下痢に血が混じるときに考えるべき病気一覧:消化器内視鏡専門医が教える原因、受診の目安、最新の精密検査
- 2025年12月22日
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更新日:1月23日

下痢を伴う排便時に、鮮やかな赤い血やゼリー状の粘液、あるいは赤黒い血液が混じるという症状は、患者様にとって極めて強い不安を呼び起こすものです ₁。多くの方が「ただの痔だろう」あるいは「一時的な食あたりだろう」と自分に言い聞かせる一方で、その裏側には大腸がんや難病指定されている炎症性腸疾患、あるいは緊急の処置を要する虚血性疾患が隠れていることが少なくありません ₂。
特に「夜間だけ腹痛や下痢がひどくなる」といった悩みや、「痛みはないが血が混じる」という状況は、病態の深刻度を反映している場合があります ₄。本コラムでは、京都市下京区のくりた内科・内視鏡クリニックにおいて、日々数多くの消化器疾患を診断する内視鏡指導医の視点から、血性下痢の背景に潜む疾患の全容を解明し、エビデンスに基づいた最適な受診のタイミングを提示します。
血便の色の臨床的解釈:どこから出血しているのか?
下痢に血が混じる際、まず最も重要な情報は「血液の色」と「便の性状」です。血液の色調は出血部位から肛門までの距離、および腸管内での滞留時間に依存しており、これを確認するだけで鑑別疾患の範囲を大きく絞り込むことが可能となります ₂。
鮮血便(Hematochezia)の病態
鮮やかな赤色を呈する鮮血便は、主として直腸やS状結腸、あるいは肛門管付近からの出血を示唆しています ₂。血液が腸内細菌や消化液に曝露される時間が短いため、酸化を受けずに赤い状態を維持しているのです。下痢を伴う場合、直腸付近の粘膜に急性または慢性の炎症が生じている可能性が高く、潰瘍性大腸炎の再燃期や、カンピロバクターなどによる感染性腸炎、あるいは直腸がんなどが代表的な原因疾患として挙げられます ₈。
暗赤色便(Maroon Stool)と粘血便の解釈
暗赤色や赤黒い血が混じる場合は、より奥側の盲腸や上行結腸、横行結腸からの出血が疑われます ₆。特に、ゼリー状の粘液に血液が混じった「粘血便」は、腸粘膜の広範な炎症や壊死を反映しており、炎症性腸疾患(IBD)やアメーバ赤痢において典型的に見られる所見です ₁₂。
黒色便(Melena)の例外
通常、胃や十二指腸などの上部消化管からの出血はタールのような黒色便となりますが、出血速度が極めて速く、大量の下痢を伴う場合には、血液が酸化される前に排泄され、鮮血便として現れることが約15%の症例で報告されています ₇。そのため、強い胃痛を伴う血性下痢などの場合には、上部消化管(胃カメラ)の精査も視野に入れる必要があります。
出血の色 | 想定される主な出血部位 | 代表的な疾患 |
鮮紅色 | 肛門、直腸、S状結腸 | 痔核、直腸がん、潰瘍性大腸炎、虚血性大腸炎 |
暗赤色 | 横行結腸、上行結腸、盲腸 | 右側結腸憩室出血、大腸がん、アメーバ赤痢 |
粘血便 | 全大腸(広範な炎症) | 潰瘍性大腸炎、クローン病、細菌性赤痢 |
黒色(稀に鮮紅) | 胃、十二指腸 | 胃潰瘍、十二指腸潰瘍、胃がん |
潰瘍性大腸炎(Ulcerative Colitis):日本で急増する難病の正体
下痢と粘血便を繰り返す疾患の中で、近年日本国内で爆発的に増加しているのが潰瘍性大腸炎(UC)です ₁₄。これは大腸の粘膜に慢性的な炎症が起こり、ただれ(びらん)や潰瘍が形成される原因不明の自己免疫性疾患であり、厚生労働省より指定難病に認定されています ₁。
疫学と日本人におけるリスク
かつてUCは欧米の病気と考えられていましたが、現代の日本では約22万人以上の患者様が存在し、その数は年々増え続けています ₁₄。最新の国内疫学調査(2025年公表)では、男性の罹患率が女性の約1.31倍と高く、発症年齢は20代から30代の若年層にピークがあるものの、50代から70代での発症も第2のピークとして確認されており、高齢者の新規発症も無視できない現状があります ₄。
特徴的な臨床症状と夜間下痢の重要性
