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「食欲がない」を放置していませんか?消化器専門医が紐解く、食欲不振の意外な原因と危険なサイン

  • 執筆者の写真: くりた内科・内視鏡クリニック
    くりた内科・内視鏡クリニック
  • 3 日前
  • 読了時間: 11分
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食欲不振(Anorexia)は、単なる「なんとなく食べたくない」という一時的な感覚で片付けられがちですが、身体の恒常性(ホメオスタシス)が破綻し始めていることを示す重要な警告サインです。食欲の低下は、必要なエネルギーや栄養素の摂取不足を招き、体力や免疫力の低下、さらには既存の病状の悪化につながるリスクを内包しています。


特に、食欲不振が長期にわたって続いたり、体重減少などの他の症状を伴ったりする場合、その背景には治療が必要な重篤な疾患が隠れている可能性があります。このため、専門家による早期の診断と適切な介入が極めて重要となります。


くりた内科・内視鏡クリニックでは、食欲不振を訴える患者様に対し、消化器系の病気はもちろん、全身性の内科疾患まで広範な視点から精密な診断を行い、その背景にある重篤な疾患を見逃さないための高度な専門知識と内視鏡技術を有しています。本記事では、食欲不振の多様な原因を専門的に解説し、特に消化器系の疾患が隠れていないか確認する重要性を詳しくお伝えします。




お腹は空くが食欲がない食欲不振:空腹感と食欲の科学


「お腹は空くのに、目の前に食事があっても食べたいと思えない」 —これは食欲不振を訴える患者様からしばしば聞かれる、診断学的に非常に重要な症状です。この状態を理解するためには、「空腹感(Hunger)」と「食欲(Appetite)」がそれぞれ異なるメカニズムによって制御されていることを知る必要があります。



空腹感(Hunger)のメカニズム


空腹感は、主に胃や消化管からの物理的な信号です。胃の中に食べ物がなくなると、胃液や消化酵素が働き始め、胃壁が収縮することで生じる不快感や「お腹が鳴る」といった感覚が、いわゆる空腹感です。これは、身体が物理的にエネルギー補給を必要としていることを示す末梢のシグナルと言えます。



食欲(Appetite)のメカニズム


一方、食欲は、空腹の状態が脳の視床下部にある摂食中枢に情報として伝達され、「食べたい」という心理的な欲求を生じさせるものです。食欲は、単なる栄養補給の必要性だけでなく、過去の経験や感情、五感からの情報など、中枢神経系による複雑な制御を受けて成立します。



空腹感と食欲のデカップリング


「お腹は空くが食欲がない」という状態は、物理的な信号(胃の空虚)は正常に脳に伝達され、空腹感が生じているにもかかわらず、中枢神経系が何らかの要因によって摂食中枢を抑制していることを示しています。この中枢性の抑制は、自律神経の乱れや強いストレス、不安といった機能的な原因が考えられる一方で、全身性の炎症反応や、消化器系の器質的疾患が背景にある可能性も示唆されます。末梢(胃)からの信号は正常でも、中枢(脳)が摂食意欲を抑えているため、安易に精神的なものだと自己判断せず、重大な身体的疾患が存在しないかを確認するための精密検査が強く推奨されます。

以下に、空腹感と食欲の違いをまとめます。


空腹感と食欲の発生源と役割

項目

空腹感 (Hunger)

食欲 (Appetite)

発生源

胃や消化管(物理的収縮、消化液の作用) 

脳の視床下部(摂食中枢、中枢神経系)

感覚の特徴

胃が鳴る、腹部の不快感、物理的な反応

食べ物を欲する、特定のものを食べたい心理的衝動

食欲不振時の状態

信号は存在する(物理的に胃は空)

信号が抑制されている(心理的に欲求がない)



もしかしてこれって食欲不振かも… :見過ごされがちなサインと受診の目安


食欲不振は徐々に進行することが多く、ご自身で自覚しにくい場合もあります。単に食事量が減ったというだけでなく、「以前は好んで食べていたものが急に欲しくなくなった」「食事を準備したり食べ始めたりするのに強い億劫さを感じる」「食後の胃もたれや不快感が日常的に続く」といった変化も、重要な食欲不振のサインです。特に以下のいずれかに該当する場合は、単なる一時的な体調不良や疲れとして片付けず、専門の医療機関にご相談ください。



受診の重要な目安


食欲不振が 2 週間以上続いている場合が一つの目安です。一時的な体調不良や風邪であれば数日で食欲は回復しますが、食欲不振が長期化している場合、身体的な病気や、治療が必要な心の病気が原因である可能性が高まります。長期化は、体力の消耗や栄養状態の悪化も招くため、早期の診断が必要です。

また、食欲不振に加え、体重減少、嘔吐、黒色便(タール便)、激しい腹痛、全身倦怠感などの他の身体症状を伴う場合、胃がんや潰瘍など、特に緊急性の高い消化器疾患が背景にある可能性を示唆します。


