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胃が痛いときの治し方|自分でできる対処・やってはいけない対処と受診の線引きを専門医が解説

2 日前
読了時間: 14分

更新日:10 分前


いま現に胃が痛くて、この記事にたどり着いた方が多いと思います。仕事や家事の途中で痛みはじめて、病院に行くほどなのか、それとも家で休んでいれば収まるものなのか、判断がつかない。そういう状態でしょうか。


胃の痛みは、放っておいても数時間で消えるものから、その日のうちに調べたほうがよいものまで幅があります。しかも、痛みの強さと危険度は一致するとは限りません。とても痛いのに検査では何も見つからないこともあれば、我慢できる程度の鈍い痛みの裏に潰瘍が隠れていることもあります。


ですからこの記事は、「まず危険なサインがないかを確かめる」ところから始めます。そのうえで、自宅でできる工夫、かえって受診を遅らせてしまう対処、そして「どこまで様子を見てよいか」の線引きへ、順に進みましょう。



まず確認|すぐに受診が必要な胃痛のサイン

次のような症状をともなう胃の痛みは、自宅で様子を見る対象から外してください。

  • 吐いたものに血が混じる、コーヒーの残りかすのような黒っぽいものを吐いた

  • 便が海苔の佃煮のように黒くベタつく(タール便)

  • 冷や汗が出る、意識が遠のく、立ち上がるとふらつく

  • お腹が板のように硬くなり、押しても離しても激しく痛む

  • 突然始まった、これまで経験したことのない強さの痛みが続いている

  • 痛みに加えて高熱がある、黄疸(皮膚や白目が黄色い)が出ている

  • 食べ物や水が飲み込みにくい、つかえる

  • 数か月で体重が思い当たる理由もなく減っている


血を吐いた、あるいは冷や汗や意識が遠のく感じがあるときは、時間帯を問わず救急車を呼んでください。それ以外のサインも、その日のうちに医療機関を受診してください。


吐血・黒色便は消化管のどこかから出血しているサインです。板のように硬いお腹は、潰瘍が深くなって穴が開いたときなどに起こります。飲み込みにくさと体重減少は、胃だけでなく食道の病気も考えなければなりません。いずれも「痛み止めを飲んで一晩様子を見る」で対応できるものではありません。



「危険なサインがないから大丈夫」とは言い切れない理由

ここが、この記事でいちばんお伝えしたいところです。上に挙げたような症状は医学の世界で警告徴候(アラームサイン)と呼ばれ、内視鏡を急ぐかどうかの判断材料として使われてきました。ところが、警告徴候が「ない」ことは安心の根拠にはなりません。


10万人を超える方の内視鏡データベースを解析した研究があります。胃の不調を訴えて内視鏡を受けた10万2,665人のうち、上部消化管の悪性腫瘍が見つかった4,362人を調べたところ、警告徴候があった方は52%でした[1]。裏を返せば、およそ半数の方は警告徴候がないまま見つかっていたことになります。

割合で見ると、印象は少し変わります。警告徴候があった方のうち悪性腫瘍が見つかったのは14.8%でした[1]。警告徴候がなかった方では、同じ研究の数値から計算すると約2.4%です。警告徴候がない方で見つかる割合は低いものの、数としては見つかった方の半数を占めていた、ということです。


この研究は、ピロリ菌感染と上部消化管がんの多い中国の1施設で、内視鏡を受けた方のデータを振り返って解析したものです。著者らは、警告徴候の有無で内視鏡の適応を絞り込むことには限界があると結論づけています[1]。


つまり、危険なサインの一覧は「あれば急ぐ」ためのものであって、「なければ様子を見てよい」と読むものではない、ということです。



診断が遅れる原因の多くは、病院に行くまでの時間

もうひとつ、知っておいていただきたいデータがあります。オランダで、胃がん・食道がんと診断された方の診断までの道のりを、電子カルテをもとにたどった研究です。症状が出てから最初に医療機関を受診するまでの期間(患者インターバル)の中央値は29日で、その後の紹介や検査にかかった期間よりも長く、診断までの流れのなかで最も長い区間でした[2]。


がんに特徴的な警告徴候がない方では、受診してから専門機関に紹介されるまでの期間が長くなりやすいことも、あわせて示されています[2]。症状がはっきりしないケースほど、時間がかかっているわけです。


診断の遅れというと検査待ちや医療体制の話になりがちですが、この研究では、症状が出てから受診するまでの期間がいちばん長い区間でした。いま痛みを抱えて受診を迷っている方にこそ、知っておいていただきたい数字です。



