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お知らせ・院長ブログ

「粘液便」は体のサインです   ―見過ごせない便の変化とその意味

  • 執筆者の写真: くりた内科・内視鏡クリニック
    くりた内科・内視鏡クリニック
  • 10月11日
  • 読了時間: 8分
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「粘液便」とは?   -正常な生理現象から知る第一歩


便に「粘り気のあるもの」が付着しているのを見て、不安を感じる方は少なくありません。しかし、まずは落ち着いてください。便に含まれる少量の粘液は、生理的な現象であり、必ずしも病気を意味するものではありません。この粘液は、腸の粘膜から分泌されるゼリー状のタンパク質の一種で、便がスムーズに腸内を移動するための潤滑油のような役割を担っています。したがって、健康な方の便にもわずかに粘液が付着していることはごく自然なことです。


重要なのは、どのような状態が「異常な粘液便」と見なされるかを知ることです。一般的に、肉眼でゼリー状とわかるほどの多量の粘液が確認できる場合、または一時的なものではなく、何日も続く、あるいは繰り返し見られる場合には、腸内で何らかの異常が起きている可能性が考えられます。特に、粘液に血液や膿が混じっている場合は、より注意が必要です。このような便の変化は、体からの大切なメッセージと捉え、放置せずにその意味を理解することが第一歩となります。




色と性状から読み解く、粘液便のサイン


粘液便の色や性状は、その原因を探る上で非常に重要な手がかりとなります。便に付着した粘液の色を観察することで、その背景にある体の状態について推測することができます。


透明・白色の粘液便


透明あるいは白っぽい粘液便は、ストレスや消化不良、冷え、食あたりなどによる腸の軽度な炎症が原因で発生することが多いとされています。このようなケースでは、腸の粘膜がダメージを受けると、それを保護するために粘液の分泌が一時的に増え、便と混じって排出されます。また、炎症が起きている部位に集まった白血球が粘液と混ざり、白っぽく見えることもあります。これらの症状は、一時的なものであれば過度な心配は不要ですが、症状が続く、あるいは量が非常に多い場合は、過敏性腸症候群(IBS)などの疾患が隠れている可能性もあるため、注意が必要です。


ピンク・緑色の粘液便


ピンク色の粘液は、主に便秘や硬い便が原因で、排便時に肛門付近の粘膜(直腸)が傷つき、少量の出血と粘液が混じり合って排出されることで起こります。一方、便に緑色の粘液が絡まっている場合は、胆汁が原因である可能性が高いです。通常、胆汁は小腸や大腸で再吸収されますが、腸の動きが低下すると、再吸収されずに酸化して緑色になり、粘液となって排出されることがあります。これらの色を伴う粘液便も、一時的なものであれば心配ないことが多いですが、腹痛や下痢を伴う場合は、ブドウ球菌感染症などの可能性も考慮し、症状が続く際には医療機関への相談を検討すべきです。


【特に注意!】赤色(血が混ざった)粘液便


便に血液が混ざった赤色の粘液便は、「粘血便」とも呼ばれ、特に注意すべきサインです。これは、腸からの出血を示唆しており、一時的なものであっても見過ごすべきではありません。痔からの出血と自己判断してしまうケースも少なくありませんが、粘血便は、感染性腸炎、潰瘍性大腸炎やクローン病といった炎症性腸疾患(IBD)をはじめ、大腸憩室炎、さらには大腸ポリープや大腸がんなどのより重篤な疾患の兆候である可能性があるためです。痔からの出血と、大腸からの出血を自分で正確に区別することは非常に難しく、重い病気のサインを見逃してしまうリスクがあるため、専門医による精密な診断が不可欠となります。


以下に、粘液便の色から考えられる原因と注意点をまとめました。


粘液の色

考えられる主な原因

注意点/医療機関受診の目安

透明・白色

ストレス、消化不良、腸の軽微な炎症、過敏性腸症候群(IBS)など

一時的なら様子見。症状が続く、量が多い場合は受診を検討

ピンク色

便秘・硬便による肛門付近の粘膜の損傷など

症状が長引く、硬便が続く場合は受診を検討

緑色

酸化した胆汁

腹痛や下痢を伴う場合は感染症の可能性。症状が続く場合は受診を検討

赤色(粘血便)

感染性腸炎、炎症性腸疾患(IBD)、大腸ポリープ、大腸がんなど

速やかな医療機関の受診を強く推奨





粘液便から考えられる主な病気と専門医の視点


粘液便は、単なる一時的な体調不良だけでなく、多岐にわたる疾患の共通したサインとして現れることがあります。自己判断で原因を決めつけることは、より重篤な病気の発見を遅らせるリスクがあるため、専門医の鑑別診断が不可欠です。


  • 過敏性腸症候群(IBS)

    精神的なストレスや自律神経の乱れが主な原因で、腸の機能に異常をきたす機能性疾患です。腸に炎症や潰瘍といった器質的な異常は見られませんが、下痢や便秘、腹痛といった症状に加えて、粘液便が排出されることも特徴の一つです。


  • 感染性腸炎

    細菌(サルモネラ菌、O-157など)やウイルス、寄生虫が原因で腸に炎症が起きる病気です。粘液便や粘血便に加え、発熱、激しい腹痛、吐き気、嘔吐などを伴うことが多く、夏の細菌性、冬のウイルス性など季節によって流行する傾向があります。


