大腸カメラが怖い・痛いと感じる方へ|鎮静剤を使った検査の実際
- 4月24日
- 読了時間: 9分

はじめに
「大腸カメラって痛いんでしょう?」
「怖くてなかなか踏み出せなくて 」
外来でこうした言葉を聞くたびに、私はとても気になります。大腸カメラへの不安や恐怖感は、多くの方が抱えているものです。それ自体はまったく不思議なことではありません。ただ、その不安が「受診しない」という選択につながってしまうとしたら、見逃してほしくない病気を見逃すことになりかねない。それだけが心配です。
この記事では、大腸カメラが「怖い・痛い」と思われている理由を整理したうえで、鎮静剤を使った検査がどのようなものなのかを、できるだけ具体的にお伝えします。「鎮静剤を使えば、こんな感じで受けられる」ということが伝われば、少し気持ちが楽になるかもしれません。
なぜ大腸カメラは「怖い・痛い」と思われているのか
過去の経験や人づての話が先入観をつくる
大腸カメラへの不安の多くは、「以前受けたときつらかった」「友人から痛かったと聞いた」という体験
談からきています。実際、鎮静剤が普及する以前の検査は、現在よりも苦痛を伴うことが少なくありませんでした。内視鏡の機器も技術も大きく進歩しているにもかかわらず、その印象が更新されないまま残っているケースがとても多いのです。
医学的な観点から見ると、大腸カメラ中に患者さんが感じる不快感や痛みは、主に大腸の伸展(腸が引き伸ばされる感覚)や、空気を送り込む際の腹部膨満感によるものです [1]。大腸は個人差が大きく、蛇行が強い方や腸が長い方では、検査中に一時的な不快感を感じやすい傾向があります。
「下剤が大変」という声も多い
痛みへの不安と同じくらいよく聞くのが、「前日・当日に飲む下剤がつらい」という声です。大腸カメラの前には腸の中をきれいにするために下剤(腸管洗浄液)を飲む必要があり、その量(一般的に 1〜2リットル)に抵抗を感じる方も多くいます。最近は飲みやすさを工夫した製剤も増えてきており、以前ほどの負担感は減っています。当クリニックでも患者さんの状況に合わせた前処置方法をご提案しています。
羞恥心・プライバシーへの不安
「お尻からカメラを入れる」という手技の性質上、羞恥心を感じる方も多くいます。特に女性の方や、初めて受ける方にとって大きな心理的ハードルになることがあります。医療機関では羞恥心を最小限にするための配慮(検査用の専用ガウン、カーテンの仕切りなど)を行っていますが、こうした不安も事前に確認・相談していただけると安心です。
鎮静剤とは何か
「眠くなる注射」のこと
鎮静剤とは、検査中に不安や恐怖を和らげ、リラックスした状態で検査を受けていただくために使用する薬剤のことです。「眠くなる注射」と表現されることもあります。
大腸カメラで使用される鎮静剤は主にベンゾジアゼピン系薬剤(ミダゾラムなど) やプロポフォールが知られています。これらは点滴から投与し、検査中はウトウトした半覚醒の状態になります。「完
全に意識を失う全身麻酔」とは異なり、名前を呼ばれると反応できる程度の浅い眠りです。
鎮静剤を使用した大腸内視鏡検査は、患者さんの満足度を大幅に高めることが複数の研究で示されています。痛みや不快感が軽減されるだけでなく、「次回も受けよう」という気持ちにつながりやすいとい
う報告もあります。
鎮静剤を使うと何が変わるのか
鎮静剤なしの検査と比べて、鎮静剤を使用した検査では
検査中の痛みや不快感が大幅に軽減される
「怖い」「やめたい」という気持ちが和らぐ
気づいたら終わっていた、という感覚になる方が多い
検査後に検査中の記憶がほとんど残らないことがある(健忘効果)
鎮静剤なしでも検査は受けられます。実際、当クリニックの午前 11 時の枠は鎮静剤なしの検査に対応しており、「なるべくスッキリした状態で帰りたい」「一人で来院している」という方にご利用いただいています。