自分でできる対処|姿勢・食事・温める/冷やす

危険なサインがないことを確かめたうえで、痛みをやり過ごすための工夫をいくつか挙げます。ここに書くのは原因を治す方法ではありません。あくまで、受診するまでの時間を少しでも楽に過ごすための、体への負担が小さい選択肢です。


姿勢 

横になるなら、右を下にするより体の左側を下にしたほうが楽だという方がおられます。胃は左側にふくらんだ形をしているため、左を下にすると内容物が胃の底のほうにたまり、食道側へ戻りにくくなります。みぞおちが痛むときに膝を軽く曲げて丸くなる姿勢をとると、腹壁の緊張がゆるんで痛みを感じにくくなることもあります。逆に、食後すぐ真横になるのは避けてください。胃酸が食道へ上がりやすくなります。上体を少し起こして休むほうが無難です。


食事 

痛みが強い間は無理に食べる必要はありません。ただし脱水は避けたいので、常温の水や薄めのお茶を少量ずつ。少し落ち着いてから食べるなら、おかゆ、うどん、白身魚、豆腐、よく煮た野菜のように、脂肪が少なく食物繊維の粗い部分が少ないものから戻していきます。逆に、香辛料の効いたもの、脂っこい揚げ物、濃いコーヒー、炭酸飲料、そして熱すぎる・冷たすぎる飲み物は、痛みがあるうちは控えたほうがよいでしょう。


温めるか、冷やすか 

これはよく聞かれます。締めつけない服装でお腹まわりをやわらかく温めると、楽に感じる方もいます。ただし、押すと激しく痛む、お腹が硬い、熱があるといった場合は、温める・冷やす以前に、冒頭のサインに当てはまります。自宅で対処せず、医療機関を受診してください。


その他 

喫煙と飲酒は、痛みがある間はやめておきます。締めつけるベルトや補正下着も外してください。ストレスで胃の症状が強くなる方は、痛みのある時間帯だけでも作業量を落とせるとよいのですが、これは言うほど簡単ではないことも承知しています。



やってはいけない対処|「原因を隠してしまう」行為

自宅でできることの中には、楽になるどころか判断を狂わせてしまうものがあります。共通しているのは、症状を一時的に見えなくして、結果的に受診が遅れるという点です。


痛み止め(NSAIDs)でしのぐ 

頭痛や生理痛に使う市販の解熱鎮痛薬の多くは、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)です。この系統の薬は胃の粘膜を守るしくみを弱めるため、胃の痛みに対して飲み続けると、原因そのものを悪化させかねません。イブプロフェンと上部消化管出血の関係を調べた最近のシステマティックレビューでは、服用していない人と比べたときの出血のオッズ比は2.51(95%信頼区間1.33〜4.74)と報告されています[3]。ただし、このレビューに含まれる研究はバイアスのリスクが高いものが多く、エビデンスの確実性は多くの比較で「非常に低い」と評価されています[3]。数字を額面どおりに受け取るべき研究ではありませんが、少なくとも「胃が痛いからNSAIDsの痛み止めでしのぐ」という選択は勧められません。


アルコールで紛らわす 

お酒を飲むと痛みが遠のいたように感じることがありますが、感じにくくなっているだけです。粘膜への刺激という点でも、症状の見えにくさという点でも、勧められません。


我慢を長引かせる

「忙しいから来週」「連休が明けてから」と先送りするうちに、前の章で見たような患者インターバルが積み上がっていきます。特に、痛みの間隔が短くなってきた、鎮痛薬を飲む回数が増えてきた、という変化があるときは、先送りの理由になりません。


自己判断で持病の薬をやめる

抗血栓薬(血をサラサラにする薬)や糖尿病の薬などを、胃が痛いからと自己判断で中止するのは危険です。飲んでよいかどうかは、必ず処方した医師にご確認ください。



様子を見てよいのはどんなときか、何日までか

以下は、一般的な受診の目安です。日数は厳密な基準ではありませんので、迷ったときは早めの受診を選んでください。


数時間から1〜2日、様子を見てもよいと考えられる場合

食べすぎ・飲みすぎ・脂っこい食事のあとに始まった痛みで、危険なサインがなく、痛みが少しずつ和らいでいて、食事を抜けば楽になり、発熱も嘔吐もない。こうしたときは、消化のよい食事に切り替えて経過をみる余地があります。


1〜2週間のうちに受診をご検討いただきたい場合

痛みが2日以上続いている、いったん治まっても週に何度もぶり返す、市販薬を飲んでいる間だけ楽で切れると戻る、食欲が落ちてきた、げっぷや胸やけが増えた。この段階で調べておくと、原因の見当をつけやすくなります。


