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消化器領域の指定難病:医療費助成申請のための重症度基準詳細解説

  • 執筆者の写真: くりた内科・内視鏡クリニック
    くりた内科・内視鏡クリニック
  • 6月2日
  • 読了時間: 17分

更新日:6月16日


I. 難病とは?指定難病医療費助成制度の基本

「難病」とは、厚生労働省によって定められた特定の疾病群を指します。これらの疾病は、以下の特徴を持つものとして定義されています。


  • 発病の機構が明らかでない:病気の原因がまだ十分に解明されていないこと。

  • 治療方法が確立されていない:効果的な治療法がまだ見つかっていない、あるいは確立されていないこと。

  • 希少な疾病である:患者数が非常に少ないこと。

  • 長期の療養を必要とする:病状が慢性的に続き、長期にわたる治療や管理が必要であること。


このような特性を持つ難病の患者さんが、経済的な負担を気にすることなく、継続して質の高い医療を受けられるように支援するため、「指定難病医療費助成制度」が設けられています。この制度は、患者さんの医療費自己負担額を軽減することを目的としています。



医療費助成の対象となるための要件

指定難病の医療費助成を受けるためには、主に以下のいずれかの要件を満たす必要があります。

  1. 厚生労働大臣が定める重症度分類を満たすこと 各指定難病には、病状の程度を示す「重症度分類」が定められています。原則として、この分類で「重症」または「中等症以上」と判定される場合に助成の対象となります。重症度の判断は、適切な医学的管理の下で治療が行われている状態で、直近6ヶ月間で最も悪い状態を医師が判断することとされています。

  2. 軽症者特例(高額な医療費が継続してかかっている場合) 病状の程度が上記の重症度分類で一定以上に該当しない場合でも、医療費助成の対象となる特例があります。これは、申請のあった月以前の12ヶ月以内に、医療費(10割分)が33,300円を超える月が既に3ヶ月以上ある場合に適用されます。この特例は、高価な薬剤の使用や頻繁な通院などにより、医療費が高額になりがちな患者さんの経済的負担を軽減するための重要な仕組みです。


申請プロセスと必要書類の基本

医療費助成の申請には、いくつかの書類が必要です。特に重要なのは、難病指定医が作成した「臨床調査個人票(診断書)」です。この診断書は、患者さんが指定難病にかかっていること(診断基準の充足)と、病状の程度(重症度基準の充足または軽症者特例の該当)を医学的に証明するものです。

臨床調査個人票は、申請時から遡って原則6ヶ月以内に作成されたものである必要があります。また、疾病ごとに様式が異なるため、厚生労働省のウェブサイトから最新の様式をダウンロードして使用します。

その他、世帯全員の住民票謄本、加入している医療保険の資格情報が確認できる書類、個人番号(マイナンバー)関連書類などが必要となります。


医療費助成開始日の遡及について

難病法の改正により、令和5年10月1日からは、医療費助成の開始時期が診断年月日まで遡ることが可能になりました。これにより、診断から申請までに時間がかかった場合でも、患者さんがその間の医療費で不利益を被ることが少なくなりました。ただし、遡及できる期間は原則として申請日から1ヶ月までとされていますが、一部の自治体では最長3ヶ月まで遡りが可能な場合もありますので、お住まいの自治体で確認することが重要です。


指定難病の数

現在、厚生労働省が指定する難病は348疾病に上ります(令和7年4月1日時点)。これらの疾病は、神経・筋疾患、免疫疾患、循環器疾患、消化器疾患など、多岐にわたる分野に及んでいます。



II. はじめに:指定難病医療費助成制度の概要と本記事の目的

指定難病制度の目的と医療費助成の重要性

厚生労働省が定める指定難病は、発病の機構が明らかでなく、治療方法が確立されていない、希少な疾病であり、長期の療養を必要とするものとして定義されています。この制度は、これらの疾病の患者が継続的な医療を受けられるよう、医療費の自己負担額を軽減することを目的としています。

特に消化器領域の難病は、消化吸収機能の障害、疼痛、出血、栄養不良など、患者の日常生活に大きな影響を及ぼすものが多く、長期にわたる治療と継続的な管理が不可欠です。このような特性を持つ疾患において、医療費助成制度の活用は、患者の経済的負担を軽減し、質の高い療養生活を維持するために極めて重要な役割を果たします。この制度は、患者が経済的な理由で治療を諦めることを防ぎ、長期的な健康管理を可能にすることで、社会全体の医療コストの最適化にも寄与すると考えられます。