一方、「とにかく怖い」「以前の検査がつらかった」という方には、鎮静剤の使用をお勧めしています。外来で患者さんとお話しすると、女性が大腸カメラをためらう理由はいくつかパターンがあります。
鎮静剤を使った大腸カメラ検査の実際の流れ
具体的にどのような流れで検査が行われるのかをお伝えします。当クリニックでの実際の手順に沿って説明します。
来院・受付(前日から準備開始)
検査前日から食事制限が始まります。前日の夕食は消化の良いものを摂り、当日の朝から絶食します。当日の朝〜検査開始までの間に、自宅または院内で腸管洗浄液を飲んでいただきます。腸の中がきれいになった状態で来院していただきます。
問診・更衣
来院後、体調確認の問診を行います。アレルギー歴、使用中のお薬、鎮静剤の使用希望などを確認します 。
検査用の専用ガウンに着替えていただきます。
点滴の準備
鎮静剤は点滴から投与します。横になった状態で腕に点滴針を留置します。
鎮静剤の投与・検査開始
検査台に横向きに寝ていただき、点滴から鎮静剤を投与します。数十秒〜 1〜2 分ほどでウトウトした状態になります。多くの方が「気づいたら終わっていた」とおっしゃいます。検査時間は腸の形状や所見によって異なりますが、平均的には 20〜30 分程度です。
院長である私が全例の内視鏡検査を担当しています。日本消化器内視鏡学会の指導医として、できる限り患者さんへの負担が少ない検査を心がけています。
回復室で休憩(約 30 分)
検査終了後は、院内の回復室でリクライニングチェアに横になって休んでいただきます。鎮静剤の効果が完全に切れるまで、約 30 分お休みいただきます。多くの方が「ゆっくり休めた」「検査の記憶がほとんどない」とおっしゃいます。
結果説明・お会計
回復後、検査中に撮影した画像を見ながら結果をご説明します。ポリープが見つかった場合は、その場で切除するか、後日改めて切除するかをご相談します。
鎮静剤を使う際の注意点
鎮静剤を使用する場合、いくつかの注意事項があります。
当日の車・バイク・自転車の運転は禁止
これが最も重要な注意点です。鎮静剤の効果は検査後にある程度回復してからも、判断力や反応速度に影響が残る場合があります。そのため、検査当日は自動車・バイク・自転車のすべての運転ができません。
徒歩・公共交通機関・タクシーでの来院をお願いしています。
当クリニックは阪急大宮駅から徒歩 2 分の立地ですので、電車でのご来院が便利です。お車でいらした場合は、提携駐車場(タイムズ大宮仏光寺・タイムズ仏光寺大宮)への駐車は可能ですが、当日は車をそのまま置いてお帰りいただく形になります(後日取りに来ていただく必要があります)。
一人での来院でも受けられます
「付き添いがいないと受けられないの?」とよく聞かれますが、当クリニックでは一人での来院でも鎮静剤を使用した大腸カメラを受けていただけます。回復室でしっかり休んでいただいた後、ご自身でお帰りいただく形になります(運転は除く)。
稀に副作用が起きることがある
鎮静剤は一般的に安全性の高い薬剤ですが、まれに血圧低下・呼吸抑制・アレルギー反応などが起きることがあります。検査中は血圧・脈拍・酸素飽和度を継続的にモニタリングしており、異常があれば速やかに対応できる体制を整えています。
こんな方に特に鎮静剤をおすすめします
以前の大腸カメラがつらかった方
初めての大腸カメラで緊張している方
腸が長い・蛇行が強いと言われたことがある方
検査への恐怖心が強くて受診をためらっていた方
「痛みを感じたくない」という方
反対に、以下のような方は事前にご相談ください。
呼吸器系の疾患がある方(COPD・睡眠時無呼吸症候群など)
特定の薬剤アレルギーがある方
高齢で全身状態が心配な方
事前の問診で確認させていただきますので、ご不安な点は何でもおっしゃってください。
鎮静剤なしの大腸カメラという選択肢
「鎮静剤を使わずに受けたい」という方も、もちろん受け入れています。
当クリニックでは、午前 11 時の枠は鎮静剤なしの検査に対応しています。
