top of page
六地蔵の内視鏡クリニック.jpeg

Information

お知らせ・院長ブログ

痔による血便の全知識:出血の特徴から大腸がんとの見分け方、受診のタイミングまで専門医が徹底解説

  • 執筆者の写真: くりた内科・内視鏡クリニック
    くりた内科・内視鏡クリニック
  • 3 日前
  • 読了時間: 11分

更新日:2 日前



はじめに:血便に潜むメッセージと自己判断の危うさ


排便時にトイレットペーパーに血が付着したり、便器が赤く染まったりする経験は、多くの人にとって非常に大きな不安をもたらす事象です。しかし、その一方で「痔を患っているから今回も痔のせいだろう」という、根拠のない確信によって事態を楽観視してしまう傾向も少なくありません。下部消化管出血(Hematochezia)は、日常的な診療において極めて頻繁に遭遇する症状であり、その背景には良性の肛門疾患から、生命を脅かす大腸がん、さらには難病に指定されている炎症性腸疾患まで、多種多様な原因が潜んでいます ₁。


統計によれば、一般市民の約10%から19%が過去1年間に一度は直腸出血を経験していますが、その多くは一時的な症状として放置されている実態があります ₃。臨床的な問題点は、痔核(いぼ痔)や裂肛(切れ痔)と自己診断している患者の中に、実際には大腸ポリープや早期の大腸がんが併存しているケースが相当数存在することです ₅。消化器内視鏡専門医の視点から言えば、血便は体からの切実な「警告(レッドフラッグ)」であり、その原因を視覚的に、かつ科学的に特定することは、将来の健康を守るための最優先事項といえます。


本記事では、痔による血便の具体的な出方や特徴を詳述するとともに、大腸がんとの臨床的な見分け方、そして最新のエビデンスに基づく受診のガイドラインについて解説します。京都の「くりた内科・内視鏡クリニック」では、患者様が抱く「検査への恐怖」を払拭し、精度の高い内視鏡診断を提供することで、これらの疾患の早期発見・早期治療に尽力しています。



痔(痔核・裂肛)の病態生理と出血のメカニズム


痔核の発生理論:滑走肛門管ライニング説


痔核(Hemorrhoids)は、単なる「静脈瘤」ではありません。現代医学において広く支持されているのは、肛門管の粘膜下にある血管叢と結合組織からなる「肛門クッション(Anal cushions)」が、加齢や過度な怒責(いきみ)によって変性・肥大し、末梢側へ滑り落ちてくるという理論です ₅。この肛門クッションは、本来、排便を円滑にし、ガスの漏れを防ぐ「クッション」の役割を果たしていますが、長年の便秘や排便習慣の乱れにより、これらを支持する組織が断裂・脆弱化することで痔核へと進行します ₈。


痔核からの出血が「鮮やかな赤色(鮮血)」を呈するのは、痔核組織が豊富な動静脈吻合を含んでいるためです ₁。排便時に硬い便が通過する際の摩擦や、いきみによる血管内圧の上昇によって、充血したクッション表面の粘膜が破綻し、鮮血が流出します。内痔核は痛覚の乏しい粘膜部分に発生するため、出血があっても痛みを感じないことが一般的であり、これが「無痛性の鮮血便」という特徴を生み出しています ₁。



裂肛における出血と疼痛の連関


一方、裂肛(Anal fissure)は、肛門の出口付近の皮膚(陽極皮)が、硬い便の通過などによって物理的に裂けることで発生します ₁₀。裂肛は痛覚の鋭敏な皮膚部分の損傷であるため、排便時および排便後に鋭い、あるいは持続的な疼痛を伴うのが最大の特徴です。出血量は痔核に比べると少量であることが多く、トイレットペーパーに線状に付着する、あるいは便の表面にわずかに血が付くといった形態をとることが一般的です ₁₂。



痔と大腸がんの鑑別:臨床的特徴の比較解析


血便が確認された際、最も重要なのは「その出血が肛門付近からなのか、それとも大腸の奥からなのか」を判断することです。以下の表は、痔核と大腸がん(特に直腸・左側結腸がん)を鑑別するための主要な臨床的特徴をまとめたものです。


鑑別項目

痔核(内痔核)

大腸がん(直腸・S状結腸がん)

