ピロリ菌除菌後の方への注意点――「もう安心」と思っていませんか?除菌後こそ重要な3つのポイント ――
- 2025年11月30日
- 読了時間: 4分
更新日:1月29日

除菌は「ゴール」ではありません
ピロリ菌除菌治療を受けた方の多くが、「もう胃がんの心配はない」「検査はしなくていい」と考えてしまいがちです。
しかし医学的には、除菌後こそ注意が必要な時期に入った、と考えます。
ピロリ菌除菌は胃がんリスクを下げますが、ゼロにする治療ではありません[1,2]。
このページでは、
除菌後に「何が変わるのか」
「何が変わらないのか」
除菌後に本当に必要な検査・フォロー
を、専門医の立場から整理します。
※ピロリ菌と胃がんの全体像は、以下の記事で詳しく解説しています。
結論の先出し|除菌後に最も大切な考え方
除菌で胃がんリスクは下がる
しかし、萎縮性胃炎が進んでいる場合、除菌後も胃がんは起こりうる
除菌後の対応は「一律」ではなく、胃の状態で決まる
ピロリ菌除菌で「変わること」
胃の炎症は改善する
除菌により、
胃粘膜の慢性的な炎症
潰瘍の再発
は明らかに減少します[2,3]。
胃がんリスクは確実に低下する
大規模研究では、除菌により胃がん発症リスクが約30〜50%低下すると報告されています[2,4]。
→ここまでは「事実」です。
ピロリ菌除菌で「変わらないこと」
ここが最も重要で、誤解されやすい点です。
すでに進んだ萎縮・腸上皮化生は元に戻らない
長期間のピロリ菌感染により生じた
萎縮性胃炎
腸上皮化生
は、除菌後も完全には消失しません[1,5]。
胃がんリスクがゼロにはならない
特に、
高度萎縮
除菌年齢が高い
胃がん家族歴がある
場合、除菌後胃がん(除菌後発がん)が起こることが知られています[4,6]。
なぜ「除菌後」に胃カメラが重要なのか
胃がんは「除菌後の胃」にも発生する
除菌後の胃がんは、
平坦で
色調変化が乏しく
症状が出にくい
という特徴があり、内視鏡でなければ見逃されやすいとされています[6,7]。
胃カメラで何を見ているのか
萎縮の程度
腸上皮化生の有無・範囲
ポリープや微小病変
これらを総合して、次の検査間隔を決めます。
▶︎ 胃カメラ検査について詳しくはこちら
「抗体検査」「ABC検診」は必要?
除菌後の抗体検査の位置づけ
除菌後は、
ピロリ抗体が徐々に低下する
偽陰性になることがある
ため、抗体検査だけで安心と判断するのは不適切です[8]。
ABC検診について
ABC検診(抗体+ペプシノゲン)は、
未除菌の集団スクリーニング向き
であり、除菌後の個別リスク評価には不十分とされています[9]。
→除菌後のフォローは「血液検査」ではなく、胃カメラが基本です。
除菌後フォローの目安(一般的な考え方)
※ あくまで目安であり、個別に調整します。
萎縮が軽度:2〜3年ごとの胃カメラ
萎縮が中等度以上:1〜2年ごとの胃カメラ
胃がん家族歴あり:より慎重なフォロー
胃ポリープがある方は要注意
除菌後、
過形成性ポリープは縮小・消失することがある
一方で、胃がんリスク評価のヒントになることもあります[10]。
こんな方は特に注意してください
除菌後、一度も胃カメラを受けていない
「除菌したから大丈夫」と言われただけで経過観察がない
胃もたれ・胃痛が続いている
40歳以上で除菌を受けた
これらは、見直しを検討すべきサインです。
除菌後に本当に大切なこと
除菌は「スタート地点」
胃がん予防は除菌+適切な内視鏡フォローで完成する
自分の胃の状態を把握することが最重要
症状が続く場合や、「様子見でよいか迷う」段階でも構いません。
消化器内科・内視鏡専門医が整理します。
参考文献
Correa P. A human model of gastric carcinogenesis. Cancer Res. 1988;48:3554-3560.
Fukase K, et al. Effect of eradication of Helicobacter pylori on incidence of metachronous gastric carcinoma.Lancet. 2008;372:392-397.
Uemura N, et al. Helicobacter pylori infection and the development of gastric cancer. N Engl J Med. 2001;345:784-789.
Lee YC, et al. Association between Helicobacter pylori eradication and gastric cancer incidence. Gastroenterology. 2016;150:1113-1124.
Kuipers EJ, et al. Atrophic gastritis and Helicobacter pylori infection. Gut. 1995;36:734-738.
Maehata Y, et al. Risk factors for gastric cancer after eradication of Helicobacter pylori. Gut. 2012;61:1219-1225.
Japanese Gastric Cancer Association. Japanese gastric cancer treatment guidelines. Gastric Cancer. 2021.
Malfertheiner P, et al. Management of Helicobacter pylori infection—the Maastricht VI Consensus Report. Gut. 2022;71:1724-1762.
Miki K. Gastric cancer screening using the serum pepsinogen test method. Gastric Cancer. 2006;9:245-253.
Park DY, et al. Gastric hyperplastic polyps and Helicobacter pylori. Am J Gastroenterol. 2004;99:1601-1606.






