急な下痢が続く原因と受診の目安を専門医が解説|血便や夜間の腹痛は見逃さないで
- くりた内科・内視鏡クリニック
- 2025年12月19日
- 読了時間: 12分

急な下痢は、日常生活において極めて頻繁に遭遇する消化器症状の一つであり、その多くは一過性の感染症や食生活の乱れに起因します。しかし、症状が数日間改善しない、あるいは再発を繰り返す場合、背後には早期の介入を必要とする器質的疾患が隠伏している可能性が否定できません ₁。下痢の臨床的な定義は、24時間以内に3回以上の軟便あるいは水様便の排出、または1日の糞便重量が200gを超える状態を指します ₄。特に、急激に発症し持続する下痢においては、脱水のリスク管理と並行して、原因の精査が不可欠となります ₅。
京都市下京区の消化器内科・内視鏡専門クリニックであるくりた内科・内視鏡クリニックでは、こうした下痢症状に対し、最新のエビデンスに基づいた精密な診断と治療を提供しています ₇。本コラムでは、急な下痢が続く際に疑うべき病態、受診を検討すべき「レッドフラグ(危険信号)」、そして専門クリニックで行われる高度な内視鏡診療の役割について、学術的視点から詳細に論述します。
下痢の分類と持続期間に基づく診断学的アプローチ
下痢の診断において最も重要な指標の一つが、その持続期間です。持続期間によって、想定される原因疾患のリストは大きく変化します ₅。臨床的には、下痢は以下の3つのフェーズに分類されます。
急性下痢症(14日以内)
発症から2週間以内に終息する下痢は急性下痢症に分類されます ₄。その大部分はウイルス(ノロウイルス、ロタウイルスなど)や細菌(カンピロバクター、サルモネラ、病原性大腸菌など)による感染性胃腸炎です 5。急性下痢は多くの場合、適切な水分補給によって自律的に改善しますが、高齢者や免疫抑制状態にある患者様では重症化しやすく、迅速な医療介入が求められます ₅。
遷延性下痢症(14日から30日)
症状が14日を超えて継続する場合、遷延性下痢症(Persistent Diarrhea)と定義されます ₁。この段階では、急性感染症が重症化しているケースに加え、特定の寄生虫感染や、後述する過敏性腸症候群(IBS)の初期発症、あるいは薬剤性下痢などの非感染性要因が考慮されるべきです ₁。
慢性下痢症(30日以上)
4週間以上持続する下痢は慢性下痢症と見なされ、感染症よりも器質的あるいは機能的な疾患の可能性が極めて高くなります 2。炎症性腸疾患(IBD)、吸収不良症候群、内分泌疾患(甲状腺機能亢進症など)、そして大腸がんなどの悪性腫瘍の除外が必須となるフェーズです ₂。
以下の表は、下痢の持続期間と主な原因疾患の相関をまとめたものです。
分類 | 持続期間 | 主な原因・病態 |
急性下痢症 | 14日以内 | ウイルス・細菌感染、暴飲暴食、薬剤性 |
遷延性下痢症 | 14日〜30日 | 重症感染症、寄生虫、IBSの初発、遷延する薬剤性影響 |
慢性下痢症 | 30日以上 | 炎症性腸疾患(IBD)、IBS、大腸がん、吸収不良、内分泌疾患 |
下痢の病態生理学的メカニズム
下痢が発生するプロセスは、腸管内における水分・電解質の輸送バランスが破綻することに起因します。このメカニズムを理解することは、適切な治療法を選択する上で極めて重要です ₅。
浸透圧性下痢
腸管内に吸収されにくい物質が存在することで、その浸透圧により水分が腸管腔内へ引き出される病態です ₂。代表的な原因として、乳糖不耐症(乳糖の未消化)や、人工甘味料(ソルビトール、マンニトールなど)の過剰摂取、マグネシウム含有下剤の使用が挙げられます ₂。このタイプの特徴は、絶食あるいは原因物質の摂取を中止することで、下痢が速やかに消失する点にあります ₂。
分泌性下痢
腸粘膜からの水分や電解質の分泌が過剰になる、あるいは吸収が阻害されることで生じます ₂。細菌毒素(コレラ毒素、病原性大腸菌のエキソトキシンなど)や、特定のホルモン産生腫瘍、胆汁酸吸収不全が関与します ₂。浸透圧性とは異なり、絶食しても下痢が止まらず、夜間にも頻繁に排便が見られることが臨床的な特徴です ₂。
下痢の鑑別において、糞便浸透圧ギャップ(Stool Osmotic Gap)の算出は有用な指標となります。計算式は以下の通りです ₁₁。
Stool Osmotic Gap = 290 - 2 × ([Na⁺] + [K⁺])