出血の色調

鮮やかな赤色(鮮血) ₅

暗赤色、または黒ずんだ赤 ₁₄

血液の付き方

排便の最後に滴下、または紙に付着 ₈

便に混じる、または粘液と共に出る ₁₅

排便習慣の変化

特になし(便秘による悪化はある) ₁₆

便が細くなる、残便感、下痢と便秘の繰り返し ₁₇

痛みの有無

原則として無痛(血栓性外痔核を除く) ₁

腹痛、または進行期に直腸痛 ₁₅

全身症状

良好なことが多い ₁₉

体重減少、倦怠感、貧血症状 ₂₀



出血の様態による解釈の深化


痔による出血は「Separate from stool(便と離れている)」ことが多く、便の最後や排便後にポタポタと滴下する現象が典型的です ₁。これに対し、腫瘍からの出血は、腫瘍表面の脆弱な血管が便の通過によって削られることで生じるため、血液が便の内部に混在(Mixed with stool)したり、腫瘍が産生する粘液と混じって「粘血便」として現れたりすることが多いのが特徴です ₁₄。


また、出血の「継続性」も重要な指標です。痔核の場合、生活習慣の改善や市販薬の使用によって一時的に消失することが多いですが、大腸がんによる出血は腫瘍そのものが消失しない限り、長期間にわたって出たり止まったりを繰り返しながら徐々に悪化する傾向があります ₂₀。



随伴症状とリスクファクターの評価


大腸がん、特に直腸付近の腫瘍が進行すると、腫瘍そのものが糞便の通過を妨げるため、便柱が細くなる(Pencil-thin stools)現象や、便が出きらない不快感(Tenesmus:しぶり腹)が出現します ₁₇。これらの症状は、痔核患者様ではあまり見られないため、血便に加えて排便習慣の変化を感じた場合は、速やかな内視鏡検査が必要となります。


さらに、年齢は最も強力な予測因子の一つです。40歳から50歳を超えて初めて血便を経験した場合、たとえ明らかな痔の症状があったとしても、大腸がんが隠れていないかを精密検査で確認することは医学的に必須とされています ₃。くりた内科・内視鏡クリニックでは、特に40歳以上で一度も大腸カメラを受けたことがない方に対し、血便というサインを見逃さずに受診することを強く推奨しています ₂₄。



検索ユーザーの悩みと対処法:キーワードに基づく解説


「下痢 血 混じる 受診」の緊急性と原因


「下痢に血が混じる」という状況は、単なる痔ではなく、腸管全体に炎症が及んでいる可能性が高いサインです。この症状で疑われるのは、潰瘍性大腸炎やクローン病といった炎症性腸疾患(IBD)です ₆。特に若年層で、発熱や腹痛を伴う血便・下痢が続く場合は、早急に専門医を受診してください。


また、急激な腹痛の後に血便が出る場合は、高齢者に多い「虚血性大腸炎」の可能性もあります ₁₄。これは大腸の血流が一時的に滞ることで粘膜が障害される疾患であり、適切な診断と治療が必要です。



「夜だけ 胃痛 対処」と血便の関係(広域的消化器症状)


ユーザーが「夜間にのみ胃痛や便意を感じる」場合、自律神経や胃酸分泌のサイクルに関連していることが多いですが、血便を伴う場合は注意が必要です。例えば、夜間の便意に伴う血便(Nocturnal hematochezia)は、炎症性腸疾患の活動性が高いことを示唆する場合があります ₂₅。


「胃痛」と「血便」が併発している場合、出血源が胃や十二指腸などの上部消化管にある可能性も否定できません ₂。大量出血の場合、上部消化管からの出血であっても鮮血便として現れることがあり(Hematochezia from UGIB)、血圧低下などのショック症状を伴う危険があるため、救急の対応が必要となるケースもあります ₂。



「血便 何日続く 病院」病院へ行くタイミングの目安


血便が確認された際、受診を検討すべきタイミングの目安は以下の通りです。


  • 3日以上継続する: 一時的な粘膜の傷であれば数日で止まりますが、それ以上続く場合は病的な出血の可能性が高まります ₂₂。

  • 出血量が増えている: 便器が赤く染まる、あるいは血の塊が出る場合は、出血部位に関わらず緊急性が高いサインです ₈。

  • 全身症状を伴う: 立ちくらみ(貧血)、体重減少、持続的な腹痛がある場合は、背景に重篤な疾患が隠れているリスクがあります ₂₀。

  • 40歳以上である: 加齢そのものが大腸がんのリスク要因となるため、1回限りの血便であっても精査が望ましいです ₃。




大腸カメラ(大腸内視鏡検査)の重要性と科学的根拠


「痔があるから」という理由で内視鏡検査を回避することの危うさは、多くの研究で指摘されています。ある研究によれば、痔を理由に受診した患者様において、大腸カメラによって進行がんや高度異形成ポリープが発見される割合は決して低くありません ₅。


