大腸がん予防の秘訣 〜食事と運動で健やかな腸を育む〜
- くりた内科・内視鏡クリニック

- 7月7日
- 読了時間: 10分
更新日:8月6日

はじめに:大腸がんは「予防できる」病気です
近年、日本で増え続けている大腸がん。多くの方が不安を感じているかもしれませんが、実は大腸がんは、日々の生活習慣を少し見直すことで、そのリスクを大きく減らせる可能性のある病気です。
くりた内科・内視鏡クリニックでは、患者様一人ひとりの健康を心から願っています。このコラムでは、科学的な根拠に基づいた大腸がんの予防法、特に「食事」と「運動」に焦点を当てて、皆様に分かりやすくお伝えします。この情報が、皆様の健康な未来への第一歩となることを願っています。
大腸がん予防の基本:健康的な生活習慣が鍵
がんの発生には、喫、過度な飲酒、運動不足、肥満、野菜や果物の不足など、様々な生活習慣が深く関わっていることが分かっています。国立がん研究センターが提唱する「日本人のためのがん予防法(5+1)」では、「禁煙」「節酒」「食生活」「身体活動」「適正体重の維持」の5つの生活習慣に「感染症対策」を加えた、包括的な予防策が示されています。
大腸がんの予防においては、特に「高カロリーの摂りすぎや肥満」「過剰なアルコール摂取」「喫煙」がリスクを高める要因とされています。一方で、「適度な運動」「食物繊維、果物、野菜の積極的な摂取」は大腸がんの発生を抑える効果が期待されています。これらの習慣はそれぞれが独立しているだけでなく、互いに影響し合っています。例えば、適正体重の維持は、日々の食生活と運動習慣によって大きく左右されます。このように、特定の「悪い習慣」を避けるだけでなく、複数の健康的な習慣を組み合わせることで、より高い予防効果が期待できるのです。大腸がん予防は、単一の対策ではなく、健康的なライフスタイル全体を築くことで達成される、とくりた内科・内視鏡クリニックは考えています。
食事で大腸がんを予防する:腸内環境を味方につける
大腸がんのリスクを高める食習慣
日々の食事が大腸がんのリスクに大きく影響することは、多くの研究で示されています。特に注意したいのは、以下のような食習慣です。
高脂肪・低食物繊維の食事:加工食品やジャンクフードに多く見られます。
赤身肉や加工肉の過剰摂取:ベーコン、ソーセージ、ハムなどの加工肉や、牛・豚・羊などの赤肉の摂りすぎは、大腸がんのリスクを高める可能性が指摘されています。
過度なアルコール摂取:飲酒はがんのリスクを確実に上げると言われています。
不規則な食生活:食事のリズムが乱れることも、リスク要因となり得ます。
これらの食品は控えめにし、バランスの取れた食事を心がけることが、大腸がん予防の第一歩です。
積極的に摂りたい食品とその理由:腸内細菌との深い関係
大腸がん予防には、腸内環境を整える食品を積極的に取り入れることが非常に重要です。
食物繊維
食物繊維は、腸の働きを活発にし、便通をスムーズにすることで、大腸がんのリスクを減らす効果が期待できます。食物繊維は、腸内で発がん性物質を吸着し、体外への排出を促す働きも持っています。
具体例:キャベツ、ブロッコリー、ニンジン、ほうれん草などの野菜類、リンゴ、バナナ、柑橘類などの果物類、玄米、オートミール、全粒パンなどの全粒穀物、納豆、ひよこ豆、レンズ豆などの豆類が挙げられます。
発酵食品
発酵食品には、腸内の善玉菌を増やし、腸内フローラ(腸内細菌のバランス)を良好に保つ効果があります。
具体例:ヨーグルト、味噌、納豆、キムチなどが代表的です。
腸内細菌との関連メカニズム
私たちの腸には、数多くの細菌が生息しており、そのバランスが健康に大きく影響します。健康的な食事は、この腸内細菌の構成を良い方向に変化させ、大腸がんの予防につながる可能性が示されています。例えば、大腸がんとの関連が指摘されているFusobacterium nucleatum(F. nucleatum)という細菌の増殖を抑える効果が報告されています。健康的な食事を続けている人は、この細菌が多く存在するタイプの大腸がんの発症リスクが低いことが分かっています。食物繊維は、腸内細菌にとって大切な「エサ」となり、腸内細菌が食物繊維を分解する過程で「短鎖脂肪酸」という物質が作られます。この短鎖脂肪酸は、腸の細胞のエネルギー源となるだけでなく、炎症を抑えたり、免疫の働きを調整したりすることで、大腸がんのリスク低減に貢献すると考えられています。このように、食事による大腸がん予防は、単に特定の栄養素を摂るだけでなく、腸内細菌のバランスを整えることを通じて、私たちの体を守る複雑なメカニズムが働いているのです。
