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便が細いのは大腸がんのサイン?細くなる原因と、受診したほうがよい目安を消化器内科医が解説

4 分前
読了時間: 13分

ふとトイレで、便がいつもより細いことに気づいた。インターネットで調べると「大腸がんの症状」という言葉が出てきて、急に心配になった。この記事は、そういう状態で検索している方に向けて書いています。


便が細いという変化だけで、大腸がんの可能性が高いとは言えません。便が細く見える原因としてよくあるのは、便がやわらかくなっていることや、痔など肛門の状態です。ただし、細い状態が何週間も続く場合や、血が混じる、体重が減る、貧血を指摘されたといった変化が重なる場合は、大腸の内側を一度確かめておく理由が出てきます。

ここでは、便が細くなる仕組みと主な原因、論文でわかっている「大腸がんと結びつきやすい症状」、受診の目安、当院での診察と検査の進め方を順に整理します。



便の太さは、何で決まるのか

便の形は、腸の中をどれくらいの時間で通ってきたかによって大きく変わります。ゆっくり通った便は水分が吸収されて硬く小さくなり、急いで通った便は水分を多く含んだやわらかい形になる。これが基本の仕組みです。


66人のボランティアを対象に、マーカー入りの小さな粒を飲んで腸を通過する時間を測り、便の形を7段階で記録してもらった研究があります[1]。腸を通る時間と最もよく対応していたのは、排便の回数でも便の重さでもなく、便の形でした。下剤(センナ)を飲んで通過を速めると便はやわらかい側へ、下痢止め(ロペラミド)で遅くすると硬い側へ動いています[1]。この7段階の目安は「ブリストル便形状スケール」と呼ばれています。


便の太さも見た目の一部で、その日の食事や水分、体調によって日々変わります。


やわらかい便は、細く見えやすい

やわらかい便や下痢気味の便は、形を保てず細長く出やすいものです。2009年の総説は、便が細いという理由だけで大腸カメラに紹介される人が多いことに触れ、「便の細さは大腸がんの徴候」という考え方は19世紀の終わりに生まれたもので、裏づける信頼できるデータがないと述べています[2]。下痢の状態は大腸がんよりはるかに多く、軟便のときに便が細く見えるのはよくあることだ、という指摘です[2]。


この総説は、便の細さだけを理由にした検査への紹介は必要ないとしつつ、血便、排便習慣の変化、しぶり腹(便意があるのに出ない状態)、お腹の左側の差し込むような痛み、貧血といった症状があれば話は別だ、とも書いています[2]。当院の考え方もこれに近く、「細さ」そのものより、ほかに何が起きているかを重く見ています。



便が細くなる主な原因

便が細くなる原因は、大きく「便そのもの」「肛門まわり」「大腸の内側」の3つに分けて考えると整理しやすくなります。


便そのものの原因:軟便・下痢、食事や生活の変化

よくあるのは、便そのものがやわらかくなっているケースです。脂っこいものやお酒が多かった、睡眠不足や緊張が続いた、といった変化で腸の動きが速まると、細くやわらかい便になります。旅行や出張のあと、仕事の繁忙期などに気づくことがあります。


過敏性腸症候群(IBS)のように、ストレスや生活リズムと連動して下痢や便秘を繰り返す体質の方では、日によって便の形がかなり違うことも珍しくありません。


食物繊維が足りないときは、便のかさが減り、出し切れない感じとともに細い便や少量の便が続くことがあります。成人の慢性便秘を対象にした16の臨床試験をまとめた解析では、食物繊維のサプリメントを使った人の66%で症状が改善し、使わなかった人の41%を上回っていました[3]。効果がはっきりしたのは1日10gを超える量で、排便回数の改善は4週間以上続けた場合に見られています[3]。一方で、おならが増えるという副作用も報告されています[3]。


肛門まわりの原因:いぼ痔や切れ痔、いきみにくさ

いぼ痔が大きくなっている、切れ痔の痛みで肛門が緊張している、といった肛門まわりの問題があると、便が通り抜けるときに押しつぶされて細く見えることがあります。排便のたびに痛む、紙に赤い血がつく、肛門のあたりに腫れを感じる、という方はこちらを先に考えます。


痛みがあると、無意識にいきむのを途中でやめてしまい、便を少しずつしか出せなくなることもあります。細い便とすっきりしない感じが同時にあるなら、肛門の痛みが関係していないかを確かめるところから始めます。


