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大腸ポリープを「焼き切る」と聞いて不安な方へ|電気を使う切除・使わない切除の違いを専門医が解説

4 日前
読了時間: 10分

大腸カメラの説明で「ポリープが見つかったら焼き切ります」と言われて、身がすくむような気持ちになった方がいらっしゃるかもしれません。「焼く」という言葉の響きから、強い痛みや火傷のようなものを連想してしまうのは、自然な反応です。


実際には、大腸ポリープの切除には電気を使う方法と使わない方法があり、どちらにするかはポリープの大きさや形などによって選びます。すべてのポリープが「焼き切られる」わけではありません。


「焼く」と言われた記憶だけが残って、内容を確かめないまま検査日を迎えようとしていませんか。この記事では、日本消化器内視鏡学会指導医の立場から、二つの方法の違いと使い分けの考え方を整理します。



切除の共通の土台――スネアで締めて取る

大腸ポリープの多くは、内視鏡の先端から出した「スネア」という金属製の輪をポリープの根元にかけ、締め付けることで切り取ります。スネアは大腸カメラのスコープの中を通っている細い管から出し入れするもので、検査中にポリープが見つかった段階で、観察用の内視鏡はそのままに、処置具だけを差し替えて使います。


検査を始める前から方法が決まっているわけではなく、実際にポリープを観察してから方法を選びます。違いが生まれるのは、この締め付けた輪に電気を通すかどうか、という一点です。「焼き切る」という言葉が指しているのは、この電気を通す方法のことです。



電気を使う「ホットスネアポリペクトミー」

電気を使う方法は「ホットスネアポリペクトミー」と呼ばれ、スネアに高周波の電流を流しながら締め付けます。組織を焼きながら切るため、切った瞬間にその場で血が止まりやすいという利点があります。太い血管を含むポリープや、茎がしっかりしたキノコ状のポリープなど、出血のリスクが高いと判断された場合に選ばれやすい方法です。


一方で、熱は切った部分だけでなく、その下にある層にも伝わります。この熱の影響で、処置から数日たってから出血する「遅発性出血」や、まれに腸の壁に穴があく「穿孔」が起こることがあります。本記事で引用した2件の解析では、対象となった試験のいずれにも穿孔の報告はありませんでした[1, 2]。切除した直後に問題がなくても数日は注意が必要になるのは、こうした熱の影響があるためです。



電気を使わない「コールドスネアポリペクトミー」

もう一つの方法は、電気をまったく使わず、スネアを締め付ける力だけでポリープを物理的に切り取るものです。これが「コールドスネアポリペクトミー」で、小さな良性のポリープに対する標準的な治療として推奨されています[1]。


8件の無作為化比較試験(治療法をくじ引きのように割り振って比べる研究)をまとめた解析では、コールドスネアポリペクトミーはホットスネアポリペクトミーに比べて処置にかかる時間が有意に短く、遅発性出血も少ない傾向がありました。ただし、遅発性出血の差は統計的に確かな差(有意差)とまでは言えませんでした[1]。


5〜10mmの小さなポリープを対象にした別の解析では、遅発性出血の頻度に両者で差はありませんでした。この解析では、切除した直後の出血はコールドスネアポリペクトミーのほうが多かったと報告されています。一方で、止血などの処置が必要になった出血の頻度には差がありませんでした[2]。電気を使わないからといって簡単な処置というわけではなく、小さく限られた範囲のポリープに向いた方法です。


ごく小さなポリープでは、輪のスネアではなく専用の小さな鉗子でポリープをつまみ取る方法が選ばれることもあります。これも電気を使わない点ではコールドスネアポリペクトミーと同じ考え方に基づく処置で、現場では合わせて「コールドポリペクトミー」と呼ばれています。



