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クリニックの内視鏡システム選択ガイド:富士フイルムとオリンパスの比較

  • 執筆者の写真: くりた内科・内視鏡クリニック
    くりた内科・内視鏡クリニック
  • 6月4日
  • 読了時間: 19分

更新日:8月6日

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内視鏡検査の重要性とシステム選択の背景

内視鏡検査は、消化器疾患の早期発見と診断において不可欠な役割を担っています。特に、食道がん、胃がん、大腸がんといった消化器系のがんは、早期に発見し適切な治療を行うことで、患者の予後を大きく改善できるため、高精度な内視鏡システムは医療現場において極めて重要です。患者にとって、内視鏡検査は身体的・精神的負担を伴うことがあり、その軽減はクリニック選びにおける大きな関心事です。内視鏡システムの選択は、検査の快適性や安全性、そして診断の精度に直結するため、クリニックの質を測る重要な要素となり得ます。


日本の内視鏡システム市場は、オリンパスと富士フイルム、そしてHOYA(ペンタックスブランド)の3社による寡占状態にあります。この中で、オリンパスは消化器内視鏡分野において約7割という圧倒的な市場シェアを誇り、事実上の業界標準(デファクト・スタンダード)を確立しています。これは、オリンパス製品が長年にわたり多くの医療機関で採用され、医師にとっての標準的な操作感や信頼性を提供してきた歴史を反映しています。その広範な普及は、安定した品質と既存の医療ワークフローへの高い適合性を示唆しており、多くのクリニックにとって魅力的な選択肢であり続けています。

一方、富士フイルムは、事業買収を通じて内視鏡事業に参入し、オリンパスを猛追する立場にあります。この「チャレンジャー」としての位置づけは、富士フイルムが市場シェアを獲得するために、より革新的で差別化された技術を積極的に開発・投入していることを意味します。例えば、AI技術や独自の特殊光観察技術などがその代表例です。したがって、クリニックが「実績と安定性」を重視するならばオリンパスが、最新の「革新技術と差別化」を求めるならば富士フイルムが、それぞれ異なる価値を提供していると言えます。患者の視点から見ると、広く普及しているシステムは多くの医師が慣れており、新しいシステムは特定の先進技術によるメリットを享受できる、という選択肢の違いが生まれることになります。



内視鏡システム評価の主要視点

内視鏡システムを評価する際には、主に以下の3つの視点が重要となります。これらの要素は相互に関連し、最終的な診断の質、患者の体験、そして医療機関の運用効率に大きく影響します。


診断精度と病変の早期発見

高解像度画像、特殊光観察、そしてAI診断支援システムは、微細な病変の発見や鑑別において極めて重要な役割を果たします。特に、がんの早期発見は、治療の成功率と患者の予後改善に直結するため、内視鏡システムの診断能力は最優先されるべき評価ポイントです。高精細な画像は、医師が粘膜のわずかな変化や血管構造の異常を詳細に観察することを可能にし、特殊光観察は特定の病変を強調表示することで、肉眼では見落としがちな異常の視認性を向上させます。さらに、AI診断支援は、医師の目視を補完し、病変の検出精度を高めることで、診断の信頼性を飛躍的に向上させる可能性を秘めています。


患者の負担軽減と快適性

内視鏡検査を受ける患者にとって、検査時の身体的・精神的負担の軽減は大きな懸念事項です。スコープの細さ、柔軟性、経鼻挿入への対応、そして鎮静剤使用の選択肢などが、検査時の苦痛軽減に大きく貢献します。極細径で柔軟なスコープは、体腔内への挿入時の不快感を最小限に抑え、経鼻内視鏡は咽頭反射を軽減することで、患者がよりリラックスして検査を受けられるようになります。また、鎮静剤の使用は、患者が眠った状態で検査を受けられるようにし、痛みや不快な感覚から解放されるため、検査への心理的ハードルを下げ、受診率の向上にも繋がります。