大腸の内側の原因:通り道が狭くなっている

頻度は高くありませんが、大腸のどこかが狭くなっていると、そこを抜けてきた便が細くなることがあります。原因として考えるのは、大腸がんや大きなポリープ、炎症をくり返したあとの腸の狭まり(憩室炎のあとなど)です。特に肛門に近い直腸やS状結腸(直腸の手前で曲がっている部分)の病変では、便が細くなったり、排便のあともまだ出し切れていない感じ(残便感)が続いたりすることがあります。


お腹の診察や血液検査では、腸の狭まりそのものまでは見えません。原因がそこにあるかどうかは、大腸カメラで粘膜を直接観察して判断します。



大腸がんと結びつきやすいのは、どんな症状か

では、どんな症状があると大腸がんの可能性が高まるのでしょうか。ここは論文の数字で見ておきます。


40歳以上:どの症状が、どのくらい手がかりになるか

英国のある地域の全21診療所で、大腸がんと診断された40歳以上の349人と、年齢・性別をそろえた1,744人の、診断前2年間のカルテを比べた研究があります[4]。この研究で大腸がんと関連していた特徴は10あり、その中に便の細さそのものは含まれていませんでした[4]。主な特徴と、その特徴がある人が実際に大腸がんだった割合(陽性的中率)は次のとおりです[4]。


診断前に見られた特徴

その特徴がある人が大腸がんだった割合

便潜血検査の陽性

7.1%

直腸の診察での異常

4.0%

血便(肛門からの出血)

2.4%

ヘモグロビン10.0g/dL未満の貧血

2.3%

体重減少

1.2%

腹痛

1.1%

下痢

0.94%

便秘

0.42%


表を見ると、どの症状も単独では「大腸がんである確率」がそれほど高くないことがわかります。


診療所を受診した人を対象にした研究をまとめた別の解析では、50歳以上で血便があった人のうち大腸がんだった割合は8.1%でした[5]。貧血があった人(年齢の区切りなし)では9.7%です[5]。対象や年齢の区切りが違うため、上の表の数字とは一致しません。血便に体重減少や排便習慣の変化が重なると、血便だけのときより大腸がんの可能性が高まることも示唆されています[5]。


症状が重なるほど、手がかりは強くなります。ただし、血便や貧血はそれだけでも大腸を調べる理由になります[5]。便が細いことに加えて血便や体重減少がある方は、細さだけの方とは分けて考えます。


50歳未満でも:腹痛・血便・下痢・鉄欠乏性貧血

50歳未満で見つかる大腸がんは米国などで増えてきており[6]、米国では50歳未満で大腸がんと診断された5,075人を、大腸がんのない人と比べた研究が行われています[6]。診断の3か月〜2年前に見られた症状のうち、大腸がんと関連していたのは腹痛、血便、下痢、鉄欠乏性貧血の4つでした[6]。


これらの症状が1つあると大腸がんのリスクは約1.9倍、2つで約3.6倍、3つ以上で約6.5倍になっていました[6]。また、診断の3か月〜2年前に最初の症状が出ていた人では、症状が出てから診断までの期間の中央値が8.7か月でした[6]。最初の症状から診断までに時間がかかっている人がいる、という数字です。


ご家族に大腸がんの方がいる場合

ご両親やごきょうだい、お子さんに大腸がんの方がいる場合も、検査を考える理由になります。47の研究をもとにした解析では、そうした近い家族が1人以上いると大腸がんのリスクは約2.2倍、2人以上では約4.0倍でした[7]。この解析の試算では、50歳の人がその後の生涯で大腸がんになる確率は一般に1.8%ですが、近い家族が1人以上いると3.4%、2人以上では6.9%に上がります[7]。



受診したほうがよい目安

ここまでの内容をふまえて、当院では次のように考えています。


早めにご相談いただきたいとき

次のうち1つでも当てはまる場合は、細い便が続いている期間にかかわらず、早めに受診してください。


  • 便に赤い血や、暗い赤色の血が混じる

  • 食事を減らしていないのに体重が落ちてきた

  • 健診や血液検査で貧血、特に鉄欠乏性貧血を指摘された

  • 健診の便潜血検査で陽性だった

  • 下痢と便秘をくり返すなど、排便の習慣が以前と変わった

  • 出したあとも便が残っている感じがずっと続く

  • ご両親やごきょうだいに大腸がんの方がいる


出血が多い、立ちくらみやふらつきが強いといったときは、来院を待たずにまずお電話でご相談ください。


少し様子を見てもよいとき

ほかに症状がなく、下痢気味の時期や食事の乱れに心当たりがあり、数日でふだんの便に戻ったという場合は、急いで受診しなくてもかまいません。食事と水分、睡眠を整えて、便の形がどう変わるかを見てください。