その日のうちに受診していただきたい場合

この記事の冒頭に挙げた警告徴候のいずれかがある。


日数で区切らず、早めにご相談いただきたい場合

中高年になってから初めて経験する種類の胃痛である。胃がんや食道がんの家族歴がある。ピロリ菌の除菌をしたことがない、あるいは感染しているかどうかを調べたことがない。抗血栓薬やNSAIDsを常用している。



市販の胃薬とのつきあい方

市販の胃薬は、症状が軽く短期間であれば選択肢になります。ただし、飲んでいる間は症状が抑えられるため、原因の病気が見えにくくなるという側面があります。服用日数は、箱や説明書に書かれた目安を守ってください。胃酸を抑える市販薬の説明書には、数日飲んでも良くならなければ服用をやめて医師や薬剤師に相談すること、長く続けて飲まないことが書かれています。数日飲んでも良くならない、あるいは薬をやめると戻る場合は、薬を足すのではなく一度調べる段階と考えてください。胃薬を長く飲み続けることの利点と注意点については、別の記事で詳しく整理しています[4]。



よくある受診パターン

実在の方の事例ではなく、外来でよく出会う典型的な流れを一般化したものです。


40代・会社員の方

半年ほど前から、忙しい時期になるとみぞおちが痛む。市販の胃薬を飲むと数日で治まるので、そのたびに買い足していた。最近は薬を飲んでいる期間のほうが長くなってきたことに気づき、受診。この段階で内視鏡を受けておくと、潰瘍やピロリ菌感染の有無、あるいは器質的な病気がないことを確認したうえで、次の手を考えられます。


60代の方

夜中から明け方にかけて空腹時に痛み、何か食べると楽になる、という数か月来の症状。痛み自体は強くないため受診していなかったが、健診で貧血を指摘されたことをきっかけに来院。空腹時に痛んで食べると和らぐパターンは、それ自体が診断の手がかりになります。この症状については別記事で詳しく解説しています[5]。



病院では何を調べるのか|胃カメラでわかること

胃の痛みで受診されたとき、まず行うのは問診と診察です。いつから、どのあたりが、どんなふうに痛むのか。食事や空腹との関係、服用中の薬、便の色、体重の変化。ここで得られる情報が、その後の検査の組み立てを決めます。


必要に応じて血液検査(貧血や炎症、肝臓・膵臓の値)や腹部超音波検査を行い、胃以外の臓器が原因になっていないかを確認します。みぞおちの痛みの原因が胆のうや膵臓にあることは珍しくありません。


そのうえで、胃そのものを直接見る検査が上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)です。胃カメラでは、胃炎、胃潰瘍・十二指腸潰瘍、逆流性食道炎、ポリープ、そして早期の胃がんや食道がんまで、粘膜の変化を直接見て調べることができます。必要があればその場で組織を採り(生検)、ピロリ菌の有無も調べられます。


検査をして「異常がない」とわかることにも意味があります。日本の外来で行われた調査では、1年以内の胃カメラで潰瘍やがんなどの病気がないことを確かめ、ピロリ菌感染などのある方を除いたうえで、上腹部の症状を訴えた205名のうち54.1%が機能性ディスペプシアの診断基準を満たしていたと報告されています[6]。機能性ディスペプシアは、内視鏡などで説明のつく異常がないのに、胃の痛みやもたれが続く状態を指します。治療の対象になる病気であって、「気のせい」ではありません。まず器質的な病気がないことを確認できて初めて、この診断にたどり着けます。


ピロリ菌が見つかった場合は、除菌治療が選択肢になります。機能性ディスペプシアの方を対象とした無作為化比較試験14件のメタ解析では、12か月以上の追跡で、除菌群の症状改善は対照群より良好で、オッズ比1.38(95%信頼区間1.18〜1.62)と報告されています[7]。アジアの集団に限った解析でも同様の傾向が示されています[7]。効果は大きくはありませんが、症状の原因を考える手がかりとして、感染の有無を知っておく意味はあります。



当院での胃痛の診かた

当院では、胃の痛みで受診された方に、問診と診察のうえで必要な検査をご提案しています。お薬を始めてから1週間たっても症状が治まらないときは、胃カメラを考慮します。


胃カメラは、鎮静剤を使うかどうかをご希望でお決めいただけます。ただし、お薬や持病の状況によっては、診察でご相談のうえ判断させていただく場合があります。鎮静剤を使用した場合は検査後にリカバリー室で30分ほど休んでいただき、その日は自動車・バイク・自転車の運転ができませんので、ご来院の方法をあらかじめご検討ください。


経鼻(鼻から)と経口(口から)のどちらでも検査を行っています。午前の枠のほか、夕方16時の枠もご用意しています。検査や費用について詳しくは、下記のページをご覧ください。