医師の操作性とクリニックの運用効率

内視鏡システムの操作性は、検査の効率性と安全性に直接影響します。スコープの湾曲性、吸引能力、処置具の互換性、そして情報管理システムなどが、医師の負担を軽減し、スムーズな検査進行を可能にします。特に、吸引能力の高さは、胃内の液体を迅速に除去し、観察視野をクリアに保つことで、検査時間の短縮に貢献します。また、AIによる診断支援は、医師の集中力維持を助け、診断精度の向上に寄与するだけでなく、検査時間の短縮や不必要な追加検査の削減を通じて、医療現場全体の効率化にも貢献します。効率的な情報管理システムは、患者情報や検査画像の適切な管理を可能にし、医療の質と安全性を高めます。



富士フイルム製内視鏡システムの詳細分析

富士フイルムの内視鏡システムは、写真分野で培われた独自の画像技術を基盤とし、診断精度と患者負担軽減の両面で進化を遂げています。


独自の画像強調技術(BLI, LCI)とAI診断支援(CAD EYE)

富士フイルムの『ELUXEOシステム』は、微細な病変を見えやすくするための独自の特殊光観察モード「BLI (Blue Light Imaging)」と「LCI (Linked Color Imaging)」を搭載しています。BLIは、粘膜表層の微細な血管や構造を強調して表示し、LCIは、画像の赤色領域のわずかな色の違いを強調することで、炎症や微小病変の発見をサポートします。特に、早期食道がんの発見においてその有用性が高く評価されています。BLIはレーザー光で短い波長の光を当てて観察する方式を採用しており、オリンパスのNBI(狭帯域光観察)が白色光から特定の波長を切り取る方式であるのに対し、実際の病変観察における見え方に大きな違いはほとんどなく、どちらも拡大観察を併用することでより正確な診断が可能とされています。

さらに、富士フイルムはAIシステム「CAD EYE」を内視鏡システムと連携させています。CAD EYEは、富士フイルムが独自開発した製品であり、膨大な臨床データから深層学習(Deep Learning)を活用して開発されました。このAIシステムは、胃・食道・大腸の検査中にAIがリアルタイムで画像を解析し、がんの疑いがある領域をモニターに表示することで、医師の病変検出をサポートします。これにより、医師の診断を支援し、がんの早期発見に貢献することが期待されています。

富士フイルムが写真フィルムで長年培ってきた「画質」へのこだわりは、内視鏡システムにも色濃く反映されており、実際に富士フイルムの内視鏡を使用している医師からは、「画像がいいね」「画像がきれいで診断しやすい」といった高い評価が寄せられています。この高画質は、単に人間の目による診断を助けるだけでなく、AI診断支援システム「CAD EYE」の性能を最大限に引き出すための基盤ともなっています。AIが学習するデータは、実際に撮影された高精細ながん症例画像であり、画像の精細さがAIの画像解析の精度向上に直接寄与しています。このことは、単にAIを搭載しているだけでなく、AIの性能を最大限に引き出すための基盤となる画像技術が優れていることを示しています。高精細な画像とAIの組み合わせは、微小な病変の早期発見において、医師の目視だけでは見落とす可能性のある部分を補完し、診断の信頼性を飛躍的に高めるというメリットを患者に提供します。


スコープの特性(細径化、柔軟性、経鼻対応)

富士フイルムは、患者の負担軽減に配慮したスコープ開発にも注力しています。特に、経鼻挿入に適したしなやかなスコープを提供しており、極細径でありながら経口スコープに迫る広角高画質を実現しています。最新式の経鼻内視鏡はCMOSセンサーを採用し、ハイビジョン画質を描出します。スコープの身体に入る部分は柔らかくしなやかに開発されており、体外へ胃内の体液を排出する穴も大きく設計されているため、検査時間の短縮にも貢献します。代表的な経鼻スコープの先端部径は5.8mm、軟性部径は5.9mmのモデルが存在します。また、スコープ表面にコーティングする樹脂の量を先端部分から手元側の操作部に向けて連続的に変化させる構造を採用することで、スコープの先端部分には柔軟性を持たせつつ、手元側に向かって硬くすることで、高い挿入性を追求しています。


