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胃カメラで「腸上皮化生」と言われたら|胃がんとの関係と、次の検査の目安を消化器内科医が解説

9 分前
読了時間: 12分

胃カメラの結果説明で「腸上皮化生があります」と言われ、聞き慣れない言葉に戸惑った。家に帰って調べると「胃がんの前段階」という説明が出てきて、不安になった。この記事は、そういう方に向けて書いています。


先にお伝えすると、腸上皮化生があるからといって、近いうちに胃がんになるとは限りません。ただし、腸上皮化生のない胃と比べると胃がんが起こりやすい状態ではあるため、ピロリ菌の確認と、間隔をあけた胃カメラでの経過観察を続けていくことが大切になります。


ここでは、腸上皮化生とは何か、胃がんとどのくらい関係があるのか、ピロリ菌の除菌で何が変わるのか、そして次の胃カメラをいつ受ければよいのかを、論文の数字を交えて順に整理します。



腸上皮化生とは、胃の粘膜が腸に似た粘膜に置き換わった状態

胃の内側は、胃酸や消化酵素を出す胃の粘膜でおおわれています。この粘膜が長いあいだ炎症にさらされると、少しずつ薄くなり(萎縮)、ところどころで腸の粘膜によく似た細胞に置き換わっていきます。この置き換わった状態を「腸上皮化生」と呼びます。


炎症の原因として最も多いのは、ピロリ菌の感染です。ピロリ菌が胃に長く住みつくと、慢性胃炎が続き、萎縮が広がり、その先に腸上皮化生が現れる、という順番で胃の粘膜が変わっていきます。腸上皮化生そのものに自覚症状はほとんどなく、胃カメラで初めて指摘される方がほとんどです。


胃カメラでの見え方と、生検で確かめること

胃カメラでは、腸上皮化生は白っぽく少し盛り上がった斑点や、ざらざらした粘膜として見えることがあります。粘膜の表面の模様や血管を強調して映す特殊な光(当院の内視鏡では NBI などの観察機能)を使うと、ふつうの光より範囲を確かめやすくなります。


見た目で腸上皮化生が疑われる場合、粘膜の一部をつまんで顕微鏡で調べる検査(生検)を行うことがあります。腸上皮化生かどうか、ほかに気になる変化が混じっていないかは、この病理検査の結果で判断します。



胃がんの起こりやすさは、1年あたり0.2〜0.4%前後

「胃がんの前段階」と聞くと、すぐにがんになるような印象を受けるかもしれません。実際の数字を見てみます。


日本の研究:ピロリ菌に感染していた人だけに胃がんが起きていた

日本で、胃潰瘍・十二指腸潰瘍や胃の不調などで通院していた1,526人を平均7.8年追った研究があります[1]。ピロリ菌に感染していた1,246人のうち36人(2.9%)に胃がんが見つかり、感染していなかった280人では1人も見つかっていません[1]。感染していた人の中でも、萎縮が強い人、胃の上のほう(体部)を中心に炎症がある人、腸上皮化生がある人は、胃がんになるリスクがはっきり高くなっていました[1]。


1年あたりに胃がんになる割合

オランダで、胃の生検で前がん病変と診断された人の記録を全国規模で調べた研究では、腸上皮化生と診断された人は61,707人いました[2]。この人たちが診断から5年以内に胃がんと診断された割合は、1年あたり0.25%でした[2]。萎縮性胃炎だけの人では1年あたり0.1%、軽度から中等度の異形成(がんに近い変化)では0.6%で、粘膜の変化が進んでいるほど数字が高くなっています[2]。


世界の44の研究をまとめた2025年の解析では、腸上皮化生から胃がんに進む割合は1,000人あたり1年に2.89人(およそ0.3%)と見積もられています[3]。胃がんの多い国に限ると1,000人あたり1年に3.47人(約0.35%)で、少ない国との差ははっきりしませんでした[3]。


