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胃カメラ・大腸カメラ検査で鎮静剤を使うべき?メリット・デメリットを専門医が解説

  • 執筆者の写真: くりた内科・内視鏡クリニック
    くりた内科・内視鏡クリニック
  • 5 日前
  • 読了時間: 10分

更新日:2 日前

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こんにちは。くりた内科・内視鏡クリニック院長の栗田です。


日々の診療で患者様から最もよくご質問をいただくのが、「胃カメラや大腸カメラで鎮静剤を使った方がいいのでしょうか?」というものです。検査への不安をお持ちの方が多いのは当然のことですし、鎮静剤の使用についても正しい情報をお伝えしたいと思います。


胃カメラ、大腸カメラといった内視鏡検査は、食道、胃、十二指腸、そして大腸の内部を直接観察し、がんやポリープといった病変を早期に発見するために不可欠な検査です。しかし、「苦しそう」「痛そう」「恥ずかしい」といった漠然とした不安から、検査の受診をためらってしまう方が少なくありません。


私たちは、そのような内視鏡検査に対する心理的なハードルを少しでも低くしたいと考えています。そのための有効な選択肢の一つが、鎮静剤の使用です。鎮静剤を用いることで、検査中の不快感や不安が軽減され、よりスムーズかつ質の高い検査が可能になります。この記事では、内視鏡検査における鎮静剤の役割について、そのメリットとデメリットを専門的な視点から分かりやすく解説いたします。




0. そもそも鎮静剤とは何か?


鎮静剤とは、患者様の意識レベルを適度に低下させ、検査中の不安や苦痛を和らげるお薬です。完全に眠らせる全身麻酔とは異なり、「意識下鎮静」という状態を目指します。これは、呼びかけに反応できる程度の軽い眠り状態で、検査の安全性を保ちながら快適に受けていただけるレベルです。


当院では、国内外のガイドラインで安全性が確認されている薬剤を使用しており、患者様お一人お一人の状態に合わせて適切な量を調整しています。




1. 鎮静剤を使用する3つの大きなメリット:患者様の体験と検査の質を高める


鎮静剤は、単に検査の苦痛を和らげるだけではありません。患者様の心理的な負担を軽減し、ひいては検査そのものの精度と安全性向上に大きく貢献します。


メリット1:検査中の身体的・精神的苦痛を最小限に


内視鏡検査で患者様が最も不安に感じることの一つが、内視鏡スコープが喉や腸を通る際の不快感や痛みです。特に、経口胃カメラでは、喉の奥にスコープが触れることで引き起こされる「嘔吐反射」(えずき)が、検査を非常に辛く感じさせる要因となります。


鎮静剤は中枢神経系に作用し、催眠、鎮静、抗不安といった効果をもたらします。これにより、ウトウトと眠っているようなリラックスした状態で検査を受けることができ、内視鏡が体内を進む際の不快感や違和感が大幅に軽減されます。人によっては、目が覚めた時には検査がすべて終わっていることも珍しくありません。この効果は、検査中の痛みや不快感だけでなく、検査に対する漠然とした不安や緊張を和らげる上でも非常に重要です。



メリット2:検査の精度・安全性を向上させる


患者様が検査中にリラックスし、余分な力が入らない状態は、医師が内視鏡をスムーズに操作するために不可欠です。特に大腸内視鏡検査では、大腸の形状は個人差が大きく複雑なため、患者様が動いてしまうと、盲腸への到達に時間がかかったり、痛みが生じたりする場合があります。


鎮静剤を使用することで、患者様は検査中に安静を保つことができます。これにより、医師は焦ることなく、時間をかけて胃や腸のヒダを丁寧に広げ、隅々までじっくりと観察することが可能になります。わずか数ミリの微小な病変や早期がんを見逃さないためには、この「丁寧な観察」が極めて重要です。当院が導入しているような、オリンパスのハイビジョンシステムや最大125倍の光学ズーム機能を備えた最新の内視鏡システムは、患者様が静止していることでその真価が最大限に発揮されます。つまり、鎮静剤の使用は、患者様の快適性だけでなく、診断の質そのものに直結する重要な要素と言えます。



