食後の腹痛、それは身体からの大切なメッセージかもしれません
- くりた内科・内視鏡クリニック
- 9月30日
- 読了時間: 9分
更新日:9月30日

「ごはんを食べるとお腹が痛くなる」。この症状は、多くの人にとって身近なものであり、「食べ過ぎたかな」「冷たいものを摂りすぎたかな」と軽く考えられがちです。しかし、その身近な不調の中に、見過ごしてはならない身体からの重要なメッセージが隠されていることがあります。市販薬で痛みを一時的にごまかすことで、知らず知らずのうちに病状を悪化させてしまうケースも少なくありません。
当クリニックでは、消化器内科の専門医として、この身近な症状に潜む真の原因を、エビデンスに基づきながらも分かりやすく解説し、皆様の健康を守るための正しい知識をお伝えしたいと考えています。
多くの人が見過ごす「日常に潜む原因」
食後の腹痛は、必ずしも深刻な病気だけが原因ではありません。日常生活の中に潜む様々な要因が、胃腸の不調を引き起こすことも多々あります。これらの原因は、つい「気のせい」や「体質」と片付けてしまいがちですが、身体が発しているサインであると理解することが大切です。
ストレスと自律神経の乱れ
現代社会は、過度なストレスや不規則な生活習慣に溢れており、これらは胃腸の働きをコントロールする自律神経のバランスを容易に乱します。自律神経の乱れは、胃酸の過剰な分泌や胃の知覚過敏を引き起こし、食後の不調や痛みの原因となり得ます。
特に、**過敏性腸症候群(IBS)**は、ストレスが引き金となって腸の動きが過剰になることで、下痢や便秘を伴う腹痛を繰り返す病気です。多くの患者様が「朝ご飯を食べるとお腹が痛くなる」と訴えますが、これはこれから始まる仕事へのストレスが自律神経を介して腸の働きを活発にさせている可能性が考えられます。検査では腸に目に見える異常がないため、以前は「神経性胃炎」などと呼ばれていましたが、近年では独立した疾患として認識され、適切な治療が可能になっています。
食生活の不摂生
食生活も、胃腸に大きな影響を与えます。暴飲暴食や早食い、深夜の食事は、胃に物理的な負担をかけます。また、脂肪分の多い食事、香辛料、アルコール、カフェインなどは、胃に刺激を与え、胃炎や胃潰瘍を引き起こす原因の一部となり得ます。日々の食事内容を記録することで、腹痛を引き起こす特定の食品や習慣を特定する手がかりとなり、症状の改善に繋がります。
隠れた食物不耐性・アレルギー
特定の食品を摂取した後に腹痛が生じる場合、乳糖不耐症や遅延型食物アレルギーが隠れている可能性もあります。
乳糖不耐症
牛乳に含まれる乳糖を分解する酵素が不足しているために、牛乳や乳製品を摂取すると腹痛や下痢を引き起こします。
遅延型食物アレルギー
一般的な即時型アレルギーとは異なり、原因となる食品を摂取してから数時間から数日後に、腹痛や消化不良、便秘、下痢などの症状が現れます。
これらの日常的な原因を冒頭で提示することは、多くの読者の共感を呼び、自身の症状を客観的に見つめ直すきっかけとなります。単なる病気の羅列ではなく、患者様の日々の生活に寄り添った視点から解説を始めることで、当クリニックのブログに対する信頼性を高めることを目指しています。
放置すると危険な「消化器疾患」の正体
日常的な原因を解消しても腹痛が改善しない、あるいは痛みがどんどん強くなる場合は、何らかの消化器疾患が原因である可能性が高くなります。腹痛の場所や痛むタイミングによって、疑われる病気がある程度推測できます。
痛みの部位と関連する臓器
症状の場所やタイミングを正確に伝えることは、医師が診断を下す上で非常に重要な情報となります。この因果関係を理解することは、患者様ご自身が自身の症状を把握し、専門医の診察の重要性を認識するための強力な手がかりとなります。
