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胃カメラで「生検します」と言われたら|組織検査の意味と結果の見方を専門医が解説

4 時間前
読了時間: 13分

胃カメラの途中で「少し組織を採らせてください」と言われた瞬間、頭が真っ白になったという方は少なくありません。検査が終わって着替えながら、採られたのは自分の胃のどこなのか、なぜ採られたのか、がんを疑われたということなのか——聞きたかったことが後から次々に浮かんできます。そして結果が出るまでの二週間ほどを、落ち着かない気持ちで過ごすことになる。

先に結論をお伝えします。生検は「がんを疑ったから採る」ものだけではありません。むしろ、がん以外の理由で採ることのほうが日常的には多い検査です。この記事では、生検で何を調べているのか、結果の紙に並ぶ言葉をどう読めばいいのか、そして「異常なし」だったときに何を考えておけばよいのかを、京都市下京区・四条大宮のくりた内科・内視鏡クリニック院長が整理します。


生検とは、胃の粘膜をほんの少しつまんで顕微鏡で見る検査です

生検(せいけん)は、内視鏡の中を通した細い鉗子(かんし)で、胃や食道の粘膜をごく小さくつまみ取る操作を指します。採れる組織は米粒よりも小さく、数ミリ程度です。


粘膜の表面には痛みを感じる神経がほとんど通っていません。つままれた瞬間の痛みを訴えられる方は多くありません。鎮静剤を使わずに受けている方でも、「今採りましたよ」と言われて初めて気づいたとおっしゃることがあります。所要時間も一か所あたり数秒。生検をしたからといって、検査全体が大幅に長くなるわけではありません。


採った組織は容器に入れて病理検査室へ送られます。そこで固定・薄切・染色という工程を経て、病理医が顕微鏡で細胞の一つひとつを確認します。内視鏡の画面に映っているのは粘膜の「表面の様子」ですが、生検で分かるのは「細胞そのものの姿」です。この二つは見ている次元が違うので、どちらか一方だけでは答えが出ないことがあります。


なぜ採るのか——生検の目的は大きく三つ

目的1:ピロリ菌や胃炎の状態を確かめる

胃の粘膜は、ピロリ菌に感染しているかどうかで見た目が変わります。感染していない胃には粘膜の細かい血管が規則正しく並んで見え、感染中の胃は全体に赤みを帯び、粘膜がむくみます。こうした所見を体系立てた「胃炎の京都分類」を使うと、内視鏡の画像だけでピロリ菌の感染状態をかなりの精度で言い当てられます。


かなりの精度であって、確実ではありません。経験を積んだ内視鏡医が京都分類にもとづいて判定した研究では、正しく分類できた割合は82.9%でした[1]。裏を返せば、およそ六人に一人は見た目だけでは判断を誤る余地があるということになります。

だから生検をします。粘膜を採って顕微鏡で見れば、菌がいるかどうかだけでなく、炎症がどの程度続いているかまで分かる。「見た目で分かるのに、なぜわざわざ」と思われるかもしれませんが、その残りの十数%を埋めるための一手です。


目的2:萎縮と腸上皮化生が、どこまで進んでいるかを測る

長くピロリ菌に感染していた胃は、粘膜が薄く痩せていきます。萎縮性胃炎と呼ばれる状態です。それが進むと、胃の粘膜が腸の粘膜に似た性質へ置き換わることがあります。これが腸上皮化生です。

この二つは、胃がんが生まれる土壌にあたります。ただ「ある・ない」だけでは意味が薄く、胃のどこに、どのくらいの広がりであるのかが問題になる。そこで、胃の決まった場所から複数箇所を採り(更新シドニーシステムと呼ばれる採取法です)、萎縮の程度をOLGA、腸上皮化生の程度をOLGIMという段階で表す方法が使われます。


この採り方を日常的に守っている内視鏡医とそうでない医師を比べた研究では、萎縮性胃炎の検出率が20%対5.3%、腸上皮化生では12.2%対3.4%と、決まった手順で採るかどうかで見つかる数がまるで違いました[2]。決まった手順で採るほうが、いずれも3〜4倍多く見つかっています。一か所だけの採取では、あるはずのものを見落とすことがあります。


段階分けにどれほどの意味があるのかも、数字が出ています。前向き研究八本・12,526人をまとめた解析では、OLGAまたはOLGIMがIII〜IVの段階にある人は、0〜IIの人と比べて胃がんの発生が明らかに多いという結果でした[3]。同じ「萎縮性胃炎です」という言葉でも、経過観察の間隔を年単位で変えるべき人と、そこまで急がなくてよい人が混ざっています。生検はその仕分けをするために採っています。


