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くりた内科・内視鏡クリニック

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胃カメラは経鼻と経口どっちが楽?違いと選び方を専門医が解説

  • 11 時間前
  • 読了時間: 12分

胃カメラを予約しようとして、「鼻からと口から、どちらにしますか」と聞かれ、答えに詰まった。このページは、そんな方のために書いています。


経鼻内視鏡(鼻から入れる胃カメラ)と経口内視鏡(口から入れる胃カメラ)には、それぞれ得意なことと苦手なことがあります。「経鼻なら楽」「経口はつらい」という単純な話ではありません。海外と日本の比較試験のデータを示しながら、どういう方にどちらが向くのかを整理します。読み終わるころには、ご自身がどちらを選べばよいか、判断の材料がそろっているはずです。



経鼻内視鏡と経口内視鏡、何が違うのか

どちらも食道・胃・十二指腸を直接観察する検査で、見に行く場所は同じです。違いは入り口と、カメラの太さにあります。


経口内視鏡は口から挿入します。標準的なスコープは直径10mm前後で、後述するドイツの試験では9.8mmのものが使われました[2]。一方の経鼻内視鏡は鼻の穴から挿入するため、5〜6mm程度の細いスコープを使います(同じドイツの試験では5.9mm[2]、台湾の試験では5mm[3])。鉛筆より少し細いくらい、と言えばイメージしやすいでしょうか。


この「入り口の違い」が、検査中の感じ方を大きく左右します。オエッとなる嘔吐反射は、スコープが舌の付け根に触れることで起こります。経鼻内視鏡は鼻の通り道を通って喉の奥へ進むため、舌の付け根にほとんど触れません。反射が出にくいのはこの構造によるものです。もうひとつ、経鼻では口が自由になるので、検査中に医師と会話ができます。「今、胃のどのあたりを見ています」というやり取りをしながら受けられるのは、経鼻ならではです。


「どっちが楽か」を比較試験のデータで見る

経鼻と経口を実際に比べた臨床試験は、日本を含めて複数あります。まず、鎮静剤を使わない場合の比較から見ていきます。


日本で行われた124名のランダム化比較試験では、直径5.9mmの細径スコープを使い、経鼻と経口に無作為に振り分けて苦痛の程度を0〜10点で答えてもらいました。挿入時の苦痛は経鼻2.3点に対し経口4.3点、検査全体の苦痛は経鼻1.6点に対し経口3.8点と、いずれも経鼻のほうが低い結果でした。「次も同じ方法で受けてよい」と答えた割合も、経鼻95%、経口75%と差がついています[1]。


ドイツの150名の試験でも方向性は同じです。局所麻酔で検査を始め、つらいときだけ鎮静剤を使う設計にしたところ、鎮静剤が必要になった割合は、細径の経鼻6%、細径の経口18%、従来の太さの経口では44%でした[2]。カメラが細いこと、そして鼻から入れることの両方が、負担の軽さに効いていたわけです。


ここまで読むと経鼻の圧勝に見えますが、そうとも言い切れないデータがあります。台湾の220名の試験では、喉の不快感は確かに経鼻のほうが少なかったものの、挿入時の鼻の痛みは経鼻のほうが強く、検査全体の苦痛と満足度では両者に有意な差がありませんでした。鼻からの挿入に失敗して経口に切り替えた方が5.7%、軽い鼻出血が2%にあり、手技にかかった時間も経鼻19.9分に対し経口16.8分と、経鼻のほうが平均3分ほど長くかかっています[3]。


つまり「経鼻=誰にとっても楽」ではありません。嘔吐反射が強い方には経鼻の利点がはっきり出る一方で、鼻の通り道が狭い方や鼻の粘膜が敏感な方にとっては、経鼻のほうがつらいこともあります。これが試験データから読み取れる実像です。



経鼻内視鏡の弱点も知っておく

経鼻を検討する方に、あらかじめ知っておいていただきたい点が3つあります。


鼻の構造によっては入らないことがあります。

先ほどの日本の試験では64名中4名が鼻の解剖学的な理由で挿入できず、経口に切り替えています[1]。ドイツの試験でも50名中4名(8%)で、鼻の通り道が狭いことによる同様の切り替えがありました[2]。これは失敗というより、無理をしない正しい判断です。