大腸がん予防に役立つ食品と避けるべき食品リスト
カテゴリ | 積極的に摂りたい食品 | 控えめにすべき食品 |
食物繊維 | 野菜類(キャベツ、ブロッコリー、ニンジン、ほうれん草など) 果物類(リンゴ、バナナ、柑橘類など) 全粒穀物(玄米、オートミール、全粒パンなど) 豆類(納豆、ひよこ豆、レンズ豆など) | 高脂肪・低食物繊維の加工食品やジャンクフード |
腸内環境 | 発酵食品(ヨーグルト、味噌、納豆、キムチなど) | |
肉類 | 魚介類(特に青魚) | 赤身肉の過剰摂取 |
その他 | バランスの取れた食事全般 | 揚げ物や高脂肪食品、過度なアルコール、人工甘味料を多く含む飲料や食品、不規則な食生活 |

運動で大腸がんを予防する:体を動かす健康効果
運動がもたらす予防効果とメカニズム
体を活発に動かす習慣がある人ほど、がん全体の発生リスクが低いことが報告されています。特に大腸がんに関しては、運動不足がリスクを高めることが示されており、定期的な運動が腸の健康を保ち、がん予防に効果的であると考えられています。ウォーキングやジョギングといった適度な有酸素運動は、大腸がんのリスクを約24%低減するという研究結果もあります。
運動が大腸がん予防に役立つメカニズムは多岐にわたります。例えば、運動は肥満の予防に繋がり、体内の炎症を抑えたり、がん細胞の成長を促す可能性のあるホルモンや成長因子のレベルを調整したり、免疫機能を高めたりする効果が期待されています。つまり、運動は単に体重を管理するだけでなく、がんの発生を直接的に阻害する、全身的な良い影響をもたらす強力なツールなのです。
推奨される運動量と具体的な実践例
日本人を対象とした研究でも、身体活動が大腸がんのリスクをほぼ確実に下げると結論付けられています。国際的な研究では、週に7.5~15メッツ・時(※)の運動・身体活動を行うことで、大腸がんを含む7種類のがんの発症リスクが有意に低下することが明らかになっています。具体的には、男性の大腸がんリスクは、週7.5メッツ・時の運動で8%、週15メッツ・時の運動で14%低下したと報告されています。
(※)メッツ・時とは、運動の強度と時間を組み合わせた単位で、安静時を1メッツとして、その何倍のエネルギーを消費するかを示します。例えば、時速5km程度の通常のウォーキングは3メッツ程度です。
具体的な運動の目安として、65歳までの方は、毎日60分のウォーキングに加え、息がはずみ、汗をかく程度の運動を週に60分行うことが推奨されています。65歳以上の方は、無理のない範囲で歩行レベルの運動を毎日40分ほど行うことが勧められています。例えば、時速5km程度のウォーキングを毎日30分行うことで、推奨される運動量を満たすことができます。中強度の運動の例としては、時速6.4kmの活発なウォーキング、窓掃除や掃除などの家事、自転車こぎ、テニスやバドミントンなどがあります。
ただし、激しい運動を習慣化すると、体内の活性酸素が増え、DNAを傷つけてがん化を促す可能性も指摘されています。そのため、大腸がんの予防においては、無理なく継続できる中程度の身体活動を習慣とすることが重要です。継続こそが、予防効果を最大限に引き出す鍵となります。
大腸がん予防のための運動目安
カテゴリ | 推奨される運動量と実践例 | 運動のポイント |
推奨運動量 | 週に150分以上の中強度の有酸素運動(例:時速5km程度のウォーキング) | 無理なく始める |
実践例 | 65歳まで: 毎日60分のウォーキング + 週に60分の息がはずむ程度の運動 | 楽しく続ける |
