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くりた内科・内視鏡クリニック

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憩室炎とは?腹痛・発熱・再発が心配な方へ

  • 8 時間前
  • 読了時間: 12分

はじめに

憩室炎は、大腸の憩室に炎症が起こる病気です。左下腹部痛、発熱、便通異常などの症状、原因、受診目安、検査のタイミングについて京都市下京区の消化器内科が解説します。



憩室炎とは

大腸憩室炎(だいちょうけいしつえん)は、大腸の壁に形成された袋状の突出部(憩室)に細菌感染や微小な穿孔が生じ、炎症が引き起こされる疾患です。


通常、血管が腸壁を貫通する脆弱な部位から粘膜が外側へ押し出されることで憩室が形成されます。近年の研究では、腸壁の酸化ストレスや慢性的な血流障害も発症に関与している可能性が示唆されています。

大腸憩室炎は、軽症であれば外来で経過をみられることもあります。ただし、膿瘍、穿孔、腹膜炎、腸管の狭窄などを伴う場合は入院治療や外科的治療が必要になることもあります[1,2]。


患者さんからは「左下腹部が痛い」「お腹の一部だけ押すと痛い」「発熱と腹痛が同時に出た」「下痢や便秘を繰り返している」といった相談を受けることがあります。腹痛の原因は憩室炎だけではありませんが、発熱を伴う腹痛は早めに医療機関で評価した方がよい症状です。

憩室炎とは


腹痛全般の受診目安については、当院ブログの「腹痛」も参考にしてください。  

腹痛を治す方法



憩室症と憩室炎の違い

「憩室症」と「憩室炎」は似た言葉ですが、意味が異なります。


憩室症は、大腸に憩室がある状態を指します。症状がないことも多く、憩室が見つかっただけで治療が必要になるとは限りません。


憩室炎は、その憩室に炎症が起こり、腹痛や発熱などの症状が出ている状態です。炎症の程度によって、外来でみる場合もあれば、点滴、抗菌薬、入院、外科的対応が検討されることもあります。


簡単に整理すると、次のようになります。

状態

意味

よくある状況

憩室症

大腸に憩室がある状態

無症状で偶然見つかることがある

憩室炎

憩室に炎症が起きた状態

腹痛、発熱、便通異常などが出る

複雑性憩室炎

膿瘍、穿孔、瘻孔、狭窄などを伴う状態

入院や外科的治療が必要になることがある


「大腸憩室があると言われたが、今後どうすればよいか」という方は、憩室症について解説した当院ブログもご覧ください。  


憩室炎の主な症状

憩室炎でよくみられる症状は、腹痛、発熱、便通異常です。典型的には左下腹部痛が知られていますが、日本では右側結腸に憩室がある方も少なくないため、右下腹部痛として出ることもあります。


よくある症状は次の通りです。


  • 左下腹部または右下腹部の痛み

  • 押すと痛い、歩くと響くような腹痛

  • 発熱、寒気

  • 下痢

  • 便秘

  • お腹の張り

  • 吐き気

  • 食欲低下

  • 血便を伴うことがある


「夜だけ腹痛が強くなる」「便秘の後から左下腹部が痛い」「下痢が続いた後に発熱した」といった経過でも、憩室炎が隠れていることがあります。胃痛のように感じる腹痛、腸の痛み、婦人科疾患、尿路結石、虫垂炎など、見分けが難しい病気もあります。