ただ、生活を整えても細い便が続き、元に戻らない場合は、一度ご相談ください。2〜3週間ほどがひとつの目安ですが、決まった日数があるわけではありません。「戻ったと思ったらまた細くなる」をくり返している場合も同じです。40歳を過ぎて大腸カメラを受けたことがない方には、この機会に検査をおすすめすることがあります。



よくある受診パターン

便が細いことを心配して受診される方には、いくつかの典型的な流れがあります。特定の方の話ではなく、よく見られる形をまとめたものです。


ひとつは、仕事が忙しい時期に便がやわらかく細くなったことに気づき、インターネットで「がん」という言葉を見て不安になって来院される方です。お話をうかがうと、食事の時間が不規則で、睡眠も短くなっていた、という方もいらっしゃいます。


もうひとつは、排便のたびに肛門が痛み、紙に赤い血がつくようになってから便も細くなった、という方です。まず考えるのは切れ痔やいぼ痔ですが、年齢によっては痔の治療とあわせて大腸カメラをおすすめすることがあります。肛門に痔が見つかっても、それだけでは大腸の奥に別の病気がないとまでは言えないからです。


三つめは、数か月前から便の細さと残便感が続き、健診の便潜血検査でも陽性が出ていた40〜50代の方です。細さに加えて別の変化が重なっている場合は、大腸カメラで腸の内側を確認することをおすすめしています。



当院での診察と検査の進め方

まずは外来で症状をうかがいます

くりた内科・内視鏡クリニックでは、便が細いという相談を受けたとき、まず次のような点をうかがいます。


  • 細い便に気づいたのはいつごろか、ずっと続いているか、戻ったり細くなったりをくり返しているか

  • 便のやわらかさ、排便の回数、残便感の有無

  • 血が混じっていないか、肛門の痛みや腫れがないか

  • 体重の変化、健診で貧血や便潜血陽性を指摘されていないか

  • ご家族に大腸がんや大腸ポリープの方がいるか

  • これまでに大腸カメラを受けたことがあるか


大腸カメラを受けると決めている方は、「大腸カメラ事前診察」の枠でご予約ください。受けるかどうか迷っている方は、まず外来でご相談ください(肛門の痛みや出血がある方は肛門内科の外来へ)。


必要に応じて、指で確かめる診察(指診)や、肛門鏡という短い器具を使った診察を行います。服は着たまま、お尻だけを出していただく形で行います。痔の治療は塗り薬から始め、改善しない場合は外科的な治療ができる医療機関をご紹介しています。


大腸カメラを受ける場合

問診の内容から大腸の内側を確かめたほうがよいと判断した場合や、ご自身で検査を希望される場合は、大腸カメラを受けていただきます。当院の標準的な流れは、3回の来院です。


1回目 ご相談と「大腸カメラ事前診察」を同じ日に行います(合計20〜30分ほど)。飲んでいるお薬や持病を確認し、検査前日の食事と下剤の飲み方をご説明します


2回目 検査の当日です(約1時間半)。下剤は原則ご自宅で飲んでいただき、腸がきれいになった状態でご来院いただきます


3回目 結果のご説明です(約10分)。結果は来院のうえでお伝えしており、お電話やWebでのご説明は行っていません


ご高齢の方やお身体の不自由な方など、必要な場合は院内で下剤を飲んでいただくこともできます。院内には下剤服用のためのトイレ付き個室を1室ご用意しています。


検査がつらそうで不安な方へ

検査の苦痛が心配な方には、鎮静剤を使う方法があります。鎮静剤は手術で使うような全身麻酔とは別のお薬で、うとうとした状態で検査を受けていただけます。効き方には個人差があるため、年齢や体重、持病に応じて量を調整しています。鎮静剤を使った日は、検査後にリカバリー室で30分ほど休んでいただきます。当日は車・バイク・自転車の運転はできませんので、公共交通機関などでお越しください。


