おなかの張り・ガスだまりについて
- くりた内科・内視鏡クリニック
- 7月10日
- 読了時間: 22分

はじめに:おなかの張り・ガスだまりはなぜ起こる?
おなかの張りやガスだまりは、多くの方が一度は経験する身近な症状です。食後に一時的に感じる軽い不快感から、慢性的に続き、日常生活に大きな支障をきたす深刻な状態まで、その程度は様々です。これらの症状は、単なる消化不良や食べ過ぎといった日常的な原因から生じることもあれば、時には見過ごしてはならない重大な病気のサインである可能性も秘めています。
多くの場合、「よくあること」として軽視されがちなおなかの張りですが、その裏には、早期発見が極めて重要ながんや、緊急を要する疾患が隠れている可能性も存在します。この認識のギャップが、患者さんが適切な医療機関への受診をためらってしまう一因となることがあります。くりた内科・内視鏡クリニックでは、この重要な情報の隔たりを埋めるべく、本コラムを通じて、おなかの張りやガスだまりがなぜ起こるのか、ご自身でできる対処法、そしてどのような時に専門医の診察を受けるべきかについて、エビデンスに基づいた分かりやすい解説をお届けします。皆様がご自身の体の声に耳を傾け、適切なタイミングで専門的なサポートを受けられるよう、お手伝いできれば幸いです。
おなかの張り・ガスだまりの主な原因
おなかの張りやガスだまりは、体内でガスが過剰に発生したり、発生したガスがスムーズに排出されずに腸内に滞留したりすることで生じます。その原因は多岐にわたり、日々の習慣に起因するものと、特定の病気が背景にあるものに大別されます。
日常生活に潜む原因
私たちの日常生活には、意識しないうちに、おなかの張りやガスだまりを引き起こす習慣が潜んでいます。
食習慣・生活習慣の乱れ
早食い・過度な飲食
食事中に無意識に大量の空気を飲み込んでしまう現象は「呑気症(どんきしょう)」と呼ばれ、おなかのガスだまりの主要な原因の一つです。体内のガスの約7割は、このように飲み込まれた空気によるものとも言われています 。特に早食いは、食事と一緒に空気を飲み込みやすいため注意が必要です 。また、一度に大量に食べたり飲んだりする暴飲暴食は、消化器に大きな負担をかけ、お腹が張る直接的な原因となります 。炭酸飲料やビールなども、含まれる炭酸ガスが腸内で増えるため、ガスだまりを招きやすくなります 。ガムや飴を頻繁に口にすることも、空気を飲み込む機会を増やします 。
不規則な食事
暴飲暴食に加え、不規則な食事は胃腸の働きを乱し、腸内での異常発酵を促してガスの発生を増加させたり、消化管の機能低下によりガスの排出能力を低下させたりします 。
長時間同じ姿勢
デスクワークなどで長時間同じ体勢を取り続けることは、腸を物理的に圧迫し、腸の動きを鈍らせる原因となります。これにより、腸内にガスが滞留しやすくなります。
便意・おならの我慢
便意やおならを我慢し続けることは、腸に不必要な負担をかけ、腸の動きを悪化させます。結果として、ガスがスムーズに排出されにくくなり、おなかの張りにつながります 。
食事内容とガス産生
食物繊維の摂取
食物繊維は便通を促し、腸内環境を整える上で非常に重要ですが、その摂取方法には注意が必要です。食物繊維は腸内細菌によって分解される際にガスを発生させることがあります。特に不溶性食物繊維の過剰な摂取は、かえって腸内のガス量を増やし、おなかの張りを悪化させる可能性があります 。
特定の食品
炭水化物、ソルビトールなどの糖アルコール、フルクトースなどの糖質を多く含む食品は、消化の過程でガスが発生しやすいとされています。具体的には、豆類、キャベツ、ニンニク、玉ねぎ、牛乳などがこれに該当し、これらの摂取量が多いとガスだまりを感じやすくなることがあります 。