みぞおちや上腹部の痛み
胃炎・胃潰瘍・十二指腸潰瘍
食事によって胃酸が多く分泌されると痛みが強くなるため、食後30分から1時間後にみぞおちが痛む場合は、胃炎や胃潰瘍が疑われます。また、空腹時に痛みが強く、食後に痛みが和らぐ場合は十二指腸潰瘍の可能性があります。これらの病気の多くはピロリ菌感染が原因とされています。
機能性ディスペプシア(FD)
胃カメラ検査などを行っても、潰瘍や炎症といった目に見える異常がないにもかかわらず、慢性的な胃もたれや早期満腹感、みぞおちの痛みなどが続く病気です。ストレスや胃の知覚過敏が原因と考えられています。
右上腹部の痛み
胆石症・胆のう炎
胆汁を貯蔵する胆のうは右上腹部に位置します。脂っこい食事を摂った後に、この部分に差し込むような激しい痛みが生じる場合は、胆石症や胆のう炎が疑われます。
左上腹部から背中の痛み:
膵炎
みぞおちから左上腹部にかけて痛み、背中にまで広がる場合は、膵臓の炎症である膵炎が考えられます。特にアルコールの過剰摂取や脂肪分の多い食事と関連があるとされています。
おへそ周辺や下腹部の痛み:
腸炎
細菌やウイルスへの感染が原因で、腹痛に加え、下痢、発熱、吐き気などを伴います。
過敏性腸症候群(IBS)
ストレスが引き金となり、下痢と便秘を繰り返す慢性的な腹痛が特徴です。排便によって痛みが和らぐ傾向にあります。
その腹痛、見過ごしていませんか?放置するリスクと自己判断の危険性
食後の腹痛を「いつものこと」として放置したり、市販薬でごまかし続けることは、非常に大きなリスクを伴います。表面的な症状が一時的に和らいでも、その裏で病気が進行している可能性があるためです。
市販薬でごまかすことの本当の危険性
多くの人は、腹痛を和らげるために市販の胃薬に頼りがちです。しかし、胃炎や胃潰瘍などの良性疾患であっても、適切な治療をせずに放置すると、潰瘍から多量に出血したり、胃壁に穴が開く穿孔という重篤な合併症を引き起こす可能性があります。このような状態になると、緊急の手術が必要になることもあります。
さらに、この行為は、より深刻な病気の発見を遅らせる致命的な結果につながりかねません。例えば、進行した胃がんの初期症状は、軽い胃炎と区別がつきにくく、胃もたれやみぞおちの痛みといった共通の症状を起こすことがあります。このため、「市販薬で様子を見ていた間に、病気が進行してしまった」というケースが実際に起こり得ます。症状が軽いから大丈夫という安易な自己判断は、将来の健康を危険にさらすことになります。
症状から「見抜く」べき受診のサイン
以下のような症状が一つでも当てはまる場合は、速やかに医療機関を受診すべきです。
痛みがどんどん強くなる
吐血したり、タールのような真っ黒な便が出る(消化管からの出血が疑われます)
激しい痛みに加え、高熱、ひどい下痢や嘔吐がある
痛みのせいで食事が全く取れない、または体重が著しく減少した
これらの症状は、緊急性の高い病気のサインである可能性が高く、迅速な診断と治療が求められます。
症状の特徴から考える「あなたの腹痛チェックリスト」
ご自身の腹痛がどのタイプに当てはまるか、以下のチェックリストで確認してみてください。
痛みの部位 | 痛みの性質・タイミング | 随伴症状の例 | 疑われる疾患の例 |
みぞおち | 食後すぐ、キリキリ、ズキズキ | 吐き気、げっぷ、胃もたれ、胸やけ | 胃炎、胃潰瘍、機能性ディスペプシア、胃がん |
みぞおち・左上腹部 | 鈍い痛み、背中に広がる | 食欲不振、吐き気 | 膵炎、胃炎 |
右上腹部 | 脂っこい食事の後、差し込むような痛み | 黄疸、発熱、右肩の痛み | 胆石症、胆のう炎 |
おへそ周辺・下腹部 | 便秘や下痢を繰り返す | 膨満感、吐き気、発熱 | 過敏性腸症候群、感染性腸炎 |
