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上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)は『何歳から』受けるべき?最適なタイミングと見過ごせない胃がんリスク

  • 執筆者の写真: くりた内科・内視鏡クリニック
    くりた内科・内視鏡クリニック
  • 9月2日
  • 読了時間: 11分
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胃がん検診は「何歳から・何歳まで」?その疑問に科学的根拠でお答えします

多くの人々にとって、胃がん検診は健康を維持するために不可欠なプロセスですが、「一体何歳から始めるべきなのか?」という疑問は尽きることがありません。この問いに答えるためには、まず胃がんが日本の主要ながんの一つであることを理解する必要があります。胃がんは、近年罹患者数が微減傾向にあるものの、大腸がん、肺がんに次いで罹患者数が依然として第3位と、決して少なくない疾患です。さらに深刻なのは、初期の胃がんには自覚症状がほとんどないという事実です。多くの患者さんが胃の不快感や食欲不振、吐血といった症状を自覚した時には、既に病気がかなり進行しているケースが少なくありません。


このため、症状が出てからではなく、予防的な観点から定期的な検診を行うことが極めて重要とされています。しかし、国や学会が推奨する検診年齢には、一見すると違いがあるように見えます。


例えば、国の指針に基づく「対策型検診」では、2016年の改定により、胃内視鏡検査の対象年齢が50歳以上の男女、受診間隔が2年に1回と定められています。これは、胃がん検診の利益と不利益(偶発症や過剰診断など)のバランスを考慮した、集団全体に対する標準的な推奨です。一方、胃部X線検査(バリウム検査)については、当面の間は40歳以上の男女を対象として1年に1回実施することも可能とされています。さらに、複数の医療機関や専門家は、胃がんのリスクが40代から高まるという知見に基づき、40歳を過ぎたら一度は内視鏡検査を受けることを推奨しています。


このような推奨年齢の差異は、単一の基準では個々のリスクに対応しきれないことを示唆しています。公的な「対策型検診」が提供する画一的な枠組みに対し、個別の健康状態やリスク要因に基づいて行う「任意型検診」では、よりパーソナルな最適なタイミングを追求することが可能です。くりた内科・内視鏡クリニックでは、画一的な年齢基準に縛られることなく、患者さん一人ひとりの背景に合わせた最適な受診タイミングを専門的な知見からご提案いたします。



胃がんのリスクを知る:年齢だけではない「最適な受診タイミング」

胃がん検診の最適なタイミングを考える上で、年齢は一つの重要な指標に過ぎません。それ以上に、一人ひとりの胃がんリスクを左右する特定の要因を理解することが、適切な時期に検査を受けるための鍵となります。


最も重要なリスク要因として、ヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)の感染が挙げられます。多くの研究において、胃がんの原因の約90%から99%がピロリ菌感染と密接に関連していることが明らかになっています。ピロリ菌は、胃の粘膜に生息する細菌で、自らが生成する酵素によって胃酸を中和しながら生き続けます。この菌が胃粘膜に慢性的な炎症を引き起こし、長期間にわたる炎症が進行すると、胃粘膜が次第に薄くなる「萎縮性胃炎」へと発展し、これが胃がん発生の主要な温床となると考えられています。


ここで特に重要なのは、ピロリ菌の感染が疑われる場合、単にリスクを認識するだけでなく、具体的な行動へと繋がる医学的な理由があるということです。ピロリ菌の除菌療法は、胃がんの発生リスクを低減させる有効な手段とされています。しかし、この除菌治療を健康保険適用で受けるためには、事前に胃内視鏡検査を行い、「胃癌がないこと」を確認し、「慢性胃炎」の診断を受けることが必須条件とされています。これは、内視鏡検査が単なる「がん検診」ではなく、ピロリ菌感染という特定の原因に対する「治療への第一歩」であることを意味しています。ピロリ菌の感染が判明した方は、除菌治療という具体的な次のステップに進むために、内視鏡検査が不可欠となるのです。


さらに、ピロリ菌感染以外にも、胃がんのリスクを高める要因は複数存在します。喫煙や塩分・高塩分食品の過剰摂取といった生活習慣は、胃がんの発生危険性を高めることが報告されています。また、遺伝的な要素も見過ごせません。近年の研究では、特に60歳未満で胃がんと診断された若年層において、親など近親者に胃がんの既往歴がある場合、死亡率に影響を与える可能性があることが示唆されています。ただし、この分野のエビデンスはまだ蓄積段階にあり、自己申告に基づくデータが多いという限界も指摘されています。


これらの複合的な要因を考慮すると、「40歳を過ぎたら」という一般的な推奨に加え、ピロリ菌感染の疑いがある方、親族に胃がんの患者さんがいる方、喫煙や高塩分食を習慣的に摂取している方は、年齢に関わらず積極的に胃カメラ検査を検討すべきであると結論付けられます。