本記事の目的と構成

本記事は、消化器領域の指定難病に罹患されている方々が、医療費助成制度の申請を検討する際に必要となる「重症度基準」について、網羅的かつ詳細な情報を提供することを目的とします。各疾病の重症度基準の要点を一覧化し、申請プロセスにおける留意点や「軽症者特例」についても解説することで、患者やそのご家族、そして支援する医療関係者が制度を適切に活用できるよう支援します。



III. 指定難病医療費助成の基本要件と申請プロセス

医療費助成の基本要件

指定難病の医療費助成制度の対象となるには、以下のいずれかの要件を満たす必要があります。

  1. 厚生労働大臣が定める重症度分類を満たすこと。

  2. 指定難病における治療において、申請のあった月以前の12ヶ月以内に医療費(10割分)が33,300円を超える月数が既に3ヶ月以上あること(軽症者特例)。


軽症者特例の重要性

多くの疾病の重症度分類に関する留意事項には、「症状の程度が上記の重症度分類等で一定以上に該当しない者であっても、高額な医療を継続することが必要なものについては、医療費助成の対象となります」と明記されています。この共通の記載は、軽症者特例が単なる例外規定ではなく、指定難病医療費助成制度の重要な柱の一つであることを示しています。

この特例は、病状が必ずしも「重症」と分類されなくても、継続的な治療によって経済的負担が大きくなる患者への重要なセーフティネットとして機能します。特に、高価な薬剤の使用、頻繁な検査や通院、あるいは特定の治療法が必要な場合など、医療費が高額になりがちな難病治療の特性を考慮した制度設計であると理解できます。この制度は、症状の重篤度だけでなく、治療費の負担という側面からも患者を支援し、治療中断による病状悪化を防ぐという制度の包括的な目的を達成するために不可欠です。患者は自身の医療費を正確に把握し、この特例の適用可能性を検討することが推奨されます。


申請プロセスと必要書類

申請には「特定医療費(指定難病)支給認定申請書」のほか、難病指定医が作成した「臨床調査個人票(診断書)」が必須です。この診断書は、患者が指定難病にかかっていること(診断基準の充足)と、病状の程度(重症度基準の充足または軽症者特例の該当)を医学的に証明するものです。


臨床調査個人票は、申請時から遡って原則6ヶ月以内に作成されたものである必要があります。また、疾病ごとに様式が異なり、厚生労働省のウェブサイトから最新の様式をダウンロード可能です。令和7年4月以降は紙様式の送付がなくなるため、医療機関において様式を用意し作成することになります。


難病指定医は、単に疾患の診断を下すだけでなく、患者の病状を正確に評価し、複雑な重症度基準に照らし合わせて、医療費助成の可否を左右する極めて重要な書類を作成する責任を負っています。したがって、患者は必ず難病指定医のいる医療機関を受診し、適切な診断書を作成してもらうことが不可欠です。申請書類のデジタル化の進展は利便性向上に寄与する一方で、デジタル情報へのアクセス格差(デジタルデバイド)を生む可能性も考慮すべき点です。制度の公平性と正確性を保つ上で、難病指定医の専門性の維持・向上と、彼らが最新の診断基準・重症度分類にアクセスできる環境整備が不可欠です。また、患者側も、申請に必要な情報(特に最新の様式や手続き)を、厚生労働省のウェブサイトだけでなく、居住地の地方自治体(都道府県・指定都市)のウェブサイトで確認するよう、常に注意を払う必要があります。

その他、世帯全員の住民票謄本(原則3ヶ月以内に発行されたもの)、加入している医療保険の資格情報が確認できる書類(健康保険証の写し、資格情報のお知らせ、資格確認書など)、個人番号(マイナンバー)関連書類などが必要です。


医療費助成開始日の遡及について

難病法の改正に伴い、令和5年10月1日より、医療費助成の開始時期が診断年月日まで遡ることが可能になりました。

「診断年月日」とは、「診察等により指定難病が原因で重症度分類を満たしていると総合的に診断した日」を指し、発症年月日とは異なるため注意が必要です。

遡及できる期間は、原則として申請日から1ヶ月までとされています。しかし、一部の都道府県では最長3ヶ月まで遡りが可能と記載されており(例:大阪府)、この差異は、申請前に居住地の自治体で確認が必要です。

この改正は、患者が申請準備期間中に発生する医療費の経済的負担を大幅に軽減するものです。特に、診断から申請までに時間を要する場合(診断書の作成待ち、必要書類の収集など)に、患者が不利益を被ることを防ぎ、安心して治療に専念できる環境を支援します。しかし、地域による遡及期間の差異は、患者が自身の居住地の最新情報を確認する重要性を高め、制度の複雑性の一端を示しています。この制度変更は、指定難病患者が直面する経済的困難に対し、より患者に寄り添った支援を提供しようとする国の姿勢を示しており、患者が治療を継続しやすくなる環境を整備する上で非常に重要です。一方で、制度の複雑化を招く側面もあり、患者、医療機関、行政間の正確な情報共有と理解の徹底が、円滑な運用には不可欠です。