このギャップが100mOsm/kg以上であれば浸透圧性、50mOsm/kg未満であれば分泌性が強く疑われます。
滲出性・炎症性下痢
腸粘膜に炎症、潰瘍、剥離が生じ、血液や粘液、タンパク質が腸管内に漏出する病態です ₄。潰瘍性大腸炎やクローン病といった炎症性腸疾患(IBD)、あるいは侵襲性の細菌感染(赤痢、サルモネラなど)がこれに該当します ₅。便に血や膿が混じることが多く、発熱や体重減少などの全身症状を伴う頻度が高いのが特徴です ₂。
腸管運動異常性下痢
腸管の蠕動運動が過剰に亢進することで、内容物の通過時間が短縮し、水分の吸収が不十分になる病態です ₂。過敏性腸症候群(IBS)の下痢型がその代表例であり、ストレスや自律神経の乱れが密接に関与しています ₁₁。
急な下痢が続く場合に疑うべき主な疾患
下痢症状が持続する場合、医療機関での鑑別診断が不可欠となる主な疾患について詳述します。
感染性胃腸炎(細菌・ウイルス・寄生虫)
急性下痢の最大の原因であり、特に細菌性感染症では適切な治療が必要になる場合があります ₅。
カンピロバクター腸炎: 加熱不十分な鶏肉などの摂取が原因となり、潜伏期間を経て激しい腹痛と下痢、血便を呈します ₅。
クロストリジウム・ディフィシル (C. difficile) 感染症: 抗生物質の使用により腸内フローラが乱れ、特定の菌が異常増殖することで発症します ₂。
アメーバ赤痢: 寄生虫による感染症で、粘血便を伴う持続的な下痢が特徴です ₁。
過敏性腸症候群 (IBS: Irritable Bowel Syndrome)
内視鏡検査などで明らかな炎症が見られないにもかかわらず、腹痛を伴う下痢や便秘が続く疾患です ₁₁。現代社会におけるストレスが要因の一つであり、特に「下痢型IBS」の患者様は、急な便意への不安から外出を控えるなど、生活の質(QOL)が著しく損なわれます ₁₁。くりた内科・内視鏡クリニックでは、Rome IV基準に基づいた正確な診断と、患者様のライフスタイルに合わせた薬物療法を提供しています ₁₃。
炎症性腸疾患 (IBD: Inflammatory Bowel Disease)
若年層に多く見られる難病であり、放置すると腸管の狭窄や穿孔を引き起こす可能性があります ₂。
潰瘍性大腸炎: 大腸の粘膜に連続的な炎症が生じ、粘血便を伴う下痢を繰り返します ₂。
クローン病: 口から肛門までの全消化管に非連続的な炎症が生じる。腹痛、下痢、体重減少が主症状であり、肛門周囲の痔瘻などの病変を伴うこともあります ₂。これらの疾患は、内視鏡による早期発見がその後の予後を大きく左右します ₅。
大腸がん
下痢そのものががんの直接的な症状であることは少ないですが、腫瘍により腸管が狭くなると、そこを通過するために便が細くなったり、下痢と便秘を交互に繰り返したりすることがあります ₆。特に「下痢に血が混じる」「最近便が細くなった」と感じる場合は、速やかな大腸カメラ検査が推奨されます ₁₆。
受診の目安:見逃してはいけないレッドフラグ
下痢症状において、以下の症状(レッドフラグ)が一つでも認められる場合は、速やかに消化器内科を受診すべきです ₅。
血便または黒色便: 腸管内での活動性出血を示唆し、がんや重度の炎症の可能性があります ₅。
夜間の下痢・腹痛: 睡眠を妨げるほどの下痢は、機能性のIBSではなく、器質的疾患(IBDや感染症)の可能性を強く示唆します ₂。
急激な体重減少: 吸収不良や悪性腫瘍、慢性的な炎症状態を示しています ₅。
38.5℃以上の高熱: 全身性の感染症や高度な炎症反応の兆候です ₄。
脱水症状: 口渇、尿量減少、ふらつき、皮膚の緊張低下など。重度の脱水は腎不全を招く恐れがあります ₅。
50歳以上での新規発症: 消化器系がんのリスクが高まる年齢層であり、スクリーニングが必須となります ₁₀。
レッドフラグ項目 | 疑われるリスク | 推奨アクション |
血便・粘血便 | 大腸がん、IBD、侵襲性細菌感染 | 早急な内視鏡検査 |
夜間の排便 | 器質的腸疾患 | 消化器専門医の受診 |
意図しない体重減少 | 悪性腫瘍、吸収不良 | 精密検査の実施 |
高度な腹痛・膨満感 | 腸閉塞、急性腹症、穿孔 | 救急あるいは即時受診 |
くりた内科・内視鏡クリニックの専門性と高度な検査体制
