこの障壁を取り除く点にあります。このワクチンは注射を一切必要とせず、専用のスプレー容器を使って左右の鼻腔内に薬液を噴霧するだけで接種が完了します。痛みや腫れを伴わないこの接種方法は、注射が苦手な10代の患者様にとって、予防接種を「痛い医療行為」から「気軽な健康管理」へと変える、画期的な解決策となります。心理的な負担がゼロになることで、予防接種率の向上が期待でき、結果として若年層のインフルエンザ流行抑制に大きく貢献すると考えられます。
本レポートで深掘りする専門知識
本レポートでは、フルミスト®︎が持つ独自の免疫学的優位性、特に注射型の不活化ワクチンとは異なる「粘膜免疫」と「細胞性免疫」のメカニズムに焦点を当て、その有効性と安全性について、最新のエビデンスに基づいて専門的に解説します。当院が、なぜこのワクチンを12歳から19歳の患者様に特に推奨するのか、その科学的根拠を明確にご理解いただけることを目指します。
経鼻生ワクチン「フルミスト®︎」の科学的根拠とメカニズムの深掘り
フルミスト®︎は、国内初の経鼻投与型インフルエンザ予防ワクチンとして、厚生労働省に正式に承認されています。その科学的優位性は、従来の注射型ワクチン(不活化ワクチン)とは根本的に異なる作用機序、すなわち「生ワクチン」であることに由来します。
生ワクチンと不活化ワクチン:免疫システムの起動方法の根本的な違い
従来の注射型ワクチンは、インフルエンザウイルスを不活化(殺菌)し、その一部(抗原)を体内に注射することで免疫を獲得させます。これは「液性免疫」と呼ばれる、全身を循環する抗体(IgGなど)を生成させ、主にウイルスが全身に広がった後の重症化を防ぐことに特化しています。その効果の持続期間は一般的に4~6か月間とされています。
一方、フルミスト®︎は「弱毒生ワクチン」であり、低温馴化、温度感受性、そして弱毒化という特徴を持っています。この弱毒化された生きたウイルスは、インフルエンザの自然な感染経路である鼻腔内の粘膜で選択的に増殖します。体温の高い肺や全身では増殖できないように設計されているため、病原性を示さずに免疫応答を誘導します。
フルミスト®︎独自の「粘膜免疫」と「細胞性免疫」とは
経鼻投与されたフルミスト®︎は、注射型ワクチンが不得手とする二つの強力な防御システムを起動します。
粘膜免疫(IgA抗体)の確立:感染成立の初期段階で防御
フルミスト®︎が鼻腔内で増殖することで、まず気道粘膜に直接作用し、ウイルスが感染しやすい上気道での免疫応答を強化します。ここで生成されるのが、粘膜表面を守る「IgA抗体」を主とする粘膜免疫です。
この IgA 抗体は、ウイルスが体内に侵入し、感染を成立させる初期段階で、ウイルスの定着や増殖を中和・阻止する役割を果たします。注射型ワクチンが「重症化予防」に焦点を当てているのに対し、フルミスト®︎は「感染そのものの成立を阻止する可能性」を高める、初期防衛線として機能します。これは、感染拡大リスクの高い集団生活を送る10代の患者様にとって、自己と他者への感染を同時に防ぐ点で非常に重要です。
細胞性免疫(T細胞)の誘導:変異に強い防御力の獲得
さらに、フルミスト®︎は注射型ワクチンとは異なる「細胞性免疫」という機序でも免疫を高めることができます。細胞性免疫は、ウイルスに感染した細胞を特定し、直接破壊するT細胞(キラーT細胞など)が中心となる防御システムです。
インフルエンザウイルスは頻繁に型を変異させる(抗原ドリフト)ため、流行株の予測が外れると、従来の液性免疫による防御効果は低下する可能性があります。しかし、細胞性免疫は、ウイルスの外側の変異しやすい抗原だけでなく、ウイルス内部の比較的変異しにくいタンパク質を認識できます。この特性により、細胞性免疫は型の変化に強く、多少流行株の型が異なっていても、効果が期待できるという理論的な優位性を持つことが専門的に指摘されています。フルミスト®︎による細胞性免疫の誘導は、流行予測の難しさに対する「防御力の保険」としての価値を持つと言えます。