なぜ今、胃カメラが選ばれるのか?バリウム検査との「決定的な違い」

胃がん検診として広く知られている検査方法には、大きく分けて「胃内視鏡検査(胃カメラ)」と「胃部X線検査(バリウム検査)」の2つがあります。これらの検査はそれぞれ異なる役割を持ちますが、特に胃がんの早期発見と精密な診断という観点から見ると、胃カメラ検査にはバリウム検査を上回る明確な利点があります。


一般的に、バリウム検査は胃全体の形状や動きを把握するのに適した検査とされています。しかし、モノクロの濃淡画像で胃の「影絵」を判断するため、微細な色の変化や平坦な病変、つまり初期の胃がんを発見することは困難です。また、バリウムが食道内を素早く通過してしまうため、食道がんの早期発見も難しいという課題があります。


これに対し、胃カメラ検査は、先端のカメラで胃の内部を直接観察します。この方法は、1mm程度の微小な病変や、バリウム検査では見落とされがちな平坦な病変を鮮明な画像で捉えることが可能です。そして、最大の利点は、疑わしい病変が見つかった場合、その場で組織の一部を採取し、病理検査に回すことができる「生検」という処置が可能である点です。これにより、良性か悪性かの確定診断をその場で下すことができ、診断から治療への移行を迅速に行うことが可能になります。


バリウム検査で何らかの異常が見つかった場合、最終的な確定診断のために結局は胃カメラ検査を受けることになります。この「二度手間」は、患者さんの時間的、精神的な負担を増大させるだけでなく、診断の遅れにも繋がりかねません。

以下の表は、両検査の主要な違いを分かりやすくまとめたものです。この比較を通して、なぜ胃カメラ検査がより確実な診断を求める方々に選ばれるのかが明確になります。


比較項目

胃内視鏡検査(胃カメラ)

胃部X線検査(バリウム)

診断精度

高い(粘膜を直接観察)

限定的(影絵で判断)

発見できる病変

1mm程度の小さな病変、 平坦な病変も発見可能

小さな病変は発見しにくい

確定診断

可能(生検)

不可能(精密検査が必要)

放射線被ばく

なし

あり

発見に優れる疾患

胃がん、食道がん、 十二指腸がん、ピロリ菌など

胃全体の形状変化、 スキルス胃がんなど

検査後の負担

鎮静剤使用時は運転不可

下剤の服用が必要、 便秘を招く可能性

費用

やや高額

比較的安価



「苦しい、つらい」を過去にする:くりた内科・内視鏡クリニックの取り組み

胃カメラ検査を躊躇する最大の理由として、検査中の不快感や「苦しさ」が挙げられることが多いのが現実です。特に、口からスコープを挿入する際の強い吐き気(咽頭反射)は、多くの方々にとって大きな精神的な障壁となります。


くりた内科・内視鏡クリニックでは、この「苦痛」を過去のものとするために、最大限の配慮を凝らした検査体制を整えています。その核心となるのが、鎮静剤の使用です。鎮静剤を用いることで、患者さんはウトウトと眠ったような状態で検査を受けることができ、吐き気や腹部の圧迫感といった不快な感覚をほとんど感じることなく、リラックスした状態で検査を終えることが可能です。


鎮静剤の使用は、単に患者さんの負担を軽減するだけでなく、診断の精度を飛躍的に向上させるという医療的な利点ももたらします。患者さんがリラックスしていると、検査中に生じるゲップや身体の緊張が抑えられ、医師は時間をかけて丁寧に胃の内部を観察することができます。これにより、胃の中に十分な空気を送り込んで胃壁のヒダをしっかりと伸ばすことができ、そのヒダとヒダの間に隠れたわずかな早期がんや微細な病変も見逃すリスクを最小限に抑えることが可能になります。


私たちは、内視鏡検査の技術が熟練を要する「手技」であることを深く認識しています。絶え間ない練習と研鑽を積み、最新の知見と技術を常にアップデートすることで、患者さんの苦痛を極力抑えつつ、最大限の診断精度を追求しています。快適な検査環境は、医師が最も集中して検査に臨むための基盤となり、結果として患者さんの安全と正確な診断に直結すると考えています。

鎮静剤使用による検査後には、安全のため車やバイク、自転車の運転は控えていただく必要がありますが、検査後のリカバリースペースでゆっくりと休息を取っていただく時間を設けております。



受診前から受診後まで:安心して受診いただくためのステップガイド

胃カメラ検査に対する漠然とした不安の多くは、検査の具体的な流れが分からないことから生じます。ここでは、検査を安心して受けていただくために、くりた内科・内視鏡クリニックでの検査プロセスを具体的にご説明します。