メリット3:次回の検査への心理的ハードルが低くなる


内視鏡検査は、一度受ければ終わりというものではありません。病気の早期発見と健康維持のためには、定期的な検査受診が最も重要です。しかし、過去に辛い経験をした方は、その記憶が検査への強い抵抗感となり、次の検査を躊躇しがちです。


鎮静剤を使用して「検査は楽に受けられるものだ」という成功体験を得ることは、次回の検査受診への心理的なハードルを劇的に下げます。これにより、内視鏡検査を健康管理のルーティンとして習慣化しやすくなります。この継続的な受診こそが、消化器系の病変を早期に発見し、早期治療につなげるための最善の策なのです。




2. 知っておくべき「3つのデメリットと注意点」:安心・安全な検査のための正しい理解


鎮静剤の使用には多くのメリットがある一方で、いくつか知っておくべき注意点も存在します。これらを正しく理解し、適切に対処することで、より安全に検査を受けていただくことができます。



デメリット1:検査後の一時的な行動制限と注意


鎮静剤の効果は検査終了後もしばらく持続します。そのため、検査当日は眠気やふらつきが残る可能性があり、判断力や集中力が低下することがあります。


最も重要な注意点は、検査当日の自動車、バイク、自転車の運転は終日禁止されることです。鎮静剤の影響下での運転は、飲酒運転と同様の扱いとなり、厳しい罰則が適用されるリスクも伴います。これは、患者様の安全を守るための非常に重要なルールです。当院では、公共交通機関でのご来院、またはご家族による送迎をお願いしております。また、検査当日は重要な決断を伴う仕事や、集中力を要する作業は避けるようにしてください。



デメリット2:副作用 や合併症のリスク


鎮静剤は非常に安全性の高い薬ですが、ごくまれに血圧の低下や呼吸が弱くなるといった副作用や合併症を引き起こす可能性があります。これは特に、基礎疾患をお持ちの方や高齢の方で注意が必要です。


当院では、これらのリスクを最小限に抑えるため、鎮静剤使用中は患者様の心拍数や血圧、血中酸素濃度などを常に厳重にモニタリングしています。また、消化器内視鏡学会の指導医でもある経験豊富な院長が、患者様一人ひとりの体質や既往歴を考慮し、最適な薬剤の種類と投与量を慎重に判断・調整いたします。



デメリット3:検査後のリカバリータイム


鎮静剤の効果が完全に切れるまでには一定の時間が必要です。そのため、検査後はすぐに帰宅するのではなく、院内のリカバリールームで30分程度、ゆっくりとお休みいただく必要があります。このリカバリータイムは、特に忙しい方にとってはデメリットに感じられるかもしれません。しかし、当院ではプロポフォールを使用していていることにより目覚めが早いため、通常1時間休憩するところを30分となっておりますので他の施設よりは休憩時間は短いです。また、胃カメラと大腸カメラの同日検査も承っており、鎮静剤を使って「眠っている間に両方の検査を終える」ことが可能です。これにより、検査のために何度も来院する手間が省け、結果として時間的な負担を大幅に軽減できます。



鎮静剤を使用するメリット・デメリット比較表

メリット

デメリット

身体的・精神的苦痛の軽減

検査後の行動制限(自動車等の運転禁止)

 嘔吐反射の抑制

副作用・合併症のリスク(血圧低下、呼吸抑制など)

検査の精度・安全性の向上

検査後のリカバリータイムが必要

検査時間の短縮

検査中の画像をリアルタイムで確認できない

検査への心理的ハードルの低下

薬の種類によっては血管痛が生じる可能性

再検査率の上昇

一部、鎮静剤が使用できないケースがある



3. くりた内科・内視鏡クリニックの鎮静剤へのこだわりと安全体制


鎮静剤による内視鏡検査は、医師の専門的な知識と技術、そして万全の安全体制があって初めて、その真価を発揮します。当院では、患者様が心から安心して検査を受けていただけるよう、以下の3つの点に徹底的にこだわっています。



経験豊富な「指導医」による安心の検査


内視鏡検査の精度と安全性は、ひとえに医師の技術力と経験に左右されます。当院の院長である栗田亮は、京都大学医学博士であり、日本消化器内視鏡学会の「指導医」資格を有しています。この「指導医」という資格は、単に豊富な検査実績があるだけでなく、後進の医師を指導できるほどの卓越した知識と技術を持つことを意味します。