目的3:見えたものの正体を確かめる

ポリープ、へこみ、色の違うまだら。内視鏡で何かが見えたとき、その正体を確かめる方法は生検しかありません。胃のポリープには放置してよいものとそうでないものがあり、見た目で見当はつきますが、最終的な答えを出すのは顕微鏡です。


つまり、生検を勧められた理由は「がんを疑っている」とは限らない。ピロリ菌を調べるためかもしれないし、萎縮の程度を測るためかもしれません。検査後の説明でどの目的だったのかを尋ねていただければ、その場でお答えできます。


出血や痛みが心配な方へ

生検で最も気にされるのが出血です。実際には、つまんだ跡はごく小さく、多くはその場で自然に止まります。


日本で行われた前向き研究では、上部消化管の生検を受けた3,758人のうち、生検に関連した出血が起きたのは6人(0.15%)でした[4]。この研究には、血液をさらさらにする抗血栓薬を飲んだまま生検を受けた286人も含まれていますが、薬を続けた群と中止した群とで出血の頻度に差は認められていません(0.35%対0.14%)。


抗血栓薬を飲んでいる方でも、生検自体は多くの場合可能です。ただし薬の種類や本数、他のご病気によって判断が変わりますので、服用中のお薬は検査の予約時に必ずお伝えください。当院でも、糖尿病のお薬や抗血栓薬を飲んでいる方には事前のご連絡をお願いしています。自己判断で中止するほうが、かえって危険な場合があります。


結果が出るまでの期間と、その間に起きていること

当院では、生検などの病理検査を行った場合、結果が届くまで2週間程度を見ていただいています。届いた後で改めてご来院いただき、ご説明します。


なぜそんなにかかるのか。採った組織は、まず形を保つために固定液に浸します。ここに一晩。続いてパラフィンという蝋に埋め込み、数マイクロメートル——髪の毛の太さの二十分の一ほど——に薄く切り、ガラスに貼って染色します。ピロリ菌を見るためには追加の染色が要ることもあります。そこまで整えて、ようやく病理医が顕微鏡をのぞく。


急いで縮められる工程ではありません。二週間は待たされている時間ではなく、必要な手間がかかっている時間だとお考えください。


なお、鎮静剤を使って検査を受けた場合、検査直後の説明はまだ眠気が残っていて頭に入らないことがあります。当院では、そうしたときは日を改めて説明する形もお選びいただけます。


結果の紙に並ぶ言葉の読み方

病理の報告書は専門用語の羅列に見えますが、患者さまが押さえておくべき語はそう多くありません。


慢性胃炎・活動性胃炎——粘膜に炎症の細胞が集まっている状態です。「活動性」とついている場合は、ピロリ菌が現在いる可能性が高いことを示します。


萎縮——胃液を出す腺が減って粘膜が痩せた状態。程度を軽度・中等度・高度で表すことが多くあります。


腸上皮化生——胃の粘膜が腸に似た性質へ置き換わった状態。先に述べたとおり、広がりが大きいほど注意して見ていく必要があります。


Group分類——日本の胃生検では、腫瘍らしさの程度をGroup 1から5で表す方法が長く使われてきました。おおまかには、1が非腫瘍、2が腫瘍か非腫瘍か判断に迷うもの、3が腺腫、4ががんを強く疑うもの、5ががんにあたります(このほかに、判定できないことを示すGroup Xがあります)。数字が病気の進み具合を示しているわけではないので、「Group 3だから3期」といった読み方はしないでください。


このGroup分類には、知っておいていただきたい背景があります。同じ標本を見ても、日本の病理医が「がん」と診断するものを欧米の病理医は「高度異型腺腫」と呼ぶことが以前から知られていました。12か国31人の病理医が同一の標本を診断した検討では、従来の分類での一致率は胃の病変で37%にとどまっています[5]。この食い違いを埋めるために作られたのがウィーン分類で、改訂版では一致率が80%まで上がりました。報告書に見慣れない分類名が併記されていることがあるのは、こうした経緯によります。