  • 炎症性腸疾患(IBD)

    潰瘍性大腸炎やクローン病に代表される、国の指定難病です。免疫系の異常により、腸に慢性的な炎症や潰瘍が生じます。特に潰瘍性大腸炎では、炎症を起こして剥がれ落ちた大腸の粘膜が粘液状に見えるため、粘液便や粘血便はこれらの疾患の非常に重要な初期症状の一つとされています。


  • 大腸ポリープ・大腸がん

    初期の大腸がんやポリープは自覚症状に乏しいことが多いのですが、病変が大きくなると、便が通過する際に擦れて出血や粘液の分泌を引き起こすことがあります。粘液便や血便は、これらの病気が進行する前に発見できる貴重なサインとなり得ます。特に40歳以上で初めて便通異常や粘液便を経験された方は、無症状で進行しがちな大腸がんを早期に発見する絶好の機会と捉え、速やかに医療機関にご相談ください。



専門医に相談すべき危険なサイン


粘液便は様々な原因によって引き起こされるため、単独の症状だけで自己診断することは非常に危険です。特に、以下のような症状が複合して現れた場合は、速やかに医療機関を受診すべきです。


  • 症状の持続・反復

     粘液便が1日や2日で終わらず、何日も続く、または繰り返し現れる場合。


  • 血液の混入

    粘液に血液(赤色)が混じる、または黒い便(消化管上部からの出血の可能性)が出る場合。


  • 全身症状の伴い

    発熱、嘔吐、急激な体重減少、激しい腹痛(特に排便後も治まらない場合)を伴う場合。便通習慣の急激な変化: 便秘と下痢を繰り返す、便が細くなるなど、これまでにない便通の変化がある場合。


症状の組み合わせ

考えられる病気

受診のタイミング

 粘液便(一時的)

軽度の消化器系の不調

様子見(ただし症状が続くなら受診)

粘液便が続く/繰り返す

過敏性腸症候群、慢性的な炎症など

早めの受診を推奨

粘液便+激しい腹痛/発熱

感染性腸炎、大腸憩室炎など

速やかに受診

粘液便+血液の混入(粘血便)

炎症性腸疾患、大腸ポリープ、大腸がんなど

直ちに専門医へ相談

 粘液便+体重減少/便通習慣の変化

大腸がんなど

 速やかな受診を強く推奨



安心への第一歩:精密検査と当院の役割


粘液便の原因を正確に特定するためには、丁寧な問診や便・血液検査に加え、大腸内視鏡検査が不可欠です。しかし、内視鏡検査と聞くと、「苦しい」「辛い」といったイメージをお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。


くりた内科・内視鏡クリニックでは、そのような不安を抱える患者様に、安心して検査を受けていただくための環境を整えています。


  • 経験豊富な内視鏡専門医による検査

    すべての検査を、豊富な経験を持つ内視鏡専門医が担当します。高い技術力と専門知識に基づき、小さな病変も見逃さない、より正確な診断に努めます。


  • 最新鋭の極細スコープと高画質システム

    大学病院でも導入されているオリンパス社製の最新式内視鏡システムを導入しています。経口内視鏡(GIF-XZ1200)はハイビジョンを超える高画質で微細な病変の観察を可能にし、経鼻内視鏡(GIF-1200N)は先端径が5.4mmと非常に細く、患者様の負担を大幅に軽減します。


  • 鎮静剤の使用による「眠っている間に終わる」検査

    ご希望の患者様には鎮静剤を使用し、ウトウトと眠っている間に検査を終えることが可能です。これにより、検査中の不快感や不安を最小限に抑え、快適に検査を受けていただけます。


  • 二酸化炭素送気による検査後の不快感軽減

    検査時に使用する送気には、体内に速やかに吸収される二酸化炭素を使用しています。これにより、検査後にお腹が張るなどの不快感を軽減し、スムーズに日常生活に戻ることができます。


  • 胃・大腸カメラの同日検査

    お忙しい方のために、胃と大腸の内視鏡検査を1日で済ませることが可能です。準備や通院の手間を一度に済ませられるため、お仕事などで忙しい方にもおすすめです。


  • 日帰り大腸ポリープ切除

    検査中に発見された小さなポリープは、その場で切除することが可能です。これにより、早期の治療へとスムーズにつなげることができます。




粘液便の原因別治療法とまとめ

粘液便の治療は、その根本原因によって全く異なります。軽度なものであれば、食生活の見直し(食物繊維や発酵食品の積極的な摂取)や、適度な運動、質の良い睡眠、ストレス管理といった生活習慣の改善が有効です。一方で、感染症には抗生物質、IBSには腸の動きを整える薬、IBDには免疫を調整する専門的な薬など、疾患に合わせた薬物療法が必要となります。また、大腸がんや腸閉塞など、場合によっては外科的治療が選択されることもあります。


粘液便は「大丈夫だろう」と自己判断しがちな症状ですが、その背景にはさまざまな可能性が隠されています。不安を抱えたままにせず、ぜひ一度、私たち専門医にご相談ください。くりた内科・内視鏡クリニックでは、患者様一人ひとりの症状に真摯に向き合い、丁寧な問診と最新の検査によって、根本原因を特定し、最適な治療法をご提案します。あなたの安心が最優先です。些細なことでもお気軽にご相談ください。


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