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健診で肝機能(AST・ALT・γ-GTP)が高いと言われたら|数値の読み方と下げ方、受診の目安を消化器内科医が解説

5 日前
読了時間: 13分

健康診断の結果票に「肝機能:要再検査」「γ-GTP 高値」と書かれていても、痛くもかゆくもないので、そのまま引き出しにしまっていませんか。去年も同じ指摘だった、お酒を少し控えれば下がるだろう、と考えている方もいるかもしれません。


このコラムでは、結果票に並ぶAST・ALT・γ-GTPの3つの数値がそれぞれ何を表しているのか、どんな並び方のときに何を疑うのか、そして数値を下げるために実際に効果が確かめられている方法を、論文をもとに順に整理します。お手元に結果票がある方は、3つの数値の欄を見比べながら読んでみてください。途中に「再検査の前にやめておきたいこと」と「早めに受診してほしいサイン」もまとめています。



結果票の3つの数値は、それぞれ何を見ているのか

肝臓は、食べたものから取り込んだ栄養をたくわえたり、薬やアルコールを分解したりしている臓器です。細胞が傷つくと、細胞の中にあった酵素が血液に漏れ出てきます。健診の「肝機能」は、この漏れ出た酵素の量を測って、肝臓に負担がかかっていないかを間接的に見ている検査です。


  • AST(GOT):肝臓の細胞に多い酵素ですが、心臓や手足の筋肉、赤血球にも含まれています。そのため、肝臓以外の理由でも上がることがあります

  • ALT(GPT):ほとんどが肝臓の細胞にある酵素です。ALTが上がっているときは、肝臓そのものに負担がかかっていると考えやすくなります

  • γ-GTP(ガンマ・ジーティーピー):肝臓の細胞や胆汁の通り道にある酵素です。お酒をよく飲む方、脂肪肝のある方、一部の薬を飲んでいる方、胆汁の流れが滞っている方で上がりやすい数値です


米国消化器病学会(ACG)の診療指針では、ASTとALTが中心に上がっている状態を「肝細胞の障害」として、ALP(アルカリホスファターゼ)が中心に上がる「胆汁の流れの障害」と分けて考えるよう示しています[1]。健診の結果票でも、どの数値がどれだけ上がっているかの組み合わせを見ることが、原因を絞る最初の手がかりになります。


数値の並び方から考えられること

数値の並び方

考えやすい原因

まず確かめたいこと

ALTが中心に高い

脂肪肝、ウイルス性肝炎、薬やサプリメント

体重の変化、腹部エコー、肝炎ウイルスの有無

ASTだけが少し高い

筋肉からの漏れ(激しい運動の後など)、飲酒

検査前の運動、CK(筋肉の酵素)の値

γ-GTPだけが高い

飲酒、脂肪肝、薬、胆汁の流れの滞り

1週間の飲酒量、飲んでいる薬、ALPの値

3つともそろって高い

飲酒と脂肪肝の重なり、肝炎、薬剤による肝障害

問診、血液検査の追加、腹部エコー


これはあくまで目安で、この表だけで診断が決まるわけではありません。ひとつの数値だけで判断せず、飲酒量、体重、飲んでいる薬、過去の健診との比較を合わせて考えていきます。


「基準値の少し上」でも、そのままにしないほうがよい理由

結果票の基準値は、健診機関によって少しずつ違います。基準値をわずかに超えただけなら様子を見てもよいのではないか、と考えるのは自然なことです。


ただ、同じ診療指針は、肝臓に病気のない健康な人のALTを男性でおよそ29〜33 IU/L、女性で19〜25 IU/Lとし、これを上回る場合は評価の対象にすべきだとしています[1]。ALTが高いこと自体が、肝臓の病気による死亡の増加と関連していたという複数の研究にも触れられています[1]。「基準値ぎりぎり」の数値も、体からの小さな知らせとして受け止めておきたいところです。


日本での実態も見ておきます。全国13か所の健診施設で2014〜2018年に健診を受けた約7万1千人(飲酒量の多い人や、ほかの肝臓病がある人を除いた集団)を調べた研究では、腹部エコーで脂肪肝と判定された人は25.8%でした[2]。男性は37.4%、女性は18.1%です。BMIや中性脂肪、LDLコレステロールが高くなるほど脂肪肝の割合は直線的に増えており、肥満と判定されない人でもこの傾向は同じでした[2]。