免疫メカニズム比較表
フルミスト®︎と注射型ワクチンの免疫メカニズムの違いをまとめると、以下のようになります。
インフルエンザワクチン—免疫メカニズムの比較
項目 | フルミスト®(経鼻生ワクチン) | 注射型(不活化ワクチン) |
免疫応答の主要部位 | 鼻腔粘膜(局所)および全身 | 全身 |
主要な防御メカニズム | 粘膜免疫(IgA)と細胞性免疫 | 液性免疫(IgG抗体) |
防御のフェーズ | 感染初期(侵入防止)と重症化予防 | 主に重症化予防 |
抗原ドリフトへの強さ | 細胞性免疫により、比較的強い影響を受けることなく効果を期待できる | 流行株予測の精度に強く依存する |
12歳から19歳の患者様がフルミスト®︎を選ぶ決定的な5つのメリット

フルミスト®︎は、その作用機序の優位性に加え、特に忙しく、心理的負担を避けたい10代の患者様とその保護者にとって、多くの実用的なメリットを提供します。
【最重要課題の解決】注射針の恐怖からの解放(無痛接種のメリット)
先述の通り、フルミスト®︎の最大の特徴は、注射針を使わないことです。専用のスプレーを左右の鼻腔に噴霧するだけで接種が完了し、注射による痛みや接種後の局所の腫れ、発熱といった身体的・心理的ストレスを伴いません。これにより、毎年インフルエンザワクチン接種をためらっていた患者様でも、医療行為への抵抗感を大幅に軽減し、積極的に予防に取り組むことが可能となります。
長期にわたる防御力の持続:活動的なシーズンの完全サポート
従来の不活化ワクチンの効果が通常4~6か月程度持続するのに対し、フルミスト®︎は、約1年間にわたって効果が持続するとされています。
インフルエンザは例年12月から3月頃に流行し、1月から2月がピークとなることが一般的です。例えば10月にワクチンを接種した場合、不活化ワクチンでは翌春、特に3月頃には効果が弱まり始める懸念があります。しかし、約1年間効果が持続するフルミスト®︎であれば、接種シーズンの冬だけでなく、学業や部活動が佳境を迎える翌春まで、安定した防御力を維持することが期待できます。これにより、接種時期の計画が立てやすくなり、最もインフルエンザ対策が必要な期間を確実にカバーすることができます。
複雑な接種スケジュールの解消:原則1回の鼻腔内噴霧で完了
フルミスト®︎の接種は、日本の基準において、2歳から18歳までの健常な方であれば原則1回の接種で十分とされています。
インフルエンザワクチンは、年齢や過去の接種歴によって2回接種が必要になる場合がありますが、フルミスト®︎は単回接種で完了するため、クリニックへの通院回数が大幅に削減されます。忙しい学業や部活動の合間を縫って何度も通院する必要がなく、時間的制約の多い10代や、多忙な保護者様にとって、大きな時間的メリットとなります。
活動的な生活を支える:迅速な粘膜免疫の確立
フルミスト®︎は、ウイルスの侵入口である粘膜での免疫応答を強化するため、ウイルスが体内に侵入した直後から防衛機能が発動することが期待されます。
集団生活において最も避けたいのは、自身が感染の起点となってチームメイトや友人へウイルスを拡散することです。粘膜免疫の迅速な確立は、ウイルスが体内に定着するのを防ぐ初期防衛線として機能し、感染そのものを阻止する可能性を高めます。これは、活動的で接触機会の多い10代の患者様にとって、自身の体調管理だけでなく、集団活動の維持に貢献する上で極めて重要な利点となります。
国内承認状況と医療現場での位置づけ
フルミスト点鼻液は、国内初の経鼻投与型インフルエンザ予防ワクチンとして、2024年3月に製造販売が承認された新しい予防医療の形です。この承認は、フルミスト®︎が国際的な臨床試験と日本の審査基準に基づいて、その有効性と安全性が確認されたことを意味します。くりた内科・内視鏡クリニックは、この最新かつ患者志向の予防法を積極的に導入することで、地域の皆様に最先端の医療を提供しています。
フルミスト®(経鼻生ワクチン)と注射型(不活化ワクチン)の比較表
