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クリニックからのお知らせ

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胃カメラ検査の麻酔とは?眠ったまま受ける方法と注意点

 

胃カメラ検査では、カメラが口から入ってくることによる嘔吐反射や咽頭部の圧迫感などの身体的苦痛を伴うため、患者様は検査前から精神的な不安を感じやすい状況にあります。不安という緊張がしばしば検査前からの嘔吐反射を招くこともあります。このような不安や咽頭部の不快感反射等の苦痛を軽減するために、挿入前にも幾つかの工夫が必要となります。苦痛・緊張への配慮として、検査に先立ち首や肩の力を抜いてもらうことがまず大切です。また、当然自然現象として唾液が出ますが、溜まった唾液を飲み込むと気管に誤嚥しやすいので唾液を飲まない注意も必要です。

一番の苦痛ポイントは喉にカメラが入ってくる時の嘔吐反射です。これはカメラが舌根部や咽頭後壁に接触し圧迫することで誘発されます。嘔吐反射の強さには個人差はありますが、キシロカインスプレーによる十分な咽頭麻酔は挿入時の苦痛軽減に有効です。しかし、咽頭麻酔のみでは胃カメラ検査が辛い方でより楽に検査を受けたい場合は、静脈麻酔による鎮静剤を用いた内視鏡検査を選択します。鎮静剤を使用することで眠っている間に検査を終えることができるため苦痛が全くありません。そうならば、全員それでやれば良いのでは?と思うかもしれませんが、鎮静剤を使用する副作用や危険性もありますので全員に使用可能というわけではありません。鎮静剤の副作用として、麻酔が効きすぎますと呼吸抑制、低酸素血症、低血圧、心不全の悪化などを来たす可能性があり、ひどい時は命に係わることもあります。このため、元々呼吸器疾患や心臓病をお持ちの方は特に注意が必要です。また、別の副作用として脱抑制というものがあります。脱抑制とは、薬物などにより状況に対する反応としての衝動や感情を抑えることが不能になった状態のことを指します。眠った状態を作るために鎮静剤を使用するのに脱抑制になってしまいますと本人の意思とは無関係に大暴れしてしまいますので非常に危険です。また、鎮静剤を使用するとその日1日は自動車、バイク、自転車の運転はできません。病院まで運転して来なくてはならない方には鎮静剤は使用できませんのでご注意ください。

 

 

内視鏡検査で使用される鎮静剤

1)ベンゾジアゼピン系薬剤

(1)ミダゾラム

作用発現まで30~90 秒程度で、20~40 分程度効果が持続する薬剤です。有害事象として嘔気,嘔吐,呼吸異常(一過性無呼吸,舌根沈下による呼吸抑制),血圧低下,心室性頻拍などがあげられます。

ジアゼパムに比べて作用時間が比較的短く(消失半減期:1.8~6.4 時間),通常,血管痛は認められません。症例によっては鎮静効果が強く出るため過鎮静,昏睡をきたした場合には速やかに拮抗薬であるフルマゼニルの投与を行います。

高齢者では呼吸抑制が発現しやすく可能なかぎり低用量にとどめるべきです。ベンゾジアゼピン系鎮静薬は弱い抗コリン作用を有しているため眼圧が上昇するおそれがあります。したがって,急性閉塞隅角緑内障に対しては禁忌です。また,同薬剤は筋弛緩作用も有するため重症筋無力症の患者に対しても禁忌となります。


(2)ジアゼパム

初回10 mg を筋肉内または緩徐に静注します。有害事象として徐脈,低血圧,呼吸抑制,運動失調,血管痛(血栓性静脈炎),口渇などがあげられます。

特に血栓性静脈炎による血管痛が特徴的であり,なるべく太い静脈から緩徐に投与することが望ましいです。また,ミダゾラムと比較すると持続時間が長い(半減期36 時間)ため,検査後の患者のケアに注意が必要です。