下痢が続く場合は、感染性腸炎、過敏性腸症候群、炎症性腸疾患、大腸がんなども鑑別に入ります。  


血便がある場合は、憩室出血、痔、大腸ポリープ、大腸がん、潰瘍性大腸炎なども考える必要があります。  



すぐ受診した方がよい症状

憩室炎が疑われる腹痛では、「我慢してよい痛みか」「病院へ行くタイミングか」で迷う方が少なくありません。次のような症状がある場合は、早めの受診をおすすめします。


  • 38度前後またはそれ以上の発熱を伴う腹痛

  • 左下腹部痛、右下腹部痛が強くなっている

  • お腹を押すと強く痛い

  • 歩く、咳をする、体を動かすと響く

  • 吐き気や嘔吐で水分が取れない

  • 血便がある

  • 黒い便が出る

  • 便もガスも出ない

  • 高齢の方、糖尿病や免疫を下げる治療中の方の腹痛

  • 過去に憩室炎を繰り返している

  • 市販薬を飲んでも改善しない


特に、腹痛と発熱がセットで出ている場合は、単なる便秘や胃腸炎として様子を見すぎない方が安全です。憩室炎では、炎症の範囲や合併症の有無を判断するために、診察、血液検査、画像検査が必要になることがあります。


「下痢に血が混じる」「便に赤い血がつく」「便潜血陽性と言われた」といった場合は、出血源を確認するための検査が必要になることがあります。  


強い血便があり、緊急性の判断が必要な場合は、当院の以下のページもご確認ください。  


憩室炎の原因・なりやすい人

憩室炎の原因はひとつではありません。憩室ができる背景には、加齢、腸管内圧、食生活、腸内細菌、炎症反応、生活習慣などが関わると考えられています。


憩室炎になりやすい要因として、研究では次のようなものが挙げられています。


  • 年齢

  • 肥満

  • 喫煙

  • 運動不足

  • 食物繊維の少ない食生活

  • 赤身肉の摂取が多い食習慣

  • 非ステロイド性抗炎症薬の使用

  • 免疫機能が低下している状態


以前は「ナッツや種を食べると憩室炎になる」と説明されることがありましたが、現在はそれだけで発症リスクが上がるとは言い切れないと考えられています。食べ物を一つだけ悪者にするより、便通、体重、運動、喫煙、薬剤、基礎疾患を含めて全体を見直す方が現実的です。


便秘が続く方では、腸管内圧が高くなりやすく、腹痛やお腹の張りの原因になることがあります。便秘と腹痛、吐き気については以下も参考になります。  


ただし、便秘があるから憩室炎になる、という単純な話ではありません。腹痛、発熱、血便、体重減少などを伴う場合は、自己判断で便秘薬だけを続けるより、消化器内科で相談してください。



検査と診断

憩室炎の診断では、症状の経過、腹部診察、血液検査、尿検査、画像検査などを組み合わせます。


血液検査では、白血球数やCRPなど炎症を示す項目を確認します。腹痛の部位、発熱の有無、押したときの痛み、腹膜刺激症状がないかも診察でみます。


画像検査では、腹部CTが憩室炎の診断や重症度評価に有用とされています。憩室の周囲に炎症があるか、膿瘍、穿孔、腹腔内の空気、腸閉塞のような所見がないかを確認します[2,4]。医療機関によっては、腹部エコーを組み合わせることもあります。


大腸カメラは大腸の内側を直接観察できる検査ですが、急性期の強い炎症がある時期に無理に行うと、痛みや穿孔リスクの問題があります。そのため、憩室炎が疑われる急性期にはCTなどで評価し、炎症が落ち着いてから大腸カメラを検討する流れが一般的です。


腹痛の原因は幅広く、憩室炎と大腸がん、炎症性腸疾患、虚血性腸炎、虫垂炎、婦人科疾患、尿路疾患などは症状だけで完全に分けられません。診断名を急いで決めつけず、危険なサインを拾い上げることが大切です。


くりた内科・内視鏡クリニックでは、京都市下京区で消化器内科診療と内視鏡検査を行っています。腹痛、発熱、便通異常、血便などがある方は、症状の時期や強さに応じて受診をご検討ください。  



