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クリニックからのお知らせ

Information

大腸内視鏡検査の下剤について

1. 大腸内視鏡検査とは?

検査の目的と重要性

近年、大腸がん罹患者数(がんにかかる方の人数)は増加しており、胃がんや肺がんよりも多く、男女合計では日本で最も多いがんとなっています。大腸がん発生経路の主たるものとしてadenoma-carcinoma sequenceが提唱されており、前がん病変としての腺腫や早期大腸がんなどの初期病変で発見できれば完治する可能性が高くなります。つまり、ポリープの段階で切除しておけば大腸がんで命を落とす危険がなくなるわけです。そのためには大腸内視鏡検査(大腸カメラ)が重要となります。

大腸内視鏡検査を受けるべき理由

前述の前がん病変としての腺腫や早期大腸がんなどの初期病変では症状はまず出ることはほとんどありませんし、健診で行われる便潜血検査でも引っかかることはありません。大腸内視鏡検査を受けないと大腸ポリープがあるかどうかは分からないのです。


 

2. 大腸内視鏡検査前の準備

健康な人が食べ物を摂取した際、消化されて排出されるまでにおよそ72 時間かかるといわれています。よって、検査前の食事制限も2~3 日前から行うことが望ましいとされています。当院での検査当日までの流れとしましては、食事制限につきましては頑固な便秘のない通常の方ですと検査前日から行っています。検査前日は残渣の残りにくい原材料で作られた製品である「エニマクリン® シリーズ」を摂取いただきます。前日の夜は20 時までに食事を終えてもらい、当日の朝は絶食となります。また、前日の就寝前にピコスルファートナトリウム内用液という下剤を1本服用していただきます。その他、もともと頑固な便秘の方や前回の前処置の状況によりましては酸化マグネシウムなどを追加で数日前から処方することもあります。検査直前まで飲水は可能ですが、飲酒は腸に負担を掛けるため控えていただいています。


検査の前に行うべき準備

下剤(腸管洗浄剤)の重要性

大腸内視鏡検査を施行する際は、精査・スクリーニング・および治療のいずれにおいても適切な腸管前処置が重要となります。大腸内視鏡検査における腸管洗浄の目標は、検査中の患者の腹部症状を軽減させること、病変の見逃しを減少させること、検査時間の過度な延長を減らすこと、内視鏡治療を安全かつ確実に施行すること、前処置不良により生じる再検査を減少させることです。しかしながら日常臨床では、前処置が不十分となる症例をしばしば経験するのです。

 

3. 下剤(腸管洗浄剤)の役割

なぜ下剤が必要なのか

大腸内視鏡検査を施行するにあたり、大腸の中に便が残っているとその部分の観察ができなくなってしまい、ポリープなどの病変の見落としに繋がります。また、便が残っていますと内視鏡の挿入の際にも邪魔となりますので、内視鏡が挿入しにくくなったりするため患者様に苦痛を加える危険も出てきます。大腸をきれいにすることで安心・安全に内視鏡検査をお受けいただくことになります。


下剤によって腸内の状態がどう改善されるか

大腸内視鏡検査の際の腸管洗浄剤は一般的な下剤と異なり、一旦腸の中身が空っぽになりますのでちょっとしたファスティング効果が期待されます。宿便も取れ、腸内環境がリセットでき、善玉菌優位になります。また、免疫力の向上にもつながる可能性もあります。

 

正確な検査結果を得るために下剤の摂取が不可欠な理由

内視鏡検査の主な目的は小さなポリープを見落とさずに見つけることにあります。

大きな病気は誰が見ても見つかりますが、小さな病変はどうしても見落とされがちです。特に大腸にはハウストラという襞(ひだ)がありますので、その襞の裏に病変があると見つけにくいのですが、便が残っていると更に見つけにくくなりますので見落としにつながります。


 

4. 大腸内視鏡検査に使用される下剤

主要な下剤(腸管洗浄剤)の種類(飲み薬、液体薬、など)・特徴と効果・服用方法


  • モビプレップ®配合内用剤(当院で採用しています)

    ポリエチレングリコールと電解質が入った大室とアスコルビン酸類が入った小室とが隔壁で仕切られたプラスチック容器で構成される2室タイプの製剤です。使用時に、2室の成分を混合・溶解し、1つの液として使用します。1袋を水に溶解して約2Lの溶解液とし、通常、成人には溶解液を1時間あたり約1Lの速度で経口投与していきます。溶解液を約lL服用した後、水またはお茶を約0.5L飲用するのがお勧めです。ただし,排泄液が透明になった時点で投与を終了し、投与した溶解液量の半量の水またはお茶を飲用していただきます。9割程度の患者でモビプレップは半量の1 Lの飲用で十分であり、追加しても300ml程度で済みますので他の下剤と比べて飲用量の負担が軽減していますので患者様にメリットが多いと考え、当院でも採用しております。


  • サルプレップ®配合内用液(当院で採用しています)

    無水硫酸ナトリウム、 硫酸カリウム、硫酸マグネシウム水和物という3種の硫酸塩を含有した1本480mlのペットボトルの液体腸管洗浄剤です。最も新しい腸管洗浄剤で、元々液体なので水に溶解せずそのまま服用します。検査当日に服用する服用方法と検査前日と当日に分けて服用する方法を選んでいただけます。①検査当日に服用する方法は、まず、サルプレップ480mLを30分かけて飲みます。飲み終わったら、水もしくはお茶1Lを60分かけて飲みます。その後排泄液が透明になるまでサルプレップ240mLあたり15分かけて飲み、その後に水又はお茶約500mLを飲用します。②検査前日と当日に分けて服用する方法は、検査前日にサルプレップ480mLを30分かけて飲みます。飲み終わったら、水もしくはお茶1Lを60分かけて飲みます。検査当日は、検査開始予定時間の約2時間以上前から、サルプレップを飲み始めます。サルプレップ240mLを15分かけてゆっくり飲み、その後、水もしくはお茶500mLを飲みます。排泄液が透明になるまでもう一度繰り返します。排泄液が透明になったら下剤の服用をやめて、飲んだ下剤の2倍以上の水もしくはお茶を飲みます。