UCの主症状は、持続的な下痢、粘血便、そして腹痛です ₁。病勢が悪化すると、1日に10回以上の血性下痢に加え、急激な便意(便意切迫感)や、便が出ないのに何度もトイレに行きたくなる「しぶり腹(Tenesmus)」が顕著となります ₁₃。特に、就寝中に下痢で目が覚める「夜間症状(Nocturnal Diarrhea)」がある場合は、機能性疾患(過敏性腸症候群など)ではなく、炎症を伴う器質的疾患が存在する強力な証拠となるため、速やかな精密検査が推奨されます ₅。
診断と長期合併症のリスク
UCの確定診断には、大腸カメラによる粘膜の直接観察と組織採取(生検)が必須です ₂₀。内視鏡的には、直腸から連続的に広がる粘膜の浮腫、血管透見像の消失、易出血性(スコープが触れただけで出血する状態)が観察されます ₂₁。重要な点として、発症から長期間経過すると、持続する炎症を背景とした「大腸がん」の発生リスクが高まります ₁。そのため、症状が落ち着いている「寛解期」であっても、定期的な内視鏡サーベイランスを受けることが将来の健康を守る鍵となります ₁。
虚血性大腸炎(Ischemic Colitis):突発的な激痛と血便の緊急事態
「夜間や早朝に突然の激しい腹痛に襲われ、下痢が出た後、真っ赤な鮮血が混じった」というケースで、最も疑われるのが虚血性大腸炎です ₅。これは大腸への血流が一時的に低下し、腸粘膜が酸欠状態(虚血)に陥ることで炎症や出血を引き起こす病態です ₂₄。
発生メカニズムとリスク要因
虚血性大腸炎は、動脈硬化を背景とした血管側の問題と、腸管内圧の上昇による血流障害の両面から発生します ₂₄。
血管側の要因: 高血圧、糖尿病、脂質異常症、不整脈(心房細動など)といった生活習慣病 ₂₄。
腸管側の要因: 頑固な便秘による「いきみ」、脱水、不摂生 ₂₃。
特徴的な症状の進行
症状は、時計の針が進むように段階的に現れるのが特徴です ₅。
突発的な腹痛: 多くは左下腹部に鋭い痛みが走り、冷や汗を伴うこともあります。
頻回の下痢: 痛みの直後、あるいは数分から数十分後に水のような下痢が起こります。
鮮血便: その後の排便で、鮮やかな赤色の血液が混じります。
多くの場合、適切な安静と絶食により1週間程度で治癒する予後良好な疾患ですが、全症例の約15〜20%において、腸管が壊死(壊疽型)したり、穿孔(腸に穴が開く)したりすることがあり、この場合は緊急手術が必要となります ₂₄。特に、腹痛が持続し、お腹を押さえて離す時に強く痛む(反跳痛)場合は、一刻を争う事態です ₂₄。
細菌性および寄生虫性腸炎:食中毒だけではないリスク
特定の病原微生物が大腸に侵入し、粘膜を破壊しながら増殖する過程で、下痢と出血が生じます。
カンピロバクター(Campylobacter jejuni)
日本で最も頻度の高い細菌性下痢症であり、主な原因は加熱不十分な鶏肉(鶏刺し、焼き鳥の半焼けなど)の摂取です ₃₁。数日の潜伏期間を経て、激しい腹痛、高熱、そして粘血便や血性下痢を引き起こします ₃₁。
腸管出血性大腸菌(O157:H7など)
強力な「ベロ毒素」を産生し、出血性大腸炎を来します ₃₁。水のような下痢で始まり、その後に「便の成分がほとんどなく、血液そのもの」のような血便が出るのが特徴です ₃₁。全症例の約10%で、急性腎不全を来す「溶血性尿毒症症候群(HUS)」を発症し、生命の危険が生じる可能性があります ₃₁。自己判断で市販の止血剤を服用することは、毒素の排泄を妨げ、症状を悪化させるリスクがあるため極めて危険です ₃₁。
アメーバ赤痢(Entamoeba histolytica)
単細胞の寄生虫である「赤痢アメーバ」の感染によって発症します ₃₈。
症状: 数週間にわたる持続的な下痢、粘血便、しぶり腹 ₁₂。
リスク: 前述の潰瘍性大腸炎と症状や内視鏡所見が酷似しており、誤診されやすい疾患です ₁₂。UCと誤診してステロイド治療を開始すると、アメーバが暴走して腸管穿孔を引き起こす危険があるため、診断時には必ず否定しておく必要があります ₁₂。
大腸がんと進行ポリープ:早期発見が唯一の生存戦略