IV. 消化器領域の指定難病一覧

厚生労働省が指定する消化器領域の難病は以下の通りです。これらの疾病は、それぞれに特有の診断基準と重症度分類が定められています。

告示番号

指定難病名

91

バット・キアリ症候群

92

特発性門脈圧亢進症

93

原発性胆汁性胆管炎

94

原発性硬化性胆管炎

95

自己免疫性肝炎

96

クローン病

97

潰瘍性大腸炎

98

好酸球性消化管疾患

99

慢性特発性偽性腸閉塞症

100

巨大膀胱短小結腸腸管蠕動不全症

101

腸管神経節細胞僅少症

289

クロンカイト・カナダ症候群

290

非特異性多発性小腸潰瘍症

291

ヒルシュスプルング病(全結腸型又は小腸型)

292

総排泄腔外反症

293

総排泄腔遺残

295

乳幼児肝巨大血管腫

296

胆道閉鎖症

297

アラジール症候群

298

遺伝性膵炎

299

嚢胞性線維症

338

進行性家族性肝内胆汁うっ滞症


V. 消化器領域指定難病:重症度基準詳細一覧表

重症度分類の一般的な考え方と対象基準

各指定難病には、疾患の特性に応じた詳細な重症度分類が設けられています。医療費助成の対象となるのは、原則としてこれらの分類で「重症」または「中等症以上」と判定される症例です。


重症度分類の判定は、適切な医学的管理の下で治療が行われている状態で、直近6ヶ月間で最も悪い状態を医師が判断することとされています。この規定は、難病の病状が慢性的に経過しつつも、症状の波や一時的な寛解期が存在するという特性を考慮したものです。これにより、患者が申請時にたまたま症状が落ち着いている時期であっても、過去の重篤な状態が評価に反映されることを意味します。難病の慢性的な性質と、症状の変動性への制度的な理解が示されており、患者にとっては、病状が安定している時期でも申請を諦めずに、医師と相談して最も悪い状態を正確に記載してもらうことの重要性が高まります。医師は、患者の長期的な病状経過を把握し、最も重篤であった時期の情報を正確に臨床調査個人票に反映させる責任があります。



【主要テーブル】消化器領域指定難病 重症度基準一覧

このテーブルは、各疾病の複雑な重症度基準を簡潔かつ比較可能な形で提示することで、情報の検索性と理解度を飛躍的に向上させます。22もの疾患の個別のPDFを一つずつ確認する手間を省き、主要な判定因子を一目で把握できるようにすることで、申請を検討している患者やその家族、支援する医療従事者にとって、迅速な情報把握と適切な判断を支援する極めて価値の高いツールとなります。


告示番号

指定難病名

医療費助成の対象となる重症度基準(要点)

軽症者特例の適用

備考/補足

91

バット・キアリ症候群

重症度III度以上(門脈血行異常症の診断と治療のガイドライン 2018年改訂版)。主要因子:食道・胃・異所性静脈瘤(易出血性/出血既往)、門脈圧亢進所見(治療要)、身体活動制限(介助要)、消化管出血(活動性/治療抵抗性)、肝不全(ビリルビン高値/肝性昏睡)。

適用あり

直近6ヶ月間で最も悪い状態を医師が判断。

92

特発性門脈圧亢進症

重症度III度以上。主要因子:食道・胃・異所性静脈瘤(易出血性/出血既往)、門脈圧亢進所見(治療要)、身体活動制限(介助要)、消化管出血(活動性/治療抵抗性)、肝不全(ビリルビン高値/肝性昏睡)。

適用あり

直近6ヶ月間で最も悪い状態を医師が判断。

93

原発性胆汁性胆管炎

症候性PBC(sPBC)が対象。特に総ビリルビン値2.0mg/dL以上(s2PBC)。肝障害に伴う自他覚症状(黄疸、皮膚掻痒感、食道胃静脈瘤、腹水、肝性脳症など)の有無。

適用あり

直近6ヶ月間で最も悪い状態を医師が判断。

94

原発性硬化性胆管炎

有症状の患者(黄疸、皮膚掻痒、胆管炎、腹水、消化管出血、肝性脳症、胆管癌など)またはALPが施設基準値上限の2倍以上の患者。

適用あり

直近6ヶ月間で最も悪い状態を医師が判断。

95

自己免疫性肝炎

自己免疫性肝炎診療ガイドライン(2021年)の重症度判定で中等症以上、または組織学的/臨床的に肝硬変と診断される症例。主要因子:肝性脳症、肝萎縮、AST/ALT > 200 U/l、総ビリルビン > 5mg/dl、PT-INR ≧1.3。