(3)フルニトラゼパム

用量は通常成人に対し内視鏡鎮静の導入としては体重1 kg あたり0.02~0.03 mg を投与し,必要に応じて初回量の半量ないし同量を追加投与します。有害事象としては呼吸抑制,無呼吸,舌根沈下,血圧低下,錯乱(興奮,多弁)などがあります。

消失半減期はT1/2α相で2 時間,T1/2β相で24 時間と長いです。


(4)レミマゾラム

レミマゾラムは,GABAA 受容体のベンゾジアゼピン結合部位を介して,主要な抑制性神経伝達物質であるGABA のGABAA 受容体への結合を促進させることで鎮静作用を示すと考えられています。超短時間作用型ベンゾジアゼピン系薬剤でありその消失半減期は40 分と短いため近年問題となっている鎮静内視鏡後のリカバリー滞在時間を解決できる薬剤として注目されています。

現在内視鏡鎮静における保険適用を目指した医師主導治験が現在進行中です。


2)プロポフォール

半減期が短いために,ベンゾジアゼピン系鎮静薬と比べて蓄積が少なく,長時間投与後の覚醒も速いとされる薬剤です。したがって,長時間の内視鏡治療において,従来のベンゾジアゼピン系鎮静薬に代わる薬物として注目されています。しかし,半減期が短いことから単回投与では速やかに覚醒してしまうため,鎮静薬として使用する場合には0.3~3 mg/kg/時で持続静注することが多いです。覚醒が速く鎮痛作用がないため,鎮静導入時や十分な鎮静深度が得られない場合には鎮痛薬と併用することで良好な鎮静状態が得られます。有害事象として呼吸抑制,循環抑制(徐脈,低血圧),静注時の血管痛などがあげられます。

治療域が狭いことから,麻酔に習熟した専任医師がいる体制での使用に限定されます。

組成にダイズ油,卵黄レシチンを含むため,これらへのアレルギーがある患者への使用は避けなくてはなりません。


3) デクスメデトミジン塩酸塩(dexmedetomidine hydrochloride:DEX)

呼吸抑制作用が軽微であるため,安全性が高い点が特徴の薬剤です。効能効果として「局所麻酔下における非挿管での手術および処置時の鎮静」で保険収載されている薬剤です。そのような背景から,侵襲度が高い内視鏡治療時の鎮静薬として使用されることが多いです。十分な鎮静深度を得られない場合には,ベンゾジアゼピン系鎮静薬や鎮痛薬が併用されます。

成人に投与する場合,デクスメデトミジンを6μg/ kg/ 時の投与速度で10 分間静脈内へ持続注入し(初期負荷投与),続いて至適鎮静レベルが得られるよう,維持量として0.2~0.7μg/ kg/ 時の範囲で持続注入します(維持投与)。有害事象として血圧上昇・低下,徐脈,冠動脈痙攣などがあげられます。投与量が多くなると呼吸抑制や舌根沈下が起こりうるため,深い鎮静時や他の鎮静・鎮痛薬との併用時は注意を要します。


4)ペチジン塩酸塩

モルヒネと同様にオピオイド受容体作動薬(麻薬性鎮痛薬)で,鎮痛効果はモルヒネの1/5~1/10です。一方,モルヒネと比較して尿閉・便秘発現作用などは弱く,呼吸抑制は軽度です。有害事象として呼吸抑制,喘息発作の誘発,起立性低血圧,頻脈,眠気,めまい,ふらつき,便秘,排尿障害,胆道痙攣,嘔気・嘔吐などがあげられます。


5)ペンタゾシン

モルヒネやペチジン塩酸塩と異なり,麻薬拮抗性鎮痛薬です。有害事象に呼吸抑制,血圧上昇,心拍数上昇,嘔気・嘔吐,尿閉,痙攣などがあり,しばしば,内視鏡検査終了後も嘔気・嘔吐が持続する患者がいることに注意が必要です。

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