軽い鼻出血が起こることがあります。

ドイツの試験では50名中1名、台湾の試験では2%と報告されており、いずれも軽度でした[2, 3]。


画質は経口の高精細スコープに一歩譲ります。

細径スコープの画質は年々改善しているものの[5]、太いスコープに搭載される高精細カメラとの差はゼロではありません。


なお、組織を採って調べる生検は、経鼻でも経口でも行えます。「細いカメラだと必要な検査ができないのでは」というご心配をいただくことがありますが、細径スコープにも生検の器具を通す穴があり、気になる部分が見つかればその場で組織を採取できます。先ほどのドイツの試験でも、細径スコープを使った全員で十二指腸の奥までの観察と生検が完了したと報告されています[2]。


画質の点は、後述する「何を目的に受ける検査か」に関わります。健診で年に1回のチェックを楽に済ませたいのか、症状があって精密に調べたいのかで、適した選択は変わってきます。



うとうとした状態で受ける、鎮静下の経口内視鏡という選択肢

経鼻か経口かの二択で考えている方に、もうひとつ知っていただきたいのが、鎮静剤を使った経口内視鏡です。静脈から鎮静剤を入れ、うとうとと眠ったような状態で検査を受ける方法です。眠り込む深さには個人差があり、意識がなくなるとは限りません。「気づいたら終わっていた」という方もいれば、「呼びかけには答えられたが、つらさは感じなかった」という方もいらっしゃいます。


日本で、同じ方が「鎮静剤を使った高精細の経口内視鏡」と「鎮静剤なしの細径経鼻内視鏡」の両方を同じ日に受けて比べる試験が行われています。22名が参加し、受けた方の満足度は10点満点で鎮静下経口9点、無鎮静経鼻3点。画像の質も鎮静下経口が上回り、両方を経験した後に「次も受けたい」と選んだのは91%が鎮静下経口でした[4]。


高精細のカメラでじっくり観察できることと、反射の負担が軽くなることが重なった結果と考えられます。ただし鎮静剤には制約もあります。検査後はしばらく院内で休んで覚醒を待つ必要があり、当日の予定に影響します。呼吸や血圧への影響を考慮した管理も必要です。「時間に余裕を持てる日に、しっかり調べてほしい」という方に向いた選択肢と言えます。


ちなみに経鼻内視鏡は、世界的に見ると日本で独自に発達してきた選択肢です。日本と海外の149施設を対象にした調査では、日本の診療所の34%が経鼻内視鏡を使っていた一方、海外ではほとんど使われていませんでした[5]。鎮静をあまり使わずに楽な検査を目指してきた日本の工夫の産物、という背景があります。



外来で、私たちが何を確認しているか

「どちらにしますか」とお聞きしたとき、実際の診察室では、次のような順番で条件を確かめていきます。ご自身に当てはめながら読んでみてください。


まず、過去の検査でどこがつらかったかをうかがいます。 「オエッとなるのがきつかった」のか、「機械が入っている感じそのものが怖かった」のかで、向く方法が変わります。前者なら経鼻が候補に上がり、後者なら鎮静剤という選択肢のほうが効いてきます。同じ「つらかった」でも、原因が違えば手当ても違うということです。


次に、鼻の通りをうかがいます。 鼻炎の治療を受けている、鼻中隔弯曲を指摘されたことがある、片方が詰まりやすい。こうした心当たりがあれば、経鼻は無理に選ばず、経口を基本にして反射の対策を考えます。実際に入るかどうかは診察と検査時の様子で判断できますし、入らなければその場で経口に切り替えられます。


そして、何のために受ける検査かを確認します。 健診のバリウム検査で「要精密検査」となった方のように、精密な観察が目的の場合は、画質を優先して高精細の経口スコープをご提案することが多くなります。一方、症状がなく年に一度のチェックとして受ける方であれば、負担の軽さを優先する考え方もあります。