適用あり

直近6ヶ月間で最も悪い状態を医師が判断。

96

クローン病

IOIBDスコア2点以上。10項目(腹痛、1日6回以上の下痢/粘血便、肛門部病変、瘻孔、その他の合併症、腹部腫瘤、体重減少、38°C以上の発熱、腹部圧痛、Hb 10.0g/dL以下)。

適用あり

直近6ヶ月間で最も悪い状態を医師が判断。

97

潰瘍性大腸炎

中等症以上。6項目(排便回数、顕血便、発熱、頻脈、貧血、赤沈/CRP)。重症は4項目以上、劇症は5項目全てを満たす。

適用あり

直近6ヶ月間で最も悪い状態を医師が判断。

98

好酸球性消化管疾患

中等症以上。N-FPIESは症状スコア20点以上、EGE/EoE(2-19歳)は症状スコア15点以上、成人EGIDは症状スコア15点以上。重度の合併症(腸穿孔、閉塞、外科手術、ショック、成長障害、低蛋白血症など)も重症。

適用あり

直近6ヶ月間で最も悪い状態を医師が判断。

99

慢性特発性偽性腸閉塞症

重症例:経静脈栄養、経管栄養管理、または継続的な消化管減圧(腸瘻、胃瘻、経鼻胃管、イレウス管、経肛門管など)を必要とする場合。

適用あり

日常生活が著しく障害されていること。直近6ヶ月間で最も悪い状態を医師が判断。

100

巨大膀胱短小結腸腸管蠕動不全症

重症例:経静脈栄養、経管栄養、または継続的な消化管減圧を必要とする場合。

適用あり

日常生活が著しく障害されていること。直近6ヶ月間で最も悪い状態を医師が判断。

101

腸管神経節細胞僅少症

重症例:経静脈栄養、経管栄養管理、または継続的な消化管減圧を必要とする場合。

適用あり

日常生活が著しく障害されていること。直近6ヶ月間で最も悪い状態を医師が判断。

289

クロンカイト・カナダ症候群

重症例:アルブミン値3.0g/dL以下の低アルブミン血症。

適用あり

直近6ヶ月間で最も悪い状態を医師が判断。

290

非特異性多発性小腸潰瘍症

重症例:ヘモグロビン10.0g/dL以下の貧血、またはアルブミン値3.0g/dL以下の低アルブミン血症。または腸管狭窄による腸閉塞症状を呈する場合。

適用あり

直近6ヶ月間で最も悪い状態を医師が判断。

291

ヒルシュスプルング病(全結腸型又は小腸型)

重症例:経静脈栄養または経管栄養管理を必要とする場合。

適用あり

直近6ヶ月間で最も悪い状態を医師が判断。

292

総排泄腔外反症

重症例:直近1年間で1回以上の急性腹症入院治療、直近6ヶ月で3回以上の38℃以上の発熱を伴う尿路感染症、CKD重症度分類ヒートマップ「赤」の部分、性交困難な腟狭窄に対する腟形成が必要な場合。

適用あり

直近6ヶ月間で最も悪い状態を医師が判断。

293

総排泄腔遺残

重症例:直近1年間で1回以上の急性腹症入院治療、直近6ヶ月で3回以上の38℃以上の発熱を伴う尿路感染症、CKD重症度分類ヒートマップ「赤」の部分、性交困難な腟狭窄に対する腟形成が必要な場合。

適用あり

直近6ヶ月間で最も悪い状態を医師が判断。

295

乳幼児肝巨大血管腫

中等症以上。中等症:心機能低下、呼吸障害、肝不全徴候。重症:凝固異常(PT≧20秒)、血小板減少(<10万/mm³)、ステロイド無効。

適用あり

直近6ヶ月間で最も悪い状態を医師が判断。生後1歳以降も適用。

296

胆道閉鎖症

重症度2以上(「小児期・移行期を含む包括的対応を要する希少難治性肝胆膵疾患の調査研究」班)。胆汁うっ滞、胆道感染(重症度2+)、門脈圧亢進症、皮膚掻痒、成長障害、肝機能障害(Child-Pugh B/C、高度異常)、身体活動制限(PS 2-4)。