1年あたり0.3%前後という数字は、100人いれば1年で0.3人、10年でおよそ3人という計算になります。高い数字ではありませんが、腸上皮化生がない人と同じでもありません。すぐに心配する必要はないものの、放っておいてよい状態でもない。数字から見える腸上皮化生の位置づけは、そのあたりです。


腸上皮化生の「型」や「広がり」で、リスクは変わる

腸上皮化生には、顕微鏡で見たときの細胞の性質によって「完全型」と「不完全型」があります。12のコホート研究、合わせて6,498人を対象にした解析では、不完全型の腸上皮化生がある人は、完全型の人に比べて胃がんになるリスクが約5.2倍でした[4]。


病理検査の結果に型が書かれていることもあれば、書かれていないこともあります。型がわかっている場合は、結果説明のときに医師と一緒に確認しておくと、次の検査の時期を考える材料になります。

腸上皮化生が胃の一部にとどまっているのか、胃の広い範囲に広がっているのかも、リスクを考えるうえで大切な情報です。結果説明のときに、どこにどのくらいあったのかを医師に確かめておくと、次の検査の時期を考えやすくなります。



ピロリ菌の除菌で変わること

腸上皮化生があると言われたら、まず確かめたいのがピロリ菌です。まだ感染している場合は、除菌を考えます。


腸上皮化生がある人でも、除菌で胃がんは減る

腸上皮化生まで進んでいると、除菌の効果は小さいのではないか、という見方もありました。2025年に発表された、16のランダム化比較試験(合わせて15,027人)をまとめた解析では、腸上皮化生がある人でも、除菌した人は除菌しなかった人に比べて胃がんのリスクが約4割低くなっていました(リスク比0.61)[5]。腸上皮化生や異形成がある人全体で見ると、リスクは45%低下しています[5]。


腸上皮化生そのものが改善することもある

15の研究をまとめた別の解析では、除菌をした人のほうが腸上皮化生が改善する割合が高く、腸上皮化生が進むことも抑えられていました[6]。ただし、改善せずに残る方もいます。


除菌が終わっても、胃カメラは続ける

除菌に成功しても、胃がんの心配がなくなるとは限りません。日本で、除菌に成功したあと毎年胃カメラを受けていた2,737人を最長21.4年(平均7.1年)追った研究では、68人に胃がんが見つかり、1年あたりの発生率は0.35%でした[7]。この研究の著者らは、除菌から10年を過ぎても胃カメラでの経過観察を続けるべきだと結論づけています[7]。


除菌で胃がんのリスクは下がりますが、ゼロにはなりません。除菌は胃カメラと組み合わせてリスクを下げる治療だと考えてください。



腸上皮化生と言われたあとにすること

  1. ピロリ菌に感染しているかを確かめる

これまでにピロリ菌の検査を受けたことがない方、除菌をしたものの成功したかどうか確認していない方は、まず検査を受けてください。当院では、採血によるピロリ菌抗体検査と、尿素呼気試験(袋に息を吹き込む検査)の2つで調べています。どちらで調べるかは、診察のときにご相談します。


  1. 間隔をあけて胃カメラを受け続ける

腸上皮化生は、一度の胃カメラで確かめて終わりにするものではありません。定期的に胃カメラを受けて、粘膜の変化やがんの芽を早い段階で見つけていくことが目的になります。


次の胃カメラまでの間隔は、全員に同じ年数を当てはめるものではありません。腸上皮化生の広がり、萎縮の程度、ピロリ菌の状態(感染中か、除菌後か)、ご家族に胃がんの方がいるかどうかをあわせて考えます。除菌後の方には、目安として、萎縮が軽い方は2〜3年ごと、萎縮が中等度以上に進んでいる方は1〜2年ごとの胃カメラをお伝えしています。そのうえで、お一人お一人の結果に合わせて時期をご提案します。