ストレスと自律神経の乱れ
消化管は脳と密接に連携しており、「腸脳相関」として知られるこの関係は、ストレスが直接的に消化管の働きに影響を与えることを意味します 。強いストレスは、胃腸の運動機能を低下させたり、無意識に空気を飲み込む呑気症を引き起こしたりする原因となります 。さらに、ストレスホルモンであるコルチゾールの分泌が増加すると、腸内の悪玉菌が増殖しやすくなり、結果としてガスの生成が促進される可能性も指摘されています 。
ホルモンバランスの変化
特に女性の場合、生理前の時期にはプロゲステロンやエストロゲンといったホルモンバランスが変化します。このホルモン変動が腸の蠕動運動(内容物を先に送る動き)を弱めることがあり、ガスが腸内に溜まりやすくなる原因となることがあります 。
これらの日常生活に潜む原因を深く掘り下げると、単なる個別の習慣の問題ではなく、生活習慣の乱れが腸内環境のバランスを崩し、結果としてガスの過剰生成や排出障害を引き起こすという相互作用が見えてきます。例えば、不規則な食生活やストレスは、腸内の善玉菌と悪玉菌のバランスを悪玉菌優位に傾け、これがガス産生を促進します。このように、生活習慣と腸内環境が密接に影響し合っていることを理解することで、患者さんは単に「これを避ける」だけでなく、「なぜ避けるべきか」という背景にある体のメカニズムを納得し、より積極的に予防策に取り組むことができるでしょう。

もしかして病気?考えられる疾患
おなかの張りやガスだまりは、時に以下のような消化器系の病気やその他の疾患が原因で起こっていることがあります。これらの症状が続く場合や、他の症状を伴う場合は、自己判断せずに医療機関を受診し、正確な診断を受けることが重要です。
便秘
便秘は、排便の量や頻度が少なく、便が硬い、排便が難しい状態を指します 。腸の動きが悪くなることで、便だけでなくガスも腸内に溜まりやすくなり、おなかの張りを引き起こします 。加齢、食生活の乱れ、運動不足、水分不足などが主な原因として挙げられます 。
過敏性腸症候群(IBS)
過敏性腸症候群は、大腸に炎症や潰瘍などの器質的な異常が見られないにも関わらず、腹痛とともに下痢や便秘、またはこれらを繰り返す便通異常、そしておなかの張りなどの症状が長く続く慢性的な病気です 。ストレスが主な原因の一つと考えられており、特に便秘型やガス型では腹部膨満感が強く現れる傾向があります 。
機能性ディスペプシア(FD)
機能性ディスペプシアは、胃カメラ検査などで胃や十二指腸に異常が見つからないにも関わらず、胃もたれ、みぞおちの痛み、吐き気、早期飽満感(少し食べるとすぐにお腹がいっぱいになる)、そして腹部膨満感などの症状が続く状態を指します 。胃や十二指腸の運動機能の阻害や知覚過敏、ストレス、不規則な食習慣などが原因とされています 。
呑気症(空気嚥下症)
呑気症は、無意識のうちに大量の空気を飲み込んでしまい、それが食道や胃、腸に溜まることで、げっぷやおなかの張りなどを頻繁に引き起こす病気です 。早食いや緊張、ストレスが主な原因とされており、日本人の約8人に1人が患っているとも報告されています 。
SIBO(小腸内細菌異常増殖症)
SIBOは、通常は細菌が少ない小腸で細菌が異常に増殖してしまう病気です 。増殖した細菌が食物を発酵させることで大量のガスを発生させ、大腸のように伸び縮みしにくい小腸では、強いおなかの張りや苦しさを感じやすいのが特徴です 。ゲップやおならが多い、下痢や便秘を繰り返す、消化吸収力の低下による栄養状態の悪化などが症状として見られます 。
逆流性食道炎
胃酸が食道に逆流することで、胸やけや胃もたれ、げっぷ、そして腹部膨満感などの症状が現れる病気です 。