  • ニフレック®配合内用剤

    ポリエチレングリコールと電解質が入っており、1袋を水に溶解して約2Lとし、溶解液とします。通常、成人には1回溶解液を2~4Lを1時間あたり約1Lの速度で服用します。ただし、排泄液が透明になった時点で投与を終了します。


  • ムーベン®配合内用液

    組成はニフレック®配合内用剤と同一で、用法・用量はニフレック®配合内用剤とまったく同じです。


  • ビジクリア®配合錠

    錠剤タイプの経口腸管洗浄剤です。リン酸二水素ナトリウムー水和物、無水リン酸水素ニナトリウムおよび添加物を含有します。通常、成人には1回あたり5錠ずつ、約200mLの水とともに15分ごとに計10回(計50錠)内服します。


  • ピコプレップ®配合内用剤

    組成はピコスルファートナトリウム水和物と酸化マグネシウム,無水クエン酸です。通常、成人には1回1包を約150mLの水に溶解し、検査前に2回服用します。1回目の服用後は、1回250mLの透明な飲料を数時間かけて最低5回、2回目の服用後は1回250mLの透明な飲料を検査の2時間前までに最低3回飲用します。ただし、電解質異常を起こすおそれがありますので、水のみの飲用は避け、総飲量の半量以上はお茶やソフトドリンク等の他の透明な飲料を飲用する必要があります。


  • マグコロール®P

    クエン酸マグネシウムと添加物を含有します。100g(クエン酸マグネシウムとして68g)を水に溶解し、全量約1800mLとします。通常、成人には、1回1800mLを約1時間かけて服用します。


下剤(腸管洗浄剤)の腸管洗浄機序

経口腸管洗浄剤はいずれも、腸管での電解質組成と等張もしくは高張になるように調製してあります。高張なものも飲水等により腸管内ではほぼ等張となるようになっています。腸管での水分吸収は、腸管内と体内の間の浸透圧差に応じて水分が移動することにより起こりますが、等張の電解質液を大量に経口摂取すると浸透圧差が小さいため、ほとんど吸収されません。そのため、経口摂取した水分の大部分が腸管に滞留しますので、水様便となり、腸管内洗浄効果を示すのです。

 

5. 下剤(腸管洗浄剤)の副作用と対策

日本消化器内視鏡学会の偶発症に関する全国調査(2008~2012年)によりますと、腸管洗浄剤による有害事象は総検査数約1700万件中105件(0.0006%)、つまり、約16.4万件に1回生じたと報告されています。その多くは腸管穿孔および腸閉塞症です。時にアナフィラキシーショックを起こすこともあります。死亡は3件(0.00001%)あり、約567万件に1人死亡した計算となります。これらの学会への報告はたいへん重篤なものとなりますが、その他よくある副作用としましては、多量の下剤と水分を摂取することに伴う腹痛や吐き気、嘔吐があります。下剤(腸管洗浄剤)は味もよくありませんので、吐き気を催す方は多いです。実際に嘔吐してしまった場合は、腹痛や血便などの症状を伴っていないか確認して単に洗浄剤を受けつけないだけなのか、病的な原因(消化管狭窄など)で嘔吐したのかを十分考察して洗浄剤服用を継続させるかどうかを決定する必要があります。ご自宅で前処置の途中で嘔吐した場合は、一旦服用を中止して当クリニックまでお電話ください。腸管洗浄剤を全部服用したが、便が出ない場合も同様です。大腸がんによる腸管狭窄が隠れている可能性もございますので、すぐにご連絡をお願いします。


 

6. 下剤(腸管洗浄剤)摂取のコツと注意点

飲みやすくするための工夫(味や温度調整)

前述のとおりいろいろなタイプの下剤(腸管洗浄剤)があります。液体のタイプはどれも独特の味がしますので飲みにくいと感じる方が多いです。冷やして飲む、ストローで飲むと飲みやすいですので、試してください。どうしても飲めない方は錠剤タイプのビジクリア®配合錠がお勧めです。


摂取時の注意点(飲み忘れ防止など)

事前に病院から飲み方の指導がありますが、きちんと飲み方を守って服用してください。

早く飲みすぎたりしますと副作用が起きてしまう危険がありますのでご注意ください。

飲んだ後に体に異変が生じましたら速やかに病院までご連絡ください。


 

7. 大腸内視鏡検査後の注意点

検査後の体調管理

検査当日は朝から絶食となっていますので脱水傾向にあります。検査後は水分摂取や消化によい食事を速やかにお召し上がりください。

食事や運動の制限について

検査のみの場合は検査後に特に食事・運動制限はございません。ポリープ切除等の処置を行った場合は飲酒、脂っこい食事、激しい運動は控えてください。詳細は病院のスタッフの指導がありますのでそれに従ってください。


 

8. よくある質問とQ&A

Q.下剤を飲むときの不安解消

ご自宅で前処置される方につきましては、腸管洗浄剤を飲めない・嘔吐する、便がまったく出ない、腹痛や血便を生じたなどの場合、無理に服用せず相談するようにしてください。


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