  1. 食事やサプリメントは、除菌の代わりにはならない

腸上皮化生が気になって、食事やサプリメントで何とかしたいと考える方もいらっしゃいます。2024年に世界の16の診療指針を比べた報告では、胃がんの予防のために内視鏡以外の対策として、どの指針もそろって勧めていたのはピロリ菌の除菌だけでした[8]。


塩分を控える、たばこをやめるといった生活の見直しは、体全体の健康のためにも取り組む価値があります。ただ、生活の見直しだけで腸上皮化生は消えません。ピロリ菌の確認と定期的な胃カメラに上乗せするものです。


すぐに受診してほしい症状

腸上皮化生があると言われた方で、次のような症状が出てきた場合は、次の予定を待たずにご相談ください。


  • みぞおちの痛みや胃の不快感が続く

  • 食事がつかえる感じがする、食べられる量が減った

  • 食事を減らしていないのに体重が落ちてきた

  • 黒い便(タールのような便)が出た

  • 健診や血液検査で貧血を指摘された



よくある受診パターン

腸上皮化生を指摘されて相談に来られる方には、いくつかの典型的な流れがあります。特定の方の話ではなく、よく見られる形をまとめたものです。


ひとつは、会社の健診や人間ドックで胃カメラを受け、結果票に「腸上皮化生」と書かれていたものの、詳しい説明を受けないまま時間がたってしまった50〜60代の方です。お話をうかがうと、ピロリ菌の検査をしたことがなく、検査をしてみて感染がわかる、ということがあります。


もうひとつは、数年前にピロリ菌を除菌し、「これで大丈夫」と思って胃カメラから遠ざかっていた方です。除菌後の胃にも腸上皮化生が残っていることがあり、あらためて定期的な胃カメラの計画を立て直します。


三つめは、ご家族が胃がんの治療を受けたことをきっかけに胃カメラを受け、腸上皮化生を指摘された方です。ご家族の病歴も、次の検査の間隔を考える材料になります。



当院での胃カメラと結果説明

胃カメラの選び方

くりた内科・内視鏡クリニックでは、口から入れる経口内視鏡と、鼻から入れる経鼻内視鏡のどちらかを選んでいただけます。経口内視鏡はオリンパス社製の GIF-XZ1200、経鼻内視鏡は先端の直径5.4mmの GIF-1200N を使っています。


検査のつらさが心配な方には、鎮静剤を使う方法があります。鎮静剤は、手術で使うような全身麻酔とは別のお薬で、うとうとした状態で受けていただけます。使うかどうかはご希望でお決めいただけます。ただし、お薬や持病の状況によっては、診察でご相談のうえ判断させていただく場合があります。なお、経鼻内視鏡では原則として鎮静剤を使いませんので、鎮静剤を希望される方は診察のときにご相談ください。


鎮静剤を使った日は、検査後にリカバリー室で30分ほど休んでいただきます。当日は車・バイク・自転車の運転はできませんので、公共交通機関などでお越しください。鎮静剤を使わない場合は、のどの麻酔が切れるまでの30分ほど、飲んだり食べたりするのを控えていただきます。


胃カメラの枠は、午前に加えて、夕方16時のイブニング枠もご用意しています。


生検をした場合の結果説明

腸上皮化生の確認などで生検を行った場合、病理検査の結果が届くまで2週間ほどかかります。結果が届いたら、あらためてご来院いただき、腸上皮化生の有無や広がり、ほかに気になる変化がないかをご説明します。そのときに、ピロリ菌の検査や除菌、次の胃カメラの時期もあわせてご相談します。



よくあるご質問

Q. 腸上皮化生があると、いずれ胃がんになるのですか。

A.腸上皮化生がある方の多くは、胃がんにならずに過ごします。オランダの全国調査では、腸上皮化生と診断された人が胃がんと診断された割合は1年あたり0.25%でした[2]。ただ、腸上皮化生のない胃よりは起こりやすいため、定期的に胃カメラを受けて、変化があれば早めに見つけることが大切です。