検査中にポリープが見つかった場合、その場で切除できる大きさ・形のものは切除しています。状況によっては、専門の医療機関をご紹介することもあります。



よくあるご質問

Q. 便が細いのは1回だけでした。受診したほうがいいですか。

A.1回だけで、ほかに症状がなく、その後はふだんどおりの便に戻っているなら、急いで受診しなくてもかまいません。やわらかい便のときは、細く見えやすいからです[2]。ただし、血が混じっていた場合は回数にかかわらずご相談ください。


Q. 30代ですが、便が細いことが続いています。若くても大腸がんはありますか。

A.あります。50歳未満の大腸がんでは、腹痛、血便、下痢、鉄欠乏性貧血が手がかりになり、重なるほどリスクが上がることがわかっています[6]。便の細さに加えてこうした症状がある方は、年齢に関係なく受診してください。


Q. 便が細いのですが、便潜血検査だけで大丈夫ですか。

A.便潜血検査は、症状のない方が大腸がんの検診として受ける検査です。陽性だった場合は大腸カメラが必要になります。反対に、陰性でも腸の中に何もないことまでは確かめられません。症状が続いている方は、便潜血検査の結果を待つより、まず外来でご相談いただくほうが近道です。


Q. 食物繊維をとれば、便の太さは戻りますか。

A.食物繊維が足りていなかった方では、排便が整うことがあります。便秘の方を対象にした研究では、1日10gを超える量を4週間以上続けた場合に効果がはっきりしていました[3]。ただ、この研究は便の太さそのものを測ったものではありません。ただし、それでも細い便が続く場合や、血便などほかの症状がある場合は、食事だけで様子を見ずに受診してください。



症状別に詳しく知りたい方へ

便秘が続いている方へ


便秘と大腸がんの関係が気になる方へ


下痢気味の便が続いている方へ


便に血が混じっている方へ


肛門の痛みや出血がある方へ


大腸カメラを受ける年齢の目安を知りたい方へ


当院の大腸カメラ検査について


大腸カメラ事前診察について


肛門の診察について



まとめ

便が細くなったことだけで、大腸がんを強く疑う必要はありません。やわらかい便や下痢気味のとき、痔で肛門が狭くなっているときにも、便は細く見えます。


見ておきたいのは、細い状態が続いているかどうかと、ほかの変化が重なっていないかです。血便、体重減少、貧血、便潜血陽性、排便習慣の変化、残便感、大腸がんの家族歴。細い便のことが気になりながら、「そのうち戻るだろう」と何週間も見送っていませんか。このどれかがある方や、40歳を過ぎて大腸カメラを受けたことがない方は、一度ご相談ください。


当院は阪急大宮駅から徒歩2分の場所にあり、外来でのご相談から大腸カメラ事前診察、検査、結果のご説明までを同じ院内で行っています。


引用文献

1. Lewis SJ, Heaton KW. Stool form scale as a useful guide to intestinal transit time. Scand J Gastroenterol. 1997;32(9):920-924.

2. Borhan-Manesh F. "Low caliber stool" and "pencil thin stool" are not signs of colo-rectal cancer. Dig Dis Sci. 2009;54(2):208-211.

3. van der Schoot A, Drysdale C, Whelan K, Dimidi E. The Effect of Fiber Supplementation on Chronic Constipation in Adults: An Updated Systematic Review and Meta-Analysis of Randomized Controlled Trials. Am J Clin Nutr. 2022;116(4):953-969.

4. Hamilton W, Round A, Sharp D, Peters TJ. Clinical features of colorectal cancer before diagnosis: a population-based case-control study. Br J Cancer. 2005;93(4):399-405.

5. Astin M, Griffin T, Neal RD, Rose P, Hamilton W. The diagnostic value of symptoms for colorectal cancer in primary care: a systematic review. Br J Gen Pract. 2011;61(586):e231-e243.

6. Fritz CDL, Otegbeye EE, Zong X, Demb J, Nickel KB, Olsen MA, et al. Red-flag signs and symptoms for earlier diagnosis of early-onset colorectal cancer. J Natl Cancer Inst. 2023;115(8):909-916.

7. Butterworth AS, Higgins JP, Pharoah P. Relative and absolute risk of colorectal cancer for individuals with a family history: a meta-analysis. Eur J Cancer. 2006;42(2):216-227.



 
 

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