急性胃腸炎
ウイルスや細菌感染、薬剤などが原因で胃腸の粘膜に炎症が起きる病気です。主な症状は下痢、腹痛、吐き気・嘔吐ですが、病状が重いケースではおなかの張りも起こることがあります 。
腸閉塞(イレウス)
腸閉塞は、腸管が何らかの原因(癒着、腫瘍、捻れなど)で詰まり、便やガスがそれ以上先に進まなくなる緊急性の高い状態です 。強い腹痛、吐き気・嘔吐、便秘、そして著しいおなかの張りが主な症状で、場合によっては緊急手術が必要になることもあります 。
がん(大腸がん、胃がん、膵臓がん、卵巣がんなど)
胃がんや大腸がんなどの消化器系のがんが進行すると、腫瘍が腸管を狭くしたり、胃腸の動きを悪くしたりして、おなかの張りや便秘が悪化することがあります 。特に早期の大腸がんは自覚症状がほとんどないため、おなかの張りが続く場合は注意が必要です 。また、卵巣腫瘍や子宮筋腫などの婦人科系腫瘍でも、お腹が圧迫されて張りの原因となることがあります 。
その他
炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎、クローン病など)
自己免疫が関与して腸に炎症を起こす病気で、腹痛、下痢、血便に加え、腹部膨満感などが現れることがあります 。
腹水
腹腔内に水分が貯留する状態で、水分量が多いと腹部が膨満する傾向があります。腹膜炎や肝硬変、腎不全、心不全などが原因となります 。
薬剤の副作用
血糖値を下げる薬や向精神薬など、一部の薬剤の副作用として腹部膨満感が現れることがあります 。
上腸間膜動脈症候群
急激なダイエットなどにより、十二指腸と動脈の間にある脂肪が減少し、十二指腸が圧迫されて腹痛、おなかの張り、胃もたれなどをきたすことがあります 。
「おなかの張り・ガスだまり」という一つの症状が、便秘や呑気症といった比較的軽度なものから、腸閉塞やがんといった緊急性の高い、あるいは重篤な疾患まで、非常に多くの病気で共通して見られるという事実は、医療において非常に重要な点です。この症状の非特異性は、患者さんが自己判断で原因を特定することの危険性を示唆しています。例えば、単なる便秘だと思って放置していたら、実際には大腸がんが進行していたというケースも考えられます。このため、症状の裏に隠れた多様な可能性を理解し、専門医による鑑別診断を受けることが極めて重要となります。くりた内科・内視鏡クリニックでは、精密な検査を通じてこれらの病気を正確に診断し、皆様を適切な治療へと導くことが可能です。
ご自身でできる対処法と予防策
おなかの張りやガスだまりの多くは、日頃の生活習慣や食生活を見直すことで改善・予防が可能です。ご自身の体調と向き合い、できることから取り入れてみましょう。
食生活の見直し
ゆっくりとよく噛んで食べる
食事を急いで食べると、必要以上に空気を飲み込みやすくなります。
一口ずつゆっくりと、よく噛んで食べることを意識することで、食事と一緒に飲み込む空気の量を減らし、おなかの張りを予防できます 。
腹八分目を意識する
暴飲暴食は胃腸に大きな負担をかけ、ガスだまりの原因となります。一度に大量に食べるのではなく、腹八分目を心がけ、消化に良い食事を規則正しい時間に摂ることが大切です 。
ガスを発生しやすい食品を避ける・調整する
豆類、キャベツ、ブロッコリー、ニンニク、玉ねぎ、牛乳、炭酸飲料などは、消化の過程でガスを発生させやすいことで知られています。これらの食品を摂取する際は量を調整するか、症状が強い時期は一時的に避けてみることも有効です 。
適切な食物繊維の摂取