接種方法と効果の持続期間において、両者には明確な違いがあります。
フルミスト®(経鼻生ワクチン)と注射型(不活化ワクチン)の比較
比較項目 | フルミスト®(経鼻生ワクチン) | 注射型(不活化ワクチン) |
免疫の種類 | 局所粘膜免疫 + 全身免疫(細胞性免疫) | 全身免疫(液性免疫) |
投与方法 | 鼻腔内噴霧(無痛) | 注射(皮下または筋肉内) |
対象年齢(日本国内基準) | 2歳以上19歳未満 | 生後6か月以上 |
接種回数 | 原則1回 | 1回または2回(年齢による) |
効果の持続期間 | 約1年 | 4~6か月間 |
ウイルスの型 | 4価 (A型2種、B型2種) | 4価 (A型2種、B型2種) |
主な副反応(体感) | 鼻閉、鼻漏、咳、咽頭痛(高頻度) | 接種部位の痛み、腫れ、発熱(低頻度) |
エビデンスに基づく有効性の詳細な検証:知っておくべき臨床データ
フルミスト®︎(LAIV)は世界的に広く研究されており、その有効性に関するエビデンスは豊富です。特に小児および青少年においては、従来の注射型ワクチン(IIV)と比較して、優位性を示した歴史があります。
過去の臨床試験が示すフルミスト®︎の初期の優位性
2009年のH1N1パンデミック以前に実施された複数のランダム化比較試験では、LAIVが小児においてIIVよりも優れた有効性を示すことが証明されていました。例えば、6ヶ月から59ヶ月の小児を対象とした試験では、LAIV3(3価)を接種したグループは、IIV3と比較して、培養確定されたインフルエンザの発症が55%減少したという結果が示されています。また、反復性の呼吸器感染症の既往がある6ヶ月から71ヶ月の小児を対象とした別の研究でも、LAIV3がIIV3に対して53%高い相対的有効性を示しました。
これは、LAIVがインフルエンザの自然感染に近い経路で免疫応答を誘導し、特に未感染の幼少期において、より広範で強力な防御力を発揮する可能性を示唆するものです。この初期の優れた結果に基づき、米国予防接種諮問委員会(ACIP)は、特定の期間、2歳から8歳の健康な小児に対して、LAIVをIIVよりも優先的に推奨していました。
国内承認の根拠と、臨床試験の解釈における専門的な議論
フルミスト®︎の有効性に関して、専門家として透明性を確保し、留意すべき点についても解説します。
1. 国内承認の根拠:検証された有効性
フルミスト®の国内製造販売承認は、2歳から18歳の日本人健康小児を対象とした第III相臨床試験(J301試験)の結果に基づいています。この試験では、インフルエンザの発症割合が、本剤群で25.5%(152/595例)、プラセボ群で35.9%(104/290例)でした。この結果から算出されたワクチン有効率(VE)は28.8%であり、有効性の評価基準(0%)を上回り、本剤の有効性が検証されたと判断されました。
2. 臨床試験の解釈に関する専門的な議論
一方で、最新の専門的な視点では、この種の臨床試験データの解釈について議論があることも事実です。一部の専門家は、インフルエンザワクチンの臨床試験において、PCR検査による確定診断が、ワクチン接種の影響(特に局所的な抗体によるウイルス量の減少)を受けて「偽陰性化」する可能性を指摘しています。
症状を基準としたインフルエンザ様疾患(ILI)の総数を比較した場合、ワクチン群とプラセボ群で発症割合に有意な差がないとする分析結果も存在します。これは、ワクチンによる防御効果が、症状ベースでは観察されない可能性を示唆するものです。また、弱毒生ワクチンという特性上、接種後14日以内という非常に早い段階で、ワクチン株由来のウイルスが検出されるインフルエンザ様症状(発熱を伴うものを含む)が、プラセボ群と比較して多く報告されている点にも留意が必要です。
これらの議論は、フルミスト®を無効とする極めて批判的な見解を含むものですが、当院としては、フルミスト®が持つ粘膜免疫の誘導という注射型にはない理論的な優位性や、注射恐怖という心理的障壁を取り除くという臨床的なメリットを総合的に評価し、患者様やご家族にこれらの多角的な情報を提供した上で、最適な選択をサポートすることが重要だと考えています。