臨床現場からの評価とシステム連携

富士フイルムの内視鏡システムは、その優れた画質により、実際に使用する医師から高い評価を得ています。また、内視鏡情報管理システム「NEXUS」や画像取込端末「VT-400/VT-400α」など、検査情報の管理・効率化を支援するITシステムも提供しており、依頼情報の確認から画像入力、レポート作成まで、幅広い機能を統合することで、クリニックの運用効率向上をサポートしています。これにより、診断から記録、管理までの一連のワークフローがスムーズに行われ、医療現場全体の生産性向上に寄与しています。



オリンパス製内視鏡システムの詳細分析

オリンパスは内視鏡機器の世界トップシェアを誇り、長年にわたり消化器内視鏡分野のデファクト・スタンダードを確立してきました。その最高峰の内視鏡システム「EVIS X1(イーヴィス エックスワン)」は、がんをはじめとする消化器疾患に対して、高精度な観察を可能にする様々な先進技術を搭載しています。


先進の画像強調技術(NBI, TXI, RDI)とAI診断支援(EndoBRAINシリーズ)

オリンパスの代表的な画像強調技術である「NBI (Narrow Band Imaging)」は、血液中のヘモグロビンに吸収されやすい狭帯域光(VioletとGreenの2つの波長)を照射することで、粘膜表層の血管走行や表層微細構造を強調表示する技術です。これにより、病変のスクリーニングや詳細観察を可能にし、特にポリープ表面の血管構造や早期食道がんの発見に有用とされています。従来のNBIは画面が暗くなりがちという課題がありましたが、最新鋭のNBIではこの点が改善され、画面全体が明るくなり、微小病変の発見も可能になりました。NBIは内視鏡診療における「ゴールドスタンダード」として、その使用実績が広く認められています。

さらに、オリンパスは「TXI (Texture and Color Enhancement Imaging)」と「RDI (Red Dichromatic Imaging)」といった新たな画像処理機能も提供しています。TXIは、入力画像をベース画像とテクスチャー画像に分解し、それぞれを強調処理することで、微細な凹凸感や色調の違いをより明確に表示し、微小な病変の視認性を向上させます。RDIは、赤みを強調することで、食道裂孔ヘルニアやバレット食道などの観察において、過小評価されがちな病変を適切に評価するのに役立つ特殊光観察モードです。

AI診断支援システムとしては、「EndoBRAIN-EYE」と「EndoBRAIN-Plus」が提供されています。EndoBRAIN-EYEは、大腸内視鏡検査中にAIがリアルタイムでポリープなどの大腸病変を検出し、医師の検出作業をサポートします。このシステムは、2024年6月より診療報酬の加算対象として明記されたことで、医療機関への導入が加速し、大腸がん・ポリープの早期発見に大きく貢献することが期待されています。EndoBRAIN-Plusは、大腸の超拡大内視鏡画像をAIで解析し、検査中にリアルタイムで腫瘍や浸潤がんを高精度に判別することで、医師の診断を補助します。これは大腸における浸潤がんの診断において国内で初めて薬事承認を取得したAI製品であり、大腸がんの治療方法の選択における医師の診断を強力にサポートします。

EndoBRAIN-EYEの診療報酬加算対象化は、単なる技術的優位性以上の大きな意味を持ちます。これは、国がその医学的有用性を公式に認め、医療機関がこのAIシステムを導入・使用することで、追加の診療報酬を得られることを意味します。この加算は、医療機関にとってAI導入の経済的インセンティブとなり、オリンパス製AIシステムの普及を加速させる強力な推進力となります。結果として、より多くのクリニックでAI支援による大腸内視鏡検査が提供されるようになり、大腸がん・ポリープの早期発見率向上に貢献する可能性が高まります。患者にとっては、AIによる診断支援が受けられる機会が増え、より質の高い検査が期待できるようになるというメリットがあります。これは、技術革新が医療の質向上と普及にどのように貢献するかを示す具体的な事例と言えます。


スコープの多様性と操作性へのこだわり

オリンパスは、経鼻用、上部消化管用、十二指腸用、下部消化管用、ダブルバルーンスコープ、気管支用など、幅広い検査と処置に対応する多様なスコープを取り揃えています。スコープは柔らかい素材を採用しており、曲がりくねった胃や腸への追従性が向上し、喉や鼻への違和感を軽減することで患者負担に配慮した検査を可能にしています。