便秘の予防には食物繊維が効果的ですが、その摂取量と種類には注意が必要です。食物繊維には、腸の動きを促す「不溶性食物繊維」(切り干し大根、モロヘイヤ、きくらげ、大豆など)と、便を柔らかくして排出しやすくする「水溶性食物繊維」(海藻類、ゴボウなど)があります 。この2種類の食物繊維をバランス良く摂ることが重要ですが、食物繊維の過剰摂取は、腸内細菌による分解時にかえってガスを増やしてしまう可能性もあるため、ご自身の体調に合わせて調整しましょう 。特に過敏性腸症候群の場合は、水溶性食物繊維(キノコ類、海藻類、イモ類、オクラなど)を積極的に摂り、不溶性食物繊維(ゴボウ、豆類、ナッツ類など)は控えめにすることが推奨されています 。
プロバイオティクスを取り入れる
ヨーグルト、乳酸菌飲料、納豆、キムチ、味噌、ぬか漬けなどの発酵食品には、腸内環境を整える「プロバイオティクス」が含まれており、おなかの張りの予防効果が期待できます 。しかし、SIBO(小腸内細菌異常増殖症)と診断されている場合は、発酵食品が症状を悪化させる可能性があるため、避けるべきとされています 。この違いは、専門的な診断の重要性を示しています。
低FODMAP食の検討
過敏性腸症候群やSIBOの症状緩和に有効とされる食事療法として、「低FODMAP食」があります。FODMAPとは、腸内で発酵されやすい特定の糖質の総称で、これらを避けることでガスの発生を抑える効果が期待できます 。すべての高FODMAP食を完全に避けるのは現実的に難しいため、ご自身の症状と関連する食品を特定し、無理のない範囲で試すことが推奨されます 。

生活習慣の改善
規則正しい生活と排便習慣
毎日同じ時間帯に食事を摂り、早起きして朝食を摂ることは、日中の大腸の動きを活発にする助けとなります 。また、毎日決まった時間帯(特に朝食後など)にトイレに行く習慣をつけ、便意を感じたら我慢しないことが、便秘予防とガス排出の促進に繋がります 。
適度な運動
ウォーキングや軽いジョギングなどの適度な運動は、腸に直接的な刺激を与え、蠕動運動を活発にし、排便をスムーズにします 。さらに、運動はストレス解消にも繋がり、自律神経のバランスを整える効果も期待できます 。
ストレスの軽減
ストレスは消化管の働きを低下させ、おなかの張りを引き起こす大きな要因です。趣味やスポーツ、リラックスできる時間を持つ、十分な休養と睡眠をとるなど、ご自身に合った方法でストレスを適切に解消しましょう 。ヨガや深呼吸も、心身のリラックスと腸の動きの促進に効果的です 。
温かい飲み物
温かい飲み物は胃腸の血行を促進し、消化を助け、胃腸の動きをスムーズにする効果が期待できます 。
お腹のガス抜きを助けるセルフケア
ツボ押し
おへそ周りにある「天枢(てんすう)」や「腹結(ふっけつ)」、ウエストラインラインより少し下の「大腸兪(だいちょうゆ)」などのツボを、痛気持ち良いと感じる程度の強さで押すことで、腸の働きを活発にし、ガスの排出を促す効果が期待できます 。
ストレッチ・マッサージ
ひざを抱えるポーズや足の上げ下げストレッチ、腸ひねりストレッチなど、お腹に圧力をかけたり、腸を刺激したりする運動は、便通改善やガスの排出に役立ちます 。お腹を「の」の字に優しくマッサージするのも効果的です。ぬるめのお風呂で行うと、よりリラックスして効果が高まります 。
お腹を温める
腹部を温めることは、血行を促進し、腸の調子を整える効果が期待できます。
市販薬の活用について
食べ過ぎや便秘などによる一時的なガスだまりには、市販の整腸剤(酪酸菌、乳酸菌、ビフィズス菌など、腸内細菌のバランスを整えるもの)や消泡剤(ジメチコンなど、消化管内のガスを減らすもの)が症状を和らげるのに役立つことがあります 。しかし、これらの市販薬は対症療法であり、根本的な原因を解決するものではありません。長期間の使用や過剰摂取は避け、症状が続く場合や悪化する場合は、必ず医師に相談しましょう 。