切除方法を分けるものさし

小さなポリープの切除方法をめぐっては、解析によって結果の出方が異なります。ある解析では、コールドスネアポリペクトミーとホットスネアポリペクトミーの完全切除率に統計的な差は見られませんでした[1]。一方、5〜10mmの小さなポリープを対象にした別の解析では、コールドスネアポリペクトミーの不完全切除率(切除した縁に病変の一部が残っていた割合)が、ホットスネアポリペクトミーよりおよそ1.57倍高かったと報告されています[2]。


取り残しを防ぎたい場面ではホットスネアポリペクトミーが、遅発性の出血や熱の影響を抑えたい場面ではコールドスネアポリペクトミーが選ばれやすく、どちらか一方が常に優れているわけではありません。これが医師が状況に応じて使い分けている理由です。


ポリープが10mm以上になったり、平らな形をしていて輪をかけにくかったりする場合には、ポリープの下に生理食塩水などを注入していったん盛り上げてから電気で切除する「内視鏡的粘膜切除術(EMR)」が選ばれることがあります。下に液体を入れておくことで、熱が腸の壁の深いところまで伝わるのを防ぎながら切除するという考え方です。特に大きい病変や、広い範囲にがんが疑われる場合には、内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD。病変の下の層を少しずつはがして一括で切り取る治療)のような、より高度な内視鏡治療や、入院・外科的な対応ができる医療機関への紹介が検討されることもあります。


当院での具体的な運用は、後述の「当院での切除とその後の過ごし方」でまとめてご案内します。



「焼き切る」という言葉が指しているもの

「焼き切る」という表現は、電気で組織を焼きながら切るという処置の方法そのものを指す言葉です。


止血はその結果として得られる効果の一つで、言葉の由来は痛みの強さとは別のところにあります。検査そのものの負担を減らす当院の工夫については、別記事で紹介しています[3]。どちらの方法であっても、切除のときに痛みがまったくないとは言い切れません。



検査中に切除方法が決まるまで

便潜血検査で陽性となって大腸カメラを受けられた方では、10mm未満の小さなポリープが見つかることがあります。その場合は、検査の中でそのままコールドスネアポリペクトミーによる切除を行う場合があります。茎のあるポリープや出血のリスクが高いと判断した病変では、止血の効果を優先してホットスネアポリペクトミーを選びます。どの方法にするか、その日のうちに切除するかどうかは、ポリープの大きさや形、部位、持病やお薬の状況をみて判断します。



当院での切除とその後の過ごし方

当院では、大腸カメラ検査中にポリープが見つかった場合、その場で切除まで行うことがあります。10mm未満のポリープについては、コールドスネアポリペクトミーを基本としています[4]。また、当院では内視鏡的粘膜切除術(EMR)も行っており、20mm以下でその場で切除できるポリープは、検査の中で切除しています。ただし、ポリープの形や位置、その時の状況によっては、その場では切除せず、より専門的な治療ができる医療機関へご紹介することもあります。


切除したポリープは病理検査に提出し、病変の種類や、取りきれているかどうかを顕微鏡で調べます。取りきれていない疑いが病変の横の端(水平断端)にある場合は、内視鏡による追加の切除をご提案します。深い側の端(垂直断端)にある場合は、外科手術による切除をご提案します。結果と今後の方針は、ご来院いただいてご説明します。


