大腸ポリープ切除後の食事と生活ガイド:安心・安全な回復のために
- くりた内科・内視鏡クリニック

- 10月16日
- 読了時間: 8分

大腸内視鏡検査は、大腸がんの早期発見・早期治療に欠かせない検査です。検査中にポリープが見つかった場合、多くはその場で切除することが可能です。しかし、「切除」はれっきとした「手術」にあたります。そのため、術後には一時的に食事や生活にいくつかの注意点が生じます。
当院では、検査当日に患者様へ詳細な注意点をご説明しておりますが、ご帰宅後に「これで大丈夫かな?」と不安に思われる方も少なくありません。このブログ記事では、大腸ポリープ切除後の回復を安全かつスムーズに進めるための、食事と日常生活の注意点について、医学的な根拠に基づいて分かりやすく解説いたします。ご自身の体の状態を理解し、安心して回復期間を過ごすための一助となれば幸いです。当院は、検査から治療、そしてその後の回復まで、患者様一人ひとりに寄り添ったサポートを
徹底しておりますので、ご不明な点はお気軽にご相談ください。
回復の科学:なぜ注意が必要なのか?
大腸ポリープ切除後の注意点がなぜ重要なのかを理解するためには、体の内部で何が起きているかを知ることが大切です。ポリープを切除した箇所は、例えるなら皮膚を擦りむいた後の「傷」と同じような状態です。医学的には「人工的な潰瘍」と呼ばれます。この傷口は、出血や感染を防ぎながら、ゆっくりと元の健康な粘膜へと再生していく治癒過程をたどります。
この治癒過程を妨げることなく、安全に回復するために、特に注意すべきは「後出血(遅れて起こる出血)」と「穿孔(腸壁に穴が開くこと)」という二つのリスクです。これらのリスクは、切除したポリープの大きさや、切除方法によっても異なります。当院では、ポリープの大きさや形状に応じて最適な方法を選択し、後出血のリスクを最小限に抑えるよう努めています。例えば、熱を使わずに金属製の輪(スネア)で締め付けて切除する「コールドポリペクトミー」は、熱によるダメージが少ないため、
術後の出血リスクが低いのが特徴です。
腹部に強い圧力がかかったり、血行が促進されたりすると、傷口を保護している「かさぶた」のような膜がはがれ、出血してしまう可能性があります。また、消化に悪いものを食べて腸が過剰に動きすぎると、傷口に負担をかけてしまうこともあります。術後の制限は、この大切な傷口を守り、合併症を防ぐためのものなのです。
回復を促す食事法:賢く食べて安心な1週間
ポリープ切除後の食事は、腸への負担を最小限に抑え、傷の治癒を助けることを目的とします。基本原則は「消化が良く、刺激が少ないもの」を選ぶことです。以下に、術後の時間経過に合わせた食事のポイントを解説します。
術後1〜2日目:最も安静が必要な期間
この時期は特に慎重な食事が求められます。脂肪分が少なく、繊維質がほとんど含まれない、非常に柔らかい食べ物が適しています。
推奨食品の例
おかゆ、具の入っていない味噌汁やスープ、素うどん、軟らかく煮た野菜、豆腐、卵、ささみ、白身魚など。調理法は油を使わず、煮る・蒸す・茹でるなどを選びましょう。
避けるべき食品
揚げ物や脂っこい肉(バラ肉、ロースなど)、刺激物(唐辛子、香辛料)、アルコール、食物繊維の多いもの(きのこ類、海藻、ごぼう、生の野菜)は、腸の蠕動運動を活発にし、傷口に負担をかけるため厳禁です。
術後3〜7日目:徐々に通常の食事へ
体調が安定していれば、少しずつ食事内容を通常に戻していきます。ただし、この時期もまだ油断は禁物です。
推奨食品の例
脂肪分の少ない赤身肉や、鯛・ヒラメなどの淡白な魚介類、消化の良い麺類(うどん、そうめん)、納豆など。少量から試し、体の調子を見ながら量を増やしていきましょう。
避けるべき食品
引き続き、高脂肪食、刺激物、アルコールは控えめにしてください。特にアルコールは血行を促進し、後出血リスクを高めるため、最低でも1週間は禁酒することが最も安全な選択です。
食事の準備に悩む方のために、当院で推奨する食品と避けるべき食品を一覧にまとめました。この表は、買い物や調理の際の参考にしてください。
推奨食品(消化が良く、腸に優し い) | 避けるべき食品(腸に負担をかける) |
ご飯(おかゆ、雑炊)、食パン | 揚げ物、バター、脂身の多い肉(バラ、 ロース) |
素うどん、そうめん | ラーメン、そば、パスタ |
豆腐、卵、プリン、ゼリー | 食物繊維の多い野菜(ごぼう、たけのこ) |
鶏ささみ、白身魚(鯛、ヒラメ) | きのこ類、海藻類(ひじき、わかめ) |
具なしのスープ、味噌汁 香 | 香辛料の強い料理(カレー、キムチ) |
常温の水、麦茶、ほうじ茶 | アルコール、炭酸飲料、コーヒー、紅茶 |