検査前日

  • 夕食

    検査前日は、午後9時までに食事を終えてください。胃の中に食べ物が残っていると、正確な観察を妨げるためです。


  • 飲水

    水や透明なお茶など、色のついていない水分は摂取可能です。脱水を防ぐためにも、適度な水分補給を心がけてください。


  • 服用中の薬

    降圧剤など、毎日服用しているお薬がある方は、事前に必ず医師にご相談ください。血液をサラサラにする抗血栓薬なども、検査内容によっては休薬の必要がない場合があるため、かかりつけ医と相談することが推奨されます。


検査当日

  • 食事・飲水

    検査当日の朝は絶食です。水のみは飲んでいただいて結構ですが、牛乳やジュース、お茶などは控えてください。


  • 服装

    身体を締め付ける服装(腹巻、ガードルなど)は避け、ゆったりとした服装でご来院ください。


  • 受付と問診 来院後、受付にて手続きを済ませていただきます。その後、看護師や医師が問診を行い、体調や既往歴、現在の症状を再確認します。


  • 麻酔・鎮静 検査前に、喉や鼻への局所麻酔、あるいはご希望に応じて鎮静剤を静脈注射します。これにより、検査中の不快感を軽減し、リラックスした状態で検査に臨むことができます(鎮静剤を使用する場合は喉の局所麻酔は行わないことが多いです)。


  • 検査開始 準備が整ったら、検査台の上で左側を下にして横になり、マウスピースを軽くくわえます。内視鏡がゆっくりと挿入され、食道から胃、十二指腸までを丁寧に観察していきます。この間、肩や首の力を抜き、深呼吸を繰り返すことが、より楽に検査を受けるためのコツです。


検査後

  • 休憩 検査終了後は、鎮静剤の効果が切れるまで、リカバリースペースでゆっくりとお休みいただきます。この間、看護師が血圧や脈拍を確認し、安全な回復を見守ります。


  • 飲食 喉の麻酔が切れたことを確認してから、飲食を開始してください。水を少量飲んでみて、むせないようであれば、食事を始めても問題ありません。ただし、組織採取を行った場合は、数時間後から消化の良い食事を心がけ、2〜3日間は刺激物やアルコールを避けていただくことをお勧めします。


  • 生活 検査当日の激しい運動や長風呂は避け、シャワー程度で済ませてください。また、鎮静剤を使用した場合は、当日の自動車や自転車の運転は厳禁です。



がん検診だけじゃない:胃カメラが教えてくれるあなたの胃の健康状態

胃カメラ検査の最大の目的は胃がんの早期発見ですが、その価値はがんの発見だけに留まりません。内視鏡検査は、胃の健康全般を総合的に把握するための包括的なツールです。

胃カメラ検査によって発見される可能性のある疾患は、胃がん、食道がん、十二指腸がんといった悪性疾患だけではありません。日常的に多くの人々が悩まされている胃炎、胃・十二指腸潰瘍、逆流性食道炎、胃ポリープなどの良性疾患や、機能性ディスペプシア(症状があるにもかかわらず、原因となる異常が見つからない病態)の原因も特定することが可能です。

「最近、胃もたれがする」「胸やけが気になる」といった日常的な不調の背後には、これらの疾患が隠れていることがあります。市販薬で一時的に症状を抑えることもできますが、根本的な原因を見逃してしまうと、病気が進行するリスクがあります。

さらに、胃カメラ検査では、胃粘膜の状態を直接観察することで、ヘリコバクター・ピロリ菌の感染の有無や、胃粘膜がどの程度萎縮しているかを詳細に調べることが可能です。これらの情報は、現在の胃の健康状態だけでなく、将来的な胃がんリスクを予測し、予防策を講じる上で非常に重要なデータとなります。

このように、胃カメラ検査は単一の「がん検診」という枠を超え、あなたの胃の健康を総合的に評価し、未来の健康を守るための予防と診断の鍵を握っているのです。



最後に:ご自身の未来のために、今すぐ一歩を踏み出しましょう

胃がん検診は、ご自身の未来の健康に対する重要な投資です。厚生労働省のデータも示すように、検診の受診は胃がん死亡率の抑制に明確な効果があることが認められています。


私たちは、胃カメラ検査に対する不安を十分に理解しています。だからこそ、その不安を安心に変え、苦痛を最小限に抑え、そして診断の精度を最大限に高めるための努力を惜しみません。


初期の胃がんには自覚症状がほとんどないからこそ、「まだ大丈夫だろう」という自己判断は、最も危険な選択肢となり得ます。年齢や現在の症状の有無に関わらず、ご自身の胃がんリスクを正確に知るために、そして何よりもご自身の未来の健康のために、勇気を出して一歩を踏み出すことを心からお勧めします。


私たちは、あなたの胃の健康を支えるパートナーとして、いつでも皆様のご相談をお待ちしております。お気軽にご連絡ください。

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