最後に、その日のご予定をうかがいます。 鎮静剤を使えば検査後に休んでいただく時間が必要になります。検査後すぐに動きたい日なのか、時間に余裕を持てる日なのかで、選べる方法は変わります。

この4つを一緒に確かめていけば、答えは自然に絞られてきます。あらかじめご自身で決めてから来院される必要はありません。



選び方の整理:あなたはどのタイプか

ここまでのデータを、選び方の形に整理します。

嘔吐反射が強い、過去に経口でつらい思いをした、でも鎮静剤は使いたくない(検査後すぐ動きたい)── 経鼻内視鏡が第一候補です。

うとうとした状態で終えてほしい、症状があって精密に調べてほしい ── 鎮静剤を使った経口内視鏡が向いています。

鼻炎や鼻中隔弯曲を指摘されたことがある、鼻の手術歴がある ── 経口が基本になります。反射が心配なら鎮静剤の使用を相談してください。



経鼻内視鏡

経口内視鏡

スコープの太さ

約5〜6mmと細い

標準で10mm前後(細径もある)

嘔吐反射

出にくい[1, 2]

出やすいが、鎮静剤で軽減できる[4]

画質

改善してきたが高精細機には一歩譲る[5]

高精細の観察が可能[4]

検査中の会話

できる

できない

注意点

鼻の構造で入らないことがある・軽い鼻出血が数%[2, 3]

鎮静剤を使う場合は検査後に休憩が必要



くりた内科・内視鏡クリニックの胃カメラ

当院(京都市下京区・阪急大宮駅 徒歩2分)では、経鼻・経口のどちらにも対応しています。経鼻用にはオリンパス社のGIF-1200Nという、先端径5.4mmの細径スコープを導入しています。2020年に発売された、CMOSイメージセンサーを搭載した機種です。経口用には同じくオリンパス社の高精細スコープGIF-XZ1200を使用しています。


鎮静剤を使うかどうかは、ご希望とお体の状態をうかがったうえで一緒に決める形です。鎮静剤を使用した場合は、検査後にリカバリー室で30分ほどお休みいただいてからのご帰宅となります。

院長は2002年に医師免許を取得し、2003年から内視鏡検査に従事しています。日本消化器内視鏡学会 消化器内視鏡専門医・指導医、日本内科学会 認定内科医です。

費用の目安は、3割負担の方で観察のみなら6,000円程度、組織を採って調べる検査(生検・病理組織検査)を行った場合で9,000〜12,000円程度です。1割負担の方はそれぞれ2,000円程度、3,000〜4,000円程度になります。事前の診察や検査の費用は別途かかりますので、概算としてお考えください。



検査当日はどんな流れになるのか

初めての方が不安に感じるのは、検査そのものより「何をされるのか分からない」ことだったりします。というわけで、一般的な流れを先にお見せしておきましょう。


どちらの方法でも、胃を空にした状態で臨むのが前提です。前日の食事や飲みものについては、予約の際に具体的にご案内します。経鼻の場合は、まず鼻の通りをよくする薬を左右の鼻にスプレーし、続いて麻酔のゼリーやスティックで鼻の通り道に局所麻酔をかけます。そのうえで、通りのよいほうの鼻からスコープを入れていきます。経口の場合は、喉に麻酔をしてマウスピースをくわえ、そこからスコープを進めます。鎮静剤を使う場合は、腕の静脈に点滴の針を入れ、薬が効いてうとうとしてきたところで検査開始です。


かかる時間の目安として、先ほどの台湾の試験では、手技にかかった時間は経鼻19.9分・経口16.8分と報告されています[3]。経鼻のほうが3分ほど長い計算になりますが、その差が何によるものかまでは、この試験からは分かりません。組織を採る場合は、その分だけ数分延びます。


よくあるご質問

Q. 経鼻だと画質が悪くて、病変を見逃されたりしませんか。

A. 以前の細径スコープは画質の差が課題とされていましたが、近年の機種では大きく改善しています[5]。当院の経鼻用スコープもその世代のものです。そのうえで、症状があって精密な観察が必要と判断した場合には、高精細の経口スコープでの検査をご提案することがあります。どちらで受けるかは目的に応じて一緒に決めましょう。