日常生活の注意点:安全な回復のためのチェックリスト
食事と同様に、日常生活の過ごし方にも注意が必要です。特に術後1週間は、合併症リスクを避けるために以下の点に留意してください。
運動・重労働
腹部に強い圧力がかかる行動は、後出血の大きな原因となります。
控えるべき行動
ゴルフ、ジョギング、筋力トレーニング、腹筋運動、重い荷物を持つ作業など。
推奨される行動
デスクワークやウォーキング程度の軽い散歩は、体調を見ながら数日後から再開しても問題ありません。
入浴・サウナ
血行が良くなりすぎると、傷口からの出血リスクが高まります。
控えるべき行動
長時間の入浴、サウナ、温泉の利用は控えてください。
推奨される行動
術後1〜2日はシャワーのみに留め、短時間で済ませるようにしてください。
飲酒
飲酒は血流を促進する作用があるため、傷口が完全に治癒する前に摂取すると、後出
血のリスクが著しく高まります。
控えるべき行動
最低でも1週間は禁酒することが、最も安全な回復につながります。
旅行・出張
万が一、術後に出血などの合併症が起きた場合、すぐに対応できる体制が重要です。
控えるべき行動
術後1週間は、長距離の移動を伴う旅行や出張は避けてください。
安心して見守るべき症状と、緊急性の高い兆候
ポリープ切除後は、一時的に体に変化を感じることがありますが、多くは治療に伴う正常な反応であり、時間の経過とともに落ち着いていきます。しかし、中には医療機関への連絡が必要な緊急性の高い兆候もあります。
経過観察で良い、一般的な症状
お腹の張り・ゴロゴロ感
検査時に腸管を広げるために注入された空気や炭酸ガスが原因です。当院では、お腹の張りを軽減するために吸収の早い二酸化炭素送気システムを用いており、多くの場合、数時間から1〜2日でガスが排出されるとともに改善します。
軽い腹痛・下腹部の違和感
切除した傷が治っていく過程で、チクチクとした痛みや鈍い痛みを感じることがあります。これは治癒過程で起こる炎症によるもので、数日間で徐々に和らいでいきます。
少量の出血・血便
切除した傷口からにじみ出る血液が原因です。トイレットペーパーにわずかに付着する程度や、便の表面に少量の血液が混ざる程度であれば、通常1〜2日で自然に止まります。
すぐにご連絡いただきたい、緊急性の高い兆候(赤信号)
以下の症状が見られた場合は、迷わず当院までご連絡ください。
症状 | 取るべき行動 |
便器が真っ赤になるほどの大量 の出血 | 夜間・休日を問わず、速やかに当院へご連絡 ください。 |
持続する激しい腹痛 | 速やかに当院へご連絡ください。 |
高熱、吐き気、嘔吐 | 速やかに当院へご連絡ください。 |
緊急時でも迅速に対応できるよう、当院では患者様の安全を最優先した体制を整えております。不安なことがあれば、いつでもご相談ください。
まとめ:くりた内科・内視鏡クリニックが選ばれる理由
大腸ポリープ切除後の回復期間をいかに安心して過ごせるかは、検査自体の質と、そ
の後のきめ細やかなサポート体制にかかっています。
苦痛と不安を最小限に抑える内視鏡検査
当院は、大学病院・都市部の大病院で長年の臨床経験を積んだ院長が、内視鏡専門医として検査を担当します。オリンパスの最新式内視鏡システム「EVIS X1」をはじめとする高性能な設備を導入しており、高画質・高倍率での精密な観察が可能です。また、鎮静剤を使用することで、眠っている間に検査とポリープ切除を完了させることもできます。検査時の苦痛を最小限に抑えることで、患者様は安心して治療に臨むことができます。
患者様に寄り添う配慮
検査を受ける際の不安を解消するため、当院はプライバシーに配慮した個室の前処置室や休憩スペースを完備しています。また、女性患者様向けに、検査スタッフ全員を女性にする体制も整えております。こうした細やかな配慮が、患者様の安心感につながると考えております。
効率的で質の高い医療
お忙しい方のために、胃カメラと大腸カメラの同日検査も可能です。一度の準備と通院で両方の検査を終えることができ、効率的です。また、病変が見つかった場合には、連携する大学病院などへのスムーズな紹介体制を整えており、治療まで一貫した質の高い医療を提供します。
ポリープ切除後のフォローアップは、切除したポリープの数や種類に応じて、日本消化器内視鏡学会のガイドラインに基づき、最適な検査間隔をご提案しています。切除して終わりではなく、長期にわたる健康管理のパートナーとして、当院は皆様の健康をサポートしてまいります。
大腸内視鏡検査は、大腸がんによる死亡リスクを減らす最も有効な手段の一つです。過去にポリープを切除された方、あるいは一度も検査を受けたことがない方も、ぜひ当院にご相談ください。