適用あり

直近6ヶ月間で最も悪い状態を医師が判断。

297

アラジール症候群

重症度2以上(肝疾患、心・血管病変、頭蓋内血管病変)、重症度1以上(腎疾患)。各臓器別の詳細な重症度基準あり。

適用あり

直近6ヶ月間で最も悪い状態を医師が判断。

298

遺伝性膵炎

重症例:急性膵炎発作を直近1年に1回以上、膵外分泌機能不全、またはインスリン投与を必要とする膵性糖尿病。

適用あり

直近6ヶ月間で最も悪い状態を医師が判断。

299

嚢胞性線維症

重症度Stage分類でStage-2以上。呼吸器異常(%FEV1 < 90%、SpO2 ≦ 95%、胸部画像所見)または栄養(膵・肝臓)障害(BMI低下、膵外分泌不全)。

適用あり

直近6ヶ月間で最も悪い状態を医師が判断。

338

進行性家族性肝内胆汁うっ滞症

重症度2以上(研究班作成の重症度分類)。胆汁うっ滞、皮膚掻痒(スコア2+)、肝機能障害(Child-Pugh、血液検査)、身体活動制限(PS 2-4)。

適用あり

直近6ヶ月間で最も悪い状態を医師が判断。


VI. 重症度基準の適用における留意事項

診断時期と治療開始後の重症度判断

病名診断に用いる臨床症状や検査所見は、診断基準上に特段の規定がない限り、いずれの時期のものでも差し支えありません(ただし、当該疾病の経過を示す臨床症状等であって、確認可能なものに限る)。

しかし、治療開始後の重症度分類については、適切な医学的管理の下で治療が行われている状態で、直近6ヶ月間で最も悪い状態を医師が判断することとされています。この規定は、難病の病状が慢性的に経過しつつも、症状の波や一時的な寛解期が存在するという特性を考慮したものです。これは、患者が申請時にたまたま症状が落ち着いている時期であっても、過去の重篤な状態が評価に反映されることを意味します。難病の慢性的な性質と、症状の変動性への制度的な理解が示されており、患者にとっては、病状が安定している時期でも申請を諦めずに、医師と相談して最も悪い状態を正確に記載してもらうことの重要性が高まります。


高額医療継続による軽症者特例の再確認

前述の通り、重症度分類で一定以上に該当しない場合でも、高額な医療を継続することが必要な場合(過去12ヶ月以内に医療費(10割分)が33,300円を超える月数が既に3ヶ月以上ある場合)は医療費助成の対象となります。この特例は、特に症状が比較的安定しているが、高価な薬剤や治療法が必要な患者にとって、経済的負担を軽減する上で極めて重要です。申請を検討する際は、この特例の適用可能性も必ず確認してください。


専門医との連携の重要性

各疾病の診断基準および重症度分類は専門性が高く、正確な判断には当該分野の専門知識が不可欠です。申請には「難病指定医」の作成する臨床調査個人票が必須であり、患者は自身の病状と治療状況について、主治医と密に連携し、適切な診断書を作成してもらうことが最も重要です。

診断基準と重症度分類の複雑さ、そして「直近6ヶ月間で最も悪い状態」を医師が判断するという規定は、患者が自身の症状や治療経過を正確に医師に伝え、医師がそれを適切に評価・記載する必要があることを強く示唆しています。これは単なる形式的な書類作成のプロセスではなく、医師と患者が協力して、患者の真の病状と生活への影響を制度に反映させるための重要な「協働作業」であることを意味します。患者は、日々の症状や治療の効果、生活への影響などを詳細に記録する「症状日誌」をつけるなど、医師が判断しやすい情報を提供することが望ましいでしょう。この医師と患者の協働は、医療提供者と患者が制度を最大限に活用し、患者のQOL向上に貢献するための鍵となります。制度の運用が、単なる形式的な手続きではなく、患者の個別状況を深く理解し、支援する方向に向かっていることを示唆しています。



VII. 結論:制度活用による患者支援の促進

重症度基準の正確な理解の重要性

消化器領域の指定難病における医療費助成は、患者とその家族の経済的・精神的負担を大きく軽減する重要な制度です。各疾病に特有の重症度基準を正確に理解し、自身の病状がどの程度に該当するかを把握することが、申請の第一歩となります。本記事の一覧表が、その助けとなることを願います。


医療費助成制度の積極的な活用推奨

重症度基準を満たす場合だけでなく、高額な医療費が継続している場合(軽症者特例)も助成の対象となるため、諦めずに申請を検討することが重要です。不明な点があれば、主治医や居住地の地方自治体(都道府県・指定都市)の難病担当窓口に相談し、最新かつ正確な情報を得ることを強く推奨します。この制度が、指定難病と向き合う患者の皆様の生活の質向上に貢献することを願います。



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