ピロリ菌と胃がんの関係性について―― 除菌で何が変わり、何が変わらないのかを専門医が整理 ――
- 2025年11月29日
- 読了時間: 4分
更新日:2月4日

ピロリ菌/胃がん/食道疾患はよくある症状ですが、放置してよい場合と、検査が必要な場合があります。
このページでは“受診の目安”を整理します。
ピロリ菌は「胃がんの最大の原因」です
ピロリ菌(Helicobacter pylori)は、胃がん発症の最大の原因因子であることが、国内外の大規模研究で明確になっています[1,2]。
日本人の胃がんの多くは、ピロリ菌感染を起点とした慢性胃炎の長期経過の中で発生します[1]。
一方で、
除菌すればもう安心なのか
除菌後も胃がんになる人がいるのはなぜか
内視鏡検査はいつまで必要なのか
といった点は、十分に整理されないまま誤解されがちです。
このページでは、ピロリ菌感染 → 胃の変化 → 胃がんリスク → 検査・フォローの考え方を一本の流れとして、医学的根拠に基づき整理します。
結論の要点(先に知りたい方へ)
ピロリ菌は胃がんの主因である[1,2]
除菌は胃がんリスクを下げるが、ゼロにはならない[3,4]
萎縮性胃炎が進んでいる場合、除菌後も定期的な胃カメラが重要
除菌後のフォロー方法は「一律」ではなく、胃の状態で決まる
ピロリ菌とは何か|なぜ問題になるのか
ピロリ菌は、胃の粘膜に長期間生息する細菌で、以下のような変化を引き起こします。
慢性胃炎
胃粘膜の萎縮
腸上皮化生
胃がん
この連続した変化(コルレアのカスケード)が、胃がん発症の基本構造です[1,5]。
ピロリ菌と胃がんの関係|医学的に確立した事実
胃がん患者の多くはピロリ菌感染歴がある
疫学研究では、胃がん患者の90%以上にピロリ菌感染歴があると報告されています[2,6]。
特に日本では、
若年期に感染
長期間の慢性炎症
という条件が重なり、胃がんリスクが高くなりやすいとされています[1,2]。
除菌すると胃がんは防げるのか?
答え:リスクは下がるが、ゼロにはならない
ピロリ菌除菌により、胃がん発症リスクは約30〜50%低下すると報告されています[3,4]。
ただし、
すでに萎縮が進んでいる胃
腸上皮化生が存在する胃
では、除菌後も胃がんが発生する可能性があります[4,7]。
この点を詳しく知りたい方は、以下の記事で解説しています。
除菌後に「何が変わり、何が変わらない」のか
変わること
炎症は改善する
新たな萎縮進行は抑えられる
胃・十二指腸潰瘍の再発が減る[3]
変わらないこと
すでに進んだ萎縮・腸上皮化生
胃がんリスクが完全にゼロになること
このため、除菌後こそ「胃の状態評価」が重要になります。
胃がん予防に本当に重要なのは「検査」
なぜ胃カメラが必要なのか
胃がんは、
早期:症状がほとんどない
進行後:症状が出る
という特徴があります[2]。
そのため、
症状の有無
除菌済みかどうか
だけで判断するのは危険です。
胃粘膜の状態(萎縮・化生)を直接確認できるのは、胃カメラ検査のみです[1,7]。
▶︎ 胃カメラ検査について詳しくはこちら
ピロリ菌と胃ポリープの関係
ピロリ菌感染は、
過形成性胃ポリープ
胃粘膜の慢性炎症
とも深く関係します[8]。
一部の胃ポリープは、胃がんリスク評価の「ヒント」になることもあります。
こんな方は一度評価をおすすめします
ピロリ菌検査を受けたことがない
除菌後、胃カメラを一度もしていない
40歳以上で胃の検査歴がない
胃もたれ・胃痛が続いている
これらは、「症状がなくても検査を考えるサイン」です。
ピロリ菌対策の本質
ピロリ菌は胃がんの最大の原因
除菌は重要だが「ゴール」ではない
胃の状態に応じたフォローが必要
検査を含めて初めて「予防」になる
さらに詳しく知りたい方はこちらの記事もご覧ください
▶︎ 除菌後の注意点・検査の考え方はこちらへ
症状が続く場合や、「様子見でよいか迷う」段階でも構いません。
消化器内科・内視鏡専門医が整理します。
参考文献
Uemura N, et al. Helicobacter pylori infection and the development of gastric cancer. N Engl J Med. 2001;345:784-789.
IARC Working Group. Schistosomes, liver flukes and Helicobacter pylori. IARC Monogr Eval Carcinog Risks Hum. 1994;61.
Fukase K, et al. Effect of eradication of Helicobacter pylori on incidence of metachronous gastric carcinoma after endoscopic resection. Lancet. 2008;372:392-397.
Lee YC, et al. Association between Helicobacter pylori eradication and gastric cancer incidence. Gastroenterology. 2016;150:1113-1124.
Correa P. A human model of gastric carcinogenesis. Cancer Res. 1988;48:3554-3560.
Plummer M, et al. Global burden of gastric cancer attributable to Helicobacter pylori. Int J Cancer. 2015;136:487-490.
Japanese Gastric Cancer Association. Japanese gastric cancer treatment guidelines. Gastric Cancer. 2021.
Park DY, et al. Gastric hyperplastic polyps and Helicobacter pylori. Am J Gastroenterol. 2004;99:1601-1606.