Q. ピロリ菌の除菌はもう済んでいます。それでも胃カメラは必要ですか。

A.必要です。除菌に成功したあとも胃がんが見つかる方はいます。日本の研究の著者らは、除菌から10年以上たっても経過観察を続けるべきだと結論づけています[7]。どのくらいの間隔で受けるかは、萎縮や腸上皮化生の程度によって変わります。


Q. 腸上皮化生は治りますか。

A.ピロリ菌を除菌すると、腸上皮化生が改善する方もいます[6]。一方で、消えずに残る方もいます。改善したかどうかにかかわらず、定期的な胃カメラは続けてください。


Q. 胃のバリウム検査で様子を見てもよいですか。

A.腸上皮化生は粘膜の色や表面の細かな変化として見えるもので、その広がりを確かめたり、生検で調べたりするには胃カメラが必要です。腸上皮化生を指摘された方の経過観察には、胃カメラをおすすめしています。



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まとめ

腸上皮化生は、ピロリ菌などによる長い炎症のあとに、胃の粘膜が腸に似た粘膜に置き換わった状態です。胃がんが起こりやすい状態ではありますが、1年あたりに胃がんになる割合は0.2〜0.4%前後で、指摘されたからといってすぐにがんになるとは限りません。


大切なのは、ピロリ菌の状態を確かめて必要なら除菌すること、そして間隔をあけて胃カメラを受け続けることです。結果票に「腸上皮化生」と書かれたまま、次の検査の予定が決まっていない方は、一度ご相談ください。当院は阪急大宮駅から徒歩2分の場所にあり、胃カメラから結果のご説明、ピロリ菌の検査と除菌までを同じ院内で行っています。


引用文献 

1. Uemura N, Okamoto S, Yamamoto S, Matsumura N, Yamaguchi S, Yamakido M, et al. Helicobacter pylori infection and the development of gastric cancer. N Engl J Med. 2001;345(11):784-789.

2. de Vries AC, van Grieken NC, Looman CW, Casparie MK, de Vries E, Meijer GA, et al. Gastric cancer risk in patients with premalignant gastric lesions: a nationwide cohort study in the Netherlands. Gastroenterology. 2008;134(4):945-952.

3. Hahn AI, Mülder DT, Huang RJ, Zhou MJ, Blake B, Omofuma O, et al. Global Progression Rates of Precursor Lesions for Gastric Cancer: A Systematic Review and Meta-Analysis. Clin Gastroenterol Hepatol. 2025;23(9):1514-1524.e13.

4. Du S, Yang Y, Fang S, Guo S, Xu C, Zhang P, et al. Gastric Cancer Risk of Intestinal Metaplasia Subtypes: A Systematic Review and Meta-Analysis of Cohort Studies. Clin Transl Gastroenterol. 2021;12(10):e00402.

5. Fu Q, Yu H, Liu M, Chen L, Chen W, Wang Z, et al. Effect of Helicobacter pylori eradication on gastric cancer risk in patients with intestinal metaplasia or dysplasia: a meta-analysis of randomized controlled trials. Front Microbiol. 2025;16:1530549.

6. Zhu F, Zhang X, Li P, Zhu Y. Effect of Helicobacter pylori eradication on gastric precancerous lesions: A systematic review and meta-analysis. Helicobacter. 2023;28(6):e13013.

7. Take S, Mizuno M, Ishiki K, Kusumoto C, Imada T, Hamada F, et al. Risk of gastric cancer in the second decade of follow-up after Helicobacter pylori eradication. J Gastroenterol. 2020;55(3):281-288.

8. Dinis-Ribeiro M, Shah S, El-Serag H, Banks M, Uedo N, Tajiri H, et al. The road to a world-unified approach to the management of patients with gastric intestinal metaplasia: a review of current guidelines. Gut. 2024;73(10):1607-1617.



 
 

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