別の日本の健診データ(694人)でも、BMIが23未満のやせ型に当てはまる383人のうち6%に、代謝の異常をともなう脂肪肝が見つかっています[3]。「太っていないから自分は大丈夫」とは言い切れない、ということです。



再検査の前に知っておきたい、数値が一時的に上がる理由

肝機能の数値は、肝臓の病気がなくても一時的に上がることがあります。再検査の結果を正しく読むために、次の2つは知っておいてください。


検査の前の筋トレや激しい運動

ふだんから適度に運動しているものの、ウエイトトレーニングの習慣はない健康な男性15人に、1時間の筋力トレーニングをしてもらった研究があります[4]。トレーニングのあと、ASTとALTは大きく上がり、少なくとも7日間は高いままでした。一方、γ-GTPは基準値の範囲に収まっていました[4]。筋肉の酵素であるCKも大きく上がっていたことから、筋肉から漏れた酵素が数値を押し上げていたと考えられます。


健診の数日前にジムで追い込んだ、引っ越しで重いものを運んだ、という方は、それだけでASTやALTが高く出ている可能性があります。この研究では7日後もまだ数値が高かったため、再検査の前は1〜2週間ほど激しい筋力トレーニングを控えておくと、数値が読みやすくなります。


サプリメントや健康食品、市販薬

「肝臓によさそう」「疲れがとれそう」と思って飲んでいるサプリメントが、逆に肝臓の負担になっていることがあります。米国肝臓病学会(AASLD)などが開いた研究会の報告では、アメリカの研究データで、薬物による肝障害の20%をハーブ製品や栄養補助食品が占めるまでになっていました[5]。原因として挙げられているのは、筋肉増強をうたう製品、緑茶の抽出物、複数の成分を混ぜた栄養補助食品などで、どの成分が原因なのか特定できない例が多いとも書かれています[5]。


処方薬や市販薬も、肝機能の数値を上げる原因のひとつです。ACGの診療指針も、肝機能が高いときは処方薬と市販薬の服用歴を確認するよう求めています[1]。受診の際にお薬手帳と、飲んでいるサプリメントの商品名がわかるもの(袋や写真)があれば、原因を絞り込む手がかりになります。



何が原因かを確かめる順番

肝機能の異常を調べるときは、いきなり大がかりな検査をするのではなく、問診と血液検査、腹部エコーを組み合わせて原因を順に絞っていきます。診療指針が挙げている主な確認項目は、A型・B型・C型の肝炎ウイルス、脂肪肝、アルコールによる肝障害、そして頻度は低いものの自己免疫性肝炎などの病気です[1]。


問診:お酒の量は「1週間分」で数える

飲酒量は、「毎日少し」「付き合い程度」といった言い方では正確に伝わりにくいものです。ビール、日本酒、ワインなど、何をどのくらい、週に何日飲んでいるかを具体的に教えてください。前日の飲み会が数値に影響することもあるので、健診前日の飲酒も参考になります。


血液検査:肝炎ウイルスと、線維化の目安

B型・C型肝炎ウイルスは、自覚症状がないまま長く肝臓に負担をかけることがあります。一度も調べたことがない方は、この機会に一度確認しておくとよいでしょう。


肝臓の「硬さ(線維化)」の目安としては、年齢・AST・ALT・血小板数の4つから計算するFIB-4(フィブフォー)という指標がよく使われます。もともとはC型肝炎とHIVの両方にかかっている方を対象に作られた指標で、その研究では、1.45未満だった人の90%には実際に進んだ線維化がなく、3.25を超えた人の65%に進んだ線維化がありました[6]。先に紹介した日本の健診データでも、このFIB-4を使って、進んだ線維化をともなう脂肪肝の割合を1.7%と推定しています[2]。


FIB-4は年齢が高いほど数値が上がりやすいなどの限界もあるため、これだけで判断することはありません。あくまで「詳しく調べたほうがよい人」を見分けるための入り口として使います。


腹部エコー:脂肪の量と、肝臓の硬さを見る

腹部エコー(超音波検査)では、肝臓に脂肪がたまっているか、しこりがないか、胆のうや胆管に異常がないかを、放射線を使わずに確かめられます。


当院のエコー装置には、肝臓の硬さを数値で測る機能(SWE)と、脂肪のたまり具合を数値で表す機能(ATI)が付いています。見た目の色合いだけでなく数値で記録できるので、生活を見直したあとに「どれだけ変わったか」を比べやすくなります。装置の詳しい説明は、当院のエコー検査のページをご覧ください。