下痢に血が混じる際に最も深刻な背景疾患は大腸がんです ₂。大腸がんは早期段階では無症状であることが多く、血便として認識された時点ですでに進行がんとなっているケースが少なくありません ₆。
「痔があるから」という自己判断の罠
血便を自覚した際に「昔から痔があるから、この血も痔のせいに違いない」と納得し、受診を先延ばしにしてしまう心理は危険です ₄₄。痔と大腸がんは共存し得るものであり、痔が存在することが大腸がんがないことの証明にはなりません ₄₅。がんは物理的な刺激を受けて出血するため、勢いよく排泄される下痢の時の方が、血液を確認しやすい場合があります ₆。
若年性大腸がんの警告
近年、世界的に50歳未満で発症する「若年性大腸がん」が急増しています ₃。若年層の場合、医師側もがんを疑わない傾向があり、確定診断まで平均して4〜6ヶ月の遅延が生じているというデータがあります ₃。
レッドフラッグ症状:3ヶ月以上続く血便、原因不明の腹痛、急な便通の変化 ₃。これらの症状がある場合、年齢にかかわらず大腸カメラによる精査を受けることが強く推奨されます ₄₇。
便潜血検査陽性(1/2回陽性)の重大性
健診の便潜血検査(FIT)で「2回のうち1回だけ陽性」だった場合、精密検査を受けずに済ませてしまう方が多いですが、がんやポリープからの出血は毎日続いているわけではなく「間欠的」です ₄₆。
統計上、便潜血陽性者の約3〜5%(20人に1人)に大腸がんが、約30〜50%(2〜3人に1人)に将来がん化する「腺腫性ポリープ」が発見されます ₄₆。この段階で大腸カメラを行い、ポリープを切除すれば、将来の大腸がん発生をほぼ100%防ぐことが可能です ₄₆。
薬剤性腸炎:日常的な薬に潜むリスク
下痢と血便の原因が、治療のために服用している薬剤そのものである場合があります ₁₁。
NSAIDs起因性大腸炎
腰痛や頭痛の治療で常用されるロキソプロフェンやイブプロフェンなどの非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)は、胃だけでなく大腸にもダメージを与えます ₅₆。粘膜を保護する物質の産生を抑制するため、大腸に潰瘍を形成し、激しい下痢や鮮血便を引き起こすことがあります ₅₇。
抗菌薬関連大腸炎
抗生物質の服用後、腸内の善玉菌が死滅し、特定の菌(C.ディフィシルなど)が異常増殖して毒素を出す病態です ₆₁。激しい水様下痢、発熱、そして血便が出るのが特徴で、特に高齢者や免疫力が低下している方において重症化しやすい傾向があります ₂₄。
ストレスと過敏性腸症候群(IBS):その血はどこから?
「仕事のストレスが溜まるとお腹を下し、たまに紙に血がつく」という悩みを持つ方は多いですが、医学的に見て、ストレスのみが直接的に大腸から出血させることは原則としてありません ₆₄。
下痢の頻回化による「切れ痔」の悪化
過敏性腸症候群(IBS)は、腸に器質的な異常がないにもかかわらず、ストレスなどで腸が過敏になり、下痢や便秘を繰り返す機能性疾患です ₁₉。1日に何度も下痢を繰り返すと、肛門管の粘膜が脆弱になり、排便時の摩擦によって「切れ痔(裂肛)」が生じ、紙に血がついたり便に血が混じったりします ₁₁。
IBSと診断する前の「除外診断」
重要なのは、血便を「ストレスのせい」と自己完結させてはいけないという点です。潰瘍性大腸炎もまた、ストレスで病状が悪化し血性下痢を来すからです ₂₂。血便が続くなら、まずは内視鏡検査を行い、目に見える異常がないことを確認した上で初めて、IBSとしての適切な治療を開始するのが現代医療のスタンダードです ₅₂。
夜間に下痢・血便が起きた時の具体的な対処法
「真夜中に急な腹痛と下痢で目が覚め、血が出ている」という状況において、翌朝まで待つべきか今すぐ救急病院へ行くべきかの判断基準を明確にします ₂₃。
今すぐ(夜間救急)受診すべき状況
以下のサインは「ショック状態」や「腸管壊死」への進行を示唆しています ₂₄。
顔面蒼白で、立ち上がるとフラフラする(血圧低下) ₁₅。
冷や汗を伴うような、身をよじるほどの耐えがたい腹痛が持続する ₆₅。
お腹全体が板のように硬くなり、触れるだけで飛び上がるほど痛む ₂₅。