治療の考え方

憩室炎の治療は、炎症の程度、合併症の有無、全身状態、基礎疾患、年齢などによって変わります。


軽症で全身状態が安定している場合は、外来で食事調整、安静、水分摂取、痛みへの対応を行いながら経過をみることがあります。近年は、合併症のない軽症の憩室炎では、すべての人に抗菌薬が必須とは限らないという考え方も広がっています。ただし、抗菌薬を使うかどうかは、発熱、炎症反応、痛みの強さ、免疫状態、合併症リスクを見て判断します。


次のような場合は、入院治療が検討されます。


  • 痛みが強い

  • 高熱がある

  • 食事や水分が取れない

  • 嘔吐が続く

  • 膿瘍や穿孔が疑われる

  • 高齢または基礎疾患がある

  • 免疫を抑える薬を使用している

  • 外来で改善が乏しい


膿瘍が大きい場合にはドレナージ、穿孔や腹膜炎を伴う場合には手術が必要になることがあります。治療の選択は、診察と検査結果をもとに個別に決まります。


自宅でできる対処としては、水分を確保する、無理に食べない、痛みや発熱の経過を記録する、血便や嘔吐の有無を確認する、といったことがあります。ただし、強い腹痛に対して自己判断で鎮痛薬を重ねると、病状の変化に気づきにくくなる場合があります。特に市販の痛み止めを常用している方は、受診時に薬の名前を伝えてください。



憩室炎が落ち着いた後に大腸カメラを検討する理由

憩室炎の急性期が落ち着いた後、大腸カメラを検討することがあります。理由は、憩室炎に似た症状を出す病気があるためです。


たとえば、大腸がん、炎症性腸疾患、虚血性腸炎などは、腹痛、便通異常、血便をきっかけに見つかることがあります。CTで憩室炎らしい所見があっても、腸管の内側を確認した方がよいケースがあります。


大腸カメラを考えたい状況としては、次のような場合です。


  • 初めて憩室炎を疑われた

  • 大腸カメラを長期間受けていない

  • 血便がある

  • 便潜血陽性を指摘された

  • 体重減少がある

  • 便が細くなった

  • 貧血を指摘された

  • 画像検査で腸管の壁肥厚を指摘された

  • 症状が長引く、または再発を繰り返す


検査の時期は、急性期の炎症が落ち着いてから判断します。痛みや発熱が残っている時期に急いで行う検査ではありません。一般には、症状の改善後に主治医と相談してタイミングを決めます。


大腸カメラに不安がある方は、検査の流れや鎮静剤の使用について知っておくと、検査前の負担を減らしやすくなります。  


大腸がんとの関係が心配な方は、こちらも参考にしてください。  


再発予防

憩室炎は再発することがあります。ただし、再発を恐れて食事を極端に制限したり、自己判断で抗菌薬を残しておいて飲んだりするのはすすめられません。


再発予防で意識したいのは、腸に負担をかけにくい生活を続けることです。研究では、食物繊維を含む食事、適度な運動、体重管理、禁煙などが憩室炎リスクと関係するとされています[1,5]。


日常生活では、次の点を見直してみてください。


  • 野菜、海藻、きのこ、豆類、果物などを無理のない範囲で取り入れる

  • 便秘を放置しない

  • 水分をこまめにとる

  • ウォーキングなどの運動を続ける

  • 喫煙している方は禁煙を考える

  • 体重増加がある方は少しずつ調整する

  • 痛み止めを頻繁に使っている方は医師に相談する

  • 腹痛、発熱、血便が出た時期を記録する


急性期の痛みがある時期には、食物繊維の多い食事がつらく感じることもあります。症状が強い時期と、落ち着いた後の食事は分けて考えます。発熱や強い腹痛があるときは、食事内容だけで解決しようとせず、医療機関で状態を確認してください。


「下痢が続く」「便秘と下痢を繰り返す」「ストレスでお腹が痛くなる」といった症状がある方では、過敏性腸症候群など別の病気が関係していることもあります。  


よくある質問


Q1. 憩室炎は自然に治りますか?