下腹部全体 | 女性の場合、生理周期と関連 | - | 子宮内膜症、婦人科疾患 |
その検査、「怖い」と思っていませんか?くりた内科・内視鏡クリニックが目指す、苦痛の少ない内視鏡検査
「胃カメラは辛い」「吐き気がする」といったネガティブな経験やイメージから、内視鏡検査をためらう方は少なくありません。しかし、現在の内視鏡検査は、患者様の負担を最小限に抑えるように大きく進化しています。当クリニックでは、患者様の不安に寄り添い、「苦痛が少ない」「眠っている間に終わる」検査を追求しています。
「熟練の技術」と「最新の機器」が支える精密な診断
内視鏡検査の苦痛は、検査を担当する医師の技術や熟練度に大きく左右されます。当クリニックの院長は、大学病院で数万件に及ぶ内視鏡検査の実績を積んでおり、その経験に基づいた熟練の技術で、全例の検査を担当しています。
さらに、精度の高い診断を追求するため、大学病院でも導入されているオリンパス社製の最新内視鏡システムを採用しています。このシステムは、肉眼では見逃しがちな微細な病変も精密に捉えることができ、検査時間を約5分という短時間で済ませることが可能です。
患者様の不安を「安心」に変える検査法
当クリニックでは、患者様が抱える「検査の苦痛」という最大の不安を解消するため、様々な工夫を行っています。
鎮静剤の使用:検査に対する恐怖心や不安が強い方には、鎮静剤を静脈から投与し、ウトウトと眠っている間に検査を終えることができます。患者様からは「気づいたら終わっていた」とのお声をいただくことがほとんどです。鎮静剤を使用した場合は、検査当日の車やバイク、自転車の運転はできません。
経鼻内視鏡の選択:嘔吐反射が強い方には、鼻から挿入する経鼻内視鏡をお選びいただけます。スコープが舌の根元に触れないため、吐き気を抑えることができ、検査中の会話も可能です。
炭酸ガスの使用:検査中は胃を膨らませるために空気やガスを注入しますが、当クリニックでは、通常の空気に比べて体内に約200倍も速く吸収される炭酸ガスを全例で使用しています。これにより、検査後の腹部膨満感や不快感を大幅に軽減し、患者様の負担を最小限に抑えています。このような目立たない部分への配慮が、当クリニックが目指す「苦痛の少ない内視鏡検査」の礎となっています。
検査後のフォローアップと包括的な医療体制
検査で異常が見つかった場合、その後の治療まで安心して任せられる体制を整えています。
ワンストップの診断と治療:検査で胃炎や胃潰瘍、逆流性食道炎などの病気が見つかった場合は、当クリニックでそのまま治療を開始することができます。
胃がん予防への貢献:ピロリ菌は胃がんの95%以上の原因とされており、内視鏡検査は、ピロリ菌感染が引き起こす慢性胃炎や、がんの発生リスクが高い萎縮性胃炎の診断に非常に有効です。陽性と診断された場合は、除菌治療まで一貫して行い、将来の胃がんリスクを下げることにも貢献します。
万が一の際の連携:がんなどの重篤な疾患が発見された場合でもご安心ください。当クリニックでは、大学病院をはじめとする高次医療機関との密な連携体制を構築しており、迅速に最適な医療機関へご紹介いたします。
おわりに:その痛み、放置しないでください
食後の腹痛は、単なる不快感ではなく、身体が皆様に発している重要なサインです。そのサインを見過ごさず、勇気を持って一歩を踏み出すことが、ご自身の健康を守る最善の方法です。「こんな症状で受診してもいいのかな?」と迷われたときこそ、消化器の専門家である私たちにお気軽にご相談ください。当クリニックは、阪急大宮駅から徒歩2分と通いやすく、Web予約も可能です。皆様の不安に寄り添い、丁寧な診察と、苦痛の少ない質の高い検査を提供することをお約束いたします。