切除した後は、出血を防ぐために1週間は飲酒をお控えください。運動や食事など、そのほかの注意点は検査当日に個別にご案内します。



よくある質問

Q. コールドとホット、どちらで切るかは自分で選べますか。

A. 選ぶのは、検査中に病変を直接観察した医師です。大きさや形、出血のリスクをその場で判断して方法を決めるため、検査前に希望をお伝えいただくことはできますが、最終的な判断は医師にゆだねる形になります。


Q. 切除のあと、お酒はいつから飲めますか。

A. 切除した後は、1週間は飲酒をお控えください。そのほかの注意点は、検査当日に個別にご案内します。


Q. 大きいポリープが見つかったら、その場で切除してもらえますか。

A. 当院ではEMRも行っており、20mm以下でその場で切除できるポリープは、検査の中で切除しています。形や位置、その時の状況によっては、より専門的な治療ができる医療機関へご紹介することもあります。


Q. 切除したポリープはがんかどうか、その場でわかりますか。

A. 切除した組織を目で見ただけで良性か悪性かを断定することはできません。切り取ったポリープは顕微鏡による病理検査に提出し、後日ご来院いただき、その結果をもとに追加の治療や次回の検査時期についてご説明します。


Q. 病理検査で「取りきれていない」と言われたら、どうなりますか。

A. 取りきれていない疑いがどこにあるかで方針が変わります。横の端(水平断端)であれば内視鏡による追加の切除を、深い側の端(垂直断端)であれば外科手術による切除をご提案します。


Q. コールドスネアポリペクトミーなら出血のリスクはゼロですか。

A. ゼロにはなりません。処置から数日後の出血は少ない傾向とする報告[1]と、差がないとする報告[2]があり、切除した直後の出血はむしろ多かったという報告もあります[2]。方法にかかわらず、帰宅後に多量の出血が続く、強い腹痛があるなど気になる症状があれば、すぐに当院(075-334-6007)へご連絡ください。当院で内視鏡により出血している場所を確認し、必要に応じて止血の処置を行います。


Q. 「焼き切る」と説明されたら、それはホットスネアポリペクトミーのことですか。

A. 一般には、電気を使う方法を指して使われることが多い言葉です。ただし、どこまで厳密に使い分けて説明するかは施設や医師によって幅があるため、実際に電気を使う方法かどうか気になるときは、その場で医師に確認していただいて構いません。


Q. コールドスネアポリペクトミーを希望すれば、その方法にしてもらえますか。

A. ご希望は伺いますが、ポリープの大きさや形、出血のリスクによっては、コールドスネアポリペクトミーが適さないと医師が判断する場合があります。安全性を優先し、その場の状況に応じた方法を選ぶことになります。



個別の事情で選べる方法が変わる場合

血をさらさらにする薬(抗血栓薬)を服用中の方や、心臓に持病がある方など、個別の事情がある場合は、事前診察でお薬の内容を確認し、必要に応じて処方元の医師に確認します。気になる方は自己判断で結論を出さず、事前診察でご相談ください。



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まとめ

「焼き切る」という言葉の意味を確かめずに、不安だけを抱え続ける必要はありません。ポリープの大きさや形に応じて、コールドスネアポリペクトミー・ホットスネアポリペクトミー・EMRのいずれかが選ばれ、それぞれに利点とリスクがあります。どの方法になるかは検査当日に医師が判断しますので、気になる点があれば、検査前の診察でご質問ください。



引用文献

1. Shinozaki S, Kobayashi Y, Hayashi Y, Sakamoto H, Lefor AK, Yamamoto H. Efficacy and safety of cold versus hot snare polypectomy for resecting small colorectal polyps: Systematic review and meta-analysis. Dig Endosc. 2018;30(5):592-599.

2.Liu W, Gong J, Gu L. The efficacy and safety of cold snare versus hot snare polypectomy for endoscopic removal of small colorectal polyps: a systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials. Int J Colorectal Dis. 2023;38(1):136.

3.くりた内科・内視鏡クリニック.【保存版】苦痛の少ない大腸内視鏡検査の技術とは?内視鏡指導医が教える「痛くない」検査の秘密.くりた内科・内視鏡クリニック 院長ブログ.2025.https://www.kurita-naika.jp/information/20251210

4.くりた内科・内視鏡クリニック.【内視鏡専門医が解説】大腸ポリープは放置していい?切除すべき基準と痛くない治療法.くりた内科・内視鏡クリニック 院長ブログ.2026.https://www.kurita-naika.jp/information/20260730




 
 

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