特に、最新の経鼻内視鏡スコープ「GIF-1200N」は、先端外径5.4mmの極細径でありながら、新型CMOSイメージセンサーの搭載により、明るく低ノイズなハイビジョン画質を実現し、従来の経口内視鏡に遜色ない画質を提供します。これにより、患者の苦痛を軽減しつつ、高精細な画像による診断を両立させています。また、フットスイッチ操作で内視鏡先端からウォータージェットを出し、短時間で粘膜を洗浄できる機能も搭載されており、視野をクリアに保ち、死角のない観察と検査時間の短縮に貢献します。

オリンパスのスコープは、多くの医師から「確実な操作感と適度な硬さ」を持ち、「確実な挿入を可能にする内視鏡」として評価されることがあります。消化器内視鏡で約7割という圧倒的な市場シェアを握っていることは、多くの医師が長年にわたりオリンパス製品に慣れ親しんでいることを意味します。この「慣れ」と「確実性」は、特に複雑な手技や、ベテラン医師の安定したパフォーマンスに寄与していると考えられます。医師が「少しの変化も敏感に感じ」「慣れればなんてことなかったりする」というコメントは、操作性に対する医師の主観的な感覚が非常に重要であることを示唆しています。長年の経験を持つ医師にとっては、慣れ親しんだ操作感のシステムが効率性と安全性を高める可能性があり、これがクリニックの機器選択において保守的な判断を促す要因となることもあります。患者にとっては、熟練した医師が慣れた機器を使用することで、よりスムーズで安全な検査が期待できるという側面があります。オリンパスは、「病気を見つけるための鮮明な画質を」という医師の要求に応えることで、ビデオスコープ技術で先行する米国メーカーを追い抜いたという経緯があり、医師の評価に応える品質維持に注力しています。



富士フイルムとオリンパスの比較:選択のための視点

クリニックの内視鏡システムを選ぶにあたり、富士フイルムとオリンパスのどちらが良いかという問いは、それぞれのシステムの強みと、クリニックが重視する要素によって答えが異なります。両社の主要な機能を比較することで、より適切な選択が可能になります。


画質・診断支援技術の比較

項目 (Category)

富士フイルム (Fujifilm)

オリンパス (Olympus)

市場シェア(概算)

オリンパスを猛追する立場、約2割以下

消化器内視鏡で約7割の圧倒的シェア

主要画像強調技術

BLI (Blue Light Imaging): 粘膜表層の微細血管・構造を強調。

NBI (Narrow Band Imaging): 狭帯域光で粘膜表層の血管走行・微細構造を強調、ゴールドスタンダード。


LCI (Linked Color Imaging): 赤色領域の色調変化を強調し炎症や微小病変の視認性向上。

TXI (Texture and Color Enhancement Imaging): 微細な凹凸感や色調の違いを強調。



RDI (Red Dichromatic Imaging): 赤みを強調し、食道裂孔ヘルニア等の評価に有用。

AI診断支援システム

CAD EYE: 胃・食道・大腸の病変をリアルタイムで検出支援。高精細な画像データで深層学習。



EndoBRAIN-EYE: 大腸病変の検出支援。


EndoBRAIN-Plus: 大腸の腫瘍・浸潤がんの鑑別支援。



両システムとも診療報酬加算対象。


経鼻スコープ先端径(代表例)

5.8mm

5.4mm (GIF-1200N)

スコープの柔軟性/操作性(一般的な評価)

軽い操作性と柔らかいスコープで腸管に優しい。しなやかで患者負担に配慮。

確実な操作感と適度な硬さで確実な挿入を可能にする。柔らかい素材で体腔への追従性向上 。

AIシステムにおける特筆すべき点

写真分野で培われた高画質がAIの学習精度向上に寄与。幅広い消化器領域での検出支援。

大腸領域における検出から鑑別・治療選択支援まで、より深いレベルでのAI活用。診療報酬加算という経済的インセンティブ。

医師からの評価(一般的な傾向)