よくあるご質問

Q. 胃が痛いのですが、市販の胃薬を飲んでから受診しても大丈夫ですか。

市販の胃薬を飲んでいても、受診はしていただけます。受診の際に、薬の名前と、いつからどのくらい飲んでいるか、飲むと楽になるかどうかをお伝えください。それ自体が診断の手がかりになります。ただし、痛み止め(NSAIDs)を胃痛に対して飲み続けることは勧められません。


Q. 胃カメラを受ける日は、朝の薬を飲んでもよいですか。

お薬の種類によって扱いが変わりますので、事前の診察で必ずご確認ください。特に血液をサラサラにする薬や糖尿病の薬は、個別の判断が必要です。


Q. 痛みが治まってしまったのですが、受診の必要はありますか。

繰り返している場合や、市販薬でその都度しのいでいる場合は、症状がないときこそ落ち着いて検査を受けられる機会です。痛みが消えても、原因が残っていることがあります。


Q. ストレスが原因だと思うのですが、それでも検査は必要ですか。

ストレスで胃の症状が強くなること自体は、機能性ディスペプシアなどでよく知られています。ただし、それは器質的な病気がないことを確認して初めて言えることです。順番としては、まず調べる、になります。



症状別に詳しく知りたい方へ

▶ 検査について:胃カメラ検査



まとめ

胃が痛いときに最初にすべきことは、痛みを止める方法を探すことではなく、危険なサインがあるかどうかを確かめることです。吐血、黒い便、冷や汗、板のように硬いお腹、飲み込みにくさ、理由のない体重減少。これらがあれば様子見の対象から外れます。


一方で、警告徴候がないことは安心の裏づけにはなりません。上部消化管の悪性腫瘍が見つかった方のおよそ半数には、警告徴候がなかったという報告があります[1]。診断までの道のりで最も長い区間が、ご本人が受診するまでの時間だったという報告もあります[2]。


自宅でできるのは、姿勢や食事を整えて痛みをやり過ごすところまでです。痛み止めやお酒でしのいだり、我慢を延ばしたりすると、原因が見えにくくなります。2日以上続く、繰り返す、市販薬が切れると戻る。そのいずれかに当てはまるなら、調べる段階だとお考えください。


その痛み、そろそろ一度調べてみませんか。繰り返す胃の痛みでお困りの方は、くりた内科・内視鏡クリニックまでご相談ください。


1. Bai Y, Li ZS, Zou DW, Wu RP, Yao YZ, Jin ZD, et al. Alarm features and age for predicting upper gastrointestinal malignancy in Chinese patients with dyspepsia with high background prevalence of Helicobacter pylori infection and upper gastrointestinal malignancy: an endoscopic database review of 102,665 patients from 1996 to 2006. Gut. 2010;59(6):722-8.

2. van Erp NF, Helsper CW, Slottje P, Brandenbarg D, Büchner FL, van Asselt KM, et al. Time to diagnosis of symptomatic gastric and oesophageal cancer in the Netherlands: Where is the room for improvement? United European Gastroenterol J. 2020;8(5):607-620.

3. Gkiouras K, Myrogiannis I, Kouvelas D. Is ibuprofen associated with upper gastrointestinal bleeding? A systematic review and meta-analysis. Inflammopharmacology. 2025;33(8):4825-4840.

4. くりた内科・内視鏡クリニック.胃薬を飲み続けるのは本当に大丈夫? 専門医が解説する長期服用のメリットとデメリット.2025. https://www.kurita-naika.jp/information/20251008

5. くりた内科・内視鏡クリニック.空腹時にみぞおちが痛むのはなぜ?食べると治る胃痛の正体を専門医が解説.2026. https://www.kurita-naika.jp/information/20260714

6. Aono S, Tomita T, Tozawa K, Morishita D, Nakai K, Okugawa T, et al. Epidemiology and Clinical Characteristics Based on the Rome III and IV Criteria of Japanese Patients with Functional Dyspepsia. J Clin Med. 2022;11(9):2342.

7. Zhao B, Zhao J, Cheng WF, Shi WJ, Liu W, Pan XL, et al. Efficacy of Helicobacter pylori eradication therapy on functional dyspepsia: a meta-analysis of randomized controlled studies with 12-month follow-up. J Clin Gastroenterol. 2014;48(3):241-7.

8. くりた内科・内視鏡クリニック.「みぞおちの痛み」はどこから?原因となる臓器と今すぐ受診すべき危険なサインを徹底解説.2025. https://www.kurita-naika.jp/information/20250815

9. くりた内科・内視鏡クリニック.消化性潰瘍の真実:放置できない「みぞおちの痛み」と、専門医による最新の診断・治療法.2025. https://www.kurita-naika.jp/information/20250926


 
 

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