そして同じ論文は、生検そのものの限界にも触れています。生検はあくまで病変の一部をつまんだ標本なので、採った場所によっては本当の悪性度や深さを実際より軽く見積もってしまうことがある[5]。だから内視鏡の画面で気になる所見があるのに生検が「異常なし」で戻ってきた場合、当院ではそこで確定とせず、時期をおいて採り直すか、別の方法で確かめます。生検の結果は単独で下される判定ではなく、内視鏡所見と併せて読むものです。



「異常なし」でも、そこで終わりにしない場合があります

生検で悪いものが出なかった。それは何よりの知らせです。ただ、萎縮や腸上皮化生が見つかっている方の場合、「今は大丈夫」と「これから先も大丈夫」は別の話になります。


ピロリ菌の除菌は胃がんのリスクを下げますが、除菌すれば土壌が元通りになるわけではありません。除菌後の患者さまを平均15.7年、最長20年にわたって追った日本の研究では、内視鏡で見た萎縮は確かに改善していきました。その一方で、除菌後の胃に現れる地図状発赤という所見は、15年目まで3.6%から18.7%へと増えています[6]。粘膜は変化し続けているということです。


ですから、除菌が済んだ方にも定期的な胃カメラをお勧めしています。何年ごとが適切かは、萎縮や腸上皮化生の広がりによって変わる。まさに、生検で測っておいた段階が効いてくる場面です。



よくある受診のかたち

以下は、複数の方の経過を組み合わせた架空の例です。特定の個人の記録ではありません。


健診のバリウム検査で引っかかり、初めて胃カメラを受けた四十代の方。内視鏡では萎縮性胃炎が広く見られたため、必要な範囲から複数箇所の生検を採らせていただきました。結果はがんではなく、ピロリ菌の現感染と中等度の萎縮。除菌治療を行い、その後は年に一度の胃カメラを続けておられます。


もう一つ。ピロリ菌の除菌を十年以上前に他院で済ませ、「もう安心」と思って胃カメラから遠ざかっていた六十代の方。胸やけをきっかけに久しぶりに受けられたところ、腸上皮化生が広く残っていました。この方には、除菌済みであっても間隔を詰めて見ていく方針をご説明しています。



早期に見つけることの意味

胃がんが見つかったときの見通しは、進み具合によって大きく変わります。日本胃癌学会の全国登録で、2010年から2013年に手術を受けた92,305人を解析した報告では、病理学的にStage IAだった方の5年生存率は89.6%、Stage IVでは14.0%でした[7]。


この数字は手術で切除された症例の登録データであり、すべての胃がんの方の成績ではない点にはご注意ください。それでも、早い段階で見つかるかどうかが結果を大きく左右することは読み取れます。


生検は、その「早い段階」を捉えるための道具のひとつです。数ミリの組織を採ることに抵抗を感じられるのは自然なことですが、その数ミリが数年先の選択肢を広げます。



当院での胃カメラと生検の考え方

くりた内科・内視鏡クリニックでは、すべての胃カメラを内視鏡専門医が担当しています。オリンパス社の内視鏡システムEVIS X1と、光学ズームを備えた経口内視鏡GIF-XZ1200を使用しており、粘膜の細かな変化を拡大して観察しながら、必要な場所を狙って生検を行います。


検査方法は、口から入れる経口内視鏡と鼻から入れる経鼻内視鏡のどちらかをお選びいただけます。えずきが強い方には経鼻内視鏡が向いています。ただし経鼻の場合、鼻が狭くて入らないときに経口へ切り替える必要があるため、当院では経鼻内視鏡での鎮静剤の使用は行っていません。鎮静剤をご希望の方は、経口内視鏡を選んでいただく形になります。鎮静剤を使った場合は、ストレッチャーのままリカバリー室へ移動し、30分ほどお休みいただきます。当日のお車・バイク・自転車の運転はお控えください。


検査後は診察室で内視鏡の写真をご覧いただきながら、その場で分かることをご説明します。生検の結果は2週間程度で届きますので、改めてご来院ください。がんなど当院で治療できない病気が見つかった場合は、連携している大学病院などへ速やかにご紹介いたします。



よくあるご質問

Q. 生検をしたということは、がんを疑われているのでしょうか。

A. そうとは限りません。ピロリ菌の感染を確かめるため、萎縮や腸上皮化生の程度を測るためなど、がん以外の目的で採ることのほうが日常的には多くあります。どの目的だったかは、検査後の説明でお尋ねください。


Q. 生検をした当日は、いつもどおりに過ごせますか。

A. 食事を再開する時期は麻酔の覚め具合によりますので、その日の指示に従ってください。激しい運動と飲酒は当日お控えいただくのが無難です。鎮静剤を使った場合は運転ができません。


Q. 抗血栓薬(血液をさらさらにする薬)を飲んでいますが、生検はできますか。

A. 多くの場合は可能です。日本の前向き研究でも、薬を続けたまま生検を受けた方と中止した方とで、出血の頻度に差は出ていません[4]。ただし薬の種類や本数によって判断が変わりますので、必ず予約時にお申し出ください。自己判断で中止しないでください。