多くの患者様は、食欲不振を「忙しさやストレスのせい」として片付けがちですが、安易に自己判断し、医療機関の受診を遅らせることは非常に危険です。胃がんなどの重大な疾患も、初期にはストレス症状と酷似して現れることがあり、早期発見の機会を逃す最大の原因となるからです。症状が長引く場合は、消化器専門医による確実な身体的原因の除外が極めて重要となります。




食欲不振の原因分類


食欲不振の原因は多岐にわたりますが、診断プロセスを円滑に進めるために、臨床的

には以下の三つに大別して考えられます。


  1. 器質的原因(身体的な病変)

    胃潰瘍、胃がん、感染症、甲状腺機能低下症など、身体の特定の臓器に病変が存在し、食欲を抑制する場合。


  2. 機能的原因(精神的・自律神経の乱れ)

    ストレス、不安、うつ病、自律神経失調症など、器質的な異常がないにもかかわらず機能が低下している場合。


  3. 薬剤・治療関連

    がん治療(抗がん剤、放射線)や特定の投薬の副作用。




消化器などの疾患:精密検査が必要なケース


食欲不振の原因として、最も緊急性が高く、早期発見が求められるのが消化器系の疾患です。消化管の病変は、局所の痛みだけでなく、炎症性物質が全身に回り、脳の摂食中枢を抑制することもあります。

専門医として、胃もたれや食欲不振が続く場合、まず胃カメラ検査を行い、がんや潰瘍といった器質的な疾患を確実に「除外」することが、その後の適切な治療方針を決定するための鉄則であると認識されています。



胃がん

胃がんは早期の段階では無症状であることがほとんどです。食欲不振が自覚されるようになるのは、がんが進行し、胃の蠕動運動が妨げられたり、炎症や閉塞を起こしたり、または全身的な消耗が始まった段階が多いです。


食欲不振に加えて、上腹部の痛みや不快感、体重減少、吐き気、そして黒色便(タール便)が見られる場合、進行がんの可能性があり、緊急の検査が必要です。症状がない早期の段階で発見するためには、定期的な内視鏡検査が不可欠です。当院では消化器病専門医・指導医が最新の経鼻内視鏡を用いて、微細な病変も見逃さない精度の高い検査を実施します。



ピロリ菌による慢性胃炎


ヘリコバクター・ピロリ菌の長期感染は、胃の粘膜に慢性的な炎症を引き起こします(慢性胃炎)。この慢性的な炎症は胃粘膜の萎縮を進行させ、胃がんのリスクを大幅に高める主要な要因となります。


慢性胃炎の症状は、上腹部の不快感、胃のむかつき、腹部膨満感、げっぷ、吐き気、そして食欲不振など多岐にわたりますが、非常に軽度で自覚しにくいことも特徴です。食欲不振が続く場合、内視鏡で胃粘膜の状態を確認し、ピロリ菌の感染有無をチェックすることは、現在の症状の改善だけでなく、将来的な胃がん予防(除菌治療)の観点から最も重要な予防医療の一つです。



胃潰瘍・十二指腸潰瘍


胃潰瘍・十二指腸潰瘍は、胃酸や消化酵素によって粘膜が深く傷つき、欠損が生じる状態です。潰瘍による炎症や痛み、そして胃酸過多による胸やけや吐き気が、食事に対する意欲を低下させ、食欲不振につながります。特に胃潰瘍の症状として、上腹部の痛み、胸やけ、吐き気、食欲不振、体重減少などが挙げられ、進行すると吐血や黒色便といった重篤な症状が現れる可能性もあります。症状が進行する前に粘膜の状態を内視鏡で評価し、胃酸の分泌を抑える薬物療法や生活指導を行うことが不可欠です。



感染性胃腸炎


ウイルスや細菌による感染性胃腸炎は、嘔吐や下痢、発熱といった急性症状に伴い、一時的に食欲が著しく低下します。急性期は無理に食事を取る必要はありませんが、脱水を防ぐための水分補給が最優先です。解熱後、身体に負担をかけないよう、おかゆ(卵やほぐした白身魚、野菜を入れるとなお良い)、野菜スープ、煮込みうどん、果物ゼリーなど、柔らかく消化の良い食事を数日かけて徐々に再開することが推奨されます。




精神的な疾患・ストレス・不安:脳腸相関の乱れ


精神的なストレス、不安、気分の落ち込み(うつ病など)は、自律神経のバランスを乱し、胃腸の蠕動運動を低下させたり、胃酸分泌を異常にしたりすることで、食欲不振や胃の不快感を引き起こします。これは、胃腸が自律神経を通じて脳と密接に連携している「脳腸相関」によるものです。


しかし、ストレスが原因である可能性が高いと感じる場合でも、長期間(2 週間以上)食欲不振が続く場合や、体重減少などの全身症状を伴う場合は、必ず医療機関で相談し、胃がんや潰瘍といった身体的な病気が隠れていないかを先に確認することが極めて重要です。精神的な治療が必要な場合でも、まず消化器内科で内視鏡検査などを行い、器質的疾患を除外した上で、心療内科や精神科へ連携することが、患者様の安全を守るための鉄則となります。