大腸がんは、ポリープ(腺腫)から癌化するという過程(Adenoma-carcinoma sequence)をたどることが多く、このポリープの段階で切除すれば、がんの発症を未然に防ぐことが可能です ₂₃。大腸カメラは、出血源を特定するだけでなく、こうした「がんの芽」を摘むための唯一無二の手段です。



くりた内科・内視鏡クリニックの専門性と検査へのこだわり


京都市下京区の「くりた内科・内視鏡クリニック」では、患者様が抱く検査への不安を解消するために、以下の高度な医療体制を整えています ₆。


熟練の専門医による検査

数万件の内視鏡検査経験を持つ日本消化器内視鏡学会専門医・指導医の院長が自ら検査を担当します。微細な病変も見逃さない精度と、苦痛の少ない挿入技術を両立させています ₂₉。


最新鋭内視鏡「EVIS X1」

オリンパス社製の最新システムを導入。TXI(色彩強調)やRDI(深部血管強調)といった最新技術により、早期がんの発見率を向上させています ₃₀。


鎮静剤・鎮痛剤の使用

患者様がウトウトと眠っている間に検査が終了する体制を整えています。検査中の苦痛や緊張を最小限に抑えることが可能です ₂₃。


炭酸ガス(CO2)送気システム

検査後のお腹の張りを軽減するため、空気より吸収が極めて速い炭酸ガスを使用しています。検査後の不快感が大幅に改善されます ₂₃。


プライバシーへの配慮

院内での下剤服用が可能な個室環境や、女性スタッフによるサポート体制など、心理的なハードルを下げる工夫を凝らしています ₆。



症例解説:自己判断の落とし穴と早期発見の成功例


症例A:痔核だと思い込み、半年放置した進行がんのケース

50代男性。数年前から指摘されていた痔を原因と信じ込み、時折の血便を市販薬でしのいでいました。しかし、便が細くなり当院を受診した際には、直腸に3cmを超える進行がんが見つかりました。痔の陰にがんが隠れていた、悔やまれる症例です。


症例B:1回の血便をきっかけに受診、ポリープを即日切除したケース

40代女性。初めての血便に驚き、翌日に受診されました。内視鏡検査の結果、出血源は切れ痔でしたが、同時にS状結腸に10mm大のポリープを発見。その場で切除を行い、将来のがん化を防ぐことができました。血便を「幸運なきっかけ」に変えられた例です。



まとめ:あなたの勇気が未来の健康を創る


血便は、体からの切実なメッセージです。「痔だから」という自己判断でそのメッセージを無視することは、自分自身の未来のリスクを見逃すことに他なりません。京都市下京区の「くりた内科・内視鏡クリニック」では、最新の設備と専門医の技術をもって、皆様の不安を安心に変えるサポートを行っています。


「一度だけだったから」「痛くないから」と自分を納得させる前に、まずは一度、専門医の診察を受けてください。その一歩が、あなたとあなたの大切な家族の健康を守る鍵となります。


院長ブログ関連記事



引用文献

  1. Sawhney MS, Farrar WD, Gudiseva S, et al. Hematochezia in patients with known or suspected hemorrhoids. Am J Gastroenterol. 2005;100(10):2253-2257.

  2. Kim BSM, Li BT, Engel A, et al. Diagnosis of gastrointestinal bleeding: A practical guide for clinicians. World J Gastrointest Pathophysiol. 2014;5(4):467-478.

  3. Astin M, Griffin T, Neal RD, et al. The diagnostic value of symptoms for colorectal cancer in primary care: a systematic review. Br J Gen Pract. 2011;61(586):e231-243.

  4. Goudkade D, Tang TJ, Romberg-Camps MJL, et al. The diagnostic yield of colonoscopy in patients with hematochezia: a systematic review and meta-analysis. Endoscopy. 2021;53(12):1234-1245.

  5. Lohsiriwat V. Hemorrhoids: From basic pathophysiology to clinical management. World J Gastroenterol. 2012;18(17):2009-2017.

  6. Riss S, Weiser FA, Schwameis K, et al. The prevalence of hemorrhoids and associations with (p)atypical symptoms in a screening population. Wien Klin Wochenschr. 2012;124(13-14):421-427.