Q. 結果を聞きに行くのを忘れていました。今からでも間に合いますか。

A. 結果はお預かりしていますので、お電話のうえご来院ください。二週間を大きく過ぎていても構いません。聞かないままにしておくことのほうが問題です。



症状別に詳しく知りたい方へ



まとめ

「生検します」という一言は、告知ではありません。胃の状態を、見た目の推測ではなく細胞の事実として確かめるための手続きです。がんを探すためだけでなく、ピロリ菌の有無を確かめ、萎縮と腸上皮化生の広がりを測り、次にいつ胃カメラを受けるべきかを決めるために採っています。


読者の方に判断していただきたいのは、たった一つです。結果を聞きに行くこと。二週間後の説明で、ご自身の胃がどの段階にあるのかが分かり、そこから先の間隔が決まります。その説明を受け取らないままにしておくと、せっかく採った数ミリが何の役にも立ちません。


結果を聞きに行くところまでを検査の一部だと考えて、二週間後のご予定を今のうちに空けておきませんか。


胃の不調が続いている方、健診で指摘を受けた方、除菌したきり胃カメラから遠ざかっている方は、京都市下京区・四条大宮のくりた内科・内視鏡クリニックまでご相談ください。



この記事を書いた医師・お問い合わせ先

栗田 亮(くりた あきら)/くりた内科・内視鏡クリニック 院長

日本消化器内視鏡学会 消化器内視鏡専門医・指導医

くりた内科・内視鏡クリニック

〒600-8383 京都府京都市下京区綾大宮町62 シェルブリュー四条大宮1階

阪急大宮駅 徒歩2分

電話 075-334-6007

診療時間 月火水金 9:00〜12:00 / 16:00〜18:00、土 9:00〜12:00、木・日・祝 休診


引用文献

1. Yoshii S, Mabe K, Watano K, Ohno M, Matsumoto M, Ono S, Kudo T, Nojima M, Kato M, Sakamoto N. Validity of endoscopic features for the diagnosis of Helicobacter pylori infection status based on the Kyoto classification of gastritis. Dig Endosc. 2020;32(1):74-83.

2. Latorre G, Vargas JI, Shah SC, Ivanovic-Zuvic D, Achurra P, Fritzsche M, et al. Implementation of the updated Sydney system biopsy protocol improves the diagnostic yield of gastric preneoplastic conditions: Results from a real-world study. Gastroenterol Hepatol. 2024;47(8):793-803.

3. Benites-Goni H, Cabrera-Hinojosa D, Latorre G, Hernandez AV, Uchima H, Riquelme A. OLGA and OLGIM staging systems on the risk assessment of gastric cancer: a systematic review and meta-analysis of prospective cohorts. Ther Adv Gastroenterol. 2025;18:17562848251325461.

4. Ara N, Iijima K, Maejima R, Kondo Y, Kusaka G, Hatta W, Uno K, Asano N, Koike T, Imatani A, Shimosegawa T. Prospective analysis of risk for bleeding after endoscopic biopsy without cessation of antithrombotics in Japan. Dig Endosc. 2015;27(4):458-464.

5. Schlemper RJ, Kato Y, Stolte M. Review of histological classifications of gastrointestinal epithelial neoplasia: differences in diagnosis of early carcinomas between Japanese and Western pathologists. J Gastroenterol. 2001;36(7):445-456.

6. Iwata E, Sugimoto M, Akimoto Y, Hamada M, Niikura R, Nagata N, Yanagisawa K, Itoi T, Kawai T. Long-term endoscopic gastric mucosal changes up to 20 years after Helicobacter pylori eradication therapy. Sci Rep. 2024;14(1):13003.

7. Kakeji Y, Ishikawa T, Suzuki S, Akazawa K, Irino T, Miyashiro I, et al. A retrospective 5-year survival analysis of surgically resected gastric cancer cases from the Japanese Gastric Cancer Association nationwide registry (2001-2013). Gastric Cancer. 2022;25(6):1082-1093.



 
 

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