生活リズムの乱れ


不規則な生活習慣、運動不足や睡眠不足、バラバラな食事時間などは、自律神経のバランスを大きく乱し、食欲を低下させることがあります 6。夜更かしや不規則な食事は、体内に備わっているリズム(体内時計)を狂わせ、消化吸収のリズムを乱すため、食欲中枢に影響が出ます。


また、運動量が不足するとお腹が空きにくくなり、結果として食事からエネルギーを補給する機会が少なくなり、低栄養状態に陥りやすくなります。ビタミンやミネラルの欠乏も、食欲低下を招く一因です。規則正しい生活(早寝早起き、決まった時間の食事、朝食の摂取)を心がけ、自律神経のバランスを整えることが、食欲を回復させるための基本となります。


風邪・インフルエンザ


風邪やインフルエンザでは、発熱や炎症反応により全身の代謝が変化し、食欲が一時的に低下します。この時期は体力の消耗を防ぎ、免疫機能をサポートする栄養素を意識的に摂取することが重要です。


  • ビタミン A

    皮膚や粘膜の状態を正常に保ち、ウイルスの侵入を制御し、免疫機能を強化します。レバー、卵黄、ほうれん草、カボチャ(体内でビタミン A に変わるβカロテンが豊富)などに多く含まれます。


  •  ビタミン C

    ウイルスへの抵抗性を高めるインターフェロンの分泌を促進し、免疫力を高める作用があります。熱に弱いため、生食できる食材(イチゴ、オレンジ)や短時間の加熱が推奨されます。




その他食欲不振の場合に考えられる疾患


甲状腺機能低下症


食欲不振は消化器系だけでなく、全身の代謝を司る内分泌系の異常によっても引き起こされます。甲状腺ホルモンの分泌が低下する(甲状腺機能低下症)と、全身のエネルギー消費が低下するため、食欲不振に陥りやすくなります。


甲状腺機能低下症は、食欲不振に加え、疲れやすさ、便秘、無気力、気分の落ち込みなどの全身症状を伴うことが多いです。食欲不振が続く場合、血液検査による甲状腺ホルモン値のチェックなど、全身の代謝機能を評価することが適切な診断につながります。




食欲不振でお悩みの方は一度ご相談ください:くりた内科・内視鏡クリニックの役割


食欲不振の原因は様々ですが、重篤な疾患を迅速に、そして苦痛なく除外することが、患者様の不安解消と早期治療の鍵となります。



専門医による安心の診断


当院の院長は、日本消化器病学会、日本消化器内視鏡学会の専門医・指導医であり、京都大学医学博士の資格を持ちます。食欲不振の原因を、胃腸の病気から全身性の内分泌疾患まで、広範な視点から正確に診断します。



苦痛を最小限に抑えた内視鏡検査(クリニックの最大の強み)


食欲不振の原因で最も懸念される胃がんや潰瘍の診断には、胃カメラ検査(上部消化管内視鏡検査)が必須です。


当院では、最新式の経鼻内視鏡(オリンパス社製 GIF-1200N)を導入しています。経鼻内視鏡は、従来の経口内視鏡に比べてスコープの直径が細く(5〜6mm ほど)、鼻から挿入するため、喉元を経由しません。これにより、患者様が最も苦痛に感じる「おえっ」となる嘔吐反射を大幅に軽減することが可能です。


また、検査時の不安や苦痛をさらに軽減したい方のために、鎮静剤を用いた検査にも対応しています。鎮静剤使用後は安静室で十分にお休みいただいた後に結果をご説明します。



患者様の利便性への配慮


平日お忙しい方のために、土曜日も内視鏡検査を受け付けております。予約やご相談については、お気軽にお問い合わせください。



くりた内科・内視鏡クリニックが選ばれる理由

項目

当院の強み

患者様へのメリット(食欲不振の場合)

専門性

日本消化器病学会/内視鏡学会専門医・指導医

複雑な食欲不振の原因を広範な視点から正確に鑑別診断可能。

内視鏡技術

最新式経鼻内視鏡(GIF-1200N)導入

従来の検査に比べて苦痛が少なく、早期がんの微細な病変も高画質で確認可能。

苦痛軽減策

経鼻挿入または鎮静剤使用オプション対応

検査への恐怖心を解消し、早期の精密検査に安心して臨める。

利便性

土曜日も内視鏡検査可能

 平日仕事で忙しい方も、検査と診断を遅らせることなく受けられる。



おわりに:早期の専門医受診が健康への近道


食欲不振は、体からの SOS サインです。特に 2 週間以上症状が続く場合や、体重減少を伴う場合は、決して放置せず、消化器内科専門医にご相談ください。京都市下京区で胃カメラ検査をお考えの方は、苦痛の少ない内視鏡検査を提供するくりた内科・内視鏡クリニックへお越しください。私たちは、患者様の健康回復を全力でサポートいたします。


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