フルミスト®︎の「4価」構成と最新シーズンへの対応力
現在、フルミスト®︎は、インフルエンザA型2種類(H1N1とH3N2)とB型2種類を含む、計4種類の株に対応する4価ワクチンとして提供されています。これは、国内で流通している注射型ワクチンと同様に、そのシーズンに流行が予測される主要なインフルエンザ株全てをカバーしていることを意味します。
フルミスト®︎が誘導する広範な防御メカニズム、特に細胞性免疫は、最新の流行株に対して、もし予測がわずかに外れたとしても、注射型ワクチンと比較してより優れた防御効果を補完する可能性があると考えられます。
安全性プロファイルと接種の適否:保護者が知るべきこと
フルミスト®︎は一般的に安全性が高いとされていますが、生ワクチンであるため、接種に際してはいくつかの重要な留意点があります。
接種方法の詳細と体調管理の重要性
接種は非常にシンプルで、専用のディスポーザブル(使い捨て)スプレー容器を使用し、医師または看護師が片方ずつ両方の鼻腔に0.1ccずつ、合計0.2mLを噴霧します。患者様が積極的に鼻から吸入したり、強く鼻をすする動作は必要ありません。薬液を鼻腔内に適切に留まらせることが重要です。
接種を受けることが適当でない状態にある者、特に明らかな発熱を呈している者は接種できません。接種当日は、ご自宅で検温するなど、体調に異常がないかを確認していただくことが必須です。
一般的な副反応とその対処法(鼻閉・鼻漏など)
フルミスト®︎の副反応は、その作用機序を反映した、注射型とは異なる特徴があります。
最も高頻度で報告されている副反応は、鼻閉(鼻づまり)や鼻漏(鼻水)です。臨床試験データでは、本剤群で58.6%〜63.8%と高い頻度で報告されています。その他、咳嗽(咳)、口腔咽頭痛、頭痛なども報告されています。
これらの症状は、弱毒化されたウイルスが鼻腔粘膜で増殖し、局所的な免疫応答を誘導している過程で生じる、軽度な「風邪様症状」です。多くは軽度であり、一時的で自然に消失します。これは免疫システムが正しく作動している証拠であり、注射型ワクチンで問題となる接種部位の痛みや腫れがない点と比較すると、生活への影響は少ないと言えます。
接種を受けることができない人(禁忌事項)の厳密な定義
フルミスト®︎は生ワクチンであるため、接種の可否には特に慎重な判断が求められます。
添付文書で規定されている禁忌事項には、明らかな発熱を呈している者、重篤な急性疾患にかかっていることが明らかな者、および本剤の成分によってアナフィラキシーを呈したことがあることが明らかな者などが含まれます。
さらに、専門的な観点から特に重要となるのは、患者様の既往歴や周囲の家族環境への配慮です。
生ワクチン特有の留意点:家族環境と健康状態
フルミスト®︎の特性上、接種を受けた患者様のごくわずかな弱毒生ウイルスが鼻水や呼気を通じて排出される可能性があります(ウイルスのシェディング)。このため、以下の状況にある患者様やそのご家族には、従来の皮下注ワクチンが推奨される場合があります。
喘息を併存している場合: 喘息の既往がある場合、接種後の症状悪化のリスクを考慮し、皮下注ワクチンが推奨されることがあります。
周囲に免疫不全者や乳幼児がいる場合: 家族や密接な接触者の中に、抗がん剤治療中の方、免疫抑制剤を服用している方、HIV感染者などの免疫不全患者、または授乳婦などがいる場合、万が一の伝播リスクを避けるため、接種前に必ず医師にご相談いただく必要があります。
【重要】特定の薬剤との併用に関する注意
フルミスト®︎は生ワクチンであり、接種後の特定の薬剤の使用によって、ライ症候群の発現やインフルエンザ脳炎・脳症の重症化を誘発する可能性があるため、特に注意が必要です。