院長は大学病院や大病院で長年、消化器内科部長を務めてきた豊富な臨床経験から、患者様一人ひとりの状態を的確に見極め、最適な鎮静法を提案することができます。苦痛を最小限に抑えつつ、質の高い診断を実現するための専門的な判断力こそが、当院の最大の強みです。



最先端機器とプライバシーに配慮した環境


当院は、大学病院レベルの最新式内視鏡システムを導入しています。最大125倍の光学ズーム内視鏡や4Kモニターといったハイビジョンを超える高画質観察が可能なこの機器は、鎮静剤によって患者様が安静な状態を保つことで、その性能を最大限に引き出し、微細な病変の早期発見を可能にします。


また、内視鏡検査に対する「恥ずかしさ」という心理的な負担にも配慮しています。プライバシーを重視した個室のリカバリールームをご用意しているほか、検査スタッフを全員女性にする体制も整えています。安心してリラックスできる環境は、検査の苦痛軽減に直結する重要な要素です。



胃・大腸カメラの同日検査が可能


お忙しい方や、何度も通院するのが難しい方のために、当院では胃と大腸の内視鏡検査を同日に行うことが可能です。鎮静剤を使用すれば、まず眠っている間に胃カメラを行い、そのまま大腸カメラに進みます。患者様が目覚めた時にはすべての検査が終了しているため、準備や食事制限、通院の手間を一度に済ませることができ、時間的、身体的な負担を大幅に軽減できます。




4. 鎮静剤に関するよくあるご質問(Q&A)


Q1. 鎮静剤は保険適用になりますか?


A. 診断を目的とした内視鏡検査の一環として鎮静剤を使用する場合、原則として保険が適用されます。ただし、自治体や企業が行う「胃がん検診」などでは、鎮静剤が使用できない場合や、別途追加費用がかかる場合があります。人間ドックや健診をご希望の方は、ご予約時にお問い合わせください。



Q2. どのような鎮静剤を使いますか?


A.内視鏡検査で一般的に使用される鎮静剤には、ミダゾラム(ドルミカム)やプロポフォールなどがあります。当院では、プロポフォールと少量のミダゾラム(ドルミカム)を併用しています。ミダゾラムと比べプロポフォールは、作用時間が非常に短く、検査終了後すぐに目が覚めるというメリットがあります。作用時間の長いミダゾラムは少量しか使用しないため、覚醒が早く、患者様の負担が少なく、安全性も高いと考えております。当院では検査終了後30分休憩していただき、結果説明の後帰宅いただいております。



Q3. 鎮静剤を使わずに検査を受けることはできますか?


A. はい、もちろん可能です。当院では、口から挿入する「経口内視鏡」と、鼻から挿入する「経鼻内視鏡」を選択いただけます。経鼻内視鏡は、元々嘔吐反射が少ないため、局所麻酔だけでも比較的楽に検査を受けていただくことが可能です。患者様のご希望や不安に応じて、最適な検査方法をご提案しますので、ご安心ください。



Q4. 検査中の画像を自分で見ることはできますか?

A. 鎮静剤を使用すると、ウトウトと眠ったような状態になるため、検査中にご自身の画像をリアルタイムで確認することは難しいです。しかし、検査終了後、撮影した静止画をご覧いただきながら、院長が現在の体の状態や今後の治療方針について丁寧に分かりやすくご説明いたします。




5. さいごに:私たちから患者様へのメッセージ


「苦しい」「怖い」という内視鏡検査のイメージが、検査を遠ざけている大きな要因であることは、私たち医療従事者も強く感じています。しかし、内視鏡検査は決して怖いものではありません。最新の技術と、患者様の苦痛に寄り添う鎮静剤という選択肢が、検査への一歩を踏み出す勇気を与えてくれます。


当院は、大学病院で培った専門的な技術と経験、そして患者様一人ひとりに寄り添う温かいケアで、誰もが安心して内視鏡検査を受けられる環境を整えています。消化器の不調は、体の声です。その声に耳を傾け、健康な未来を守るためのお手伝いを、ぜひ私たちにさせてください。何かご不安なことがありましたら、お気軽にご相談ください。


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