「画像がいいね」「画像がきれい」と画質に高い評価。

「病気を見つけるための鮮明な画質」に応え、確実な操作感と信頼性。ベテラン医師に支持される慣れ親しんだ操作性。


特殊光観察

富士フイルムのBLIとLCIは、レーザー光や複数のLEDを制御することで、微細な血管や粘膜の色調変化を強調します。特にLCIは、赤みを帯びた色をより赤く、白っぽい色をより白くすることで、粘膜の微妙な色の違いを強調し、炎症の診断や微小病変の観察をサポートします。

一方、オリンパスのNBI、TXI、RDIは、狭帯域光や高度な画像処理技術を用いて、血管、微細な凹凸、色調を強調します。NBIは特に血管構造の強調に優れ、その実績から「ゴールドスタンダード」と称されています。TXIは微細な凹凸感を、RDIは赤みを強調することで、それぞれ異なる用途で病変の視認性を高めます。

両社の技術は、微小病変の発見をサポートするという目的は同じですが、富士フイルムはレーザーやLED制御による「色の強調」に強みを持つ一方、オリンパスはNBIの「血管強調」で実績を積み、さらにTXIやRDIで新たな視点を提供しています。実際の見え方に大きな違いはないとされていますが、医師の観察習慣や病変の種類によって好みが分かれる可能性があります。


AI診断支援システム

両社ともAIによる医師支援を強化しています。富士フイルムのCAD EYEは、胃・食道・大腸といった幅広い消化器領域での病変検出をリアルタイムでサポートします。その特徴は、写真分野で培われた高精細な画像データを用いた深層学習にあり、AIの検出精度向上に貢献しています。

対照的に、オリンパスのEndoBRAINシリーズ(EndoBRAIN-EYE, EndoBRAIN-Plus)は、特に大腸領域におけるAI活用に焦点を当てています。検出支援に加えて、腫瘍・非腫瘍の鑑別や浸潤がんの判別まで支援する点が特徴です。さらに、EndoBRAIN-EYEが診療報酬加算の対象となったことは、医療機関にとって導入の大きなインセンティブとなり、その普及を加速させる可能性があります。これは、オリンパスのAIが技術的な優位性だけでなく、実用的な経済的メリットも提供していることを示しています。



患者の快適性へのアプローチ比較

スコープの細さ・柔軟性

富士フイルムの経鼻スコープは先端径5.8mm、軟性部径5.9mmのモデルがあり、身体に入る部分が柔らかくしなやかであるとされています。一方、オリンパスの最新経鼻スコープGIF-1200Nは先端径5.4mmと、富士フイルムよりもわずかに細く、患者の負担軽減に貢献する可能性があります。両社ともスコープの柔らかい素材を採用することで、曲がりくねった体腔への追従性を高め、喉や鼻への違和感を軽減することに配慮しています。


経鼻/経口の選択と鎮静剤

両社とも経鼻内視鏡を提供しており、経鼻挿入は咽頭反射の軽減や検査の楽さに貢献するとされています。以前は経口内視鏡の方が画質が良い傾向にありましたが、オリンパスのGIF-1200Nのような最新の経鼻内視鏡は、経口内視鏡に遜色ない高画質を実現しています。

どちらのシステムを採用しているクリニックであっても、鎮静剤の使用は患者の苦痛を大幅に軽減する有効な手段です。鎮静剤を使用することで、患者は眠ったような状態で検査を受けられ、痛みや不快な感覚から解放されるため、検査への心理的負担が軽減されます。


クリニックの専門性に応じた選択肢

操作性

富士フイルムのスコープは「軽い操作性と柔らかいスコープで腸管に優しい」と評価されることがあります。これは、特に腸管への挿入時において、患者への負担を軽減しつつスムーズな操作を可能にする特性を示唆しています。

対照的に、オリンパスのスコープは「確実な操作感と適度な硬さ」を持ち、「確実な挿入を可能にする」と評されています。特にベテラン医師の中には、下部消化管内視鏡においてオリンパス製品に強いこだわりを持つ者もいると報告されており、これは長年の経験に基づく操作感への信頼を反映していると考えられます。医師の好みや手技、検査部位(上部消化管か下部消化管か)によって操作性の評価は分かれる可能性があり、医師が最も慣れていて最高のパフォーマンスを発揮できるシステムを選ぶことが、質の高い検査を提供する上で重要であると言えます。