軽症で合併症がなく、全身状態が安定している場合は、外来で経過をみながら改善することがあります。ただし、腹痛と発熱がある場合、膿瘍や穿孔などを伴っていないか確認が必要です。自己判断で「そのうち治る」と決めるのは避けてください。


Q2. 左下腹部痛があれば憩室炎ですか?


左下腹部痛は憩室炎でよくみられますが、それだけで診断はできません。便秘、感染性腸炎、虚血性腸炎、尿路結石、婦人科疾患、大腸がんなどでも似た痛みが出ることがあります。発熱、血便、嘔吐、痛みの増悪がある場合は受診を検討してください。


Q3. 右下腹部が痛い場合も憩室炎のことがありますか?


あります。日本では右側結腸の憩室もみられるため、右下腹部痛として出ることがあります。虫垂炎との区別が難しいこともあり、診察や画像検査が必要になる場合があります。


Q4. 憩室炎のとき、大腸カメラはすぐ受けた方がよいですか?


急性期の強い炎症がある時期には、大腸カメラをすぐ行わないことがあります。まずは炎症の程度や合併症の有無を評価し、症状が落ち着いてから大腸カメラを検討する流れが一般的です。時期は症状と検査結果によって変わります。


Q5. 憩室炎と憩室出血は同じですか?


同じではありません。憩室炎は憩室に炎症が起きる病気で、腹痛や発熱が中心です。憩室出血は憩室から出血する状態で、腹痛が目立たずに突然の血便で始まることがあります。血便がある場合は、痔と決めつけず、出血量や全身状態をみて受診してください。


Q6. 憩室炎を繰り返すと手術になりますか?


再発したから必ず手術になるわけではありません。手術を考えるかどうかは、再発回数だけでなく、重症度、膿瘍や穿孔の有無、生活への影響、基礎疾患、年齢などを含めて判断します[2,3]。繰り返す場合は、消化器内科や必要に応じて外科と連携して方針を考えます。


Q7. ナッツやごまは食べない方がよいですか?


以前は避けるように言われることがありましたが、現在はナッツや種だけが憩室炎を起こすとは言い切れないと考えられています[1]。特定の食品を過度に恐れるより、便通を整える食事、適度な運動、禁煙、体重管理を続ける方が現実的です。食べると腹痛が出る食品がある場合は、個別に相談してください。


Q8. どのタイミングでくりた内科・内視鏡クリニックを受診すればよいですか?


左下腹部痛、右下腹部痛、発熱、便通異常、血便がある場合はご相談ください。特に「腹痛が強くなっている」「発熱がある」「血便が出た」「憩室炎を繰り返している」「大腸カメラをしばらく受けていない」という方は、早めの受診をおすすめします。


くりた内科・内視鏡クリニックでは、消化器内科として腹部症状の診察、大腸カメラ検査、必要に応じた高次医療機関との連携を行っています。急な強い腹痛、ぐったりする、冷や汗が出る、大量の血便がある場合は、救急受診が必要になることもあります。


参考文献

1. Strate LL, Morris AM. Epidemiology, Pathophysiology, and Treatment of Diverticulitis. Gastroenterology. 2019;156(5):1282-1298.e1. PubMed: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/30660732/

2. Sacks OA, Hall J. Management of Diverticulitis: A Review. JAMA Surg. 2024;159(6):696-703. PubMed: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38630452/

3. Hanna MH, Kaiser AM. Update on the management of sigmoid diverticulitis. World J Gastroenterol. 2021;27(9):760-781. PubMed: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33727769/

4. Long B, Werner J, Gottlieb M. Emergency medicine updates: Acute diverticulitis. Am J Emerg Med. 2024;76:1-6. PubMed: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37956503/

5. Feuerstein JD, Falchuk KR. Diverticulosis and Diverticulitis. Mayo Clin Proc. 2016;91(8):1094-1104. PubMed: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/27156370/



 
 

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