京都市下京区に拠点を置くくりた内科・内視鏡クリニックは、下痢症状に悩む患者様に対し、地域最高水準の医療を提供しています ₇。院長の栗田亮医師は、京都大学医学部附属病院等の第一線で培った豊富な経験を持つ内視鏡専門医であり、精度の高い診断と、患者様の負担を極限まで抑えた検査を実現しています ₁₈。
次世代内視鏡システム「EVIS X1」による精密診断
当クリニックでは、オリンパス社の最新鋭内視鏡システム「EVIS X1」を導入しています ₇。このシステムは、TXI(構造色彩強調機能)やRDI(赤色光連続強調観察)などの特殊光技術を搭載しており、従来の観察では困難であった微細な炎症や早期のがん病変を、圧倒的な鮮明さで描出することが可能です ₁₂。
苦痛のない「無痛内視鏡検査」の提供
「大腸カメラは痛そうで怖い」という不安を払拭するため、当クリニックでは適切な鎮静剤(静脈麻酔)を用いた検査を行っています ₇。患者様はウトウトと眠っているような状態で検査を終えることができ、検査中の苦痛はほとんど感じられません ₇。また、腸管を膨らませるガスには、空気よりも吸収が数百倍速い二酸化炭素(CO2)を使用しており、検査後の腹部膨満感も最小限に抑えられています ₁₈。
総合的な内科・消化器アプローチ
当クリニックの強みは、内視鏡だけでなく、一般内科から消化器専門外来までを幅広く網羅している点にあります ₈。血液検査、腹部エコー検査、糞便検査(カルプロテクチン測定を含む)を適切に組み合わせることで、不要な検査を避けつつ、最短距離での確定診断を目指しています ₈。
くりた内科・内視鏡クリニックの診療方針については、以下の院長ブログ記事でも詳細に解説されています。
家庭での初期対応と食事療法の注意点
病院を受診するまでの間、あるいは医師の診断を受けた後の家庭でのケアについて、エビデンスに基づいた指針を提示します。
水分補給の科学:経口補水液の重要性
下痢時には、水分の喪失と同時にナトリウムやカリウムといった電解質も失われます。真水だけを過剰に摂取すると、低ナトリウム血症(水中毒)を引き起こすリスクがあります ₅。
推奨されるもの: 経口補水液(OS-1など)や、希釈したスポーツ飲料 ₅。
避けるべきもの: 極端に冷たい水、カフェイン含有飲料(腸管刺激作用)、アルコール、糖分の多すぎるジュース(浸透圧により下痢を悪化させる) ₁₀。
食事の段階的導入
腸の粘膜が炎症を起こしている間は、消化に負担のかかる食品を避ける「低残渣(ていざんさ)食」が基本となります ₄。
初期フェーズ: お粥、うどん、すりおろしリンゴ、バナナ ₄。
回復期: 白身魚、鶏ささみ、豆腐、卵料理 ₂₁。
禁止食品: 揚げ物、香辛料(唐辛子など)、生野菜、アルコール、ナッツ類 ₅。
早期受診がもたらす長期的な健康メリット
急な下痢を「ただの腹痛」と放置せず、早期に消化器専門医を受診することには多大なメリットがあります。
診断の確定による不安解消: 「がんではないか」という精神的なストレスは、それ自体が消化器症状を悪化させます。正確な診断を受けることで、適切な治療のロードマップが明確になります ₃。
難病の早期コントロール: 潰瘍性大腸炎などは、早期に適切な薬物療法を開始することで、手術を回避し、健常人と変わらない生活を送ることが可能になります ₂。
大腸がんの根治: 下痢症状をきっかけに大腸カメラを行い、早期がんや前がん病変(ポリープ)を発見できれば、当クリニックでの日帰り切除も含め、完治の可能性が飛躍的に高まります ₁₆。
結論:お腹の不調は専門医への相談が第一歩
急な下痢が続く状態は、身体が発している重要な警告サインです。多くの場合は一過性ですが、その中に潜む重大な疾患を見逃さないためには、専門医による論理的な臨床推論と高度な検査機器による裏付けが不可欠です ₁。
京都市下京区のくりた内科・内視鏡クリニックでは、栗田亮院長をはじめとするスタッフ一同が、患者様が抱える「お腹の不安」を解消するために、日々研鑽を積んでいます ₈。
WEB予約(https://ssc11.doctorqube.com/kurita-naika/)は24時間体制で受け付けており、土日診療(第2・第4日曜)にも対応することで、忙しい現代人の健康維持を強力にバックアップしています 7。少しでも「いつもと違う下痢」を感じたら、迷わず当クリニックにご相談ください。
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