これらのセルフケアは、患者さん自身が症状の緩和に向けて積極的に取り組むための有効な手段です。しかし、セルフケアには限界があることを理解することが重要です。例えば、食物繊維の摂取は一般的に腸に良いとされますが、SIBOの患者さんにとってはかえって症状を悪化させる可能性があります。また、市販薬で一時的に症状が和らいでも、その裏に重大な病気が隠れている可能性も否定できません。したがって、セルフケアを試しても改善が見られない場合や、症状が長期間続く、あるいは悪化する場合には、根本原因を特定し、適切な治療を受けるために専門的な診断が必要です。くりた内科・内視鏡クリニックでは、皆様の症状の根本原因を突き止め、最適な治療へと導くお手伝いをいたします。
こんな時は病院へ!受診の目安
おなかの張りやガスだまりはよくある症状ですが、以下のような場合は放置せず、速やかに医療機関を受診することが非常に重要です。自己判断は避け、専門医にご相談ください。
緊急性の高い症状
強い痛みや激しい腹痛を伴う場合
特に痛みが徐々に強くなる場合や、みぞおち付近の痛みを伴う場合は、胆嚢炎、虫垂炎、膵炎、腸閉塞、腹膜炎など、急を要する病気の可能性があります。これらの病気は、放置すると重篤な合併症を引き起こすことがあります。
出血を伴う場合(血便など)
便に血が混じる、または黒いタール状の便が出る場合は、大腸がんや炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎、クローン病など)などの可能性があります。直ちに医療機関を受診してください。
嘔吐や発熱を伴う場合
おなかの張りに加えて嘔吐や発熱がある場合は、腸閉塞や急性胃腸炎、腹膜炎など、緊急性の高い病気が考えられます。
おならや便がまったく出ない場合
数日間おならや便が完全に止まってしまう場合は、腸閉塞など、腸管の通過障害が起きている可能性が非常に高いです。これは緊急性の高い状態であり、速やかな受診が必要です。
食べ過ぎていないのに強い膨満感がある、または寝ているときにおなかの張りで目が覚める場合
食事量に関わらず強い膨満感が続く、特に夜間、睡眠中に症状で目が覚めるような場合は、重大な病気が隠れている可能性を示唆します。
息苦しさを伴う場合
おなかの張りが原因で呼吸が苦しく感じる場合は、緊急性が高い症状です。
慢性的な症状や気になる変化
症状が長引く、または悪化する場合
軽度な症状であっても、数日以上続く場合や、徐々に悪化する場合は、胃炎、逆流性食道炎、機能性ディスペプシア、過敏性腸症候群などの慢性疾患の可能性があります。これらの病気は生活の質を著しく低下させることがあります。
毎朝張りが強くつらい場合
特に朝起きた時からおなかの張りが強く、日常生活に支障をきたす場合は、過敏性腸症候群などが考えられます。
明らかな下腹部の膨隆がある場合
お腹全体ではなく、特に下腹部に明らかな膨らみが見られる場合は、婦人科系の腫瘍(卵巣腫瘍、子宮筋腫など)の可能性も否定できません。
体重減少や疲労感を伴う場合
おなかの張りに加えて、原因不明の体重減少や慢性的な疲労感が続く場合は、SIBOによる栄養不良や、がんなどのより広範な問題を示唆することがあります。
市販薬で改善が見られない場合
自己判断で市販薬を使い続けるのではなく、症状が続く場合は専門医の診察を受け、適切な診断と治療方針を検討しましょう。
以下の表は、病院受診の目安となる症状をまとめたものです。ご自身の症状と照らし合わせて、受診の判断にご活用ください。
病院受診の目安:こんな症状は要注意!