数値と肝臓の状態を改善するために、効果が確かめられている方法

原因が脂肪肝やお酒であれば、生活の見直しで改善が見込めます。ここでは、研究で効果が示されているものに絞って紹介します。


体重を5%、できれば10%減らす

脂肪肝に炎症をともなう「脂肪肝炎」と診断された293人が、食事と運動の見直しに52週間取り組み、その前後で肝臓の組織を調べた研究があります[7]。体重が5%以上減った人では58%で脂肪肝炎がおさまり、10%以上減った人では90%で脂肪肝炎がおさまり、45%で線維化の改善も見られました[7]。

体重80kgの方なら、5%は4kg、10%は8kgです。この研究は血液の数値ではなく肝臓の組織そのものの変化を見たもので、減らした体重が多いほど改善の度合いも大きいという関係がはっきり出ています。急激な減量をすすめているわけではありません。1年ほどかけて少しずつ、という進め方でも十分に意味があります。


食事では、まず毎日の中で「なんとなく食べているもの」を減らすところから始めるのが現実的です。夜遅い時間の間食、甘い飲み物、揚げ物の頻度などを見直すだけで、体重が動き始める方は少なくありません。


お酒を休むと、γ-GTPは数週間で動く

γ-GTPは、飲酒量の変化に比較的素直に反応する数値です。アルコール依存症で入院した444人を対象にした多施設の研究では、断酒を始めてからの4週間でγ-GTPが下がっていました[8]。


お酒が原因と思われる方は、まず4週間お酒を休んでみて、そのあとに再検査を受けると変化がわかりやすくなります。この研究は完全に断酒した場合の結果なので、量を減らすだけのときは、下がり方に個人差があります。「週に2日は飲まない日を作る」だけでは、飲む日の量が増えて合計が変わらないこともあるので、1週間の合計量で考えてください。


自己判断のサプリメントは、いったん見直す

「肝臓に効く」とうたう健康食品で数値を下げようとするのは、おすすめしません。サプリメント自体が肝障害の原因になることがあるためです[5]。すでに飲んでいるものがあれば、自己判断で増やさず、受診のときにご相談ください。



様子見をやめて、早めに受診してほしいサイン

次のような場合は、次の健診まで待たずに受診してください。


  • 白目や皮膚が黄色っぽい、尿の色が濃い茶色になっている

  • 強いだるさや食欲の低下が続いている

  • 結果票で、AST・ALTが基準値の何倍にもなっている

  • 前年より数値がはっきり上がっている、または数年続けて上がり続けている

  • B型・C型肝炎ウイルスを一度も調べたことがない

  • 糖尿病や脂質異常症があり、あわせて肝機能の異常を指摘された


白目の黄色みや濃い尿は、肝臓や胆汁の流れに大きな問題が起きているサインのことがあります。この場合は、予約の前にまずお電話でご相談ください。



よくある受診パターン

肝機能の異常で受診される方には、いくつかの典型的な流れがあります。個人を特定するものではなく、よく見られる形を一般化してご紹介します。


ひとつは、数年前から毎年「γ-GTPが高め」と書かれていたものの、症状がないため受診せずにいた方です。飲酒量をうかがうと、平日は少なめでも週末にまとめて飲んでいることが多く、1週間の合計では思っていたより多かった、ということがよくあります。


もうひとつは、お酒はほとんど飲まないのにALTが高い方です。この場合は脂肪肝が原因のことが多く、ここ数年で体重が少しずつ増えていた、という方が少なくありません。肥満と判定されない体型の方でも脂肪肝は見つかります[2, 3]。



当院での流れ

くりた内科・内視鏡クリニックでは、肝機能の異常を指摘された方に、次のような流れで診察を行っています。


  1. 問診

    結果票の数値、過去の健診との比較、飲酒量、薬とサプリメント、体重の変化をうかがいます


  2. 血液検査 肝機能の再検査に加えて、必要に応じて肝炎ウイルスや血小板数なども調べます


  3. 腹部エコー しこりや胆のうの異常がないかを見て、必要に応じて脂肪の量や肝臓の硬さを数値で確認します


  4. 結果の説明 原因の見立てと、次にいつ、何を確かめればよいかをお伝えします


検査の内容は、結果票の数値や問診の内容によって変わります。精密な検査や専門的な治療が必要と判断した場合は、専門の医療機関をご紹介します。


受診の際は、健診の結果票(できれば過去数年分)、お薬手帳、飲んでいるサプリメントの商品名がわかるものをお持ちください。



よくある質問

Q. γ-GTPだけが高く、ASTとALTは基準値内です。受診は必要ですか。

A.γ-GTPだけの上昇は、飲酒や脂肪肝、薬の影響で起こることが多いものの、胆汁の流れに問題がある場合も含まれます。数年続けて指摘されている方や、お酒を控えても下がらない方は、一度受診して原因を確かめてください。