Q. 鼻が狭いと言われたことがあります。経鼻は無理でしょうか。

A. 試験データでは、鼻の構造が理由で経鼻挿入をあきらめた方が数%いらっしゃいます[1, 3]。ただ、実際に入るかどうかは診察と検査時の様子で判断できますし、入らなければその場で経口に切り替えられます。無理に押し込むことはしませんので、まずはご相談ください。


Q. 鎮静剤を使いたいのですが、注意することはありますか。

A. 検査後はリカバリー室で30分ほどお休みいただきます。当日のご予定には余裕を持たせてください。お車やバイク、自転車で来院される予定の方は、鎮静剤の使用可否も含めて予約時にご相談ください。


Q. 予約のときに決めた方法を、当日に変えることはできますか。

A. できます。診察や当日の状態をうかがったうえで、ご希望が変われば方法を変更していただいてかまいません。経鼻で始めてみて鼻の通りが悪ければ、その場で経口に切り替えることもあります。ただし鎮静剤を使う場合は、検査後にお休みいただく時間が必要になるため、当日のご予定によってはお受けできないことがあります。鎮静をご検討の方は、予約の段階でお伝えいただけると調整しやすくなります。


Q. 経鼻と経口で、見つけられる病気に差はありますか。

A. 食道・胃・十二指腸を観察するという検査の目的は同じで、どちらでも観察・生検(組織を採る検査)が行えます。画質は高精細の経口スコープに分がありますが[4]、細径スコープの性能も改善が続いています[5]。大切なのは、症状や目的に応じて適した方法を選ぶことです。診察の際にご希望をお聞かせください。



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まとめ:楽さの正体は「自分に合った方法を選べたか」

経鼻内視鏡は、鎮静剤を使わない検査としては嘔吐反射が少なく、多くの試験で経口より苦痛が少なかったと報告されています。一方で鼻の構造によっては向かない方がおり、精密な観察となると高精細の経口スコープに分があります。うとうとした状態で受けたい方には、鎮静剤という第3の道も残されています。


どれが正解ということではなく、反射の強さ・鼻の状態・検査の目的・当日の予定という4つの条件で、合う方法は人それぞれ変わります。「前につらかったから」と検査そのものを遠ざけてしまうのが、いちばんもったいない選択です。胃がんや食道がんの多くは、早い段階では自覚症状がほとんどありません。


つらくない受け方を、一度一緒に探してみませんか。検査を避けてきた方こそ、ご相談をお待ちしています。

ご予約はこちらの予約ページから、またはお電話でも承ります。


  • Murata A, Akahoshi K, Sumida Y, Yamamoto H, Nakamura K, Nawata H. Prospective randomized trial of transnasal versus peroral endoscopy using an ultrathin videoendoscope in unsedated patients. J Gastroenterol Hepatol. 2007;22(4):482-485.

  • Preiss C, Charton JP, Schumacher B, Neuhaus H. A randomized trial of unsedated transnasal small-caliber esophagogastroduodenoscopy (EGD) versus peroral small-caliber EGD versus conventional EGD. Endoscopy. 2003;35(8):641-646.

  • Lin LF, Ma KZ, Tu HL. A prospective randomized study comparing transnasal and peroral 5-mm ultrathin endoscopy. J Formos Med Assoc. 2014;113(6):371-376.

  • Horiuchi A, Nakayama Y, Hidaka N, Ichise Y, Kajiyama M, Tanaka N. Prospective comparison between sedated high-definition oral and unsedated ultrathin transnasal esophagogastroduodenoscopy in the same subjects: pilot study. Dig Endosc. 2009;21(1):24-28.

  • Tanuma T, Morita Y, Doyama H. Current status of transnasal endoscopy worldwide using ultrathin videoscope for upper gastrointestinal tract. Dig Endosc. 2016;28 Suppl 1:25-31.



 
 

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