サリチル酸系医薬品(アスピリンなど)、およびジクロフェナクナトリウム、メフェナム酸といった非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)を併用することについては、重要な潜在的リスクとして設定されています。接種後にこれらの薬剤を使用する可能性がある場合は、必ず事前に医師にご相談ください。
くりた内科・内視鏡クリニックでは、接種前の問診で、患者様本人だけでなく、ご家族の健康状態についても詳細に確認させていただいております。これは、生ワクチンを安全かつ倫理的に提供するために不可欠なプロセスです。
重篤な副反応発生時の当院での対応体制
すべての医薬品やワクチンと同様に、フルミスト®︎においても極めて稀ではありますが、ショックやアナフィラキシーなどの重篤な副反応が報告されています。これらの事象は頻度不明ながら、万が一発生した場合、迅速な対応が不可欠です。
当院では、重篤なアレルギー反応やショックに備え、救急処置に必要な薬剤(アドレナリンなど)や医療機器を常備し、スタッフ一同、緊急時の対応トレーニングを徹底しています。ワクチン接種後は、必ず院内での経過観察時間を設けており、もし体調変化や異常を認めた場合は、速やかに医師または看護師にご連絡いただく体制を整えています。
フルミスト®で報告される主な副反応(10代を含む)
接種後に最も注意すべき症状と、それに対する専門家の見解を以下に示します。
フルミスト®で報告される主な副反応(10代を含む)
副反応の分類 | 症状 | 頻度 | 専門家からの解説 |
局所・全身性(高頻度) | 鼻閉、鼻漏(鼻水) | 58.6%〜63.8% | ワクチンが鼻粘膜で増殖し、免疫応答を誘導している正常なサインです。通常、軽度で数日以内に自然に消失します。 |
全身性(一般的) | 咳嗽(咳)、口腔咽頭痛、頭痛 | 10%前後 | 注射型と比較して、発熱や倦怠感は少ない傾向にあります。 |
全身性(稀な事象) | ワクチン株由来のインフルエンザ発症 | 2.1% (13/608例) | 接種後14日以内に発症するケースがあり、弱毒生ワクチン特有の事象です。多くは軽症ですが、発熱を伴うことがあります。 |
重篤な副反応 | ショック、アナフィラキシー | 頻度不明(極めて稀) | すべてのワクチンに共通するリスクであり、接種後の慎重な観察が必要です。 |
フルミスト®︎のメリット・効果と注意すべき副反応:従来のワクチンとの決定的な違い
従来の注射型不活化ワクチンと比較してフルミスト®︎(経鼻生ワクチン)を選ぶことは、10代の患者様にとって大きな利点がありますが、同時に生ワクチン特有の留意点もあります。ここでは、両者の違いを明確に理解していただくために、その特性を対比させながら解説します。
従来のワクチンより優れる決定的なメリット(効果と利便性)
フルミスト®︎が注射型ワクチンに勝る点は、主に以下の3点に集約されます。
1. 粘膜免疫の誘導による「初期防御力の強化」
注射型ワクチンが全身の抗体(液性免疫)を作り、主にインフルエンザの重症化を防ぐのに対し、フルミスト®︎はウイルスが体内に侵入する鼻腔粘膜で、直接的に防御免疫(IgA抗体)を立ち上げます。これは、インフルエンザウイルスが感染を成立させる最初の段階で、ウイルスの定着や増殖を阻止する可能性を高めることを意味します。集団生活における感染拡大を防ぐ上で、非常に優位な防御メカニズムと言えます。
2. 注射恐怖の解消と接種の簡便さ
注射針を使わず、鼻にスプレーするだけで接種が完了します。これにより、注射が苦手な10代の患者様が感じる心理的・身体的ストレスが解消され、毎年の予防接種へのハードルが大幅に下がります。また、原則1回接種でシーズンを通じた防御力が期待できるため、忙しい学生生活における通院の負担も軽減されます。
3. 細胞性免疫による「型変動に強い防御力の補完」
インフルエンザウイルスは変異しやすいため、流行株予測が外れると従来のワクチンの効果は低下しがちです。しかし、フルミスト®︎は細胞性免疫(T細胞)も誘導するため、ウイルスの内部抗原にも応答でき、流行株の予測が多少外れたとしても、防御効果を補完する「保険」としての価値を持つことが専門的に指摘されています。