意識が朦朧としたり、呼吸が苦しくなったりする ₂₄。
翌朝の(消化器専門外来)受診で良い状況
腹痛はあるが、排便後や安静時には和らぐ ₂₃。
出血量はティッシュにつく程度か、便に少し混じる程度である ₆。
意識はしっかりしており、水分補給が可能である ₇₈。
この場合、翌朝に最新の検査機器を揃えた専門クリニックを受診し、当日の緊急内視鏡検査を検討してもらう方が、結果として迅速かつ正確な診断につながることが多いです ₇₂。その際は、可能であれば「血便のついた便の写真」を持参していただくと診察がスムーズです ₈₁。
精密検査としての「大腸カメラ」:くりた内科・内視鏡クリニックの技術
下痢に血が混じる原因を突き止めるために、現代の消化器診療において「大腸カメラ(大腸内視鏡検査)」に勝る検査は存在しません ₈₂。
最新システム「EVIS X1」による微細病変の捕捉
当院では、オリンパス社の最上位フラッグシップシステム「EVIS X1」を京都市内のクリニックとしていち早く導入しています ₄₆。
NBI(狭帯域光観察): 特殊な光を照射し、がん特有の異常な血管を浮かび上がらせる。これにより、従来は見逃されていた平坦な早期がんも確実に発見できます ₄₆。
EDOF(被写界深度拡大): 常にピントが合う範囲を拡大し、検査時間の短縮と診断精度の向上を両立させています ₈₅。
認定内視鏡指導医による「痛くない」挿入技術
大腸カメラを躊躇する最大の理由は「痛みへの恐怖」でしょう ₈₆。当院長は、日本消化器内視鏡学会の「指導医」資格を有しています ₈₆。指導医とは、専門医を指導する立場の、高度な技術の証明です。
軸保持短縮法: 腸を無理に伸ばすのではなく、アコーディオンのように畳み込みながら進める技術。これにより「突き上げられるような痛み」を極限まで抑えることが可能です ₈₆。
浸水法(Water Immersion): 空気を入れず、少量の水を潤滑剤として使うことで、癒着がある方でもスムーズに通過させることができます ₈₆。
炭酸ガス(CO2)送気による術後の快適性
当院では空気の200倍速く体内に吸収される炭酸ガス送気システムを採用しており、検査後の「お腹の張り」を劇的に軽減させています ₈₆。
鎮静剤(静脈麻酔)の使用
「ウトウトと眠っている間に検査を終わらせてほしい」というご希望に応じ、鎮静剤を微調整して投与しています ₄₆。また、女性患者様のプライバシーに配慮し、女性スタッフ中心の体制や個室の完備など、心理的なバリアを取り除く工夫を徹底しています ₄₆。
全年代が知っておくべき検査のタイミング
下痢に血が混じってから慌てて受診するのではなく、「自覚症状が出る前」の検査が理想です ₉₂。
30代・40代からのチェック
大腸がんのリスクは40代から急速に上昇します ₅₃。30代であっても、血性下痢や腹痛を繰り返す場合は、炎症性腸疾患(UC等)の可能性があるため、一度は大腸の「中身」を確認しておくことが推奨されます ₉₃。
内視鏡+腹部エコーの黄金の組み合わせ
当院では、内視鏡検査に腹部超音波(エコー)検査を組み合わせたチェックを推奨しています ₉₃。血液検査では捉えきれない、膵臓、肝臓、腎臓などの「沈黙の臓器」の初期病変を捉えつつ、大腸内を直接観察することで、消化器全体の精密なリスク評価を同日に完了させることができます ₉₃。
血性下痢は「未来の健康を守るチャンス」の通知
下痢に血が混じるという症状は、身体が懸命に発している「SOS」です ₄₄。問題を先送りすることは、自らの回復の可能性を削り取っていることに等しいものです ₄₄。くりた内科・内視鏡クリニックでは、専門医としての診断力、指導医としての挿入手技、そして最新の設備をもって、あなたの不安を「安心」へと変える準備ができています ₄₆。
下痢に血が混じることに気づいたら、まずは勇気を出して、当院の専門外来にご相談ください。その一歩が、数年後のあなたの笑顔を守る決定的な要因となるのです。
血便の原因・タイプ・受診の目安を全体像で整理した解説は、以下のまとめページをご覧ください。
引用文献 (Vancouver Style List from PubMed Evidence)