処置具・システム連携

両社とも、診断だけでなく、ESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)処置具、止血用クリップ、エネルギーデバイスなど、幅広い処置具や情報管理システムを提供し、包括的な内視鏡診療をサポートしています。これにより、検査から治療、そして情報管理までの一連のプロセスがスムーズに行われ、医療の質と効率が向上します。



最適な内視鏡システムを選ぶために

クリニックが採用している内視鏡システムが富士フイルムとオリンパスのどちらが良いかという問いに対し、一概に優劣をつけることは困難です。両社ともに最先端の技術を提供しており、それぞれ異なる強みを持っています。


両システムの強みと選択のポイント

富士フイルムの強みは、写真分野で培われた独自の「画質」へのこだわりと、BLI/LCIといった特殊光観察技術による微細病変の視認性向上にあります。高精細な画像データに基づくAI診断支援システム「CAD EYE」は、幅広い消化器領域での病変検出をサポートし、医師の診断を強力に支援します。また、しなやかで患者負担に配慮した経鼻スコープも特徴です。

オリンパスの強みは、消化器内視鏡における圧倒的な市場シェアと、NBIを始めとする先進の画像強調技術の豊富な実績にあります。特に大腸領域におけるAI診断支援「EndoBRAIN」シリーズは、高度な鑑別能力を持ち、診療報酬加算の対象となったことで、その普及が加速し、大腸がんの早期発見に大きく貢献することが期待されます。極細径かつ高画質を両立した経鼻スコープ(GIF-1200N)による患者負担軽減も特筆すべき点です。さらに、多くの医師から「確実な操作感」という信頼を得ており、長年の経験を持つ医師にとっては慣れ親しんだ操作感が効率性と安全性を高める要因となります。


患者とクリニックへの推奨事項

患者様へ

内視鏡検査を受けるクリニックを選ぶ際、最も重要なのは「医師の経験と技量」です。どんなに優れた機器も、それを扱う医師の熟練度が最も重要であり、診断の正確性や安全性を大きく左右します。

次に、「クリニックの得意分野」を確認することが推奨されます。胃カメラ、大腸カメラ、または特定の疾患(例:早期がん、炎症性腸疾患)に特化しているかを確認し、ご自身の検査目的に合ったクリニックを選びましょう。

また、「患者負担軽減への取り組み」を重視することも重要です。経鼻内視鏡の有無、鎮静剤使用の選択肢、スコープの細さなど、ご自身の不安や希望に合ったクリニックを選ぶことで、検査時の苦痛を最小限に抑えることができます。

AI診断支援の有無も確認ポイントの一つです。AIは医師の診断をサポートする「助手」のような存在であり、見落としリスクの低減に寄与し、診断の信頼性を高めることが期待されます。


クリニックへ

内視鏡システムの選択は、クリニックの「診療の専門性」と合致しているかが重要です。どのような疾患の診断・治療に注力するかによって、最適なシステムは異なります。特にAIは、大腸がんの検出・鑑別に特化したオリンパス、または幅広い消化器領域の検出を支援する富士フイルムといった選択肢があり、診療方針に応じて検討が必要です。

「医師の慣れと操作性」も考慮すべき点です。長年の経験を持つ医師にとっては、慣れ親しんだ操作感のシステムが、検査の効率性と安全性を高める可能性があります。


「患者ニーズへの対応」として、経鼻内視鏡の導入や鎮静剤使用の積極的な提供など、患者負担軽減への配慮は、患者誘致において重要な要素となります。

最後に、「将来性」も考慮に入れるべきです。AIの進化や診療報酬改定の動向 27 は、医療機関の経営にも影響を与えるため、長期的な視点で投資を検討することが重要です。

最終的に、どちらのメーカーのシステムも最先端の技術を提供しており、一概に優劣をつけることは困難です。重要なのは、そのクリニックが採用しているシステムが、患者のニーズ(負担軽減、早期発見)と、それを扱う医師の専門性・技量に最も合致しているかという点です。クリニックを受診する際は、使用している内視鏡システムの種類だけでなく、そのクリニックがどのような検査方針を持ち、患者への配慮をどのように行っているかを確認することが、最適な選択に繋がります。


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