生ワクチン特有の「注意すべき副反応とリスク」
フルミスト®︎は安全性が確立されていますが、生きた弱毒化ウイルスを使用する特性上、以下の点に留意が必要です。
1. 高頻度で生じる軽度な風邪様症状
最も一般的な副反応は、鼻腔内で免疫反応が起きている証拠である鼻閉(鼻づまり)や鼻漏(鼻水)です。これらは臨床試験でも約6割の患者様に報告されており、咳や咽頭痛も伴うことがあります。これらは軽度で一過性の症状であり、注射後の痛みや腫れと異なり、多くは数日以内に自然に改善します。
2. 稀に発生するワクチン株由来のインフルエンザ様症状
極めて稀ですが、接種後14日以内という早い時期に、ワクチン株由来のウイルスが原因となって発熱を伴うインフルエンザ様症状を発症するケースが報告されています(2.1%程度)。これは弱毒生ワクチン特有の事象ですが、通常は軽症で治まることがほとんどです。
3. 周囲の免疫不全者への「二次感染リスク」
接種後の数日間は、鼻水などに弱毒化されたワクチンウイルスが排出される(シェディング)可能性があります。健康な方への感染リスクは極めて低いですが、抗がん剤治療中の方や重度の免疫不全者など、抵抗力が著しく低い方がご家族や身近にいる場合は、接種後1〜2週間程度、密接な接触を避けるなどの注意が必要となります。
4. 特定の解熱鎮痛薬との併用回避
フルミスト®︎接種後の発熱や疼痛に対して、**サリチル酸系医薬品(アスピリンなど)**や、ジクロフェナクナトリウム、メフェナム酸といった特定の非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)を自己判断で使用することは避けてください。これは、ライ症候群やインフルエンザ脳炎・脳症を誘発する潜在的なリスクが重要視されているためです。接種後に症状が出た場合は、必ず医師に相談し、適切な薬剤の処方を受けてください。
接種の詳細、対象年齢と費用のご案内
接種できる年齢と受けられない方(禁忌)について
フルミスト®︎点鼻液は、国内基準において2歳から19歳未満の方を対象として製造販売が承認されています。しかし、当くりた内科・内視鏡クリニックでは、一般的に小児科で扱われる2歳から11歳までのお子様の診療を行っておりません。
したがって、当院でフルミスト®︎接種の対象となるのは、中学入学後の12歳から19歳までの健康な患者様とさせていただいております。インフルエンザ対策が必須となる、活動的な中学・高校・大学受験期の患者様に特化して、安全かつ効果的な予防法を提供いたします。
また、フルミスト®︎は生ワクチンであるため、接種を受けることができない禁忌事項が厳密に定められています。特に、接種時に明らかな発熱がある方、重篤な急性疾患にかかっている方、あるいはワクチンの成分で過去に重篤なアレルギー反応を起こした方などは、接種ができません。接種の可否については、医師の最終的な判断が必要となりますので、問診票への正確な情報記入をお願いいたします。
フルミスト®︎の費用と自由診療について
フルミスト®︎(経鼻弱毒生インフルエンザワクチン)は、現在、日本の公的医療保険の適用外であり、全額自己負担となる自由診療でのご提供となります。一般的な注射型のインフルエンザワクチン(不活化ワクチン)とは料金体系が異なりますので、あらかじめご理解とご了承をお願いいたします。
接種費用は、8,800円/回(税込み)となっております。(*2025年10月現在)
この費用には、ワクチン代、接種手技料、診察料(接種可否判断のため)が含まれます。
当院でのフルミスト®︎予約・接種の流れ
当院では、患者様がスムーズにフルミスト®︎を接種できるよう、以下の手順でご案内しております。
1. ご予約