Q. 再検査の前日に、気をつけることはありますか。

A.1〜2週間前から激しい筋力トレーニングを避け[4]、前日の飲酒は控えてください。運動や飲酒の影響を除いた数値のほうが、原因を正しく見分けやすくなります。


Q. 肝機能の数値が下がれば、脂肪肝は治ったと考えてよいですか。

A.数値が下がるのはよい変化ですが、肝臓に脂肪がたまっているか、硬くなっていないかは、血液検査だけではわかりません。腹部エコーで脂肪の量と硬さを確かめておくと、次にどのくらいの間隔で見ればよいかを判断しやすくなります。


Q. 健診の結果票は、どのくらい前のものまで持っていけばいいですか。

A.手元にあれば、過去3〜5年分をお持ちください。1回の数値よりも、年ごとの動きのほうが原因を考える手がかりになります。



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まとめ

AST・ALT・γ-GTPは、どれかひとつが高いかではなく、どの数値がどう並んでいるかを見ることで原因の見当がつきます。検査前の激しい運動やサプリメントで一時的に上がることもあるので、再検査はそうした影響を除いてから受けると結果が読みやすくなります。


原因が脂肪肝やお酒であれば、体重を5〜10%減らす、4週間お酒を休むといった見直しで、変化が期待できます。一方で、白目の黄色みや濃い尿がある方、数値が年々上がっている方、肝炎ウイルスを調べたことがない方は、次の健診を待たずに一度ご相談ください。結果票とお薬手帳をお持ちいただければ、何から確かめるかを一緒に整理します。


引用文献

1. Kwo PY, Cohen SM, Lim JK. ACG Clinical Guideline: Evaluation of Abnormal Liver Chemistries. Am J Gastroenterol. 2017;112(1):18-35.

2. Fujii H, Suzuki Y, Sawada K, Tatsuta M, Maeshiro T, Tobita H, et al. Prevalence and associated metabolic factors of nonalcoholic fatty liver disease in the general population from 2014 to 2018 in Japan: A large-scale multicenter retrospective study. Hepatol Res. 2023;53(11):1059-1072.

3. Miwa T, Tajirika S, Imamura N, Adachi M, Horita R, Hanai T, et al. Prevalence of Steatotic Liver Disease Based on a New Nomenclature in the Japanese Population: A Health Checkup-Based Cross-Sectional Study. J Clin Med. 2024;13(4):1158.

4. Pettersson J, Hindorf U, Persson P, Bengtsson T, Malmqvist U, Werkström V, et al. Muscular exercise can cause highly pathological liver function tests in healthy men. Br J Clin Pharmacol. 2008;65(2):253-259.

5. Navarro VJ, Khan I, Björnsson E, Seeff LB, Serrano J, Hoofnagle JH. Liver injury from herbal and dietary supplements. Hepatology. 2017;65(1):363-373.

6. Sterling RK, Lissen E, Clumeck N, Sola R, Correa MC, Montaner J, et al. Development of a simple noninvasive index to predict significant fibrosis in patients with HIV/HCV coinfection. Hepatology. 2006;43(6):1317-1325.

7. Vilar-Gomez E, Martinez-Perez Y, Calzadilla-Bertot L, Torres-Gonzalez A, Gra-Oramas B, Gonzalez-Fabian L, et al. Weight Loss Through Lifestyle Modification Significantly Reduces Features of Nonalcoholic Steatohepatitis. Gastroenterology. 2015;149(2):367-378.e5.

8. Anton RF, Lieber C, Tabakoff B; CDTect Study Group. Carbohydrate-deficient transferrin and gamma-glutamyltransferase for the detection and monitoring of alcohol use: results from a multisite study. Alcohol Clin Exp Res. 2002;26(8):1215-1222.



 
 

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