65歳以上: 毎日40分程度の無理のない歩行レベルの運動 | 医師に相談する(特に持病がある場合や、がん治療中の方) | |
中強度運動例 | 活発なウォーキング、自転車こぎ、テニス、バドミントン、窓掃除や掃除などの家事 |
予防効果をさらに高めるために
くりた内科・内視鏡クリニックでの定期検診の重要性
生活習慣改善と検診の相補的な役割
生活習慣の改善は大腸がんのリスクを減らす上で非常に効果的ですが、残念ながら「がんを完全に予防すること」は現在のところできません。だからこそ、早期発見・早期治療が極めて重要になります。生活習慣の改善は、がんの発生リスクそのものを低減する「一次予防」の役割を担います。一方、大腸内視鏡検査などの定期的な検診は、がんになる前の段階であるポリープを発見して切除することで、がん化を未然に防ぐ「二次予防」としての側面や、早期のがんを見つけて治療へと繋げる大切な役割を果たします。
くりた内科・内視鏡クリニックでは、これらの予防策を両輪で進めることが、大腸がんから皆様の健康を守る最も確実な方法だと考えています。
くりた内科・内視鏡クリニックでの大腸カメラ検査の重要性
定期的な大腸カメラ検査は、大腸ポリープの早期発見・除去を可能にし、大腸がんのリスクを大幅に下げることができます。便潜血検査(免疫法)は、大腸がん検診として推奨されていますが、「平坦な大腸がん」は便潜血検査で陰性となることが多く、バリウム検査でも見つけにくい場合があります。そのため、内視鏡検査が最も理想的な検査方法とされています。
くりた内科・内視鏡クリニックでは、患者様が安心して検査を受けられるよう、最新の内視鏡機器を導入し、苦痛の少ない検査を心がけています。鎮静剤を使用することで、リラックスした状態で検査を受けていただくことも可能です。40歳を過ぎた方や、ご家族に大腸がんの既往歴がある方は、ぜひ一度、当院での大腸カメラ検査をご検討ください。早期発見が、皆様の未来を守ることに繋がります。
よくある誤解と正しい知識
「がんは予防できない」という誤解
「がんは完全に予防できない」という考え方があるかもしれませんが、これは少し違います。「がんを完全になくす」ことは難しいですが、「がんになりにくくする」ことは十分に可能です。生活習慣病が生活習慣の改善で予防できるのと同様に、大腸がんに関しては、食事や運動といった生活習慣がその発生に大きく影響するため、積極的にリスクを減らすことができるのです。この正しい理解が、がん予防への前向きな取り組みを後押しします。
ビタミンDによる予防効果の可能性
最近の研究では、「大腸がんの3分の2はビタミンDで予防できる」という報告もあり、血中のビタミンD濃度と大腸がんの発症率に関連が示唆されています。これは、確立された予防ガイドラインに加え、新たな予防戦略の可能性を示唆するものであり、がん予防の分野が常に進化していることを示しています。くりた内科・内視鏡クリニックでは、このような最新の科学的知見にも常に注目し、皆様に最適な情報を提供できるよう努めています。
まとめ:今日から始める大腸がん予防、そして当院へ
大腸がんは、日々の食事や運動といった生活習慣の改善によって、そのリスクを大きく減らせる可能性が高い病気です。食物繊維や発酵食品を積極的に摂り、腸内環境を整えること、そして適度な運動を習慣にすることが、健康な腸を育み、大腸がん予防の土台となります。
今日からできる小さな一歩から始めてみましょう。例えば、いつもの食事にもう一品野菜を加える、エレベーターではなく階段を使う、といった無理のない範囲での変更から始めることが有効です。
そして、生活習慣の改善に加え、定期的な大腸カメラ検査で早期発見・早期治療に努めることが、大腸がんからご自身を守るための最も確実な方法です。
くりた内科・内視鏡クリニックでは、皆様の健康をサポートするため、経験豊富な医師とスタッフが、丁寧な診察と質の高い内視鏡検査を提供しています。ご自身の健康に不安を感じる方、大腸がん予防についてもっと詳しく知りたい方は、どうぞお気軽に当院にご相談ください。皆様の健やかな毎日を、私たちくりた内科・内視鏡クリニックが全力でサポートいたします。