フルミスト®︎は、通常のインフルエンザワクチンとは異なり、供給や在庫に限りがあるため、事前の予約が必須となります。お電話または直接窓口でご予約をお願いいたします。ご予約の際には、接種対象年齢や重要な禁忌事項について簡単にご確認させていただきます。適切な在庫管理のため、ご理解とご協力をお願いいたします。
2. ご来院
ご予約の日時に、保険証(身分確認のため)や母子手帳などをご持参の上、当院までお越しください。スムーズな接種のため、時間に余裕を持ってお越しいただくことをおすすめします。
3. 問診票の記入
受付にて、フルミスト®︎接種専用の問診票をお渡しいたします。現在の体調、既往歴(過去の病気)、アレルギーの有無、服用中の薬などについて、漏れなく詳しくご記入ください。患者様の安全な接種のために、正確な情報提供が非常に重要です。
4. 医師による診察
問診票の内容を基に、医師が患者様の体調を確認し、フルミスト®︎の接種が可能かどうかを慎重に判断いたします。ご不明な点や不安なことがあれば、遠慮なく医師にご質問ください。納得して接種を受けていただくことが大切です。
5. ワクチン接種
診察で接種に問題がないと判断されれば、医師または看護師が鼻腔内にワクチンを投与いたします。痛みはほとんどなく、鼻にスプレーを「シュッ」と噴霧する形ですので、ご安心ください。数秒で接種が完了します。
6. 接種後の説明
ワクチン接種後は、安全のためにしばらく院内で待機していただきます。体調に変化がないか、医師や看護師が確認いたします。もし接種後に気になる症状が出た場合は、すぐに当院へご相談ください。
くりた内科・内視鏡クリニックからのメッセージと推奨

院長がフルミスト®︎を提供する理由(患者志向の医療提供)
フルミスト®︎は、国内承認から比較的新しい予防接種手段であり、その取り扱いには確かな専門知識と、生ワクチン特有の安全管理体制が求められます。くりた内科・内視鏡クリニックがこのワクチンを積極的に導入し、特に10代の患者様へ推奨する理由は、当院の医療提供における基本方針にあります。
私たちは、最新のエビデンスに基づいた、効果的かつ、患者様の心理的・肉体的負担を最小限に抑える医療を最優先しています。フルミスト®︎は、注射嫌いの多い青少年患者様にとって、予防接種という重要な医療行為を「嫌な義務」から「気軽で効果的な健康管理」に変える力を持っています。大切な受験や部活動を控える患者様が、ストレスなく最高の状態でインフルエンザシーズンを乗り切れるようサポートすることが、当院の使命だと考えています。
接種推奨時期と予約の重要性
インフルエンザの流行期は例年12月から3月頃で、通常1月から2月にかけてピークを迎えます。ワクチンによる免疫効果が確立されるまでに約2週間を要することを考慮すると、インフルエンザの本格的な流行が始まる前の、12月中旬までには接種を完了しておくことが強く推奨されます。
フルミスト®︎は1回接種で済みますが、供給量や接種期間が限られている場合があります。特に受験や重要な大会を控えている方は、流行に間に合わせるため、早めの接種計画を立て、予約を確定されることをお勧めいたします。
ターゲット層への具体的なコール・トゥ・アクション(CTA)
もし、あなたが毎年注射の痛みが怖くてインフルエンザワクチン接種をためらっていた10代の学生様であれば、フルミスト®︎はまさにその悩みを解消するために開発されました。痛みを感じることなく、鼻にスプレーするだけで、約1年間持続する強力な粘膜免疫と細胞性免疫を獲得できます。
大切な受験、部活動の集大成、友人との活動をインフルエンザで台無しにしないためにも、ぜひこの新しい予防接種の選択肢をご検討ください。
当院では、フルミスト®︎接種対象となる14歳以上の方のご予約を承っております。接種対象年齢や、ご家族の状況(特に免疫不全者の有無)についてご不明な点がある場合は、お気軽にお問い合わせください。ウェブサイトまたはお電話にて、接種の流れや詳細をご確認の上、ご予約をお願いいたします。
補論:知っておきたいインフルエンザに関する追加のQ&A
Q1: フルミスト®︎接種後の鼻水は感染力がありますか?