症状の種類 | 具体的な状態 | 疑われる主な病気(例) | 受診の緊急性 |
強い痛み・激しい腹痛 | おなかの張りに加えて、強い痛みがある。痛みが徐々に強くなる。みぞおちが痛い。 | 腸閉塞、胆嚢炎、虫垂炎、膵炎、腹膜炎、がんなど | 緊急性の高い症状 |
出血 | 血便がある、または黒いタール状の便が出る。 | 大腸がん、炎症性腸疾患など | 緊急性の高い症状 |
嘔吐・発熱 | おなかの張りに加えて、吐き気や嘔吐、発熱がある。 | 腸閉塞、急性胃腸炎、腹膜炎など | 緊急性の高い症状 |
排便・排ガス停止 | おならや便が何日もまったく出ない。 | 腸閉塞など | 緊急性の高い症状 |
強い膨満感(食事量不問) | 食べ過ぎていないのに強い膨満感がある。寝ているときにおなかの張りで目が覚める。 | 重大な病気(がん、腹水など)の可能性 | 緊急性の高い症状 |
息苦しさ | おなかの張りと共に息苦しさを感じる。 | 重大な病気の可能性 | 緊急性の高い症状 |
症状の慢性化・悪化 | 軽度でも症状が数日以上続く、または徐々に悪化する。毎朝張りが強くつらい。 | 機能性ディスペプシア、過敏性腸症候群、胃炎、逆流性食道炎など | 早期受診が推奨される |
下腹部の膨隆 | 明らかに下腹部が膨らんでいる。 | 婦人科系腫瘍(卵巣腫瘍、子宮筋腫など) | 早期受診が推奨される |
体重減少・疲労感 | 原因不明の体重減少や慢性的な疲労感を伴う。 | SIBO、栄養不良、がんなど | 早期受診が推奨される |
市販薬の効果なし | 市販薬を試しても症状が改善しない、または悪化する。 | 根本的な原因の特定が必要 | 早期受診が推奨される |
この表は、患者さんが自身の症状を客観的に評価し、医療機関への受診を判断するための重要な指針となります。特に、緊急性の高い症状は、迅速な対応が求められる生命に関わる病気のサインである可能性があるため、ためらわずに医療機関を受診することが最優先されます。くりた内科・内視鏡クリニックでは、皆様の不安を軽減し、適切な医療行動を促すために、いつでもご相談をお待ちしております。
くりた内科・内視鏡クリニックでの診断と治療
くりた内科・内視鏡クリニックでは、おなかの張りやガスだまりでお悩みの患者さんに対し、経験豊富な医師が丁寧な診察と精密な検査を通じて、症状の根本原因を特定し、一人ひとりに最適な治療を提供しています。

正確な診断のために
おなかの張りやガスだまりの原因は多岐にわたるため、正確な診断が治療の第一歩となります。当クリニックでは、以下の検査を組み合わせて原因を探ります。
丁寧な問診と触診
症状が現れるタイミング、きっかけ、他の随伴症状の有無、服用中の薬、生活習慣などを詳しくお伺いします 。また、お腹を直接触診し、ガスの貯留の程度や痛みの部位などを確認します。この初期段階での情報収集は、診断の方向性を定める上で非常に重要です。
画像検査
腹部レントゲン検査
お腹の中にどれくらいガスや便が溜まっているか、腸管が拡張していないかなどを確認できます。特に、腸閉塞の有無や、ガスが小腸に溜まっているか大腸に溜まっているかを判断するのに役立ちます 。
腹部超音波検査・CT検査・MRI検査
これらの検査は、腹水や、膵臓、肝臓、腎臓などの臓器の異常、さらには腹腔内の腫瘍(がんや婦人科系腫瘍など)の有無を確認するために行われます 。これにより、内視鏡では評価できない領域の病変を特定することが可能です。
内視鏡検査(胃カメラ・大腸カメラ)
おなかの張りの原因が、胃や大腸などの消化管そのものにある場合、内視鏡検査は最も精度の高い診断方法となります 。
胃カメラ検査
機能性ディスペプシア、逆流性食道炎、胃炎、胃潰瘍、胃がんなどの上部消化管の病変がないかを確認します 。症状があるにもかかわらず、検査で異常が見られない場合に機能性ディスペプシアと診断されます 。
大腸カメラ検査
便秘や下痢、腹痛を伴うおなかの張りがある場合に、大腸がん、大腸ポリープ、炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎、クローン病など)、過敏性腸症候群などの大腸の病変がないかを直接観察します 。特に大腸がんは早期発見が重要であり、大腸カメラ検査はそのための最も有効な手段です 。