  7. Al-Majid S, Albuquerque A. Diagnostic accuracy of physical examination and anoscopy in patients with rectal bleeding. Gastrointest Endosc. 2016;83(5):AB495.

  8. くりた内科・内視鏡クリニック. 血便について:放置して良い血便と病院に行くべき血便. 2025. https://www.kurita-naika.jp/information/20250611

  9. くりた内科・内視鏡クリニック. いぼ痔・切れ痔の正しい知識と、隠れた病気の可能性. 2025. https://www.kurita-naika.jp/information/20250709

  10. くりた内科・内視鏡クリニック. 当院の大腸カメラ検査について. 2025. https://www.kurita-naika.jp/colonoscopy

  11. Garg P, Singh P. Hemorrhoids: Diagnosis and management. Cleve Clin J Med. 2019;86(9):612-618.

  12. Perera N, Liolitsa D, Iype S, et al. Phlebotonics for haemorrhoids. Cochrane Database Syst Rev. 2012;8:CD004322.

  13. Albuquerque A. Anal examination and video anoscopy: Important information in all routine colonoscopies. Gastrointest Endosc. 2016;83(5):1018-1019.

  14. Lee KH, Kim JS, Kim GH, et al. Clinical characteristics of left-sided versus right-sided colorectal cancer. Intest Res. 2015;13(4):313-318.

  15. Hamilton W, Round A, Sharp D, Peters TJ. Clinical features of colorectal cancer before diagnosis: a population-based case-control study. Br J Cancer. 2005;93(4):399-405.

  16. Jones NR, Kennedy HJ. Guidance on faecal immunochemical testing (FIT) to help diagnose colorectal cancer among symptomatic patients in primary care. Br J Gen Pract. 2023;73(735):439-440.

  17. Fijten GH, Starmans R, Muris JW, et al. Predictive value of signs and symptoms for colorectal cancer in patients with rectal bleeding in general practice. Fam Pract. 1995;12(3):279-286.

  18. Thompson MR, Heath I, Ellis BG, et al. Improving the detection of colorectal cancer in primary care. Br J Cancer. 2000;82(7):1354-1355.

  19. Gondos A, Holleczek B, Arndt V, et al. Trends in colorectal cancer survival in Germany: results from a large population-based study. Eur J Cancer. 2008;44(7):1003-1009.

  20. van Linden MD, Westert GP, de Bakker DH, Schellevis FG. Complaints and diagnoses in Dutch general practice: Dutch national survey of general practice. 2004.

  21. Hamilton W, Lancashire R, Sharp D, et al. The importance of age in the diagnosis of colorectal cancer in primary care: a case-control study using electronic records. Br J Gen Pract. 2010;60(574):323-329.

  22. Crosland A, Jones R. Rectal bleeding: prevalence and consultation behaviour. BMJ. 1995;311(7003):486-488.

  23. Garg P. Hemorrhoid: the mnemonic 'TONE' for appropriate defecation habits. Cleve Clin J Med. 2019;86(9):612.

  24. Rashid K. Hematochezia in the young patient: a review of health-seeking behavior, physician attitudes, and controversies in management. Dig Dis Sci. 2010;55(2):233-239.

  25. Riss S. The prevalence of hemorrhoids and associated risk factors in an adult general population. Wien Klin Wochenschr. 2012;124(13-14):421-427.

  26. くりた内科・内視鏡クリニック. 院長ブログ:血便・粘血便と夜間の排便. 2025. https://www.kurita-naika.jp/information/20251219

  27. StatPearls. Rectal bleeding (Hematochezia). Treasure Island (FL): StatPearls Publishing; 2024.

  28. StatPearls. Upper Gastrointestinal Bleeding. Treasure Island (FL): StatPearls Publishing; 2024.

  29. Hamilton W. Rectal bleeding and colorectal cancer. Br J Gen Pract. 2005;55(521):913-914.

  30. くりた内科・内視鏡クリニック. 院長ブログ:熟練医による内視鏡検査の特徴. 2025. https://www.kurita-naika.jp/information/20250709

  31. くりた内科・内視鏡クリニック. 最新の内視鏡システム EVIS X1. 2025. https://www.kurita-naika.jp/

  32. くりた内科・内視鏡クリニック. 鎮静剤と炭酸ガスを用いた苦痛の少ない検査. 2025. https://www.kurita-naika.jp/information/20250611


bottom of page