フルミスト®︎は弱毒化された生ワクチンであり、接種後の数日間、鼻水や鼻腔内の分泌物中に弱毒化されたウイルスが排出される(シェディング)可能性があります。このウイルスは、自然のインフルエンザウイルスとは異なり、健康な人に対して感染を広げたり、病原性を発揮したりする可能性は極めて低いように設計されています。
しかし、理論上、周囲に免疫機能が著しく低下している方(例:化学療法を受けている方、重度の免疫不全の方)がいる場合、ごく稀なリスクを避けるため、接種後1〜2週間程度は接触に特に注意を払うことが推奨されます。接種前にご家族の健康状態について医師と相談することが最も重要です。
Q2: 他のワクチンとの同時接種は可能ですか?
フルミスト®︎は生ワクチンですが、通常、他の不活化ワクチンや、接種間隔が規定された生ワクチンとの同時接種に関する最新のガイドラインに基づき、接種の可否を判断します。他のワクチン接種予定がある場合は、予約時に必ずその旨をお伝えください。医師が安全性を考慮し、最適な接種スケジュールをご提案いたします。
Q3: 鼻炎や鼻閉がひどい場合でも接種できますか?
フルミスト®︎は鼻腔内に噴霧し、鼻粘膜からワクチン成分を吸収させることで効果を発揮します。重度の鼻閉(鼻づまり)がある場合、薬液が鼻粘膜全体に適切に行き渡らず、十分な免疫応答が誘導されない可能性があります。したがって、鼻炎や鼻閉の症状が重い場合は、症状が軽減されてから接種を行うか、医師と相談して接種の可否を判断する必要があります。
まとめと最終的な推奨事項
経鼻インフルエンザワクチン「フルミスト®︎」は、注射の痛みから解放されるという大きな利点に加え、粘膜免疫と細胞性免疫という多層的な防御メカニズムにより、特に活動的な12歳から19歳の若年層に対して、極めて合理的なインフルエンザ予防の選択肢を提供します。
単回接種で約1年間効果が持続する点や、ウイルスの侵入口である粘膜での初期防御を強化する点は、受験や部活動など、インフルエンザによる離脱が致命的となり得る青少年期のライフスタイルに最大限に適合しています。
我々は、過去の臨床データや、それに対する専門的な評価(有効性の検証と批判的議論の両方)を真摯に受け止めつつ、フルミスト®︎の持つ理論的な優位性、安全性プロファイル、そして特に注射嫌いの患者様にとっての大きなメリットを総合的に評価した結果、自信を持ってこの選択肢を推奨いたします。
くりた内科・内視鏡クリニックは、患者様の健康を第一に考え、最先端の予防医療を提供いたします。インフルエンザの流行シーズンに備え、接種をご検討中の方は、是非一度当院にご相談ください。