当クリニックでは、患者さんの負担を軽減するため、鎮静剤を使用した苦痛の少ない内視鏡検査を積極的に行っています。ウトウトと眠っている間に検査が終了するため、安心して検査を受けていただけます 。
特殊検査
呼気検査・尿有機酸検査
SIBO(小腸内細菌異常増殖症)が疑われる場合には、呼気中の水素ガスやメタンガスを測定する呼気検査や、尿中の特定の有機酸を測定する尿有機酸検査が行われることがあります 。これらの検査は、小腸での細菌の異常増殖の有無を評価するのに役立ちます。
診断プロセスは、まず問診や触診、比較的侵襲の少ない画像検査から始め、必要に応じて内視鏡検査や特殊検査へと進むという段階的なアプローチをとります。これは、症状の非特異性に対応し、緊急性の高い器質的疾患(がんや腸閉塞など)を確実に除外した上で、機能性疾患(IBSやFDなど)の診断に至るための重要な手順です。くりた内科・内視鏡クリニックでは、この体系的な診断プロセスを通じて、患者さん一人ひとりの症状の真の原因を突き止めます。
一人ひとりに合わせた治療
正確な診断に基づき、くりた内科・内視鏡クリニックでは、患者さんの症状や原因に合わせたテーラーメイドの治療計画を立案します。
生活習慣・食事指導
診断された原因に応じて、個別の生活習慣や食事に関する具体的なアドバイスを行います。例えば、過敏性腸症候群やSIBOの患者さんには、ガスを発生しやすい特定の糖質を制限する「低FODMAP食」の具体的な指導を行うことがあります。また、便秘の改善には食物繊維と水分摂取のバランス、適度な運動、規則正しい排便習慣の確立が重要であることなど、具体的なアドバイスを提供します。ストレスが原因の場合は、ストレス軽減のための具体的な方法も一緒に考えます。
薬物療法
症状の原因や程度に応じて、様々な薬剤を適切に処方します。
整腸剤
腸内細菌のバランスを整え、腸の動きや張りの改善に役立ちます。
消化管運動改善薬
腸の蠕動運動を促進し、ガスや便の排出をスムーズにする薬です。
漢方薬
西洋薬とは異なる作用機序を持つ漢方薬は、症状の改善に相乗効果が期待できる場合があり、患者さんの体質や症状に合わせて処方されることがあります。
消泡剤
消化管内のガスに直接作用し、ガスの排出や吸収を促すことで、おなかの張りを軽減します。
抗菌薬
SIBOと診断された場合には、小腸内で異常増殖した細菌を減らすために、非吸収性の抗生物質などが処方されることがあります。
消化酵素
消化吸収を助けることで、症状が改善する場合があります。
定期的なフォローアップ
おなかの張りやガスだまりは慢性的な経過をたどることが多く、特にIBSやSIBOのような機能性疾患では、症状の改善後も予防的なケアが重要です 。くりた内科・内視鏡クリニックでは、治療効果の確認と症状の再発予防のため、定期的なフォローアップを重視し、患者さんの長期的な健康をサポートします。
くりた内科・内視鏡クリニックでの治療は、単に症状を抑えるだけでなく、その根本原因を特定し、薬物療法と生活習慣の改善を組み合わせる多角的なアプローチを特徴としています。特に、精密な内視鏡検査によって器質的な病変を確実に除外できることは、機能性疾患の診断と、それに基づいた適切な治療計画の立案に大きく貢献します。患者さんの状態やライフスタイルに合わせたきめ細やかな治療を行うことで、症状の改善だけでなく、生活の質の向上を目指します。
さいごに
おなかの張りやガスだまりは、多くの方が経験する身近な症状ですが、その裏には様々な原因が隠れている可能性があります。一時的な不快感で終わることもあれば、放置すると重篤な病気の進行を見逃してしまうこともあります。
ご自身でできる対処法や予防策を試すことは大切ですが、症状が長引く場合、悪化する場合、あるいは強い痛みや発熱、出血などの気になる症状を伴う場合は、決して自己判断せず、速やかに医療機関を受診することが重要です。
くりた内科・内視鏡クリニックでは、おなかの専門医として、患者さんの声に耳を傾け、最新の医療機器を用いた精密な検査と、一人ひとりに合わせた丁寧な治療を提供しています。おなかの不調でお困りの際は、どうぞお気軽にご相談ください。皆様の健やかな毎日をサポートできるよう、スタッフ一同尽力いたします。