鎮静剤なしのメリットは、検査後すぐに車で帰宅できること、薬剤の副作用がないこと、回復のための待機時間が不要なことです。ただし、鎮静剤なしの場合、腸の形状や蛇行の具合によっては一時的な不快感を感じることがあります。
「以前鎮静剤なしで受けてつらかった」という方には、次回は鎮静剤の使用をご検討いただくことをお勧めします。
大腸カメラを受けることの意味
怖さや不安を感じながらも大腸カメラを受けようと考えていただいていること自体、とても大切なことだと思っています。
大腸がんは日本人のがん罹患数・死亡数の上位を占めるがんのひとつですが、早期に発見できれば治癒が見込めるがんでもあります。大腸カメラは、大腸がんの前段階であるポリープの段階で発見・切除することができる唯一の検査です。
また、大腸カメラには「異常がないことを確認できる」という側面もあります。「ずっと気になっていたけど問題なかった」と安心して帰っていただける方も多くいます。
鎮静剤を使うことで、検査の体への負担を大幅に減らすことができます。「あのとき受けておいてよかっ
た」という声を、外来でよく耳にします。
院長からのひとこと
私が日本消化器内視鏡学会の指導医を取得したのは、「安全に、できる限り患者さんに負担をかけない検査をしたい」という気持ちからです。指導医は内視鏡専門医をさらに指導できる立場の資格で、開業クリニックでこの資格を持つ医師はまだ多くありません。
毎回の検査で心がけているのは、「この人がまた次も受けようと思えるかどうか」です。一度つらい思いをすると、次の検査まで間が空いてしまうことが多い。そうなると、発見が遅れるリスクが上がります。
だからこそ、鎮静剤を上手に活用して、「また受けてもいいかな」と思っていただける検査を目指しています。
「大腸カメラを受けようか悩んでいる」「以前つらかったけどまた受けるべき?」という方、まず一度ご相談ください。検査のことだけでなく、前処置の方法や鎮静剤の使い方についても、その方に合った方法を一緒に考えます。
平日の午後と土曜日の午後も大腸カメラ検査を実施していますので、お仕事のある方にもご利用いただきやすい環境を整えています。
まとめ
大腸カメラへの「怖い・痛い」という不安は多くの方が持っているが、鎮静剤の活用で大幅に軽減できる
鎮静剤を使うとウトウトした状態で検査を受けられ、「気づいたら終わっていた」という方が多い
当日の車・バイク・自転車の運転は禁止。一人での来院でも検査は受けられる
鎮静剤なし(午前 11 時枠)の選択肢もある
大腸カメラは大腸がんの早期発見・ポリープ切除に有効な検査
不安なことはなんでも事前に相談してほしい
「大腸カメラを受けようか迷っている」という方の背中を、少しでも押せたら嬉しいです。
気になる症状があれば、まずはお気軽にご相談ください。
一緒に考えましょう。
参考文献
1. Froehlich F, Thorens J, Schwizer W, et al. Sedation and analgesia for colonoscopy: patient
tolerance, pain, and cardiorespiratory parameters. Gastrointest Endosc. 1997;45(1):1-9.
2. Seip B, Bretthauer M, Dahler S, et al. Patient satisfaction with on-demand sedation for
outpatient colonoscopy. Endoscopy. 2010;42(8):639-646.
3. Steenholdt C, Jensen JT, Brynskov J, et al. Patient satisfaction of propofol versus midazolam
and fentanyl sedation during colonoscopy. Clin Gastroenterol Hepatol. 2022;20(3):559-568.






